イタリア解説EuroSport版「GPイタリア大会2021~ア・ラ・カルト」

伊ユロスポ放送のグランプレミ・ディ・イタリアの実況解説から
興味深い部分を抜粋してみました

解説:
マッシミリアーノ・アンべージ(M)冬季競技アナリスト、ジャーナリスト
マリカ・ポーリ(P)元スケーター、コーチ、衣装デザイナー

女子SP6分間練習
M:グランプリのような威信のある大会で会場がこんなにガラガラなことには考えさせられずにはいられない。
かなり多めに数えて400人ぐらい?関係者も含めて
この現実を真剣に考えるべきだと僕は思う
価格とか出場選手とか様々な理由でチケットが売れないのなら、学童を招待すべきだろう。
このアイスリンクを埋めるべきだ。

P:例えば先日、クールマイユールでショートトラックの試合があったけれど、幼稚園の園児達を招待したわ。子供達は大喜びで観戦していました。目新しいことを見ることは素敵な体験になるし、ひょっとしたらこのスポーツをやってみたいと習い始める子供もいるかもしれない。
イタリアではフィギュアスケートの情熱を皆に伝える必要があります。
イタリアはロシアやアメリカに比べてフィギュアスケート人口がずっと少ないのだから。
子供達が熱狂し、夢中になるのは素敵なことです。特にこの試合では皆キラキラ光る衣装を着ていて(生で見ると本当に光っているのです)、特に女の子には魅力的なはず。

M:このリンクは過去に2度ファイナルを開催したことのある場所だから、これほどガラガラなのは不似合いだ。
もしかしたらもっと遅い時間のプログラムではもう少し人が増えるのかもしれないけれど。
それにしてもこの大会には現世界女王のシェルバコワも出場するというのに

P:何よりも生で見る必要があるわね。テレビでは分からないかもしれないけれど、生で見ると彼女(シェルバコワ)は2回クロスオーバーで他の選手よりずっと素早く加速することが出来るのです。スピードはテレビでは伝わらない。生で見ないと分からないのです。

確かに悲しいほどガラガラな会場・・・
トリノファイナルが開催された同じ会場とは思えない・・・😭

三原舞依SP
M:曲名はI Dreamed A Dream、私は夢を見た、だけれど今日の彼女は自分自身に大きなプレゼントをしたと思う。この演技で表彰台の有力候補に名乗りをあげた。彼女には表彰台に上がれる全てが揃っている。
全てのエレメントがクリーンに入り、強いて言えばコンビネーションの回転を見直すぐらいだけれど、僕には正直回転し切っているように見えた。

P:全く乱れのない流れるような演技。難しいことを簡単なことのようにやっていたわ。エレメントとエレメントの間に難しいステップ、それに、ともすればバランスを崩しそうになるような腕も動きが入っていたけれど、彼女は全てを完璧に実施したわ。

M:彼女は坂本花織の長年のリンクメイト。
興味深いのは、長年一緒に育ったにも拘わらず2人が正反対のタイプのスケーターだということだ。氷上で軽やかで繊細な三原に対して、よりパワフルで爆発力のある坂本。
しかし、二人とも非常に質の高いスケーティングスキルを持っている。

(中略)
M:彼女の演技構成点31.17は省察すべきだと思う。
僕の意見では三原は全ての項目で8点以上に値すると思うが、ここでは全項目8点を貰っていない。

P:おそらく時差のせいか、エッジが少し不安定な瞬間が何箇所かあったけれど、本当に最小限のこと。彼女はカナダで過小評価され、ここでも過小評価された。

スケカナでも舞依ちゃんのPCSは低過ぎと言っていました。スケーティングの質が高く繋ぎも豊かなのに幾ら何でも低過ぎです😡

マイヤ・フロミフSP
M:特に最初の2アクセルのクオリティは注目に値する

P:日本の試合で使われているアイススコープで測ったら興味深いでしょうね。
幅があり、エッジで踏み切っています。
この試合の出場選手ではないけれど、アクセルをスキッド(エッジの横滑り)から踏み切る選手が何人かいます。
間違いなく、エッジで踏み切ったアクセルの方が失敗のリスクが髙く難しいのです。

ラーラ・ナキ・グッドマンSP
P:ラーラは昨シーズン、右足首を手術しました。テープが見えます。
足首の手術はスケーターにとって決して好ましくありません。スキー靴同様、スケート靴も手術した部位を刺激するからです。

M:この場合、通常のソリューションは何?
足首が動かないように特別な方法でテーピングするの?
足首を安定させるにはどうすればいいの?

P:怪我の種類によるわね。靭帯の損傷なら安静にして手術を避けます。
骨の上の靭帯を損傷し、骨の手術が不可欠な怪我ではテーピングでは解決出来ません。

M:皆さんもご存じのように、昨日、羽生結弦が右足首の靭帯損傷のためにNHK杯を欠場することが発表された。練習中に転倒して負傷したのだ。
日本のチャンピオンにとってこのような種類の怪我は初めてではない。彼はほぼ10年前から右足首と戦い続けている。

P:残念ながらほとんどのスケーターが目には見えないけれど、膝や足首に問題を抱えています。
スケート靴は見た目と違って全く柔らかくありません。
ジャンプの衝撃に耐えるためにスケート靴は非常に硬いのです。
ですからしばしば腱や、時には脛骨の炎症を招きます。
多くの選手が骨膜炎を起こします。
いずれも簡単に解決出来る問題ではありません。
数カ月のストップを強いられることもある。
勿論、数カ月かからないこともあります。
例えば今シーズンはオリンピックがありますから、おそらく羽生は2か月ストップすることはないでしょう。羽生は日本でベストの男子スケーターだからオリンピック代表の座は間違いなく保証されているけれど。

M:彼は北京に出場したいとは一度も明言していない。
だから、どうなるか見なければならない。
結弦はオリンピック2大会で勝った。
実質、ジュニアとシニアのあらゆるタイトルを獲得した。
自分の目標を達成するために現役を続けている。
彼の目標とは4アクセルだ。
東京のNHK杯で挑戦するはずだった。
まさに東京の
考えてみてよ、彼が全日本選手権ノービスBで初優勝したのがまさに東京だった。
遥か昔に遡らなければならないけれど
おそらくグランプリのリンクで彼を見ることはないだろう。
ロステレコム杯に出場するとは思えない。
彼の目先の目標は全日本に焦点を合わせることだろう。
そしてこの大会で彼の夢である4アクセルを実施出来るか見てみよう
ずっと昔から彼の引き出しの中にしまってあった夢だ。
おそらく14~15歳、彼が初めて3アクセルを決めた頃からいずれ4アクセルを跳ぶと決めていたのだろう。
最近、練習ではかなり近いところまで達していたようだが、怪我と言うアクシデントによってお預けになった。

ソフィア・サモドゥロワSP
58.68点
僕の意見ではテクニカルは彼女のジャンプに対して寛大だった。
今日の彼女は明らかに(イタリアの)グッドマンとベッカーリより下だった。
しかし彼女の国旗はご存じの通りだ

P:それに彼女が足でやっていることも見なければならないわ(トランジションとステップが簡単で乏しい)

宮原知子SP
P:女子の全選手が2回転ジャンプだけのプログラムで勝負したら、彼女が圧勝でしょう。
何故なら彼女の2アクセルはクオリティが高く、スケーティング、表現力、振付のクオリティも高い。

M:彼女がソロジャンプをフリップにしているのには最良のソリューションか僕は疑問に思っている。日は綺麗に決まったけれど、彼女は3ループを誰よりも難しい入りから跳んでいた。バックインカウンター、足を換えてフォアアウトブラケット、モホーク

P:3ループの回転に問題がないなら、難しい入りはGOEを上げるだけでなく、演技構成点のスケーティングスキルとトランジションの得点も上げることが出来ます。

2回転ジャンプだけのプログラムならって・・・・さっとんの芸術性は素晴らしいと褒めているつもりなんでしょうが、それにしても・・・😭

男子SP第2グループ6分間練習
M:鍵山優真はミラノ-コルティナ五輪までに5種類の4回転ジャンプを揃えることを目指している選手だ。
20年前のフィギュアスケートでは、数年でこれほど多くの種類の4回転ジャンプを習得するのは不可能だった。
何故、現在は可能なのか?
複数の要因がある。
第1にテクノロジーによる助けがあった。
スケート靴とブレードの性能は年々進化している。
例えば昨シーズンと比べても分からないが、4~5年前と比べると違いは明らかだ。

P:より軽量なスケート靴が考案され、このことはジャンプの回転に必要な最低限の高さを出せなかった選手達にとっては助けになりました。
ブレードも軽くなった。
勿論、人によって考え方は異なります。例えば、スケート靴が軽くなったことで、軸が取りにくくなるという考え方もあるけれど。新しいものに対しては常に様々な理論がありますから、時間をかけて実際はどうなのか見る必要があります。ここ20年ほどの間に複数のスケート靴専門メーカーが誕生しました。このグループの多くの選手がエデア社のスケート靴を履いています。最近誕生したブランドで、動作の物理学をスケート靴に適用したスケート靴の製造を専門としています。

M:第2に以前に比べて、ずっと早い年齢から4回転ジャンプを練習するようになった。
だから、選手達は成長の早い段階からトゥループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツの4回転ジャンプを跳び始める。

第3にトレーニングのメソッドが変わった。
ここにいるスケーター達はアスレチック面において20年前の選手達より優れている。特に陸トレが大きな効果を上げている。

第4に、一部の例外を除き、フリップとルッツの技術は20年前とは異なっている。
今や、ほとんどの選手が多かれ少なかれ、フルブレードアシスタンスと呼ばれる方法で踏み切っている。この方法は、より回転の弾みがつけやすくなるだけでなく、氷上で回転を幾らか稼ぐことが出来る。この「幾らか」は多くの場合、半回転ほどだ。

