ニースのロミジュリ

「ニースの奇跡」と呼ばれる2012年ニース世界選手権における羽生君のフリー「ロミオとジュリエット」の演技。

当時、私はRaiチャンネルでリアルタイムで見ていました。
そして、文字通り開いた口が塞がらなくなりました。
羽生君のことはその前のシーズンの四大陸選手権で知り、その時から注目し、応援していましたが、このロミジュリの演技で完全に沼の底に引きずり込まれました。

このシーズンの彼は震災でホームリンクを失い、練習場所を求めてアイスショーで日本国内を転々と移動し、更にこの大会では右足首の剥離骨折という怪我を抱えながらの渾身の演技でした。でも、私はそのようなバックグラウンドを詳しく知らずに彼の演技を見ていました。そしてその圧倒的なパワーと輝きに有無を言わさず心を鷲掴みにされたのです。

まさに見る者の魂を揺すぶる圧巻の演技でした。
私は純粋に演技そのものに心を持っていかれたのです。

そして嵐のような感情、魂、エネルギーがテレビの画面を通り超えて私の心に飛び込んできたのは、おそらくこのシーズン、過酷な試練を乗り越えなければならなかった彼の葛藤、苦悩、思いがこのプログラムの中で爆発していたからでしょう。しかし、何の予備知識が無くてもただただ圧倒され、鳥肌を立たせる演技だったのです。
この大会ではカロリーナ・コストナーやテッサ/スコット組を見るために、イタリアからも多くのフィギュアスケートファンが現地観戦に行っていました。そしてことごとく急性ユヅリーテを発症して(羽生沼に堕ちて)イタリアに戻ってきました。

本物の芸術に説明はいりません。何がどう優れているのか、制作過程や背景を説明する必要などないのです(そういったことは、その作品に感動した観者が後から勉強するのです)。
ただそこにあるだけで見る者の心を捉え、目を釘付けにし、涙さえ流させるのです。

驚異的な才能の覚醒に立ち会ったマンマ達の感動と驚愕
この時のカメラアングル、リプレイのスロー映像も素晴らしく、まるで映画のワンシーンを見ているようでした。

オトン達も

アンジェロさんは今でも時々ニースのロミジュリの動画を見に行くそうで、あの時のシーンの一つ一つが脳裏に焼き付いていて、思い出すだけで鳥肌が立つそうです。

エッセイストのアリアンナ・フランザンさんは当時の衝撃をエッセイに書き綴っています。

財務コンサルタントという畑違いのイタリアのオジサンが熱に浮かされたように3本もエッセイを書いてしまうほどなのです。

マッシミリアーノさんに至ってはロミオ+ジュリエットのこのバージョンの編曲は使用禁止にすべきとまで言っています。

そのマッシミリアーノさんは毎年ニース記念日になるとFBページに熱い投稿をしています

ポッドキャストでも何度も熱く語っています

ちなみに私はマッシさんは解説中によくニースのロミジュリの話をするので、てっきりニース落ちだとおもっていたら、まさかの2008年メラーノ落ちでした!😂

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu