ポッドキャストKiss&Cry II第2回(その2)「フィギュアスケートのマエストロ」

前回の続きです。
羽生君について話している部分をピックアップして抄訳します。

Listen to “Kiss&Cry Reloaded – Puntata 2” on Spreaker.

出演者
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

F:視聴者からの質問
さきほどメドヴェデワの戦略の問題が議論されましたが、同じオーサー門下の羽生結弦はどうでしょうか?

羽生はもはや自分で全部決めているのではないですか?

M:羽生はずっと前から自分で決めている。
これは今に始まったことではない。

羽生が話す時、人々は彼を囲んで座り、何かを学び取ろうと沈黙して聞いている。
羽生はフィギュアスケートのマエストロだ。

羽生はディック・バトンがオリンピックで勝った時、何をしかたを語ることが出来る
羽生は2002年のエフゲニー・プルシェンコのプログラムについて、彼はここで何を実施して、それで何点獲得して~とスラスラ語りまくることが出来る。
彼はそういうレベルなのだ。

羽生はフィギュアスケートの天才だ。
あらゆる詳細について360度の知識がある。

オーサーは言ってみれば羽生の「過剰なやる気」を管理している。
特に彼が十代の頃はこのような管理が必要不可欠だった。
お目付け役がいないと練習中、制御不能になってしまう可能性があったからだ

A:(爆笑)

M:でも羽生は自分がやるべきことを他人から教えてもらう必要はない。
羽生は自分で構成を決める。彼自身の計算に基づいて
羽生が4T/eu/3Fを入れることにしたのは、現時点で最も高い得点を稼げるコンビネーションジャンプだという結論に達したからだ。
しかも彼はこのジャンプを完璧に音ハメして跳ぶことに固執する。

これが羽生だ。

おそらく、オーサーは羽生のような人物を管理するのに理想的なコーチなのだろう。
でも羽生は誰かから何かを説明してもらう必要はない。
むしろ羽生の方がスケート関係者やジャッジ達に対してルールについて説明できる立場だろう。

P:エテリ・トゥトベリーゼのスクールは現在最強と見なされているが、ロシア以外の国、日本やアメリカなどでトゥトベリーゼとそのスタッフに対抗できるシステム(スクール)は存在するか?

M:まず男子シングルと女子シングルを分けて考えなければならない。
トゥルソワは欧州選手権の男子シングルでも優勝することが出来ることは置いておいて

P:質問は女子シングルについてのようだね

M:トゥトベリーゼはあらゆる観点において専門能力・知識を構築した。
マニアックなまでに精密に考案されたアスレチックトレーニングを伴うトレーニングシステムだ。
例えばトゥルソワのプログラム、アスレチックトレーニングで訓練されていなければ、トゥルソワは最初の1分30秒でバテてしまって最後のクワドの前に氷上で伸びてしまうだろう。
つまり彼女達はオフリンクで驚異的なトレーニングを行っている。

勿論、陸上トレーニングは他のスクールでも行っているだろうが、トゥトベリーゼ・チームのようなルールと得点の綿密な研究と分析を行っているのはただ一人、羽生だけだ。

彼はこれを自分一人で勝手にやっている。
なぜなら彼が天才で、他の人々より圧倒的に優れた人間だからだ。

つまりそこから始めなければならない。
人材を集め、トゥトベリーゼのスクールと同じ時間数のカリキュラムを組み、トゥトベリーゼのスクールと同じ設備を導入する。
でも、僕は正直、彼女のシステムに対抗出来る学校が存在するとは思わない。

ずっと日本国内に留まって世界タイトルを取った日本人選手が何人いる?
国外に出ずに世界選手権を制した選手は?

伊藤みどり
石器時代の選手だ

それから?
確かに浅田は日本で練習しながら世界タイトルを獲得したけれど、その後、海外を転々とした。
荒川も佐藤有香も海外に練習拠点を置いていた。
だから日本も韓国も国内である程度のレベルまでは行くが、それ以上は伸びない。

A:つまり才能豊かな選手が誕生する確率が高い国は日本と韓国だけれど、その才能を更に伸ばすにはおそらく、例えば北米などのクラブに練習拠点を移したほうがいいのかもしれないね。
生まれはアジア、練習は北米というのが上手くいく組み合わせかもしれない。

M:でも北米のどのクラブに送る?
数字が物語っている。

リプニツカヤ、メドヴェデワ、ツルスカヤ、ザギトワ、コストルナヤ、シェルバコワ、トゥルソワ、アリエワ
全員トゥトベリーゼ門下だ。
つまり勝てるシステムなのだ。

でも紀平梨花が4サルコウをマスターしたら彼女達に勝てるかもしれない。
つまり傑出した才能を持つ選手が出現した場合、このようなトレーニングシステムで訓練された選手達の間に割って入れるかもしれない。

******************
☆「過剰なやる気」の管理に笑いました:stralol:

アレクサンドラ・トゥルソワと現行ルールの問題点の話題も個人的にとても面白かったのですが、あまりにも長いので、スケカナの羽生君関係の記事諸々を訳し終わってまだ余力があったら訳すかもしれません。

エテリ・トゥトベリーゼは早い段階から高いPCSとGOEを獲得できる羽生君のフィギュアスケートに注目し、トランジションが豊かでジャンプの前後に工夫を凝らした彼のプログラムを研究・分析して彼女の生徒達のプログラムのモデルにしています。
こうしてサンボ70の彼女の元で練習する選手達は10~11歳の頃から難しいトランジションからジャンプを跳ぶことを徹底的に叩き込まれるのです。

エテリ門下の選手達のプログラムは、特に年若い選手の場合、トランジションはテンコ盛りだけれど動きが機械的でせわしなく、スケーティングやプログラムの世界観があまり堪能できないこともありますが、天性の表現力とセンス、スケーティングスキルに恵まれたコストルナヤのような選手によって実施されると素晴らしい傑作が生まれます。

日本には幸運にも羽生結弦というPCSとGOEが世界一高い選手がいますが、彼のフィギュアスケートを研究・分析して論理的かつ科学的メソッドとして導入している学校は日本にはないのでしょうか?

日本スケート連盟は次世代の勝てる選手ではなく、次世代のスター選手を作り上げることに懸命になっているように思います。
強化費の運用の仕方や昨シーズン世界選手権前の伊東委員長の発言などから感じた、あくまでも私の個人的な印象ですが、強化するところがずれているように感じるのです。
そしてスケ連のこのような方針をメディアが後押ししているように思います。
スターは人工的に作れるものではありませんし、フィギュアスケートはスポーツですから、まず実力と成績が重視されるべきです。

羽生君はソチ金メダルの後、当時ジュニアだったネイサンやボーヤンの名前を挙げ、彼らがシニアに上がってきたら多種クワド時代がやってくると予言し、難色を示すオーサーコーチを説得して(当時は必要ないと思われていた)4ループを習得し、プログラムに導入しました。

梨花ちゃんはジュニア時代にエテリ3と対戦していますから彼女達の恐ろしさは身を持って感じていたのでしょう、3アクセルに加え、4回転ジャンプの必要性をいち早く理解し、大分前から高難度ジャンプの練習に取り組んでいます。

でもそれは羽生君や梨花ちゃんが、人一倍意識が高く、先見の明のある自然発生型の天才だからです。

「(エテリ3は)ジュニアでは演技構成点が出てもシニアに来れば、それなりにちょっと下げられるかなという、ちょっと淡い期待もあった」という小林部長の発言にはちょっとびっくりしました。

そもそも日本の女子選手達はアリーナやソチシーズンまでのカロリーナ、オズモンド、メドヴェデワのようにPCSで勝負できるほど高い得点を貰っていないと思うのですが。
フリーのPCSで75点を超えたことがあるのは、私の記憶が正しければさっとんだけだと思います。

Previous Entries ポッドキャストKiss&Cry II第2回(その1)「羽生結弦と魔法のオーラ」 Next Entries OA Sportより「スケートカナダ2019:羽生結弦の献身。GP第2戦の印象」