イタリア解説EuroSport「欧州選手権2022:羽生君成分~他」

 

本日閉幕した欧州選手権より
羽生君の名前が出てきた部分と、その他の興味深かった部分を抜粋・要約しました

解説:
マッシミリアーノ・アンべージ(M)冬季競技アナリスト、ジャーナリスト
マリカ・ポーリ(P)元スケーター、コーチ、衣装デザイナー

<女子SP製氷タイム>

マッシさんは再び運営レベルの低いフランスが毎年グランプリ一大会を独占しているのは納得が行かない。イタリア(トリノ)やフィンランド(ヘルシンキ)のような設備の整ったリンクを持つ国と年毎に開催国を交代すべき。フランスでやるならパリで開催すべきと主張w

M:ISUがこの件(グランプリ開催国)についても議論するか見てみよう。
それにこのスポーツの国内における最高のプロモーションになる。
グランプリは観客を動員する大会だ。
ヘルシンキでもグランプリ大会が開催されたことが一度あった。大勢の観客と多大な感動をもたらした大会だった。
OK、この大会には羽生が出場していた。
羽生がいる大会には観客があり、熱狂があり、情熱がある。
そう、羽生がいるところにはフィギュアスケートがあるのだ

P:彼のファンが会場を満員にする。
ウィニー・ザ・プーを持つ彼のファンだけでパラヴェーラの半分以上が埋まっていたわ。
より多くの観客を収容出来るヘルシンキの会場なら、一体どれほどの観客が入るのか想像してみて。

2022年のファイナル開催地がトリノになったと発表されましたね。
おそらく2019年ファイナルのチケットの売り行きに味をしめて誘致したのでしょうが、果たして2022年も同じようにチケットが売れるかどうか・・・😅

<カミラ・ワリエワSP>
M:途方もないプログラム
TES51点
未だかつて見たことのない数字だ。
世界最高得点更新の予感がする
90点を超える得点が出るだろう。驚異的な大台を超える。
彼女は別のスポーツをしている。

P:彼女が氷上に持ち込めるものをもはや何と形容したいいのか分からないわ。
彼女のプログラムのクオリティ
彼女は滑りながらストーリーを語ることが出来る。非常に難度の高いエレメントを実施しながら。

M:トゥルソワを15点上回る可能性がある。
このショートプログラムは何か非現実的だ。
このような状況は羽生でしか見たことがない。

P:そうね

M:比較が可能な唯一の対象は羽生だけだ。

<男子FS製氷タイム>
(ジャンプの種類について解説)
M:ジャンプはどのように分類出来るのか?
まず踏切と着氷の足が同じジャンプ
つまり、右足で踏切り、右足で着氷するルッツ、フリップ、ループ
そして左足で踏切り、右足で着氷するジャンプ
つまり、空中で軸が変化するジャンプ、アクセル、サルコウ、トゥループがある。

これはエッジジャンプ(サルコウ、ループ、アクセル)とトゥジャンプ(トゥループ、フリップ、ルッツ)とは異なる分類の仕方だ。

P:ルッツ、フリップ、ループは右足で踏切り、右足で着氷するジャンプだけれど、ルールには右足で着氷しなければならない、とは書いてないわ。
だから例外的なケースを見たたわね。
ルッツ/フリップのコンビネーションジャンプ。
どうやって実施するのか?3ルッツを右足ではなく、左足で着氷し、左足がバックイン、つまり正しいエッジに乗った状態で、右足でトゥを突きフリップを跳ぶ。
この跳び方では空中で正しい姿勢は保てないので、かなり見苦しいジャンプで、GOEプラスを得るのは難しけれど、基礎点は入ります。

M:技術的には可能だけれど、禁忌のある技だ。
だから、このようなコンビネーションジャンプに挑戦した選手は一人しかいないのだろう。

P:そして先ほど言った、左足で踏切り、空中で軸を回転させて右足で降りるジャンプ
アクセル、サルコウ、トゥループ

M:これがジャンプのもう一つの分類方法
しかし、あまり考慮されていない。
スポーツは進化するものだから、掘り下げるべきテーマだろう。
新しいエレメントではないけれど、基礎点を上げるための工夫が出来る。
例えば、シークエンスジャンプがコンビネーションジャンプと同価値になるという変更は、新しい可能性を開くことになるだろう。
この意味で、センセーショナルなことに挑戦した選手の一人が羽生結弦だ。
彼は4トゥループ/3アクセルのシークエンスジャンプをプログラムに導入した。
結弦がこのエレメントをプログラムに初めて入れていた平昌オリンピックの翌シーズンには、このエレメントの得点は2本のジャンプの基礎点×0.8だった。
しかし、来シーズンから2本のジャンプの基礎点がそのまま入るようになる。
シークエンスに付けるのはアクセルでなければならない。何故なら足を変えるからだ。
よくオイラーを挟んだ3連続ジャンプと混同する人がいるけれど、全く別物だ。
オイラーはいわゆるシングルループだ。