P:ジャンプを実施する際、最後の半回転が足りない選手は、この方法によってその半回転を最初に盗めば、ジャンプを決めることが出来ます。
私はこの方法が海外のよりレベルの低いスケーター達の間でも蔓延しているのを見ました。つまり8歳ぐらいのスケーター達に指導する技術も今では完全に変化しました。
この別の方法でサルコウを跳べば、4回転まで跳べるという訳です。
ですから、新しい世代では既にこの跳び方が広がっているのです。

M:僕達は技術レベルを上げることを可能にした4つの要因について説明した。
これらの要因を混ぜ合わせると、鍵山は1種類ずつジャンプを増やし、ミラノ-コルティナまでに5種類揃えられるという訳だ。既にトゥループとサルコウを習得し、フリーではループも入れようとしている。そしてフリップとルッツも練習している。
羽生は2018年五輪に向けてこのようなアイデアを既に持っていた。しかしその後の度重なる怪我により平昌五輪はトゥループとサルコウだけで勝った。ループを入れなかったのは必要なかったからだ。彼は確実に勝てる方法を選んだ。
しかし、もはやこの傾向は明らかだ。
ミラノ-コルティナ五輪では多くの選手が4~5種類以上の4回転ジャンプを跳ぶと思う。

P:何よりもスケート靴の進化が大きいわね。
もう一つ、これは小さなことですが、現在ではスケート靴を新調した際、1回の練習で慣れることが出来ます。
10~20年前は、私は新しい靴に慣れるまでに少なくとも1週間はかかったことを覚えています。靴を変えた後は腱炎や水ぶくれが出来て大変でした。
今では自分にピッタリの靴を選べば、すぐに馴染ませることが出来ます。
例えば、試合当日に靴が壊れて、新しい靴で滑った選手がいますが、それほど大きな問題は起こりませんでした。

M:慣れない靴でより緊張する、といった心理的要因によって上手くいかないことはあるけれど。いずれにしてもテクノロジーの進化によってこれも可能になった。それにトップ選手達は自分達の足の形に合わせて造形されたスケート靴を使っているから。

P:今や靴メーカーはあらゆるニーズに応えることが出来ます。

M:つまりこのような前提条件により、今では4回転ジャンプを習得するのがより簡単になった。
もはや4回転ジャンプを入れるのは当然のことで、この傾向は女子にも及んでいくだろう。今はロシアの選手達だけだが、日本のノービスで4回転ジャンプを跳ぶ選手がいる。来年、ジュニアの試合で見られるだろう。
アメリカの女子も何人か試みているけれど(ロシアと日本に比べると)遠いように見える。
そしてルッツとフリップの議論の余地のある技術。
今では皆がこの方法で跳ぶ傾向にある。
テクニカルパネルから減点されず、より簡単に跳べるなら、この跳び方を指導するようになる。
もはや後戻りは出来ないと思う。
しかし、このことはフィギュアスケート教本通りのルッツとフリップを跳ぶ選手を何らかの形で不利にしている。これは疑う余地はない。

P:少なくとも正しい方法で跳んでいる選手達とGOEで差を付けるべきだと思うわ。
テクニカルパネルが介入しないのなら、少なくとも別の方法(GOE)で正しいジャンプを跳ぶ選手にアドバンテージを与えるべきです。

(シリアスエラーとテクニカルパネルについて)
P:ミスが続くと、スケーティングスキル等と言ったことを評価するジャッジにとっても高得点は出しにくくなります。
そして重大なミスがあると、演技構成点の幾つかの項目では上限を下げることが義務付けられています。

M:そうだけれど、いつもそうとは限らない。何故ならジャッジがこのルールを忘れるからだ。頭に浮かぶのはスケートアメリカだけれど、この大会の主要選手の一人にルールの上限を守らない高い演技構成点が与えられた。
しかし、ジャッジのせいではない。勿論、ルールを忘れたジャッジのミスではあるけれど、システムが特定の得点より高い値のボタンを押せないように設定されるべきなのだ。
簡単なことだ。こうすればジャッジを助けることが出来る。

P:そうね。ジャッジは人間です。テクニカルはもっとこのようなサポートを必要としています。何故なら微妙な角度の違いを見分けなければならないから。
ずる賢いコーチはエッジが不明確なジャンプをカメラの死角で跳ばせることがよくあります。ですから、その選手は特定のジャンプをいつもリンクの同じ場所で跳ぶのです。

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先シーズンからマッシミリアーノさんの長年の相棒、アンジェロさんがシャンペリーのランビスクールに行ってしまって解説出来なくなりました。昨シーズンは元スケーターのヴァレンティーナ・マルケイさんや振付師のラファエラ・カッツァニーガなど、色々な人が相方を務めていましたが、今シーズンは元スケーターでコーチ、更に衣装デザイナーでもありマリカ・ポーリさんがレギュラーで解説に入っているようです。
ここまでのグランプリ、忙しかったこともあり今まで興味のある選手の演技だけオンデマンドで見ていたのですが、この週末、時間があったのでイタリア大会を6分間練習から視聴してみたら実に面白い!
マリカさんの解説いいですね。

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち