ポッドキャスト「Kiss&Cry」第1回(その4/最終回)

マッシミリアーノさん、暴走止まらず
もう言いたい放題・・・

いよいよISU採点システムの修正案と現行ルールの問題点の話題に進んでいきます。長いので一部省略・要約しています(でも長いです)。

さすがに1時間44分ものポッドキャストを2度視聴する時間はなかったので、事前に内容を確認せずに直接ヒアリング翻訳していったので、想像以上に過激な内容に途中から😱😱😱 ・・・翻訳するのをやめようかどうしようかかなり迷ったのですが、前回 ”To be continue…”って書いちゃったし、始めてしまった以上、途中で止めたら中途半端だし・・・賛否両論があると思いますが全部訳すことにしました。

 

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出演
司会:アレッサンドロ・ジュヌッツィオ
解説:マッシミリアーノ・アンベージ(M)(イタリア・ユロスポ実況/コラムニスト)

 

司会:ここ数年、何度も世界最高得点が塗り替えられたけれど、2002年に発覚したジャッジの裏取引スキャンダルに起因する採点システムの改正のおかげでこうした記録が可能になった。
現在の採点システムではジャッジは得点を左右するけれど、より数学的になり、得点がいわばクロノメーター式に加算されるスポーツになった。
つまりジャッジが勝たせるのではなく、選手が勝ちに行く
陰謀論者に釘を刺すためにもこれは言っておかなくちゃならない。

現在の4回転時代、宇宙レベルの男子シングルでかつての6.0方式の採点システムなら、例えばトーヴィル/ディーン組のプログラムのような6.0満点は幾つ出ると思う?

M:あくまでも仮説だけれど、例えば木曜日の深夜に見た羽生のプログラムは6点満点の演技だ。技術点、芸術点の両方で満場一致の6点満点
つまり、トーヴィル/ディーン組のボレロに匹敵する。
アイスダンスだからカテゴリーは違うけれど、比較出来るとしたらあのプログラムだ。
しかし、4回転ジャンプのあるプログラムはミスのリスクが高くなる。

3~4本の4回転ジャンプが入った完全にクリーンなプログラムはそう何度も見られるものではない。例えば羽生は昨シーズンの世界選手権でもそんな演技を披露した。ヘルシンキのフリープログラムは完璧だった。

オリンピックで彼が跳びたい4回転の数より1本少なかったけれど、それでも4回転ジャンプ4本、3アクセル2本の盛り沢山のプログラムだった(笑)

Pattinaggio-Yuzuru-Hanyu-ISU2

さて、現行の採点システムについて話そう

ここ数週間、色々な記事を読んだ。ISUは様々な改正案を模索しているようだが、僕には彼らが方向性を誤っているように思われる。

ISUは技術点と芸術点、つまり演技構成点の均衡を正すための措置として、どうやらジャンプの基礎点を下げるつもりらしい。
4回転ジャンプの得点は下がるけれど、3回転、2回転の得点も下がる。
つまり要約すると全てのジャンプの得点が下がることになる。

ISUの関係者の意見では、こうすることで技術点と演技構成点の比率がより均等になるそうだが、実際はそうではない。
僕達のフィギュアスケートコミュニティのファン達がISUの改正案の基準で前回の世界選手権の得点をシミュレーションしてみたところ、順位は全く変わらなかった。
翻訳すると、この措置は間違っているということだ。

現在直面している本当の問題は何か?

フリープログラムで5本のクワドを着氷すれば、自動的に90~92点の演技構成点がもらえるということだ。
これはあり得ない。
何故なら演技構成点はクワドの数に比例すべきではないからだ。
ルールのどこにもそんなことは書いてない。
何時からそんな法則が適用されることになったのか?

宇野昌磨はロンバルディア杯で演技構成点92点を獲得した。
さっきも言ったけれど、宇野昌磨が4回転ジャンプの前に何をしているか見直して欲しい。
何度クロスオーバーを入れているか、助走がどれほど長いか
振付の空白部分が何か所あったか
確かに5本の4回転ジャンプを着氷した。でもそれは4回転ジャンプの得点で褒賞されている。もしこれらの4回転ジャンプの出来が技術的に良ければGOEが与えられる。
でも演技を終えてガッツポーズをしたからと言って演技構成点92点を与えるのは間違っている。
宇野昌磨が足で何をやっているか、他の選手と見比べて欲しい。
宇野昌磨に92点を与えるなら、パトリック・チャンには120点からスタートしなければならない。

つまり本当に問題なのはジャッジの判定なんだ。
技術的に強い選手に高い技術点を与えるのは当然だ。でもどうして演技構成点までプレゼントしなければならない?
これこそが現行の採点システムの綻びなのだ。

勿論、羽生、ネイサン・チェン、宇野昌磨のように基礎点110点、GOE満点で技術点140点のプログラムを滑る選手が現れたら、採点システムに何らかの修正を加えなければならないのは事実だ。

では、誰もが考える最も平凡な解決策は何か?

