ポッドキャスト「Kiss&Cry」第1回(おまけ)JGPとロシア女子の話題

ジュニアGPの展望とエテリ・トゥトベリーゼ門下の強さの秘密
前半は訳すつもりはなかったのですが、改めて聞き直してみたら面白かったのでちょっと訳します。
興味深い部分だけをかなりザックリ抜粋・要約しています。

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出演
司会:アレッサンドロ・ジュヌッツィオ
解説:マッシミリアーノ・アンベージ(M)(イタリア・ユロスポ実況/コラムニスト)

 

M:今シーズン、ジュニア・グランプリ大会では歴史が塗り替えられている。

その歴史を作っているのはロシア、いやもっと正確に言うと一人の女性、エテリ・トゥトベリーゼだ。

エテリ・トゥトベリーゼは、グルジア出身のアイスダンスの選手で、その後、アメリカで仕事をしていた。おそらく感傷的な動機もあったのだろう。彼女の娘の名はダイアナ・デーヴィス、苗字が示しているようにアメリカ人の男性との間にロマンスがあった。

その後、モスクワに戻り、モスクワのスケートクラブでコーチを始めた。

ここで有望な少女達、ただし才能という点においてはソトニコワとトゥクタミシェワに劣る選手達を指導し、次第に頭角を現していった。ソトニコワとトゥクタミシェワは、前者はスケーティング、後者はジャンプに傑出した近年のロシアが生んだ輝かしい才能で、おそらくロシアではこの2人に匹敵する才能はその後、まだ現れていない。現在無敵のメドヴェデワはソトニコワのスケーティングスキルもトゥクタミシェワのジャンプのクオリティも持っていない。唯一、彼女達に匹敵する才能がポリーナ・ツルスカヤで、平昌の大本命になるポテンシャルがあったが、残念ながら怪我に苦しんでいる。

エテリが育てた選手達は今シーズン、既にジュニア・グランプリ大会で4連勝している。
昨シーズンのジュニアGPFを含めると5連勝だ。

ロシアの勢いは驚異的だが、グランプリファイナルでは女子シングルで彼女達が優勝出来ない可能性がある。

何故ならロシアの最大のライバルである選手、名を梨花、姓を紀平という日本の少女の方がエテリ門下の選手達より勝ちカードを多く持っているからだ。

梨花は勢力図の均衡を崩すことの出来るエレメンツ、3アクセルと跳ぶことが出来る上、演技構成点の幾つかの項目についても、おそらくロシアの上位のジュニア選手より高得点を持ち帰ることが出来る。

ただし紀平はまだファイナル進出を決めていない。10月にエーナで開催される最終戦、イタリア大会に出場するからこの大会は必見だ。この大会では前大会で2位だった選手達がファイナル出場を賭けて戦う。

ロシアはアサインの戦略ミスによって当初の野望であった5人ではなく、3人、多くても4人の選手しかファイナルに送り込めない可能性がある。

しかしながら、ロシアの本当の豊作世代は2003/2004年の選手達だ。アンナ・シェルバコワ
彼女はジュニア・グランプリには参戦していないけれど、メドヴェデワと同様、100%エテリ門下、つまりスケート靴を履いた時からエテリの指導を受けている選手だ。

エテリ門下で滑り始めた少女達は他の門下の選手とは比較にならないほどの練習量に慣れていて、他のどこでも見られないほどスタミナが鍛えられている。

だから彼女達は歌いながら(簡単に)プログラム後半に7トリプル+2ダブルアクセルを決めることが出来るのだ。しかも質のいいジャンプを

彼女達がそれぞれ異なる技術でジャンプを跳んでいるにも関わらず、難しいジャンプ要素を簡単に実施することが出来る。

何故なら100%エテリ門下の選手達は練習では既定の2ダブルアクセル+7トリプルに更に9本のトリプルジャンプを加えたランスルーを行っているからだ。

つまり2ダブルアクセル+16トリプル!

2ダブルアクセル+4トリプルを跳ぶ選手しかいない国がある中で、この門下の選手達は後半に16本のトリプルジャンプ、つまり7つのジャンプ要素全てに3Tをもう1つ付けて跳ぶことが出来るのだ。

例えば後半に3Lz-3Loを跳ぶザギトワはモスクワで練習する時はこの後に更に3Tを付けて練習している。
だから練習で非常に難しいプログラムを滑り慣れている彼女達にとって、試合のプログラムは簡単なのだ。

これはまさにエテリ・トゥトベリーゼが生み出した品種改革だ。
しかもエテリ・トゥトベリーゼは選手達にジャンプの能力だけでなく、いわゆる「フィギュア」の部分でも驚異的なクオリティを仕込んでいる。

エテリ門下の13~15歳の少女達はミーシン門下のどの選手と比べても(もっと年上の選手でも)、トランジションの質と量においてまったく比較にならないほど豊かなプログラムを滑る。

ミーシン門下の選手の中にも、たまに(ショートで)PCS36点を獲得する選手がいるかもしれないけれど、スケーティングの質、トランジションの量、エッジワークにおいてエテリ門下の少女達とは全く勝負にならない。

 

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前回、エテリ門下の選手は練習で2ダブルアクセル+9トリプルのプログラムを練習していると書きましたが、私の聞き間違いでした

なんと2ダブルアクセル+7トリプル+9トリプルだった・・・😱
10代からどうしてこんなにメンタルが強いんだろう~と不思議に思っていたんですけれど、そういうことだったんですね・・・・
でも紀平梨花ちゃん、質の高い3アクセルを跳ぶし、ちょっとサイボーグチックなエテリ軍団と違って、華やかで人間味のある演技が魅力的な選手なので、ファイナルに進出してロシアの牙城を崩して欲しいです!

 前回の採点システムの話題について、賛否両論に分かれるでしょうし、当然批判もあると思います。
ただ一つ、補足しておくと、マッシミリアーノさんは羽生君の大ファンでかなりエキセントリックですが、決して盲目ではありません。

最近こそ、羽生ほどトランジションの多いプログラムを滑る選手は男子では誰もいない。唯一、対抗できるのがジェーソン・ブラウン選手(ただし、3アクセルの前以外)と言っていますが、2013/2014年のソチ五輪シーズンの初戦、フィンランディア杯の羽生君のフリーについて、2種類の4回転ジャンプは成功したし、野心的で恐るべきポテンシャルを秘めてはいるけれど、後半はジャンプだけでトランジションに関しては空っぽなプログラムだったと指摘し、その後のエリック・ボンパール杯のフリーは、クワドは2本共失敗したけれど、トランジションのパッセージが随所に散りばめられ、表現や振付面においてフィンランディア杯とは全く別のプログラムになっていたと評価しています(ちなみにこの時の羽生君のPCSは81.94。アンジェロさんはもう少し高い点が出ると思ったと言っていました)

同じように、(おそらく男子では羽生君の次にお気に入りらしい)ボーヤン選手の先シーズンのショートプログラムについても、スケートアメリカの演技はジャンプ要素が3つ共決まらなかったけれど、ジャンプの前にステップが挿入され、トランジションも前より多くなって、芸術面でも向上しようという努力が見えると評価し、ジャンプが全て決まった中国杯での演技は、でもジャンプ前のステップがほとんど削除または簡略化されたと指摘しています。

樋口新葉ちゃんも「ダイヤモンドの原石」「五輪金メダルが獲れる逸材」と評し、将来を本気で心配するほどその才能に惚れ込んでいますが、今回のロンバルディア杯では幾つかのセカンドジャンプの回転が怪しかったと指摘しています(新葉ちゃんに限らず、ロンバルディア杯は全体的にエッジ/回転の判定がかなり寛大だったと)。

宇野昌磨君についてはノービス時代から表現力を高く評価していますし、特に上半身の使い方はおそらく世界最高だろうと称賛していますが、足元を見るとトップ選手の中ではクロスオーバーと両足滑走が一番多いと指摘しています。

つまりどんなにお気に入りの選手であっても、冷静に見るべきところをちゃんと見て、客観的に評価しているということです(まあ、溺愛する羽生君については最近、期待値が高過ぎて、4アクセルとか予想がどんどん暴走していて怖いですが・・・)

演技構成点の評価については、まずジャンプを全部入れることを優先し、ジャンプが安定してから振付やトランジションを磨いていくタイプの選手と、羽生君のように最初からトランジションをテンコ盛りにして、滑り込んでいくにつれてジャンプも安定していくタイプと、選手によってアプローチの仕方は違いますし、どの選手も最終的にオリンピックに完成形を持ってこれるよう調整していると思うので、今の段階でプログラムに優劣をつけるのはナンセンスだと思いますが、少なくともジャッジはその日その時の内容を前シーズンの得点や選手のネームバリューによる先入観や、ましてやクワドの数に左右されずに各項目について個別に正しく評価して欲しい(あくまでも私の個人的な意見ですが)

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