イタリア解説EuroSport版「フランス国際2021~ア・ラ・カルト」

先週末に行われれたフランス国際から
解説で興味深かった部分を抜粋してみました。
まずは素晴らしい演技で銅メダルを獲得した樋口新葉ちゃんのフリーから

解説:
マッシミリアーノ・アンべージ(M)冬季競技アナリスト、ジャーナリスト
マリカ・ポーリ(P)元スケーター、コーチ、衣装デザイナー

<樋口新葉フリー演技後>
M:ようやくワカバだ!
予定のエレメントが全て入った素晴らしいプログラムだった。
80点近い技術点だ。
この80点がキープ出来るか、少し下がるかは見なければならないが、この才能ある日本の選手のこれほど卓越したレベルのフリーはもう随分長い間見ていなかった。

P:昨日のショートととの違いは、ジャンプの着氷におけるガッツね。
3アクセルを降りた瞬間から、完璧なプログラムを演じるために戦ったわ。
ジャンプは跳びさえすれば自然に終わるものではなく、着氷でも何かを入れければならないけれど、彼女はこの点においても非常に優秀だった。

M:幾つかのジャンプはqだろうから技術点は少し下がるだろうけれど、非常に安定した演技だった。フリップの慢性的な問題も解決出来ていない。つまり、疲れている時に力で跳ぶと、トゥを突く瞬間、エッジがアウトサイドになってしまう問題だ。だから、間違いなく「e」が付いてしまう。しかし、このような細かい点はともかく、樋口の士気を上げる演技。おそらく140点を超えるだろう。
彼女は140点を超えたことがあるけれど、前の五輪周期(ソチから平昌シーズンまでの4年)のことで、この4年間ではなかった。

P:3アクセルはおそらくqだけれど、昨日完全に抜けてしまった後で、今日跳びに行くのは簡単なことではなかったはず

M:しかし彼女は今シーズン、3回転半完全に回り切った完璧な3アクセルも決めている。

P:フリップは完全にアウトサイドエッジね(笑)

M:だから疲れている時に力で跳ぶと、エッジの問題が出るのだ。
考えられるソリューションは、このフリップを前半に跳び、後半のフリップのところで例えばサルコウを入れるとか。
eが付くと基礎点が下がるから、フリップを後半で跳ぶアドバンテージはない。

P:それにGOEもマイナスになるし

M:これは戦略の問題だが、樋口は戦略ではずっと間違い続けているから、きっとこのまま行くのだろう。
しかし、今日は140点を超えるだろうから、もしかしたらロシア選手にプラッシャーを与えられるかもしれない。


☆男子の試合から

<佐藤駿ショート演技後>
M:思えば、羽生も12~13歳の時、ヴィヴァルディの「四季」をアレンジしたフリーを滑ったことがある。
いずれ回想したいと思うけれど。
佐藤駿の選曲はクラシックバージョンの「四季」だけれど。

P:佐藤駿の3アクセルを見ながら考えさせられたわ。
佐藤と羽生の3アクセルで2人が空中にいる時間を分析したら興味深いと思う。
万が一羽生が4アクセルを成功出来なかったら、彼は挑戦出来るんじゃないかしら。
彼の3アクセルは素晴らしいし、空中にいる時間が非常に短いわ。

M:羽生との差は、彼は氷上でより回転を稼いでいるということだ。
将来的に4アクセルを目指すなら、このことがアドバンテージになるかもしれない

P:勿論よ
肉眼で見る限り、彼は3アクセルで空中にいる時間が羽生より短いと私は思うわ。

<男子フリー第1グループ6分間練習>
M:このグループについてだが、得点を見直し、再考してみて、僕には分からないことがあった。君が説明してくれる?もし出来るなら。
アルトゥール・ダニエリアンの演技構成点がチームメイトのモザリョフより低いということがあり得る?

