ポッドキャストKiss&Cry第7回「羽生結弦NHK杯欠場」

先日放送されたポッドキャストから

今回のテーマは以下の通り:

  1. 羽生結弦―NHK杯前日から大会中における彼のドラマ。今後の展望と戦略は?
  2. 女子シングル―ポリーナ・ツルスカヤの鮮烈シニアデビュー。1位は物憂げなエフゲニア・メドヴェデワ、2位は輝かしいカロリーナ・コストナー
  3. ペア―スイ/ハン組を止められるペアは存在するのか?ストルボワ/クリモフ組に復活の兆し
  4. 男子シングル―セルゲイ・ヴォロノフがベテラン軍団を牽引
    偶然か?それとも新しいトレンドか?
  5. アイスダンス―カペッリーニ/ラノッテ組は初戦好発進。ただしファイナル進出には様々な障害

 

この中から1)を抜粋/要約します。

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出演
マッシミリアーノ・アンベージ(M)(伊ユロスポ実況/ウィンタースポーツ・ジャーナリスト)
アンジェロ・ドルフィーニ(A)(国際テクニカルスペシャリスト/元イタリア男子シングル・ナショナルチャンピオン/伊ユロスポ解説/コーチ)

 

M:羽生結弦に何が起こったのか?
大陸間を移動する旅の後には色々問題が起こることがある。
最も一般的なのは時差ボケに起因する問題だけれど、よりやっかいな問題として熱やウィルスに襲われることがある。

羽生結弦は帰国後、39度近い高熱に襲われ、水曜日の練習には参加しなかった。
木曜日も午前中の練習はパスし、午後の練習に現れた
ここで何が起こったのか?
彼はすぐに何かがおかしいことに気が付いた

通常のウォームアップの後、4T/3Tのコンビネーションを決め、頭がクラクラしたのかもしれない。彼を襲った高熱または風邪はまだ治っていなかったに違いない。そんな高熱が数時間で下がるとは思えないからね。

サルコウをパンクした後、4ルッツを跳びにいった。

彼がショートプログラムの冒頭に予定しているジャンプだ。
彼は最初のジャンプが4ルッツの構成でショートプログラムの練習していたからね。

でもモスクワで跳んだジャンプ比べると放物線が足りなかった。
通常こんな時、彼は空中で回転を開くんだけれど、今回は回り切ろうとした。当然、着氷に必要な幅と高さが足りなかったら足首を捻りながら転倒してしまった。

それで右足首を負傷してしまった。右足首外側靱帯損傷と診断され、大会に出場することが出来なくなった。
アンジェロ、高熱やインフルエンザが選手のジャンプに与える影響を説明してよ

A:どのジャンプかにもよるけれど

まず言えることは、体力が低下する。
特にこのような高熱の場合には爆発力とエネルギーが著しく低下する。
これは選手なら誰でも経験して知っていることだ。

でもこのような体調でも試合に出なければ場合には、滋養強壮剤などを摂取してエネルギーを補給したりするけれど、いずれにしても身体は衰弱している
それだけじゃない。これも誰もが体験していることだけれど、熱があると健康な時に比べてバランス感覚も通常より不安定になる。

この2つを考慮すると、このような状態で高難度ジャンプに挑むと、どういうことが起こり得るか簡単に予想することが出来る。

体力の蓄えにも限りがあるし、限られたエネルギーを活用して練習を続けると、あっというまに体力を消耗してしまう。

そして何よりも爆発力とスピードがなくなるだけでなく、羽生のようなトップクラスの選手が通常持ち合わせている筋肉の協調が著しく低下する。

しかも1秒以下の僅か一瞬でパワー、スピード、筋肉の協調を生かし、エネルギーを使うことの出来る非常に精密な協調だ

だから熱などで体調が悪いと全ての動きが鈍くなる。
羽生のような選手なら3回転ジャンプではそれほど大きな問題は出ないけれど、選手達にとってたださえ極限のジャンプである4回転になると、実施に要するスピード、体力、能力が100%必要になるし、100%の高さも必須になる。
だからパワー不足で高さや幅が足りないと0.10秒、0.05-0.06秒の差で着氷が出来なくなる。

彼は回転し切ったけれど、いつもに比べると着氷が早すぎて、フリーレッグをほどくことが出来なかった。

M:これによる羽生結弦のNHK杯出場の可否は不明になった。
翌日、日本スケート連盟主催の記者会見では羽生の出場の可能性に言及していた。
でもその数時間後、羽生はどんなことをしても出場したがっていたが、医師の助言でリスクを避けるために出場を断念したと発表された。

当然のことながら、彼はこの決断を泣きながら受け入れた
何故ならファイナル5連覇は今シーズンにおける彼の目標の一つだったからだ。

このようなことが起こると、いい加減な噂が飛び交う。ショートプログラム当日、結弦は走ることも跳ぶことも出来ているという噂が流れたが、実際にはそれは前日の話で、怪我から一晩が経つと、状態は悪化していた。
いずれにしても診断によれば右足首の捻挫で、エンジン全開で練習を再開出来るようになるまでに3~4週間が必要ということだ。

怪我はそれほど深刻ではなく、もっと早く練習を再開出来るから近いうちにトロントに戻るという噂もあるけれど、信憑性のほどは分からない。どうなるか見守ろう。

いずれにしても羽生結弦はオリンピック代表選考会も兼ねている全日本には出場する意向だ。

でも僕の意見では、仮に結弦が全日本に間に合わなかったとしても、間違いなくオリンピック代表に選ばれるだろう。だって金メダルを獲れる選手がいるのに、怪我や体調不良を理由に他の選手を派遣したら狂気の沙汰だろう。

A:勿論だ。
羽生を代表に選ばなかったらそれこそ狂気の沙汰だ。
僕達は皆、彼が一刻も早く回復して練習を再開出来ることを祈っているけれど
重要なのはオリンピックに万全な状態で臨めることだ
日本の男子シングルは後進が伸び悩んでいて、トップの2人は傑出しているけれど、三番手ではこれといった選手がいない。四番手、五番手となると更に難しくなる。

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M:今この瞬間の疑問点は以下の通りだ
羽生結弦のオリンピックを見据えた戦略はどれか?

4ルッツや4ループ、あるいはその両方を抜いてもおそらくオリンピックで金メダルを獲得出来るのに、敢えてリスクを冒してこの高難度ジャンプを跳ぶ価値があるのか?

A:(笑)僕の答えはもう知っているよね

M:エフゲニー・プルシェンコが君の援軍として駆け付けた。

A:(爆笑)見たよ、ハハハ

M:彼はこう発言した
もしノーミスの演技をすれば4ルッツが無くても羽生結弦は勝てる。なぜなら彼は他の選手達を上回るホールパッケージを持つ選手だからだ。
だから他の選手達は彼に勝つためにリスクを冒さなければならない
でも羽生結弦の気性を考えると、4ルッツ無しのプログラムでオリンピックに臨むとは考えにくい

A:それが一番の問題なんだ・・・

M:非常に複雑な議論が湧いてくる

どういう意味かというと、結弦は今シーズン、先シーズンの幾つかの試合で自尊心をくじかれたのではないだろうか?つまり、獲得した得点において、自分の演技が相応な評価を受けていないと感じているのではないだろうか?

だからジャッジングで何があるかわからないから、安心するためには4ルッツと4種類の4回転ジャンプも必要だと思った。

だから僕は後戻りするのは難しいのではないかと思う。

実際の今シーズンのグランプリ初戦でその一部が証明された。

A:う~ん・・・でも総括するとそうではないんじゃないかな
確かに君の言う通り、グランプリ初戦ではそうだったけれど、その逆のことも証明されている。

オータムクラシックで彼が4サルコウと4トゥループのショートプログラムで歴代最高得点を更新したことを思い出してもらいたい。
ショートについて僕は議論の余地はあまりないと思う。

確かにフリーでは彼は宇野と、とりわけネイサン・チェンと対決しあければならない。

僕は彼にとって危険な選手はノーミスをした場合のこの2人だけだと思う。
僕の見方ではジン・ボーヤンは例えノーミスしてもそれほど危険ではないと思うし、過去の結果がそれを証明している。

だから実際に彼が注意しなければならないのは2人、またはフェルナンデスを入れると3人だけだ。
ただしフェルナンデスは構成で後れを取っている

でもこれらの選手達でさえクリーンな演技をしても、4ルッツ無しの羽生にかなわないことがこれまでに証明されている

ショートは勿論だけれど、フリーでもノーミス演技VSノーミス演技なら羽生にかなわない。
羽生は世界選手権で4ループの入ったプログラムのノーミス演技を達成している。

でも実際には、羽生が4ループ無しのフリープログラムで獲得した得点にさえ、他の選手達は到達したことがないんだ。

だから僕の考えは前と変わらないけれど、羽生のアプローチも理解出来る。

確かに4ループ無し、4ループ有りのフリープログラムで誰も到達したことのない高得点を獲得したけれど、当時は彼より4回転ジャンプを多く跳ぶライバルはいなかった。

だから五輪では何が起きるか分からないから、特に最も危険なネイサン・チェンに対して万全の体勢で臨むために4ルッツを入れておきたいという彼の気持ちは理解できるし、彼の理論にはベースがあるのだろう。
でも彼は4ルッツ無しでも勝てる得点を握っているし、実際、今日まで他の選手が誰も到達したことのない得点を何度も叩き出してこれを証明してきた。

M:僕は演技構成点が正しく採点されるかどうかが全ての試合のネックになると思う。

最近、トップ5の選手達の演技構成点の差は縮まってきているから、リスクがあっても構成を上げる傾向に走るのだろう。

A:確かに、演技構成点の差が縮まってきているから、この得点で多少遅れを取っている選手でも技術点で大きなアドバンテージを稼ぐことが出来ることを僕達はこれまでに何度も見てきた。
演技構成点の差はせいぜい4~6点だけれど、技術点は種類の異なる4回転ジャンプを何本も跳ぶここによって、出来栄えも含めるとフリープログラムだけで15~20点も差を付けることが出来る。だから当然、どの選手も技術点で勝負をしようとする。

でも注意して欲しい。羽生はより危険なクワドジャンパー達に比べて高い演技構成点を獲得出来るだけでなく、GOEでも彼らより高い得点を稼ぐことが出来ることを忘れないでもらいたい。勿論、基礎点もあるけれど、基礎点、演技構成点、GOEの3項目の内、2つの項目で傑出していることも考慮すべきだと思う。

まだある。羽生は4回転ジャンプを1本減らせば、演技構成点でもっと高得点を稼げると思う。これも考慮すべき観点の一つだと思う。

彼が今シーズン滑ろうとしているプログラムは超絶難度の構成だから、当然のことながら、トランジションを少し減らし、シンプル化せざるを得なくなる。だからこの選択は彼の演技構成点におけるアドバンテージを少し減らしてしまうかもしれない。

M:実際にトップ選手の多くが演技構成点で90点を超えているし、ノーミスの演技をすればもっと上がるかもしれない。
これまでに羽生、パトリック・チャン、フェルナンデスが演技構成点で97点を超えているけれど、今後、他の選手達もこの得点に近付いてくるかもしれない

演技構成点のウエートがどんどん低くなっていて、だからリスクを冒してもより多くの種類の4回転ジャンプを跳ぼうとするのだろう。
でも全部のジャンプを降りれば圧勝出来るけれど、ミスの連鎖を招くリスクもあるから、このような選択肢は諸刃の剣と言える

A:その通りだ。特にオリンピックは大きなプレッシャーがかかる大会だから、どの戦略が正しいか判断するのは難しい。
確かに、結弦は4ルッツを重要な大会で初めて挑み、着氷してみせた。
でも膨大なエネルギーを消耗するから他のミスを招いた。

現時点では羽生にとってフリープログラムで4ルッツと4ループの両方を跳ぶことは相当のエネルギーを消耗するんだと思う。体力的には勿論、集中力や神経エネルギーといったメンタル面においても

以上を考慮した上で彼にとって戦略を考察することは難しいかもしれないけれど
いずれにしもそれほど深刻な怪我ではなかったにしても、彼は4ルッツが原因で怪我をした。このことは彼の脳裏に残るだろう

確かに特殊な状況で起こった怪我だ。4ルッツ自体は羽生にとってそれほど危険なジャンプではないかもしれない。

でも体調が万全じゃない状態、熱や例え熱が下がっていても病み上がりの状態でこのような高難度ジャンプに挑めば怪我を招くかもしれない

通常の練習中ではなく、このような万全でない体調で跳んだから起こった怪我であるけれど、いずれにしても4ルッツで怪我をしたと言うことは、ひょっとしたら精神的に今シーズンのプログラムについて羽生を考え直させるきっかけになるかもしれない。

M:つまりプルシェンコはトゥループ2本、サルコウ、ループの合計4本のクワドを推奨している。いずれにしても最高難度の構成だ

今までのオリンピックで4回転ジャンプを4本跳んだ選手はいなかったからね。

ここ2シーズン半で男子シングルは技術面において飛躍的に進化した。

彼が何をやりたいか見て行こう。

いずれにしても4ルッツ、4ループ、4サルコウ、4トゥループでオリンピック金メダルを勝ち取ると言うことは何か英雄的なことだ。自分自身に対する挑戦
羽生は他の選手と戦う以前に、まず自分自身と戦っている。

だから彼の気性を考慮すると彼が考えを変えるとは考えにくいけれど、トロントではきっと誰かが少し難度を下げるよう彼を説得しようとするだろう。でもこれから彼を説得し、構成を少し下げさせるという結果を持ち帰るには相当な時間を要すると思う

A:(笑)僕が恐れているのはそこなんだ

今一番大切なことは結弦が怪我から100%完全に回復することだ。

関節はデリケートな部位だから、このようなジャンプに挑戦するなら、右足首の関節を完璧に治してからじゃないとダメだ。

結弦自身も万全じゃない体調でこのようなジャンプを跳ぼうとすると、どういうことになるか身を持って学習したはずだ

M:足首は脆い部分だからね。
無理をすると別の怪我を招きかねない。
僕自身、悪化して最終的にくるぶしの骨折に至ってしまった経験があるからよく分かるよ。

A:(笑)僕はくれぐれもそんな事態にならないようにして欲しいと言いたい

つまり、優先順位はこうだ。
まず怪我を完璧に治す
それから100%の状態で氷上に戻ったら、何をやって何をやらないべきか、冷静に考察し、戦略を立てればいいだろう

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M:非常に興味深かったのは、多くのスケーターが彼に寄り添ったことだ。
多くの選手が羽生結弦の怪我に対して遺憾の念を表明し、世界中からメッセージが届いた。

このことはスケート界における個別の試合でのライバル関係を超えた選手達の絆を証明している。
これはすごくポジティブなことだと思う。

A:そうだね。それに皆同じ船に乗っている
どの選手も高難度ジャンプを跳ぶために厳しい練習を重ねているから、気持ち的に羽生に寄り添うのは当然だろう。
だから選手が練習中に怪我をするのを見るのは辛いことだし、選手が怪我や体調の問題で試合への出場を断念しなければならないことはとても悲しいことだ。

だから多くの選手が彼に寄り添った。

確かにこのことは特筆に値するし、羽生に対して励ましや遺憾の念を表明した全ての選手達のことを強調したい。

そしてこのようなレベルの選手が試合で演技が出来ないことは本当に残念なことだ。
だっていつでもスペクタクルを見せてくれるから

まあ、これについては彼がスペシャルなんだけれど(笑)

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オトン達の言いたいこと:

  • 病み上がりで(おそらくまだ熱があって万全じゃない状態で)いきなり4ルッツとか
    一体何を考えているんだ???
  • 頼むから右足首が完治するまで絶対に無理をしないで!!!!

 

羽生君は今やフィギュアスケート界だけではなく、スポーツ界全体の宝なので、万全な状態で平昌オリンピックに出場し、ノーミス演技を揃えて連覇して欲しいと願うスケート関係者やジャーナリストは多いですね。

でも彼の性格を考えと4ルッツは抜かないだろうな~
でも無理だけはしないでくださいね
ステイヘルシー

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