P:ループ(オイラー)を挟んだこの3連続ジャンプが最初に有効化された時、私は少しでも基礎点を上げようと、一時期、間のループを2回転にする練習をしていたのよ(笑)
でも結果は散々だったけれど。

M:オイラーを挟んだコンビネーションジャンプではサードジャンプはサルコウかフリップでなけばならない。オイラーの後、左足はバックインになっているから、付けられるジャンプはサルコウかフリップに限定される。

来シーズンはセカンドの3トゥループのジャンプ、オイラーを挟んだ3連続に加え、アクセルが得意な選手はセカンドが3アクセルのシークエンスを入れるようになるだろうから、得点が上がるだろう。

P:おそらく来シーズンはルールの見直しが行われるでしょう。
この数年間で、この競技は技術的にかなり進化したから、PCSの係数が変わるでしょう

M:僕が何年も前から提唱していることだけれど、最終的に係数は変わらないんじゃないかと思う。
あるいは競技を根本的に変えるとか、テクニカル、アーティスティックといったサブカテゴリーを作るという案がある。しかし、この改正案も皆の同意を得なければならない。
僕は正しく、正確に適用さえ出来れば、現行ルールは機能すると確信しているけれど。
そして、もう一つはルッツとフリップに関する問題。
トゥを突かず、フルブレードで踏み切るジャンプをどうコールするのか。
物理学的に多少のプレロテがあるのは仕方がない。
しかし、今ではこのプレロテが過剰になり、氷上でほぼ1回転稼いでいる選手達がいる。
この件についても、ルールにどのように明記するのか?
実際、このようなジャンプを明文化したルールもある。トゥアクセルだ。
昨日、見たよね?

P:この場合のルールは、前向きで踏み切ったトゥループに対するものね。
つまり、トゥループは左足でトゥを突き、右足は左足の横を滑り、バックアウトになっていなければならない。しかしこの足でスリーターンを実施し、つまりフォアインでトゥループを踏み切った場合、このジャンプはDGになります。

M:この問題をどんな風に解決するのか見ていこう。しかし、ルッツとフリップに関してはもはやこの跳び方が主流になってしまっている。
テクニカルパネルは、このようなジャンプをルッツ、フリップ以外にコールする方法がない。そして、アメリカ、ロシア、日本のノービスの選手達を見ると、皆この方法で多回転ジャンプを跳んでいるのが分かる。もはや、世界中のあらゆる場所で、子供達にこの跳び方を教えているのだ

P:しかもこの3国は有力な選手を多数輩出しているフィギュア大国ね。でもイタリアでも同じことが起こっているわ。

M:君の言う通り、イタリアの男子シングルにもこの跳び方の選手が何人もいる。
そして今や希少種となってしまった正しい技術で跳ぶ選手達がいる。
例えば羽生だ。
しかし羽生は別の時代の選手だ。
彼は不老不死の選手だから15年間トップレベルにいるけれど、フィギュアスケート史において、羽生のような選手を今後何人見ることが出来ると思う?もう二度と見られないだろう。

<アンナ・シェルバコワFS>
M:過酷な戦いに立ち向かわなければならない時、アンナ・シェルバコワは決して後に引かない。彼女はこの点において最も優れた選手の一人だ。
これがこの1か月間というもの彼女を批判し、侮辱し続けた人々に対する彼女の答えだ。
現役女子スケーターの中でこのプログラムより優れた演技が出来る選手が何人いる?
間違いなく、この大会に出場しなかったロシアの女子選手には絶対に無理だ。
プラボー、アンナ・シェルバコワ!
繰り返すが、プリンセス・アンナはプレッシャーがかかる場面で絶対にミスをしない。

P:それどころか火事場の馬鹿力を引き出たわ。驚異的です。
最近は中々決まらず、もはや彼女の鬼門になっていた3ルッツ/3ループを成功させた後・・・

M:解き放たれたね。
見てよ、彼女は涙を流している。
何故なら、ここまであらゆる種類の批判に晒されてきたからだ。
先日、ダニエル・グラッスルが擁護するほどに
彼は「このレベルの選手がこのように批判されるのはあり得ない、ナンセンスだ」と発言した。ダニエルは正しい

P:何故なら、本当のファンがごく僅で、実質アンチばかりだからよ。
それどころか、お気に入りの選手のファンであるために、別の選手を誹謗中傷する人がいるけれど、これは間違った応援方法だわ。

M:いずれにしてもこれはシェルバコワにとって今シーズン最高の驚異的な演技で、おそらく170点近い得点が出るだろう。
そして何を付け加えられる?
彼女はコンプリートパッケージだ。
確かにジャンプ技術にしては長々と議論出来るけれど、これはもはや全選手に当てはまる議論だ。スピンの実施もよかった。彼女の本来のクオリティが戻ってきた。
そして、シェルバコワが氷上でどれほどスピードを出せるのか見て欲しい。