P:私も同じ疑問を持ったわ。男子だけでなく女子についても
特に昨日の男子については何度も疑問を持ったわ。
私の記憶が正しければダニエリアンはスケーティングスキルでフランスのアダム・シャオ・イム・ファと同点、またはほぼ同じ点だった。
ダニエリアンは別レベルのスケーター。それなのに、私の記憶違いでなければトランジションではより低い点だったわ。
ロシアの選手達はおそらく2歳の頃からスケートを始めるので(笑)、スケーティングが非常に上手いのよ。
エッジを長時間キープし、より難しいステップをより簡単に実施することが出来る

M:しかもアルトゥールは非常に優れたスケーティングスキルを持っている選手だ。
CSKAで優秀な元アイスダンサーの指導を受けて育った。

P:マキシム・ザボジンね。
彼らとはクールマイユールで一緒にトレーニングしたことがあって、毎日彼らの練習を見るチャンスに恵まれたけれど、ジャンプよりもスケーティングの練習に非常に力を入れていたわ。特にボドレゾワとザボジンは。

<アンドレイ・モザリョフ選手のフリー演技後>
P:さっき彼とダニエリアンの違いについて話したわね。
この瞬間、彼は技術点では間違いなくダニエリアンを上回っているし、そうあるべきだわ。
でも、演技構成点ではダニエリアンより劣っていることも認識されなければならない。
何よりも選手達のために、正しい審査基準で採点すべきだわ。
例えばスケーティングスキルや滑りのクオリティのない選手に実力以上の得点を与えたら、その選手はスケーティングは練習しなくなるでしょう。

例を挙げましょう。
ある選手が4回転ルッツの練習に集中するとします。その選手のスケーティングの質は低下するでしょう。
ダニエリアンがより高い評価に値するのではなく、モザリョフへの評価が高過ぎるのかもしれないし、その両方かもしれないけれど。
いずれにしても、ジャッジ達に参照すべき審査基準が記載された紙を事前に配るべきだわ。だって彼らにさえこの基準がないのだから。

M:ハハハ
しかしこれは問題だよね。

P:アイスダンスでは審査基準はちゃんとあるわ。
でもシングルとペアではない。

M:我々は困惑されられる状況にあると言えるね。

<男子フリー第2グループ6分間練習>
M:佐藤駿は練習ではルッツまでの全ての4回転ジャンプを跳んでいる。
ここ12カ月の成長には目覚ましいものがある。
まだ鍵山のレベルには達していないが、彼よりほぼ1歳年下だし、日本が次の五輪周期(北京後からミラノまで)に期待を寄せる選手だろう。

P:美しい3アクセルを決めたわね

M:昨日、羽生と佐藤駿の3アクセルの違いについて話したけれど、彼らの3アクセルの技術はかなり異なっている

P:勿論、そうね

M:佐藤駿は新世代のスケーターだから、以前とは異なる見本を見て育ったカテゴリーのスケーターに属している。この場合の、技術的見本とは、テレビの中の見られる完璧なジャンプを実施するスケーターではない。
コーチ達が見本として見せるジャンプだ。
コーチ達はジャンプを研究し、踏切で回転を盗むジャンプが何の減点もされたいことを確認した後で、その跳び方を生徒に教える、

P:そうね。
だから、私は佐藤駿は4アクセルを練習出来るのではないかと考えたのよ。
彼は踏切で回転を盗めるからインプットで得をするし、より回転速度を上げやすい

M:それに正直に言おうじゃないか。
最近、女子シングルで3アクセルが激増しているのは何故だと思う?
今話したことが理由だ。
3アクセルだけでなく4回転ジャンプについても同じことが言える。
もはやこの跳び方がトレンドになっている。
このことに気が付いた何人かの人間が過去に何度も警鐘を鳴らしたが、ISUは何の手も打たなかった。

P:フィギュアスケートは物理学と生体力学よ。
だからルールの許す範囲でこの物理学と生体力学を活用する人がする。物理の法則によればより早く回転出来て、髙く跳び上がれる方法をルールが許すなら、皆そちらの方法を選ぶでしょう。

(中略)

M:今日の鍵山の構成に興味がある。
トリノで見た保守的と言えるプログラム、いずれにしても4回転ジャンプ3本のプログラムか、あるいは別の4回転ジャンプ、予定では4ループを追加することにするか。
興味深いテーマだ。
これまでの試合で鍵山はクリーンに滑れば300点に到達出来ることを示した。
しかし、羽生、宇野、チェンがクリーンに滑れば300点を遥かに超える高得点を獲得出来る。つまり鍵山の野心がオリンピックメダルを争うことなら、保守的な構成では足りない可能性がある。勿論、彼らのノーミスが条件だけれど、皆規格外の選手達だ。
他の選手達は考慮に入れない。いずれにしても鍵山より劣る選手達だからだ。
そして、もし試合が公正に審査されるなら、誰も羽生には届かない。

P:彼のエレメントのクオリティ、羽生の4回転ジャンプのクオリティは・・・彼もミスをすることもあるからいつもではないけれど、彼が綺麗に決めた時の4回転ジャンプは宇宙のようだわ。驚異的な回転速度、途方もない放物線を描く飛距離、高さ、全てにおいて。
本当に最高のアスリートだわ

M:最高のアスリート?君はフィギュアスケート史上最強の選手について話しているんだよ

P:オリンピックで何度も1位になった。
既にこれだけでも彼の強さを語っている。

<佐藤駿フリー演技後>
M:佐藤駿は日本の選手達に明確なシグナルを発信した。
オリンピックに行くには彼にも勝たなければならない。
簡単なことではない。今日、この日本の少年は後半に3アクセルを2本跳んだ。
2本目は注目に値するクオリティだった。
綺麗に決まった4ルッツと4フリップで発進した。
ポテンシャルは巨大だ。
当然のことながら、多くの側面においてもっと磨かれていかなければならない。

P:4Tで小さなミスがあって予定の4T-3Tにならなかったけれど、冒頭の4ルッツは圧巻でまるでトリプルのように簡単に見えたわ。

M:彼は仙台出身で最も著名な同胞、羽生結弦も2014-2015年シーズンに「オペラ座の怪人」の旋律に乗せて滑った。

P:彼のとは全く異なる衣装でね。

M:グランプリファイナルで優勝した。

P:ハン・ヤンと衝突した年ね。

M:その通り

P:顔から血を流し、頭に包帯を撒いた彼の怪人は一層リアルだったわ

M:スケートアメリカで既に佐藤の覚醒の予感はあった。この大会では小さな怪我があったが、それでも4位に入った。
これは注目に値するプログラムだ。おそらく180点前後の得点が出るだろう。
先に滑ったモザリョフとほぼ同点だろう。
グレノーブルでは予想外にエキサイティングな試合が展開されている。

<鍵山優真フリー演技後>
M:最初の3分間は完璧だった。その後ガソリン切れになって後半のジャンプでミスが出た。
僕は最後から2番目のジャンプ、3フリップ/3ループを見直したい。
まずフリップのエッジ、そしてループの回転

P:スローで見せてくることを願っているわ。
もしループが回転不足でフリップのエッジが正しくなければ、得点が変わってくるわね。

M:いずれにしてもフリー1位で優勝は間違いない。
問題はフリーで普通の勝利か圧勝か
いずれにしても180点を超えるだろう。
今日、モザリョフと佐藤が近づいたものの、誰も超えていない大台だ。
先ほどの(PCSの)話題に具体的なことを付け加えると、彼はブラボーだけれど、現時点では、おそらく2番目の得点は貰い過ぎだと僕は思う。
昨日の得点は出過ぎだった。演技構成点について話している。

P:そうね
膝のバネ、膝の使い方という点においては、今大会の出場選手の中ではおそらくベストだと思うわ。

M:つまりスケーティングだね。
そう、スケーティングスキルは分かる。
しかし、その他の多くの側面についてはまだ学芸会のようなところがある

P:確かに

M:例えば昨日のショートでは、音を表現すべきところで両手をただ大きく開くとか

P:そうね。振付師の話をすると、ハイレベルな振付師は何人もいるけれど、最終的に選手次第と言えるわね。

M:彼のプログラムの振付はローリー・ニコルだ

P:何人かの選手達は、振付自体のクオリティは非常に高くても、思い浮かぶ選手は何人かいるけれど・・・
ループを見ましょう

M:回転はいいと思う。僕はフリップのエッジにより疑念を抱いた。

P:いずれにしても何人かの選手達は、彼らのために考案された振付が本来伝達すべきことを見る者に伝達することが出来ない。

M:決して選手を下げている訳ではない

P:そして振付師を下げている訳でもないわ。
でもおそらくローリー・ニコルは彼には向いていないのかもしれない。これが分かりやすい説明かもしれないわね。

M:いずれにしても鍵山は今大会で優勝を飾り、ポイント満点でファイナルに進出するけれど、(ファイナルで)ベストのネイサン・チェンに勝てるのは、何かを追加した宇野昌磨だという僕の意見は変わらない。
鍵山がファイナルまでの間に何かを追加してくるか見てみよう。
いずれにしても彼は30ポイントを獲得した唯一の選手だ。

公式リザルト

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今週は毎日仕事が終わるのが遅く、フランス国際はほとんどライブでは見られませんでした。しかし、一番見たかった女子フリーの時はちょうど移動中だったので、列車の中でPCを開いて視聴しようと試みたのですが、ポケットWiFiがバッテリー切れで機能せず・・・
でも・・・新葉ちゃんの演技だけはちょうど駅に停車中で、駅のWiFiが繋がって奇跡的に見ることが出来ました!😭

彼女のライオンキングは夏のアイスショーで披露された時、きっと素晴らしいプログラムになると期待していたのですが、その通りになりました。
冒頭の3アクセル、qが付いてしまったけれど、巨大なジャンプでした。
ショートの時、マッシミリアーノさんは彼女のように猛スピードから3アクセルを跳ぶ選手は初めて見た、でもだから抜けるリスクも大きいと言っていました。
フリップのエッジの減点はいつも勿体ないと思っています。例えば坂本さんやメドちゃんは3ルッツを前半の2本目ぐらいに入れていますよね?同じようにフリップのエッジに問題があるカレン・チェンは3フリップを3番目のジャンプにしています(しかし今大会eでしたが)。

それにしても彼女のPCSがシリアスエラーのあったロシア2選手より3~4点も低いのには納得が行きません。
コストルナヤはスケーティングはさすがですが、全盛期の2019-2020年に比べるとトランジションは明らかに少なくなりましたし、何よりも変更したばかりということもあり、このプログラムをまだ咀嚼し切れていない印象を受けました。
シェルバコワはトランジションの多さはさすがですが、編曲が酷い上に、イマイチ個性に乏しく、プログラム全体を通して一体何を表現したいのか私にはさっぱり分かりませんでした。非常に複雑で難しい振付をこなしているのは分かるのですが、何も伝わってこないというか。
個人的に可憐で気品のあるシェルちゃんでは、こんな意味不明な謎プロではなく、ジゼルのような王道悲劇のヒロインを見てみたいです。出来ればグレイヘンガウス以外の振付で
😅

新葉ちゃんはトランジションはロシアの選手に比べて少ないですが、エネルギッシュでプログラム全体に疾走感があり、彼女の個性とスケーティングスキルが光る非常にインパクトの強いプログラムでした、
プログラムの世界観、インパクト、個性、スピードと言う点においてロシアの選手達を上回っていたと私は思います。しかも転倒もステップアウトもないクリーンな演技です。
少なくともSS、IN、PEではもっと高得点に値したと思います。

男子は日本男子のワンツーでした。
この2人には何と言うか、伸び盛りの若手選手特有の勢いがあり、他の出場選手達を圧倒していました。

まだロステレコム杯が残っていますが、ファイナリストは女子は怪我などの不慮の事態が起こらない限り、ワリエワ、シェルバコワ、トゥクタミシェワ、コストルナヤ、フロミフ、坂本花織ちゃんでしょうか。
男子は鍵山君、宇野君、ネイサン、ヴィンセントは決定していますが、あと2人が誰になるのか。主な可能性としては、ロステレコム杯でセメンネンコ優勝でコリヤダ2位ならこの2人が進出。
コリヤダ優勝、セメネンコ2位ならジェイソンとセメネンコがタイブレークで得点の高い方が進出だそうです。
個人的にコリヤダに頑張って欲しいです。
そしてフランス大会の結果を受けて「りくりゅう」こと三浦/木原組のファイナル進出が確定しました!

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち