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イタリア解説EuroSport版「2018ミラノ世界選手権~男子その他の解説」

男子ショートとフリーから

マッシミリアーノ達さんの「歯に衣着せぬ」解説から印象的なコメントを幾つかご紹介します。(ショートは録画放送もフリーは生中継でした)

 

実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)

 

<ヴィンセント・ジョウ選手のSP>

A:彼は傑出したジャンパーだけれど、クリーンな技術という点においてはあまり優れた選手ではない。

M:時々氷上のローラースケータ―と呼ばれているけれど、それは彼がエッジを使えていないからだ。

A:ブレードの使い方という点において、トップ選手に比べて劣っている。

M:ヴィンセント・ジョウはSkating Skillsで7.82点を獲得した。

そしてジャッジの1人は9点を付けた

9点だよ

A:(・・・・・)

M:彼に9点を与えるならパトリック・チャンや羽生結弦には27点を与えなければならない

A:(爆笑)

M:だってこれが尺度(3:1)だ

A:スケーティングスキル9点は説明不可能な得点だ

多くのジャッジが7点半を出した。8点以上を出したジャッジもいた
7.5でも僕は高いと思う。
でも9点は正直、見当違いな得点だ

M:いずれにしてもヴィンセント・ジョウは27番滑走で、彼の後にはまだ多くの選手が控えていた。結果的に彼に与えられた演技構成点はその後に滑る選手達の演技構成点を全体的に引き上げることになった。

 

<デニス・ヴァシリエフス選手のSP「トスカ」>

マッシミリアーノさん達は常々ヴァシリエフス選手のスケーティングのクオリティについて、パトリックと羽生君に次ぐスケーティングマスターだと絶賛しています。

A:ステップからのソロジャンプ
ここにはちゃんとステップがある
ステップから3フリップを綺麗に決めた
例えばこの場合、ステップから跳んだ彼の3フリップのGOEと、先ほど見たステップが皆無だったジョウの4フリップのGOEには明確な差が付くべきだ。でも実際の評価はそうではなかった。

M:これは平凡な曲ではない。滑るのが難しい大曲だ

A:でも彼は平凡な選手じゃないからこの選曲は間違っていない
彼はジュニア時代から個性と表現力に定評のある選手でこのドラマチックな難しい曲を見事に演じてみせた。

M:君の意見に同感だ。

でも最終的な結果を見るとヴィンセント・ジョウのPCS39に対してヴァシリエフスは41.15点だった。2点差だけれど、2本の4回転ジャンプを跳ぶジョウが、技術点で圧倒的に上回ることを考えると点差は無いに等しい。つまり演技構成点は全く頼りにならないということになる。
でも、もし演技構成点で然るべく評価が与えられていたら、つまりジョウのPCSがヴァシリエフスより7~8点低かったら、試合の行方は違ってくる。

A:その通り。そうなればそれぞれ自分の武器を駆使して競技する正反対のタイプの選手の面白い対決を見ることが出来るはずだ。
同じことがステップから跳んでいるヴァシリエフスの3フリップと、ステップから跳んでいないヴィンセント・ジョウの4フリップのGOEについても言える。ソロジャンプの前のステップは必須要件だ。
でもヴァシリエフスの3フリップの加点が1~2点で、ジョウの4フリップが基礎点だけで既に3フリップの倍なのに更に加点でも1~2点を獲得したら、これは公正ではない。

いずれにしてもヴァシリエフスはヴィンセント・ジョウの得点には届かないし、彼は4回転ジャンプを跳んでいないわけだから、届かないのは当然だ。でも演技構成点の各項目とGOEが適切に採点されたら、点差はもっと縮まり、より均衡のとれた勝負になったはずだ。

ヴィンセント・ジョウのSkating Skillsに9点を与えたジャッジはヴァシリエフスのSSに8.25を付けた(笑)

M:これはどう説明すればいい?
押し間違い?

A:(笑)・・・正直、正当化するのは難しい・・・

M:押し間違いだろう
そうでなければあり得ない

A:(・・・・)

 

<ネイサン・チェン選手のSP>

A:4フリップ
ここにもステップは全くない
両足着氷で僕は回転も足りなかったと思う

M:理論的にはこの4フリップは-3が妥当な評価だと思う。ステップがなかったし、着氷もクリーンじゃなかった。それに回転も見直さなくてはならない

(4フリップのリプレイ)

A:僕は足りてないと思うけれど・・・着氷の瞬間をスローではなく早送りにした(笑)

M:偶然だと思う?

 

<ジン・ボーヤン選手のSP>

A:回転不足と判定された4トゥループでジン・ボーヤンは大量の点を失った
回転不足の減点とGOEのマイナスでこのジャンプで僅かな得点しか持ち帰れなかった。

M:つまり4回転ジャンプを1つ失ったわけだね。
でも他の要素をまとめて射程圏内に留まることが出来た。

疑惑は何か?
OK、ジン・ボーヤンの4トゥループは回転不足だったかもしれない
でも僕達はさっき全く同じようなジャンプに対して違う判定を見た

A:リプレイでもう一度見てみよう
確かに着氷はクリーンじゃなかった

M:じゃあネイサン・チェンのフリップは?

A:同じようにクリーンじゃなかった

M:つまり同じようなジャンプに対して全く違う判定基準が適用された

(リプレイ)

A:確かにギリギリだ。1/4足りていないから際どい所だと思う・・・

 

<友野一希選手のFS>

A:いきなりこれほど大舞台で、大勢の観客の前で滑ることは容易ではないが、彼はそれをやってのけた。
例えば同じように代役として出場したロシアのコンスタンチノワは大惨事だった。

質の高い4サルコウ、ハイレベルな2本の3アクセル
それにこのバーンスタインの「ウェストサイドストーリー」の音楽に乗せて最初から最後までスピードのある演技でエネルギッシュに滑り切った

 

<宇野昌磨選手のFS>

A:4T-2T
信じられない・・・体調が万全ではないのは明白なのに彼は何も諦めようとしない

この点において拍手に値する
最後の3つのジャンプ要素で大量の得点を稼ぎ、3度転倒があったにもかかわらず技術点90点を超えてようとしている。何という勇気だろう
敬意に値する
明らかに困難なコンディションにも拘らずTES100点を超えた。回転不足のジャンプが幾つもあったからこの得点は下がるだろう。でも、彼は何一つ諦めなかった。
体調もおそらく感覚も明らかに不安定な状態で

涙を流している、きっと痛みもあるのだろう
万全でないのは明らかだ

ベストの宇野昌磨なら勝つためにここにいるだろう
この得点で優勝を手にするのは難しいし、転倒が3度あったから少なくとも4点減点されることも忘れてはならない。でも彼は何一つ断念せず、抜けたジャンプもなかった。

まさに日本人の特攻隊の精神だ。
だって、誰でも彼のこんなコンディションを見たら難度を下げるようアドバイスしただろうに

M:いずれにしても宇野は安定感においてモンスターだ
これは彼の大きな資質の一つだ。
コンディションが悪い時でもその時自分に出来ることをやってそれなりの高得点を持ち帰る

(表彰式前)

M:宇野昌磨についてだけれど、この際、ショーマ・ウノ(Unoはイタリア語で1)ではなく、ショーマ・ドゥーエ(Due=2)と呼ぶべきだろう。

A:永遠の2位だね(爆笑)
行く先々で2位だ

世界選手権もオリンピックもファイナルも四大陸選手権も

でも今日の2位は敬意に値する

万全からほど遠いコンディションで、何度も転倒したけれど、歯を食いしばって滑り切り、侍の精神を引き出して最後まで何一つ諦めなかった。
ジン・ボーヤンには残念ながらそれが出来なかった。最初の幾つかのミスで集中力が切れ、18位に転落するほど崩れてしまった。

 

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サプライズだらけのこのミラノ大会で一番大きなサプライだったのは友野君です!
宇野昌磨君が右足を痛めてショートの構成を4Tと3S-3Tに下げるというニュースを読んだ時、私は正直3枠は無理なんじゃないかと思っていました。
まさか直前に代役として呼ばれた友野君が、初の大舞台でこれほど素晴らしい演技をして堂々の5位に入るなんて!
調整期間もそんなになかったと思うのに、巡ってきたチャンスをきっちり活かして結果を出すメンタルは頼もしいです!

幅と高さのあるクリーンなジャンプ、スピードと勢いがあり、ポージングや手の動きも綺麗で小柄だけれど、氷上で映えるパフォーマーだと思いました。
今大会は転倒祭りの残念な大会になってしまったので、友野君のクリーンな演技はひと際輝いていました。きっとミラノのお客さんの心に鮮烈なインパクトを残したと思います。今後が楽しみな選手です。

宇野君は本調子じゃないのは明らかでしたし、足への負担を軽くするために難度を下げるという選択肢もあったと思うのですが、あえて五輪と同じ構成に挑み、転んでも転んでも立ち上がって最後まで攻め続ける姿に心を打たれました。
最後の三連続コンボに執念を見ました。

彼は四大陸にも団体戦にも出場していましたから4連戦だったわけで、疲労もきっとピークに達していたと思います。
最近の男子シングルはショートで2本、フリーで4本以上のクワドを跳ぶというほぼ人間の肉体の限界に近い過酷なプログラムを滑らなければならない訳で、メンタルとフィジカルのコンディションをずっと維持するのは不可能に近いことなんだと今大会を見て改めて思いました。
長いシーズン、本当にお疲れ様でした!

 

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち