ポッドキャストKiss&Cry II第2回(その1)「羽生結弦と魔法のオーラ」

スーパーマジンガンポッドキャスト第2弾が放送されました(今回は何と132分17秒という驚異的な長さです)

議論されたテーマは以下の通り

  1. 羽生結弦と彼の「魔法のオーラ」。スケートカナダにおける羽生結弦の圧巻演技の分析
  2. アレクサンドラ・トゥルソワ、驚天動地のインパクト
  3. エフゲニア・メドヴェデワに対するロシアメディアの怨恨
  4. チームイタリア:スケートカナダでマッテオ・リッツォに何が起こったのか?
    ダニエル・グラッスルについて一言
  5. スケートカナダ雑感とフランス国際の展望

以上の中から取り敢えず1)を抄訳します。

Listen to “Kiss&Cry Reloaded – Puntata 2” on Spreaker.

出演者
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

F:ではすぐに宇宙的だった羽生の話から始めよう
7日前、君達は羽生の目標は300点を超えてスケートアメリカでのネイサン・チェンの演技に答えを返すことだと言った。

今だから、もうネタバレしてもいいよね。
マッシミリアーノ、君は放送の外で300点を大幅に超えるだろうと強調した。
そしてその通りのことが起こった。

君のこの確信はどこから来ていたの?

M:彼が9月中旬に出場したカナダのチャレンジャーシリーズ、オークビルのオータムクラシック・インターナショナルだ。
幾つかのミスはあったし、僕達が到底同意できないコントロールパネルの判定や厳し過ぎるジャッジングという問題はあったけれど、彼はこの大会でシーズンのこの時期にしては良好なコンディションを見せたし、特に練習ではほとんどミスをしなかった。

あれから5週間あったから、フィジカルコンディションと安定感が更に上がっていくのは明白だった。

それに僕達はイタリアのメラーノで9月初旬に開催された2008年のジュニアグランプリから羽生を見守っているからね(笑)

A:(笑)

M:僕達は彼の身体言語を読み取り、彼を理解することを学んだ。
だから彼が300点を大幅に超えると僕は確信していた。
さすがに322点とは思わなかったけれど
これについては僕の期待の斜め右上を行っていて唖然とさせられた。
僕は310点とかそれぐらいを予想していた。

それに僕が強調したいのは、オークビルの演技はネガティブではなかったことだ。
オークビルでユヅルは279点を獲得した。

今シーズン、ここまでのチャレンジャーシリーズとグランプリ大会の全ての大会を調べれば、279点を超えたのはスケートアメリカのネイサン・チェンとスケートカナダの羽生結弦だけだということが分かる。
それ以外で270点に到達した選手は誰もいない

勿論、羽生は非常に野心的なスケーターで、自分の途方もない能力を自覚しているから、オークビルの279点にはがっかりしただろう。
でもあの大会では非常にハイレベルな演技を披露した。

そこから彼のコンディションはスケートカナダで今季最高得点を獲得するまでに上昇した。
新ルールではネイサン・チェンに次ぐ歴代第2位の得点だ

でも僕の意見では、僕達はまだ彼の何も見ていない。
なぜなら、スケートカナダでは羽生は80%のコンディションだったからだ。
彼が100%の状態まで上げることが出来た時、僕達は途方もないものを見ることになるだろう。

A:間違いなく、僕達がスケートカナダで目撃したことは傑出していた。しかも羽生がシーズンのこの時期に。
だから君が強調したように、シーズン冒頭の大会にも拘わらず、調整は万全だった。
羽生がグランプリ初戦で優勝するのはこれで2回目だということを忘れてはならない。
通常、僕達は12月以降になってからベストコンディションの彼を見ることに慣れていた。

今後、プログラムを更に豊かにして磨いていくだろうけれど、今のこの構成ではほぼ完璧に達したことを僕は強調したい。

ショートでもフリーでも大きなミスはなかった。
幾つかのエレメントのGOEにまだ伸びしろがあるけれど
フリーの4ループ、それにショートのコンビネーションはもっと綺麗に実施できるはずだ。

既に322点はサイエンスファンタジーの得点だけれど、更に大幅に得点を上げるには何かを加えて基礎点を上げる必要があるかもしれない。
今後、彼がフリーに4ルッツなどの新しいエレメントを装備してくるかどうか見ていこう。
彼が加えるとしたらおそらくこの4回転ジャンプだろう。
夏にはこのジャンプを大分戻してきていた。

M:簡単に入れられるジャンプではないけれど、フリーの構造を見ると、彼の考えでは最終的にこのジャンプを入れるつもりなのだろう。

僕は彼がスケートカナダの初日の公式練習で見せたような完璧なショートプログラムを滑ったら、115点に値すると思う。

A:そうだね

M:最低でも115点だ
何故ならただただ「絶対的な完璧」だからだ。

A:実際、僕なら戦略という点においてショートプログラムはいじらない。
君はもう僕の意見をよく知っていると思うけれど(笑)

M:フリープログラムはこの構成で、いずれにしても驚異的な高難度構成だけれど(笑)
多くのエレメントでGOE満点を獲得すれば、余裕で225点に達すると思う。
つまり完璧な羽生なら、ショートとフリー合わせて340点を持ち帰る

A:(笑)

M:340点なら誰も勝負することさえ出来ないだろう。

A:無理だね

M:彼が322~325点に留まっている内は、ネイサン・チェンが埼玉世界選手権のようにミスのない演技をすれば追いつけることを証明した。
スケートカナダで僕達が見た羽生は彼方此方で取りこぼしがあった。

A:それほど多くはないけどね

M:確かにそれほど多くないけれど、彼が思い描くフィギュアスケートと比較したら膨大な取りこぼしだ。

そしてスケートカナダで彼は探していた答えを見つけた。

彼の疑問はこうだった。

  • もし僕が完璧に滑ったら、ネイサン・チャンに勝てるだろうか?

ここ最近の試合における採点の傾向を考慮すると、彼には答えが分からなかった。

でもスケートカナダで彼はその答えを見出した。

何故なら彼自身が強調したように、全ての要素を完璧に実施していたら、ネイサン・チェンが埼玉世界選手権で獲得した323点を問題なく超えていたからだ。

A:そうだね。これは間違いない

P:それでは、ここで試合後の羽生のコメントを考察したい。
何故なら非常に興味深い発言だったからだ。
特に彼はこう発言した。

もし思うような結果が得られないなら、トランジションを大幅に削減しようと思っていたと

僕の質問はこうだ。
ユヅルのこの発言の背後には何があると思う?

M:ハッタリだよ(笑)
いや、彼は疑う余地のない自分のステータスと影響力をふまえて、ISUのシステムにメッセージを発したのだ。

羽生はルールの句読点(細部)まで研究するタイプだ。
彼の全てのエレメントはGOE満点を獲得できるように設計されている。

注意して見ると、彼は非常に難しいコンビネーションジャンプ4T/eu/3Fを実施する際、拍に合わせようとしている。
拍、つまり音に完璧に合致できるよう、回転を遅らせているような印象を受ける。
GOEプラス要件の一つである「音楽に合っている」の項目も満たすためだ。

ルールの研究家でフィギュアスケートの光明(啓発者)である彼はこう自問自答したのだろう。

  • ルールではこのように規定されていて、僕はその通りにエレメンツに実施しているのに、何故、得点に反映されないのか?
  • 何故、僕のトランジションてんこ盛りのプログラムが相応の演技構成点で評価されないのか?
  • ジャンプの前後に難しいトランジションやステップを入れていて、ジャンプ自体の質もルールの要件を満たしているのに、なぜ+3しか付かないことがあるのか?

つまり、このような状況を前にして、彼は疑問を抱いていたのだ。
そして試合に勝った後、この疑問は晴れた。

試合の前に言及してコントロールパネルやジャッジにプレッシャーをかけることも出来たのに、彼は紳士だから試合が終わってから発言した。
でも問題は依然、残されたままだ。

羽生は自分のスケートのスタイルを決して変えないだろう。
これが羽生なのだ
彼が13歳で初めてメラーノのジュニアグランプリ大会に出場した時から

僕が覚えている羽生は、リンクに入って、リンクを2周ほど周回してフォーミングアップをした後、いきなりイーグルからフェンスほどの高さの2アクセルを跳んでいた。

13歳だよ!

その後で、残りの全ての要素をやっていた。
彼はどの練習セクションでも様々なことを試していた。

これが彼のジュニアグランプリデビューだった。
彼は実質、まだ子供だったけれど、既に特別な何かがあった。

それは何か?
彼はどのジャンプも神聖化していた。
つまりジャンプは単独では存在しない。
彼にとって、ジャンプは30メートルの助走から跳ぶものではないのだ。
そしてトゥピックとその実施、この場合ルッツだけれど。

ジャンプは前後に何かを散りばめて装飾しなければならない。
これが彼のフィギュアスケートに対する考え方だ
彼にこれが変えられるはずがない。

「OK、得点が出ないから全部変える」と口では言うかもしれないけれど、彼は絶対に変えないだろう。
何故なら、これが彼の中にあるフィギュアスケートの概念だからだ。
豊かなトランジションを伴う難しいエレメンツ
そしてこれが彼の成功の秘訣なのだ。

A:彼が披露するエレメント自体のクオリティに加えてね。

僕達はよく好んで羽生のジャンプの話をするけれど、それはこれらのジャンプが彼のトレードマークであるだけでなく、彼自身がGOEのプラス要件「エフォートレス」のエンブレムだからだ。
彼の3アクセル、4サルコウ

彼の動作のナチュラルさと滑らかさは彼を唯一無比の存在にしている。

この競技における唯一無比の存在、僕達がいつも言っているように、おそらく史上最高の選手と見なされる所以なのだ。

ただし、彼のプログラムのハイライトはジャンプだけではない。
彼は非常に複雑で難しいステップシークエンスやクオリティの高い究極難度のスピンにおいても非常に完成されている。
つまり360°コンプリートなスケーターなのだ。
このことは強調しなければならないし、忘れてはならないことだ。

そして彼が最終的な完成品として提案するプログラムは、最初から最後まで流れが途切れることがなく、空白のパッセージが全くない。

M:彼も人間だから、強いところもあれば、当然、弱い部分もある。
彼は練習ではフリーもショートも完璧度80%の演技を難なく実施していた。
つまり10回中8回はノーミスの演技をしていた。

しかし彼の脳裏にはこんな疑念があった。

  • 試合でも練習通りに滑れるだろうか?
    ひょっとしたら、試合のアプローチの仕方に問題があるのではないだろうか?

これが得点の問題は別として、スケートカナダの前までに見られた彼の弱い部分だ。

でも(スケートカナダでは)リンクに降りて、ショートプログラムはうまく行った。
コンビネーションで小さな問題があったけれど、既に歴史に刻まれた3アクセルを実施した。

このショートプログラムの成功によって彼は自信を取り戻し、落ち着いてフリーの演技に臨むことが出来た。
結果は見ての通りだ。

3アクセルだけれど・・・僕はあの3アクセルに話を戻したい(笑)
僕の意見では完璧な3アクセルだった。

僕の唯一の疑問は・・・アンジェロ、君が答えてよ
ツイズル>3アクセル>ツイズルとイーグル>バックカウンター>3アクセル>イーグルとどっちがいいと思う?(笑)

A:純粋に難度という点においては、僕は個人的にバックカウンターからの方が難しいと思う。
でも今シーズンのショートプログラムの音楽にはツイズル>3アクセル>3アクセルの方が合っていると思う。
音楽のスピリット、そして曲想に完全に調和しているという観点において
だからこのショートプログラムにおける選択は非常に賢く、完璧で正しいと思う。

当然のことながら、おそらく僕達は正解が存在しないことについて議論しているのだろう(笑)
技術的に非常に難しい2通りの入り、2つの実施について話しているのだから

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☆この後、トゥルソワの話題に移りますが、羽生君の話はこの後も視聴者からの質問を受けて何度も出てきますので、後日まとめて抜粋したいと思います。

感動的な内容に、訳しながら涙が出そうになりました:awww:・・・

マッシミリアーノさん達、何と!・・・2008年メラーノ杯から羽生君に注目していたのですね・・・
それもたまたまそこに居合わせたわけではなく、ノービス枠で出場し、3位に入った前年の全日本ジュニアで羽生君に興味を持ち、彼を見るためにわざわざメラーノまで出向いて行ったそうです。

メラーノはスキーの帰りに寄ったことがありますが、ボルツァーノ県のオーストリア国境に近い山峡の村で、温泉地として有名です。

余談になりますが、この地域はチロル地方と呼ばれ、ボルツァーノもそうですが、町の雰囲気も住民の気質もドイツ/オーストリアに近く、チロル民族の誇りを持つこの土地の人々は第一次大戦後、自分達の地域がイタリアに併合されてしまったことが不満で、未だにチロル独立国家を夢見ているそうです。

話が逸れてしまいましたが・・・だからこそ、羽生君に対してだけ、こんなにもオトン目線なのですね。
13歳の頃から彼の成長を見守っていたら・・・「ウチのユヅル」状態になりますね。
日本でも羽生君のコーチや関係者以外でこんなに小さい頃から彼の才能を見抜き、見守っていた人が何人いるでしょうか?

2008年のメラーノ杯、実はダニエル・グラッスル君(当時6歳)も見に来ていたそうです。
そして羽生君の演技がきっかけでスケートを始めたそうなのです。
その演技、Youtubeに観客動画がありました!

マッシミリアーノさん&アンジェロさんとダニエル君(当時6歳)の人生に何らかの形で影響を与えた結弦少年(当時13歳)の演技

2008 JGP Merano Yuzuru Hanyu SP>>

2008 JGP Merano Yuzuru Hanyu_FS

ダニエル君の演技を見ると、ジャンプの入りの工夫や独創的なポジションのスピンなどに羽生君のスケートの影響を垣間見ることが出来ます。

ダニエル君はジュニアカテゴリーでのファイナル進出が決定しています。
トリノできっと羽生君に会えますね・・・

ということは、ダニエル君にとっては生の羽生君を見るのはメラーノ以来11年ぶり???

トリノGPF・・・色々な意味で運命的な神大会になる予感がします・・・

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