アンベージ・ウィンターコーナー「羽生結弦は状況を覆せる」

毎週火曜日にOA Sportで連載されているフランチェスコ・パオーネさんとマッシミリアーノさんの対談です。
非常に長いのでとりあえず男子シングルに関する部分だけ抜粋します。

原文>>

センセーショナルなアリョーナ・コストルナヤ!
羽生結弦は状況を覆せる

フランチェスコ・パオーネ(2019年12月11日)

 

批判が殺到した男子シングルの得点についての君の意見を聞かせてもらえる?
君はどんな風に思っているの?

まずネイサン・チェンは優勝に相応しかったし、結果は妥当だったが、獲得した得点には値しなかった。
現在、出来栄え点と演技構成点の付与に大きな問題があるのは明らかだ。
より多くの4回転ジャンプを跳ぶことが、自動的により高いPCSがもらえることになるはずがない。

何よりも求められている要件を満たしていないジャンプ要素(及びその他のエレメント)に尺度を越した高い出来栄え点が与えられることはあり得ない。

この点において現行の採点システムはもはや機能していない。
技術点と演技構成点の比重の偏りの問題だけではない。
私はオリンピック後のGOEの変更によって状況は更に悪化したと思っている。

私の意見では、現行ルールが正しく適用されないのは、プラス/マイナス対象となる各項目を参照しながら、プログラムの各エレメントをリアルタイムで正確に評価出来るジャッジが誰もいないからだと思う(異議がある者にはそれが誰であっても反論に応えよう)。しかもジャッジ達は演技構成点の5項目の評価も同時に行わなければならないことを忘れてはならない。

私のこの主張はジャッジ達が能力不足だと言いたいわけではない。
ただ単に現行のルールに則ったGOE採点を限られた短い時間で行うのは不可能なのだ。
このことを証明する例は今シーズン中、あらゆるカテゴリーの試合で見受けられた。

全く同じGOEを獲得した羽生結弦のショートの4サルコウとネイサン・チェンのフリーの4サルコウを見比べて欲しい。

従って、ルールが考案当初の意図通りに正しく適用出来ていない理由は理解出来る。
ルールの信頼性が失われないために、得点を後から修正出来るような何か別の方法を考案するべきではないかと思う。

当然のことながら、これらは全てジャッジに悪意がないことが前提となっているが、何人かのジャッジの行為を見た今、本当に悪意がなかったのか疑念が湧いてくる。
出来るだけ早い是正措置が求められているが、このような義務を担う者には是正する能力があると信じている。

君のこの答えを聞いた後で、それでも羽生結弦がもしノーミスならチェンに勝つことが出来るか聞いてもいいかな?

2人が共にノーミスなら、羽生が勝つ。
この点について私は1ミリの疑いも抱いていない。
何故なら得点の全ての項目において彼が一歩リードしているからだ。

トリノのフリーで羽生が予定していた基礎点、及びGOE満点を想定した獲得可能な最高得点はチェンのプログラムより0.80点上回っていた。
つまりスタート地点はほぼ同じだ。

チェンの方が5クワドのプログラムを滑り慣れているのは明らかだ。
この点においてアメリカの選手にとって、エネルギー消費という点においてより体力消耗の少ない彼のフィギュアスケートがアドバンテージになっている。

羽生も5本の4回転ジャンプを入れるために以前に比べるとフリーの繋ぎを少しシンプルにしているが、それでもチェンの方が明らかにリンクカバー率が低く、両足滑走が多い。

しかし、日本の選手のジャンプの方がクオリティが高いことを強調しなければならない。
クオリティとは、高さ(ファイナルでは全てのジャンプが測定されていたが、他の選手達との数値の差は困惑させられるほどだった)、飛距離、入りの難しさ、着氷時の姿勢を含む多くの点においてという意味である。

チェンはアスレチック面においてより優れていることを示した。羽生は状況を覆すためにこの点を強化しなければならない。

更にジャンプの配置にも大きな違いがある。
チェンは2本のコンビネーションを含むより基礎点の高いジャンプ要素をボーナスの付かない前半に入れているため、羽生に比べて後半は楽な構成になっている。
一方、羽生は3本の高難度コンビネーションを後半に固めている。
トロントではこの点についても見直すかもしれない。

PCSに関してはオリンピックチャンピオンが全ての項目(特に自由裁量の余地がほとんどないスケーティングスキルとトランジション)について頭一つ抜けているという見方が揺らぐことはない。
ショートプログラムではその差はさらに大きくなる。

当然、羽生は予定されているジャンプを全て成功させることが必要不可欠になる。
トリノでは彼のキャリアで初めてルッツを含む4種5本の4回転ジャンプを成功させた。
間違いなく、このことは今後に向けて重要なスタート地点になる。
その他の点に関しては次の試合を待とう。

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マッシミリアーノさん、男子フリーの後、しばらく音沙汰がなかったので心配しましたが超長文記事を準備していたのでね。
まだ視聴できていませんが、昨晩ポッドキャストも放送していたようです(恐怖の154分!😱)。
2016年のボストン世界選手権の後、(おそらくショックの余り)ぷっつり音信不通になってしまって、翌シーズンの公開練習まで全く音沙汰がなかったということがありましたので、ちょっと心配しましたがすぐに復活してよかったですw

羽生君とネイサンの異次元対決、凄かったです。
グランプリシリーズ中は構成を下げ、それでもミスをしていたのに、羽生君と対戦する試合になった途端、構成も調子も3段階ぐらいシフトアップして完全なユヅル仕様になるネイサンが私は結構好きです。
プレカンの2人のコメントを聞いていても、互いにリスペクトし合い、対戦するのが大好きなこと、他の選手達とは完全に別次元にある2人が互いの存在をモチベーションにしていることが伝わってきて素晴らしいと思いました(2人共理系で聡明なので、話が濃くて面白い!)。

羽生君にはミスがあり、ネイサンはノーミスだった。
ですからここまであからさまに盛らなくても全てのジャンプが入ったネイサンが優勝していました。

ジャッジングさえ適切ならこんなに後味の悪い大会にはならなかったと思いますし、優勝は出来なかったけれど、羽生君にとっては2シーズン連続の大怪我以来、4ループと4ルッツが初めて両方入った(しかも素晴らしいクオリティ!)、大きな意義と収穫のあった大会として終えることが出来たのではないでしょうか。

私は羽生君がプレカン等で必ずネイサンを称え、彼の存在がモチベーションになっていることを強調するのは、勿論、本心からそう思っているのでしょうが、自分のファンがネイサンを批判しないようけん制しているのではないかと思います。

しかしながら、ネイサン自身は素晴らしい選手なのに、妙な採点のせいでイタリアではすっかりヒール扱いされてしまっていて気の毒です(ソチ後のアデリーナ・ソトニコワ状態)。
マッシミリアーノさんのFBページの男子フリーの投稿に寄せられたコメントも演技の感想よりジャッジとISUに対する批判ばかりで、ジャッジ以外は歴史に残るハイレベルな大会だっただけに読んでいて残念な気持ちになります。

ネイサンの演技を最初に見たのは2015年バルセロナGPFですが、スケーティングも踊りも上手いコンプリートな選手という印象でした。
その翌シーズンの「韃靼人の踊り」も彼のバレエの素養が生かされたプログラムで気に入っていました。
その後、クワドの本数がどんどん増え、反対に繋ぎがどんどん少なくなって、特にフリーではクワドばかりで振付の印象があまり残らない選手になってしまったのは残念ですが、現行のルールでは繋ぎを減らして4回転ジャンプに特化した方が得点が稼げますから、ネイサンのようにクワドの確率が高い選手にとっては正しい戦略なのでしょう。

でもマッシミリアーノさんが主張しているように繋ぎの密度やクオリティに関係なく、成功した4回転ジャンプの数に連動してPCSが上がっていくのはおかしい。

確かに羽生君のフリーはスケートカナダに比べると4Loと4Lzの間とかクワドを5本入れるために繋ぎが何か所か削られていましたから、PCSが下がったのは仕方はないと言われるかもしれない。
でもそうすると、元々羽生君より繋ぎが断然少なかったのに、5本目のクワドを入れるために更に少なくなったネイサンのTRが前大会より上がったのは何故?ということになります。

羽生君の4Lzや4Loに2や1を付けているジャッジは日本スケ連が正式に抗議してもいい案件じゃないの?と思ったら日本ジャッジは+3を付けていました😩・・・

ソース>>

ジャンプのプラス要件は以下の通りです:

1) 高さおよび距離が非常に良い(ジャンプ・コンボおよびシークエンスでは全ジャンプ)
2) 踏切および着氷が良い
3) 開始から終了まで無駄な力が全く無い(コンビネーションジャンプではリズムを含む)
4) ジャンプの前にステップ,予想外または創造的な入り方
5) 踏切から着氷までの身体の姿勢が非常に良い
6) 要素が音楽に合っている

4)以外は全部満たしているように見えましたが
勿論、マイナスの要素は一つもありませんでした。
日本のジャッジがどういう根拠で自国の選手の非の打ちどころのないジャンプに+3を付けたのか是非説明してもらいたいですね。

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