P:シェルバコワが好きではないという人と議論になったことがあって、私はこう尋ねたのよ。「あなたは彼女の滑りを生で見たことがある?」と
実際に現地で見ないと、彼女が2回のクロスオーバーでどれだけ加速出来るのか分からないと。この点において彼女は他の誰より優れていると言ってもいいでしょう。

M:トータル237.42
彼女はもっと高い得点を獲得したこともあるけれど、今日は背水の陣のような状況で爪を引き出し、大きな野心を抱いて北京に行く資格があることを証明した。

<アレクサンドラ・トゥルソワFS>

M:しかし演技構成点について考察しなければならない。
アレクサンドラは自分の好きなものをプログラムに持ち込むことが出来る。
クワド5本、勿論可能だ。
しかしその影響でこのプログラムは両足滑走が多く、助走が長く、振付が死んでいる部分が何箇所もあった。
これもその選手の正当化された選択の一環であり、この戦略について何か言うつもりはない。
しかし、PCSでは他の選手達に比べて彼女が「やっていないこと」を差し引くべきだ。そうだろう?

P:勿論です。
(一方、トゥルソワのショートは、ずっと片足滑走なので高いPCSに値すると)

<カミラ・ワリエワFS>

M:4T-3Tはその後の3Loのトランジションになっている。
これは羽生がやっていることだ

P:スペクタクルな4サルコウ。他の形容詞は思いつかないわ。

M:ほぼ完璧なジャンプだった。これより質の高い4サルコウを跳べるのは羽生ぐらいだ。

リザルト>>

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☆私はこれまでロシア女子の中ではシェルバコワに対する興味が一番薄かったのですが、今大会ではロシア選手権以来、代表選考を巡って理不尽で的外れな攻撃に晒されていたシェルちゃんを心から、一番応援していました。
おそらくまだ万全な状態な状態ではないのでしょうが、フリーでは4Fと3Lz-3Loを含む全てのジャンプを決め、彼女を五輪代表の座から引きずり降ろそうとしていた勢力を黙らせました。昨シーズンのロシア選手権と世界選手権、そして今シーズンのイタリア大会でも思ったことですが、崖っぷちに追い詰められたシェルちゃんの火事場の馬鹿力を侮ってはなりません。

彼女を擁護したというダニエル君の発言は、ロシアメディアに対するこのインタビューですね。

欧州選手権銀メダリストのダニエル・グラッスル「シェルバコワの大ファンです。彼女に対するネガティブなコメントを多く見ました。酷いことです。」

Q:あなたはアンナ・シェルバコワのスケートのファンであるとも言いました。彼女は今、大変困難な状況に直面していますが、あなたはこの大会で彼女の演技を見ていますか?

ダニエル:僕は彼女の大ファンです。彼女はとても強い女の子。彼女がこの状況を乗り越えることを心から願っています。僕は彼女に対するネガティブなコメントを多く見ました。
僕には全く理解できません。彼女の仕事はただリンクに出て行って、滑ることです。(オリンピックに)誰が行くのか決めればならないのは連盟です。彼女の悪口を書くのは酷いことだと心から思いますし、僕もこのようなコメントを目にしました。
明日は、彼女が最大限の力を発揮して、メダルを勝ち取ることを願っています。


☆ダニエル君はインタビューを見たり読んだりする度に、純粋で真摯で真面目でいい子だなあ~と好感を持っていたのですが、こんなに男前とは!😭
カテゴリーも国籍も異なる選手に対する誹謗中傷について、その選手の自国メディアの前で苦言するというのは、かなり異例なことです。
ダニエル君あっぱれ!

以前翻訳した、マッシさんとのリモート対談の中で、ワリエワ、シェルバコワ、そして羽生君について触れていますね。

Figure2uリモート対談「ダニエル・グラッスル」

ワリエワのショート90点越え、シェルちゃん涙の圧巻フリー演技と見どころ満載のユーロ2022でしたが、私的に今大会一番のハイライトはコレ↓

デニス・ヴァシリエフスの圧巻ロミジュリ演技

の直後のランビエール先生のリアクション😂

信じられなさ過ぎて頭を抱えるランビ先生😂

感動的な師弟対面シーン

男子はダニエル2位、デニス3位で感無量でした😭
デニス・ヴァシリエフスはショートもフリーもエレメンツおよびスケーティングのクオリティ、世界観、トランジション、振付、音楽との同調が全て揃ったこれぞフィギュアスケートという演技でした。

ロシアの女子五輪代表は表彰台の3人で異存のある人はもはや誰もいないと思いますが、男子はどうなるのでしょう?

イタリア解説はマッシさんマリカさん共にこれでモザリョフが選ばれなかったらおかしい、と言っていましたが、そこはロシアですからどうなるか?

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち