ポッドキャストKiss&Cry II第1回(その1)「ネイサン・チェンと羽生結弦」

マッシミリアーノさん&アンジェロさんのベストコンビによるポッドキャスト「Kiss&Cry」が復活しました!
第一回は10月23日水曜日に放送されました(116分ノンストップ/ノンフィルターの語り倒し番組)
非常に長いので、まずネイサンと羽生君について話している部分を抄訳します。

Listen to “Kiss&Cry Reloaded – Puntata 1” on Spreaker.

<出演>
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

F:今回のポッドキャストではスケートアメリカとスケートカナダについて話そう。
スケートアメリカでは大差で圧勝し、ライバル達を全滅させたネイサン・チェンに触れないわけにはいかないだろう。
2位との差は44点だった。
しかも彼が大差で圧勝するのはこれが初めてではない。
これからもこういう状況が続くと思う?

M:僕から答える?
問題はこの選手は未だかつて見たことがないほど4回転ジャンプの成功率が高いということだ。今シーズンの成功率は10本中9本で90%。
だから他の選手に比べてスタート地点の基礎点が圧倒的に高い。
通常、10月に300点近い得点を出す選手はいないからスケートアメリカでの300点近い得点は大きな意味を持つ。
おそらくフリーでは4回転をもう1本増やす余地があるから、彼に勝つのは誰にとっても簡単なことではない。

彼に勝つことが出来る選手は1人。
数日後のスケートカナダに登場する羽生結弦だ。
他の選手達は正直に言って彼と対等に戦える技術的手段を持ち合わせていない。
だからグランプリのような大会で2位の選手と40点の点差が開くのは当然だ。

ここまでを前提とした上で、彼がリンクで披露する4回転ジャンプのクオリティについては別のことが言える。
彼のジャンプは現時点では、実際のクオリティに比べて過剰な高得点を貰っている。
どういう意味かというと、幾つかのジャンプにリンクで披露された内容にそぐわない高い出来栄え点が与えられている。

これはスケートアメリカの傾向ではなく、大分以前から彼方此方の大会で見られている傾向で、彼はこれを上手く利用している。

ネイサン・チェンの多くのジャンプは入りに何の工夫もされていないが、バカ高いGOEが与えられる。
このような傾向は、他の多くの選手を困難な状態にしている。

僕がスキャンダルだと思ったケースを例に挙げよう。
スケートアメリカの男子ショートにおけるネイサン・チェンの4ルッツ。
彼がこの大会で着氷した4回転ジャンプの中であまりうまく行かなかったジャンプだった。
なぜなら、ジャンプ着氷後にオーバーターンしたからだ。
ジャッジ達の意見ではこれはGOE+に値するジャンプだったらしい。
+1点近い加点を得た。

ドニトリー・アリエフは同じくショートの4トゥループで全く同じミスをした。
ミスのタイプは全く同じだが彼らのジャンプには違いがあった。
ネイサン・チェンの4ルッツは40メートルの助走から前に何も入れずに実施された。
アリエフは踏み切る2秒前に少なくとも何らかのステップを入れていた。
アリエフの4トゥループはGOEでマイナス評価だった。

こういう事を目にすると僕達は考えさせられる。
勿論、ネイサン・チェンは傑出したレベルに達した。これは間違いのないことだ。
ただし、得点は少し高過ぎるという印象を受ける。

分かりやすく別の要素で説明しよう。
フリーにはコレオシークエンスという要素がある。
この要素にはレベルはなく、GOEのみで評価される。
もしジャッジ全員がGOE+5なら、この要素は非の打ちどころがなく完璧だったということになる。
ネイサン・チェンのコレオシークエンスのGOEを見て欲しい。
これらのことが、彼に対する採点の傾向を物語っていると思う。

技術点について話したから、今度は演技構成点に注目してみよう。
一言でいうとフリープログラムで平均9.5点を獲得した。
僕の意見では、この大会で彼と40点差で2位だったジェイソン・ブラウンは演技構成点の5項目の内、少なくとも4項目でチェンより優れていたと思う。

つまり僕の質問はこうだ。
アンジェロに答えてもらおう。
4回転ジャンプには、GOEとPCSを自動的に銀河点まで引き上げる価値があると思う?
例えばフリープログラムのチェンのフリップ
もしこれが4フリップではなく、3フリップだったら、+4/5点ではなく+2/3点程度だったと僕は思う。
前に何も入っていない、助走の長いフリップが4回転というだけでより高いGOEを獲得する。
僕はこの点において、何か辻褄の合わないことがあると思う。
勿論、僕の見間違え、または勘違いかもしれないけれど。
君にバトンタッチしよう

A:非常に興味深いテーマだね。
幾つかの点に関して僕も完全に同意見だ。

チェンのオーバーターンした4ルッツから始めよう。
彼のジャンプはプラス評価、同じようなアリエフのトゥループはマイナス評価だった。
このようなジャッジングには困惑させられる。
しかも2つとも4回転ジャンプだったから、4回転ジャンプになるとGOEが過剰評価になるという先ほどの君の理論とも矛盾している。

それにここはスケートアメリカだ。
ホームの選手に対してジャッジは多少有利に評価するし、彼らも自国の観客の前でいい演技をしたいという思い入れが大きい。
しかもジャッジ達の前にいるのは現世界チャンピオンだから、間違いなくこういった先入観もジャッジの評価に影響を与えるのかもしれない。

4ルッツのGOEがプラスであるべきではないという君の意見に僕も同感だ。
もっと言えばマイナス1が妥当な評価だったと思う。

ハイスピードから実施された幅のあるジャンプだったから、プラスの要素があったのも事実だ。でも難しい入りやトランジションという点に関しては他の何人かの選手より劣っている。
確かに非常に野心的な高難度の構成だし、高難度ジャンプとトランジション/入りの工夫を両立させることは難しい。
でもこの(4ルッツに対する)評価に少々困惑されられたのは事実だ。

このアメリカの選手についてポジティブな点も強調したい。
3アクセルが急激に上達した。
高いGOEを獲得したし、僕の見方では、特にショートプログラムの3アクセルは飛躍的に向上したと思う。
3アクセルが苦手だった選手がだ。

M:アンジェロ、フリープログラムでは彼の3アクセルにジャッジ全員が+4を与えた。

A:そうだね。

M:入りの工夫は何もなかったし、長い助走から跳んでいたことを考えると+4点は寛大な得点だと思う。

A:この点は勿論、考慮しなければならないが、ジャンプ自体の質は明らかに向上した。
それでも+4は少し高い。+3が妥当だったと思う。

+4になると獲得するのがより困難なレベルになってくる。
確かに難しい入り方というのはGOEのプラス要件の一つだけれど、+3に求められるハイスピードから実施され、幅と高さがあり、空中姿勢が良いという条件は満たしていた。
例えばこの3アクセルが音ハメして実施されていたら(ネイサン・チェンがこれにこだわっている可能性がある)、+4になるかもしれない。
繰り返すけれど、僕はいずれにしても+4は少し高過ぎると思う。

M:君に質問するけれど、助走から跳んでいるジャンプ。
すごく長い助走じゃないにしても、準備期間があってプログラムの流れが一時中断されるジャンプを「エフォートレス」、つまり「無駄な力を入れずに実施された」と見なすことが出来ると思う?
エフォートレスの定義と矛盾していない?

A:興味深い質問だね。
このテーマの問題は何か?
誰にとってもエフォートレスなジャンプか否かを正確に判断するのは難しい。

事実を言うと・・・僕の依怙贔屓かもしれないけれど(笑)、エフォートレスジャンプで僕が真っ先に思い浮かべるのは羽生結弦だ。
なぜなら彼は特に3アクセル、それに綺麗に決まった時の4サルコウもそうだけれど、ジャンプを本当にナチュラルに実施する。
つまりエフォートレスというのは非常にナチュラルという意味だ。

ただし、長い助走が必ずしも「エフォートレス」の項目を排除するとは限らないが、ボーダーラインだろう。
長い助走は確かに「ナチュラルさ」を減少させる。
でもエフォートレスなジャンプとは、何よりも実施されている間、無駄な力が入っていない印象を与えるジャンプのことだ。
つまり、力みのない軽やかな離氷、非常にリズミカルな実施、膝の柔らかな屈曲といった特徴を挙げることが出来る。

ジャンプの前にフィギュアの要素が挿入されていると、スケーターの動作にリズムを与えるから、上述の特徴がより強調される。

だから、長い助走は必ずしもエフォートレスの条件を妨げるものではないけれど、ナチュラルさが低下する分、エフォートレスの印象を弱める可能性がある。

M:もう一つ付け加えると、現行のルールで片手、または両手を上げてジャンプを跳ぶ選手達は、まさにこのエフォートレスのプラス要件を獲得するためにこのような跳び方をしている。なぜなら手を上げて跳べるということは、このジャンプを簡単に跳べることのアピールになるからだ。
「タノ」がプラス要件ではなくなった現行のルールでは、他に手を上げて跳ぶ理由はない。

A:この手を上げて跳ぶことについて、非常に興味深い技術的考察を付け加えたい。
確かに手を上げて跳ぶと、エフォートレスをより印象づけることが出来るけれど、同時に回転速度を一層上げることが可能になる。

このような技術的観点から注意深くこのタノジャンプを観察すると、とりわけ上半身と肩の捻り、回転を容易にし、美しい空中姿勢を維持するのを助けていることが分かる。

時々に見かける手をピンと伸ばせていないタノジャンプは審美的に美しくないし、空中姿勢も綺麗ではないから、諸刃の剣と言えるけれど、でも技術的にタノ姿勢は肩のポジションを改善するから、選手によっては両手を上げた方が跳びやすい場合もあるし、中には両手を上げないと跳べない選手すらいる。

P:視聴者からの質問
チェンのPCSについてどう思うか、彼のどこがこの得点に値するほど優れているのか?

M:平凡な質問じゃないね。
僕は議論の余地なくジェイソン・ブラウンの方が優れていると思う。
スケーティングについて。

A:膝の柔らかさとスケーティングにおいてね

M:別次元と言っていいだろう。
ジェイソン・ブラウンはこの点においてまさに熟練の域にあり、スケーティングの滑らかさは明らかにチェンより優れている。
僕の意見ではトランジションにおいても勝負にならないと思う。

A:とりわけ、彼らのプログラムのスペック故にね

M:3:1の比率でブラウンに軍配が上がる。

その他の項目は・・・Performanceについても、もしこの項目の意図を正しく解釈して評価したなら、ジェイソン・ブラウンの方が少し優れていると僕は思う。
この項目についてはネイサン・チェンもいい線を行っていると思うけれど。

A:同感だね。
パフォーマンスについてはネイサン・チェンには彼独自の良さがあるし、ハイレベルだ。

勿論、ジェイソン・ブラウンもパフォーマンスにおいて卓越している。事実を言えば、彼は全ての項目において卓越していると言わなければならない。
ただ、僕の見方ではパフォーマンスではネイサンと互角だと思う。

M:振付はジェイソン・ブラウンの方が優れていると僕は思う
音楽の解釈は主観が入る項目だから、好みが分かれるだろう。
でも4:1でジェーソン・ブラウンに軍配が上がると思う。
スケートアメリカではネイサン・チェンは演技構成点でジェイソン・ブラウンを4点近く上回った。

A:3.3点だね。

M:僕の意見ではジェイソン・ブラウンが5点チェンを上回るべきだったと思う。
ジェイソン・ブラウン90点、ネイサン・チェンは84~85点とか。

A:実際、ネイサン・チェンが獲得した94点は非常な高得点だ。
勿論、僕達は演技構成点でも強い2人の選手について話している。
コンポーネンツに関してネイサン・チェンを過小評価してはならない。

M:でも演技構成点85点は各項目で平均8.5ということだ。
問題は演技構成点の解釈だ。
僕は全項目がどんどんインフラして、男子シングルの上限である100点に近づいていることが問題だと思う。
それに男子の演技構成点満点が100点というのは低過ぎると僕は思う。
全てを設定し直す必要があると思う。

A:確かに、でもこれは別の議論になるね

M:まず演技構成点の上限を引き上げるべきだと思う

A:係数を変更するということだね。

M:そして何よりも、どの選手にもむやみにやたらに9~10点を与えるという傾向を何とかしなければならない。

僕は客観的に見てジェイソン・ブラウンの方が優れていると思う。
でも異存がある人がいれば、その人の言い分を聞く準備はある。

ジェイソン・ブラウンは演技構成点において現在、世界ナンバー3だ。
いや、フェルナンデスは引退したから世界ナンバー2か。
ナンバー1は勿論、羽生だ。

A:そうだね。
ジェイソン・ブラウンはこの点において圧倒的に優れている。議論の余地はない

P:ネイサン・チェンのコーチは、ネイサンがいずれ全種クワドを跳ぶと言っている。
彼の意見によれば、4トゥループと4サルコウが得意な選手には4アクセルも可能だそうだ。
これについて君達の意見は?

M:ハハハハハ
ネイサン・チェンのコーチであるラファエル・アルトゥニアンが大法螺を吹くのは今に始まったことではない(笑)

A:(爆笑)

M:理論的にはこのような思考は可能だ。

僕達は常にジャンプを2つのカテゴリーに分けてきた。
トゥを突いて踏み切るトゥループ、フリップ、ルッツ
そしてエッジ、つまりブレードを使って踏み切るサルコウ、ループ、アクセル

でも実は別の分類の仕方もあるのだ。
踏み切った足と同じ足で着氷するルッツ、フリップ、ループ
そして踏み切った足とは別の足で着氷するジャンプ、つまり空中で一種の軸移動があるジャンプ:トゥループ、サルコウ、アクセルだ。

ここまでを考慮すると、ラファエル・アルトゥニアンの言っていることはあながち的外れではないということが分かる。

でもここで別の問題を考慮しなければならない。
つまりアクセルは実施中の空中における身体感覚が他のジャンプとは全く違うということだ。
アクセルは前向きで踏み切る。

A:前向きで踏み切る唯一のジャンプだ

M:だから他のジャンプとは根本的に異なるのだ。
僕達は過去にショートプログラムで4トゥループと4サルコウを跳びながら、3アクセルではなく2アクセルを跳んでいた選手達を思い出すことが出来る。
例えばランビエールは4トゥループと4サルコウは問題なく簡単に跳べていたけれど、3アクセルはずっと苦手だった。

だからアルトゥニアンの持論は彼にとっては好都合だけれど、理論と実践は違う。
それに僕の記憶違いでなければ、ネイサンが4ループを成功させたのは、チャレンジャーシリーズの一試合だけだ。だから今もこのジャンプを安定して跳べるのかは分からない。

確かにネイサン・チャンの3アクセルはここ最近、飛躍的に進歩したが、あの3アクセルが4アクセルになるとは思えない。
ネイサン・チェンはジュニア時代、長い間2アクセルを入れていた選手だ。

A:一言付け加えさせてもらうと、この(アルトゥニアンの)発言をもし昨シーズンに聞いていたら、一笑に付しただろう。
でも、もしかしたらネイサン・チェンの3アクセルの急激な上達によって、4アクセルへの一縷の望みを見出したのかもしれない。
多くの四回転ジャンプを跳べる彼の傑出した技術的・身体的資質は誰の目にも明らかだ。

でも注意して欲しい。
君が開始した議論を締めくくると、ジャンプのタイプに関する君の議論通り、確かにトゥループ、サルコウ、アクセルは空中で軸が移動し、フリーレッグを振り上げて回転の勢いをつけるという共通点によって同じカテゴリーに分類される。

でも、注意して欲しい。
3アクセルは4サルコウの仲間だ。
OK?(笑)
つまり、4アクセルは5サルコウの仲間ということだ。

分かるかな?
つまり4アクセルは確かに4回転だけれど、ワングレード上のジャンプなのだ。
3回転アクセルは4回転サルコウ及び4トゥループと並べて考えることが出来る。
3アクセルは3回転半、4アクセルは4回転半、つまり5回転と同じグループだ。

M:もう一つ、細かいことを言うと、ネイサン・チェンにとって最も難しいジャンプはアクセル、次がループということだ。

実際、4ルッツは2人の女子を含む多くの選手が成功させている。ジュニア女子も含めると3人だけれど、ジュニア女子の4ルッツは微妙だから、とりあえず女子2人としておこう。

でもこれまでに4ループを成功させた選手は?
史上初めて成功させた羽生、宇野昌磨

A:グラッスル

M:現在、最も4ループの成功率が高い選手と言える
そして、ネイサン・チェンで終わりだ
クラスノジョンも何とか着氷したことがあるけれど、まあ除外してもいいだろう。

A:おそらくループは4回転になると最も実施するのが難しいジャンプなのだ。
これはアンジェロ・ドルフィーニだけの意見ではない(笑)。ミーシンのようなフィギュアスケートの大御所も4ループは最も難しい4回転ジャンプと発言している。

でも4フリップを跳んでいる選手もそれほど多くない。

M:4フリップは・・・ヨーロッパ圏から始めるとサマリンが何とか着氷した。
宇野昌磨
そしてアメリカの選手達
ヴィンセント・ジョウとネイサン・チェンだ

A:そんなに多くないね。

M:でも4ループに比べると多くの選手が挑戦している。
マッテオ・リッツォは4ループに挑戦している。
例えばエッジの問題でルッツが苦手な選手は4ルッツではなく4フリップに取り組む。
宇野昌磨が典型的な例だ。

P:ネイサン・チェンについて20分話したから、今度は羽生結弦について話さなければならない
皆が聞きたいだろう。
羽生結弦はこのチェンに勝つために何をするのか?

M/A:(爆笑)

M:僕の意見では昨シーズンの世界選手権までは、彼の考えは明確だったと思う。
彼は70%のコンディションで埼玉にやって来たが、完璧な演技をすれば勝てると確信していた。

でも彼はフリーで小さなミス、ショートで致命的なミスを犯したから、完璧な演技ではなかった。
でも彼の脳裏にある種の迷いが生じたのではないだろうか。

つまり「もしノーミスの演技をしていたら、果たしてこの試合で勝てていたのか?」という疑念だ。
僕は彼が自分自身に出した答えはおそらく「ノー」だったのだと思う。
彼は「ノーミスでも多分勝てなかった」と判断したのだろう。

そして内容のあらゆる細部まで綿密に分析する羽生のような選手のことだ。様々な考えが入り乱れたに違いない。

羽生は自問自答しただろう

ネイサン・チェンは何故これほど高いGOEを獲得することが出来たのか?
ネイサン・チェンは何故これほど高いPCSを獲得することが出来たのか?

そして彼が導き出した答えはフリープログラムの基礎点を上げることだった。
全てのリスクを覚悟で圧倒的な高難度プログラムを構築する。

僕はもしジャッジが公正なら、羽生は4トゥループと4サルコウだけでネイサン・チェンを含む全ての選手に勝てると確信している。特にショートプログラムでは

フリーはよりデリケートな問題になる。
これまでに見られた不可解な様々な要因によって判断するのは難しい。
蚊帳の外にいる僕にとっても判断するのが難しいのだから、実際に渦中にいる彼にとってはもっと判断が難しいだろう。

彼は既にあらゆるタイトルを総なめにした選手だ。
グランプリファイナル、世界選手権、オリンピック。
引退して他の道を選ぶことも出来るのにそうはしない。

彼が何を披露してくれるのか興味がある。
4ルッツは彼の目標の一つだろう。

僕の一番の関心は、彼がどのジャンプを跳ぶかではなく、彼がノーミスの演技をした場合、どんな評価が得られるかということだ。

なぜなら、もしネイサン・チェンがミスのないフリープログラム(4Tがダブルになるミスがあったけれど、振付にもプログラムの流れにも影響を与えないミスだった)でPCS94点を持ち帰るなら、クリーンな羽生は何点持ち帰るべき?105点?

問題はここなのだ。
先ほどの議論に戻るけれど、もはやこの採点システムにはひずみが生じてきている。

A:その通りだ。
演技構成点の係数の問題、そして何よりも採点基準の問題だ。
4回転ジャンプを跳ぶ選手全員に9点以上を与えていたら、本来あるべき評価ではなくなってしまう。

技術点に関しては、ネイサン・チェンは多くの点を積み上げる力があるし、実際に高得点だ。
そして忘れてはならないのが、彼はこれらの高難度ジャンプを非常に高い確率で実施出来るということだ。彼の恐ろしいところはそこなんだ。

羽生は4ルッツ、4ループ、4サルコウ、4トゥループを跳ぶことが出来る。
4サルコウと4トゥループの成功率は非常に高いが、ルッツとループでは少し確率が下がる。

そして僕が一番怖いのは・・・彼がこれらのジャンプの練習中、またはこれらのジャンプが原因で何度も怪我をしていることだ。

だからこれらの特定のジャンプを練習する際、彼は自分のフィジカルそしてメンタル・コンディションを把握していなければならない。
そしてどのくらい継続してこれらのエレメントを練習出来るのかを理解しなければならない。
練習で跳ぶのと、プログラムの中で跳ぶのとでは全く違う。

4ルッツをフリー冒頭に跳んだとして、プログラムはまだ続いていくし、多くのエレメンツをこなさなければならない。
このエレメントは身体的・精神的に膨大なエネルギーを消耗する。
だから通し練習で何度も何度も試してみなければならない。

ショートについては(笑)・・・君は僕の意見をよく知っているよね。
僕は羽生のショートはサルコウとトゥループでも現在、無敵だとずっと前から言い続けている。
このような高難度ジャンプが組み込まれているにも拘わらず、彼が披露する振付とトランジションの豊かさによって

フリーになると議論は変わってくる。
フリープログラムではネイサン・チェンは誰にとっても恐るべき相手だと思う。

M:特に羽生のフリープログラムの後半は4回転ジャンプと3アクセルのコンビネーションという非常に高難度なエレメンツが詰まっているけれど、トランジションという点においてはショートほど豊かではない。

A:当然だろう。

M:ネイサン・チェンと比べてではなく、羽生自身のショートと比べてという意味だ。
でもジャッジの評価を見ると、モヤモヤが湧いてくる(笑)
演技構成点の評価については唖然とさせられることがある。

P:この点について視聴者から質問が入っている。
「ジャッジに公正さが欠けていると思いますか?
客観的に見て、4回転ジャンプに関係なく、羽生が圧倒的に優れているのは明らかです。
もし前後に何もないチェンの3アクセルに+3が与えられるなら、羽生には何点加点を与えるべきですか?」

M:これは試合中、そして試合後に無数の視聴者から寄せられた質問だ。
僕はジャッジに悪意があるとは思わないし、思いたくない。
彼らの能力の問題だと思う。

僕も2つのプログラムを客観的に見て、羽生の優越は圧倒的だと思う。
でも現在の採点方法では演技構成点でそれほど差がつかないから、選手達は実質、技術点だけで競わなければならなくなっている。

羽生とチェンは全く異なるタイプのスケーターだ。

ただの長い助走から実施するジャンプにも同じようにGOE+4~5点が与えられたら、一体どうすればいい?

エネルギーをあまり消耗せずにジャンプを跳ぶ選手に、4回転や3回転の前後をトランジションや難しい入りや出で装飾しながら滑る選手と同じ得点が与えられたら?

言っておくけれど、これは全く別物のフィギュアスケートなのだ。
後者は膨大なエネルギーを消耗する。

ジェイソン・ブラウンは身体的に4回転ジャンプが跳べないとか、3アクセルに問題があるといった特徴に関係なく、フリープログラム終盤に疲労困憊していることがしばしばある。
何故なら彼のプログラムは膨大なエネルギーを消耗するからだ。
だから後半のジャンプが抜けたり、回転不足になったりすることがあるのだ。

羽生のもエネルギーを消耗するプログラムだ。
ネイサン・チェンのプログラムはエネルギー消耗がより少ない。

でもジャッジがより消耗の激しい特定のプログラムと、消耗の少ないプログラムに同等のPCSを与えたら、当然、リスクの少ない省エネ・プログラムの選手が有利になる。

(その2)エテリ・トゥトベリーゼのトレーニングシステム~他

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スケカナが始まる前に投稿したくて取り敢えず大急ぎで訳しましたので、翻訳のクオリティはあまり良くありませんがご容赦を

この後、ジャンプの出の流れに関する視聴者からの質問
ISUによる演技構成点改正案の話題
エテリ3とエテリチームのトレーニングシステムについて議論されていきます。
エテリシステムの話題は非常に興味深かったので訳したいと思いますが、スケカナが終わってからになると思います。
いよいよ試合が始まります
ランスルーでは絶好調のようなので楽しみです!

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