演技構成点の係数を変更することだ。
男子フリーの演技構成点の係数を現在の×2から×2.2、または×2.4にするという方法だ。
こうすれば芸術点(実際には演技構成点の方が広義だから芸術点というのは語弊があるけれど)と技術点はほぼ均等になる。

ジャンプの基礎点を下げても何の解決にもならない。
選手達は皆、いずれにしてもより多くの4回転ジャンプを跳ぼうとするだろう。
何故ならいずれにしても4回転ジャンプの方が3回転ジャンプより得点が高いからだ。
4ルッツで3ルッツの2倍近くの得点を稼げるのに、誰が4ルッツをやめて3ルッツで甘んじる?
だってどの選手も目標は勝つことなのだから、演技構成点に高得点を期待して3回転ジャンプだけのプログラムにする選手なんていないだろう?

それに得点のバランスに関する問題は男子、女子、ペアでそれぞれ違う。
だから3つのカテゴリーで同じようにジャンプの基礎点を下げるのはナンセンスだし、間違っている。

勿論、僕は部外者だし、決定するのはISUの専門家達だけれど、僕には彼らが迷走しているように思える。
僕は外部の専門家にコンサルティングを依頼すべきだと思う。
例えば数学的システムで最善策を算出するとか
きっと皆、演技構成点を引き上げるべきだと言うだろう。

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女子シングルではどのような措置を取りべきか?

実に簡単なことだ。
現在、多くの選手がショートプログラムで技術点40点を超えるようになった。40点というのは女子シングルとペアのショートプログラムの演技構成点の満点だ。男子は50点。
これを男子は60点、女子は50点に引き上げればいい。
何故なら今後、3アクセルを跳ぶ女子選手が出てくる可能性があるからだ。

ただし、女子シングルの圧倒的リーダー、メドヴェデワでさえ技術点50点には近づいたこともない。でもルール改正の目的が演技構成点のウエートを大きくすることなら、満点を50点に引き上げるのは正しい措置と言えるだろう。

でも重要なことを言っておきたい。

ここ数年間、演技構成点では間違いなく女子のリーダーだったカロリーナ・コストナーのバンクーバー五輪のあった2010年シーズンから今日までのフリーの平均TESは55点だ。でも他の上位選手達が70点を超える中で、コストナーはこの技術点で、現在の採点システムで2010年11月から現在まで何度かの例外を除いて常に表彰台に上がってきた。

このことは何を意味しているのか?

女子のフリープログラムでは演技構成点と技術点のバランスがそれほど悪くないということだ。
勿論、女子のショートとフリーの両方で演技構成点を引き上げるというのも僕は有りだと思う。
ただし、演技構成点を然るべく評価すべきだ。
だって9点や8.5点をこの得点に値しない選手に贈り続けたら、採点システムを改正したところで、また同じことになる。

僕は採点システムに問題があるとは思えない。採点システムの適用のされ方に問題があるのだ。
同じことがGOEにも言える。現在はゼロを挟んで-3から+3までの7段階だ。
僕はこれを-5から+5の11段階にするという案はいいと思う。
ただし正しく適用されなければならない。
どの要素にも+5なんてあり得ない。
だからGOEについても正しい判定が行われなければならない。

採点システムの再生と是正が余儀なくされた原因は、おそらく幾度かのケースでコンパスが狂ってしまったからだと思う。何人かの選手に不相応な高得点が贈られ、今さら引き下げるのは困難になってしまった。

そして僕が我慢出来ないのは、例えばスケーティングスキルで9.25を得る選手は、トランジションでも9、パフォーマンスで9.25、コンポジションで9.30、インタープリテーションで9.30を得るという傾向だ。
これはおかしい。

メドヴェデワがスケーティングスキルでカロリーナ・コストナーより点が高いというのはあり得ない。スピードやスケーティングの滑らかさの差は歴然としている。でもトランジションを見ればコストナーはメドヴェデワに4点近く及ばない。

つまり項目によって10点、6点、7点と、ばらつきがあるのが普通で、5項目全ての点がほぼ同じというのはあり得ない。

つまり問題はここなんだ。
ルールの改革を考える前に、まず選手達を適切に正しく評価するよう努めるべきだと思う。
ジャッジの集団意識をテストしたら一体何が出てくるか

言っておくけれど僕はPCSの係数引き上げを提唱する人間の筆頭だ。
男子のショートのPCS60点、フリー120点は大歓迎だ。でも技術点で130点を超える選手が出てきたら、きっとすぐに演技構成点でも高い点を与えるだろう。

そして芸術面で本当に優れた選手を演技構成点で報いず、クワドを5本跳ぶ選手に高得点を与えていたら同じことだ。演技構成点を120点満点にしたところで100点の時と何も変わらない。

ジャンプの基礎点を下げて他を変えないというソリューションでも同じことだ。
状況は何も変わらない。

ジャッジングを改善しなければ、『カエサルのものはカエサルに*』しなければ何も結局何も変わらない(*物事は本来あるべきところに戻すべきという意味の聖書の『マタイ福音書』の中にあるイエス・キリストの名言)

結論をいうと、彼らの議論は空論だ。

まず演技構成点の各項目の適用と判定について良心に照らしてみるべきだ。
そうして初めて何をすべきかが見えてくる。
そうすれば、おそらく演技構成点を引き上げるべきだという結論に達するだろう。

(ペアの各要素の基礎点、各技のランク、獲得可能な満点の話は省略)

つまり、ペアでも女子と同じように演技構成点を40点から50点にするという改正は有りだと思う。
何故なら多くのペアが技術点で40点を超えているから現在の採点システムでは均衡が保てなくなっている。
だからペアでも演技構成点を50点満点にすればいい。

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ただし、何度も言うようだけれど、採点システムが正しく適用され、適切な判定が行われない限り、順位は今と変わらないだろう。

勿論、5本クワドを跳ぶ選手が芸術面においてもどの選手より優れていたら、敬意を表すべきだし、その選手が圧勝するのは当然だ。

でも、ネイサン・チェンは多くの観点から見て途方もない選手だけれど、現時点で演技構成点90点に値するなんて言わないで欲しい。つまり各項目で9点。
客観的に見て彼はそんな高得点には値しない。

宇野昌磨がパトリック・チャンより高い演技構成点を獲得することはあり得ない。
何故ならこの二人の滑りを生で見れば、誰が見てもその差は歴然としている。その全てにおいて
勿論、宇野昌磨はより多く跳ぶ、より綺麗にではなく、より多く
だからより高い技術点を獲得するのは当然だ

でも宇野昌磨に演技構成点92点を与えるなら、パトリック・チャンには120点は大袈裟かもしれないけれど、110点は与えなければならない。

魔法の杖は、判定を下す者、そしてその判定を管理する者の手にある。

もし皆が現在の状況のままでいいと思うなら、ISUが特定の選手にPCS9点を自動的に与えることを良しとするならば、改善策はない。
5クワドを跳ぶ選手が永久に勝ち続けるだろう。あるいは4回転ジャンプ3~5本+3アクセル2本の選手が。
他の選手は勝てない。

ジェーソン・ブラウンは様々な観点から見て傑出した選手だけれど、決して試合で勝つことは出来ない。
でも演技構成点が適切に適用されれば、つまりジェーソン・ブラウンがやっていることが相応に評価されれば、ジェーソン・ブラウンはクワド2~3本の選手には勝てるかもしれない。
勿論、クワド5本の選手に勝つのは困難だろうけど

最近の試合でそれが証明された。

ジェーソン・ブラウンはロンバルディア杯でそれなりにいい演技をした。しかし、USインターナショナルクラシックのマックス・アーロンの方が高い得点を持ち帰った。何度も繰り返すけれどロンバルディア杯は得点が過剰に膨張された大会で、USクラシックインターナショナルはそうではなかったにも関わらず。

でも、もし二人の演技構成点が然るべく評価されていたら ― 例えばジェーソン・ブラウンの演技構成点95点、マックス・アーロン60点とか、僕は両選手共リスペクトしているけれど、正直二人の間にはこのぐらいの差があると思う ― ジェーソン・ブラウンはショートとフリーで合わせて5本の四回転ジャンプを跳ぶマックス・アーロンより高い得点を獲得することが出来た。つまり演技構成点が正しく評価されていたら。

このような議論は一流、二流、三流のどのランクの選手にも当てはまる。
勿論、ジュニアの選手にも

これが全てだ

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ISUが採点システムの問題の解決策を模索していることは喜ばしいことだと思う。
でもISUは「他者を助け、同時に自らも助ける」べきだと僕は思う。
これはスポーツ界を描いた有名な映画の中のトム・クルーズが演じた主人公、ジェリー・マグワイアのセリフだ。

つまりISUは外部の助けを借りるべきだと思う。例えばこれまでの得点を統計・分析するソフトを開発するとか。
何人の選手がどの得点ラインを超えたかを理解し、今後の得点の傾向や変遷を予想し易くするために。

例えば、バンクーバー五輪後から今日までのこの時代に男子フリーでTES100点を超えた選手は7人だ。誰かはすぐに分かるだろう。いずれも規格外の一流選手達だ。
彼らが採点システムを崩壊させる可能性があるかどうか予想するために分析を行う。

女子ではフリープログラムの演技構成点の満点は80点だ。
女子フリーでTES80点を超えたことがあるのはただ一人、エフゲニア・メドヴェデワだけだ。
ただし半分エキシビションのような大会、国別対抗戦での得点だから、今後の試合でまた80点が出るかどうかは大いに疑問だ。
でも今のところ彼女だけだ。もしかしたらその内、ザギトワも80点越えを果たすかもしれない。

ぺアのフリーでTES75点を超えたのは合計8回、80点を超えたことは一度もない
ペアの演技構成点満点も80点だ。

つまり何だかんだ言って採点システムは機能しているのだ。

なのに何故変えようとするのか?

この競技はPattinaggio Artisticoと呼ばれているのに、ISU幹部の見解では芸術的じゃなくなってきているから?(フィギュアスケートのイタリア語直訳はPattinaggio di Figuraですが、通常『Pattinaggio Artistico 』(artistic skating)と呼ばれている)

だったらジャンプの基礎点は変えずに演技構成点の係数を変更すればいい。
技術的進化を牽制すべきではない。
この競技を退化させることになる。

思い出して欲しいけれど、2010バンクーバー五輪後に起きたプルシェンコ論争の後で、ISUは4回転ジャンプへの挑戦を奨励するために、4回転ジャンプの基礎点を引き上げた。

これは正しい措置だったと思うし、そのおかげで技術は進化した。
そして今、2018年に技術的進化が芸術性を損なわせているという理由で再び基礎点を引き下げようというのか?

僕には正気の沙汰とは思えない。

演技構成点が正しく、適切に評価されるように計らい、必要なら演技構成点のウエートを大きくして、残りは今のままでいいと思う。
それが一番簡単な解決策だと思う。

もしかしたらこのポッドキャストを聴いた誰かが「アンベージは何様だ」と激怒するかもしれない。
望むところだ。
僕は彼らをイタリア・スケート連盟の事務所に招待し、僕一人で彼ら10人を相手にここ10年間のデータを数字で示してみせる。

~ fine ~

このポッドキャストのノーカット英訳版も公開されました。
(3人がかりで翻訳して下さったそうです)
104分の内容全文を読みたい方はこちらのサイトからどうぞ!

 

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☆ 色んなところから苦情が殺到しそうな内容ですが、マッシミリアーノさんは受けて立つ気満々みたいだし・・・ミラノワールドまでこのポッドキャストが閉鎖されないことを願うばかりです。

でも次回からイタリア・スケート界の専門家や著名人をゲストに迎えていく予定だそうなので、もう少し穏やかな内容になるかもしれません。

ジュニア・グランプリの話題から印象的だった部分をまた少し

イタリアのスケートファンや関係者の中は最近の女子シングルにおけるロシアのティーンズの台頭が面白くない人が結構いるようで、「ロシアの小娘達がロボットのような演技でこの競技を台無しにしている」という批判があるようなのですが、マッシミリアーノさんは「そんな批判をする連中はフィギュアスケートへの知識が何もない無知な連中だ」とバッサリ切り捨ててから、エテリ・トゥトベリーゼ門下の選手が最強なのはスケーティングとトランジションの強化を徹底しているため、他のスケートクラブ(ミーシン門下等)に比べて演技構成点において圧倒的なんだと説明した上で、でも今シーズンの女子ジュニアの一番の注目は日本の紀平梨花ちゃんで、3アクセルが跳べるだけでなく、演技構成点の各項目においてもエテリ門下の選手より優れていると言っていました!

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