ポッドキャストKiss&Cry II第4回「フィギュアスケートを救う選手」

先週放送された第4回(129.56分)から

主に以下のテーマについて議論されました

  1. アリョーナ・コストルナヤの物語
  2. 露スケート連盟が女子ショートプログラムでの4回転ジャンプ解禁を要求していることについて
  3. 4ルッツ、4フリップ、4ループの比較。本当にルッツが一番高い基礎点に値するのか?
  4. 中国杯総評とロステレコム杯展望

1)のアリョーナ・コストルナヤの話の中で羽生君との共通点について分析している部分が興味深かったのでその部分を抜粋・要約します。

Listen to “Kiss&Cry Reloaded – Puntata 4” on Spreaker.
出演者
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

(コストルナヤのこれまでの経歴の関する話は省略)

M:コストルナヤの2アクセルは入りの難しさ、ジャンプ自体のクオリティによって問答無用でGOE+5満点が与えられるべきだが、実際に+5が付かないこともある。

このようなクオリティの2Aを見たのは13歳の羽生結弦が跳んでいた2A以来だ。
この2アクセルに+5を与えないジャッジはその理由を説明できないはずだ。
ジャッジとしての能力に欠けているという理由以外、説明のしようがない。

(中略)

M:(フランス国際の)ショートプログラムでは冒頭の動きから、緊張して少し硬くなっているのは感じられたものの、3アクセルを含む完璧なプログラムを滑った。
この演技を見ていた者は皆、85点に届く世界最高得点が出ると確信した。
本人もそう確信してキス&クライで得点を待っていたに違いない。

しかし、スクリーンに表示された得点は76点だった。
議論の余地のある3アクセルの回転不足判定
ルッツのエッジは微妙だから同意するとしても、演技構成点がトゥルソワがスケートカナダで獲得した得点と同じというのはあり得ないだろう。

アリョーナの最初のリアクションは「リスクを冒して3アクセルに挑戦する意味があったの?」だったと思う。
フィンランディア杯のショートプログラムでは2アクセルで今大会より高い得点を獲得した。

他の選手がまだ滑っている間、アリョーナはインタビューに答えたが、彼女は高潔な人間だからコントロールパネルやジャッジに対して不満を述べるようなことはしなかった。

オータムインターナショナルの羽生と同じだ。
彼らのように人の上を行く優れた人間はこのように振る舞うのだ。

彼女は「得点は仕方がない。もっと上手に滑れるように向上しなければならない」というような答えを返したが、内心では激怒していたに違いない。

インタビューが終わるとフェンスと更衣室の間の壁際に立って、第2グループの自分より世界ランキング上位の選手達の演技をずっと見ていた。
第2グループの選手達は次々に転倒した。
ザギトワさえ最初のジャンプでミスを犯し、結果的に誰もアリョーナを抜くことはできなかった。

ショート得点表示後の失望は歓びに変わった。
こうして緊張から解き放たれ、リラックスして臨んだフリーではダブルアクセル1本、アクセル2本を含む8トリプルを着氷した。
フリープログラムで8トリプル+1ダブルアクセルを成功させた史上初の女子選手となり、アクレサンドラ・トゥルソワに次ぐ今シーズン第2位の高得点236点を叩き出してフランス大会を終えた。

しかし彼女が歴史を塗り替えていくのはこれからだ。
この選手がどこまで到達できるのかはまだ分からない。
あらゆるタイトルを勝ち取れるかもしれないし、無冠で終わるかもしれない。
なぜならフィギュアスケートがこの先どう変化していくかは誰にも分からないからだ。

しかしながら、彼女が我々に発したメッセージが教えてくれている
自分自身を心底から信じることが必要だと。

もし自分の中に何かがあることを確信している選手が、適切な練習環境を見つけることができたなら、この『何か』は必ず開花し、フィギュアスケート界の希望に変わるかもしれない。
フィギュアスケートを心底愛している人達はコストルナヤのポテンシャルに期待している。

これは2010年のバンクーバー五輪後から2014年ソチオリンピックまでの4年間に羽生結弦が起こしたことに似ている。

トリノ五輪後から2010年のバンクーバー五輪までの4年間は、フィギュアスケート男子シングルにとって史上最悪の暗黒時代だった。
この4年間は技術的に後退した上、芸術的に興味深いプログラムもほとんど見られなかった。

このような退屈な時期を過ごした後、世界ジュニア選手権で羽生結弦のフリープログラムを見たフィギュアスケートを愛する人々はこう言った

男子フィギュアを救えるのは君しかいない!
フェンスほどの高さの3アクセルを持つ君だけが我々を救うことができる!

そして実際に彼は僕達を救ってくれた。
彼は男子フィギュアを卓越したレベルまで進化させた。
そして、おそらく僕達はまだ彼の全てを見ていないのだろう。

羽生結弦を非常に注意深く観察しているアリョーナに同じことができるか見ていこう。
実際、この2人の間には多くの共通点がある。この点についてはアンジェロに詳しく説明してもらおう。
羽生結弦が成し遂げたことの全部とは言わない。半分でも十分だ。
でもモットーは自分を信じ切ることだ。
彼女は自分を信じて闘い、今、アレクサンドラ・トゥルソワのようなモンスターと闘っている。
いい意味でのモンスターだ。
トゥルソワはフィギュアスケートの歴史を変えようとしており、おそらくルールを変えさせるだろう。

それではアンジェロ、技術側面について詳しく説明してくれる?
きっと面白い話が聞けるだろう。

A:コストルナヤは間違いなく多くのきっかけを与えてくれるスケーターだろう。
君は先ほど羽生結弦との共通点について触れたけれど、実際に幾つもある。

最も顕著な共通点は、間違いなく彼らのスケーティングのクオリティに見出すことができる。正確なエッジワーク、滑らかな滑り。
共にエッジを使って跳ぶジャンプが得意で、素晴らしいクオリティのエッジジャンプを持っている。
二人ともアクセルとループが得意で、後で技術的に詳しく解説するけれど、羽生は4ループを跳べる数少ない男子選手の一人だ。

3アクセルは女子では数人の選手しか成功させたことがない。主に日本の選手、ロシアにも数人、でも今後、3アクセルを跳べる選手はもっと出てくるだろう。

羽生の4サルコウは言うまでもないだろう。
コストルナヤにとって3サルコウは簡単なジャンプだから、いずれプログラムに4サルコウを入れられるようになるか見てみよう。

いずれにしても、スケーティングの滑らかさとエッジの使い方が卓越したスケーターは、エッジジャンプのクオリティにもその技術の高さが反映される。

勿論、彼らのような選手には弱点もある。
例えばコストルナヤはフリップやルッツなどのトゥジャンプでしばしばエッジの問題があり、フランスでも!が付いた。
しかしいずれにしても、3ルッツ/3トゥループ、3フリップ/3トゥループ、3フリップ/オイラー/3サルコウなどのコンビネーションを安定して跳べているから、トゥジャンプとの相性も良い。

そして彼らのように技術的クオリティの高い選手のジャンプは、高さと幅があり、滞空時間が長い。
このようなジャンプを跳ぶには体重/パワーの理想的な比率だけでなく、確固たる技術が必要だ。
スピードを生かして跳ぶこのような技術で実施されるジャンプは滞空時間が長く、ジャンプの幅、空中姿勢、着氷後の流れといったGOEプラス要件を満たすことが出来る。

M:スケーティングの滑らかさ、スムーズに方向転換する能力、正確なエッジワーク、複雑なステップが盛り込まれたスケーティング、膝の伸縮、これらがスケーティングスキルの要件だと思うけれど、このような特性について、歴代の女子選手でコストルナヤと比較できるとすれば誰だと思う?

男子では羽生だと先ほど君は言ったね。もう一人はパトリック・チャン
滑りの滑らかさという点において。
でも僕はより羽生に近いと思う。

A:そうだね。膝の柔らかな屈曲という点においてより羽生に近い。
女子で僕が思い浮かべるのは荒川静香だ。

M:彼女も仙台だね。

A:コストルナヤの滑りはまさに彼らのような東洋の選手の滑りを彷彿させる。
滑らかなだけでなく、しなやかで柔らかいスケーティング
膝を深く屈曲させる。
そしてこのリズミカルな膝の屈曲によってスピードを出す。
しかし、屈曲だけではない。
彼らの滑りを注意して見て欲しい。
屈曲し、適切な瞬間に伸長する。
リズミカルで柔らかな伸縮運動

例えばコストルナヤの3アクセルの前にこの柔らかな膝の伸縮が顕著に見られる
ロッカー、カウンター、チェンジエッジ、そして3アクセル
このような入り方は通常、ジャンプを跳ぶのをより難しくするパッセージだが、彼女の場合、膝をリズミカルに屈曲させることによって、スピードが落ちるどころか、更にスピードを上げている。
これはまさに膝と足首の使い方に卓越した優れたスケーター、すなわちOutstandingなスケーターにだけ可能なことだ。

M:パトリック・チャンと羽生結弦のことだね、

A:そう、パトリック・チャンと羽生
そしてロシアで探すとすれば、コリヤダもこのような資質を持ったスケーターだ。

M:もう一人加えよう、ハンヤンだ。

A:確かに
先週の中国杯で華々しいカムバックを果たした選手だね。
彼もスピード、しなやかでリズミカルな膝の屈曲、滑りの滑らかさにおいてジュニアの頃から僕達の目を引いた選手だ。

スケーティングスキルが卓越した選手として思い浮かぶのはこの4人だね。
女子では少しタイプが違うけれど、滑りの軽やかさという点においてコストナーが長年皆の見本だった。
でもコストナーは軽やかさと伸びによってスピードを出している。
勿論、カロリーナも膝を屈曲させていたけれど、彼らとはイメージが異なる。
彼女の場合、氷の表面をハイスピードで撫でているような印象。
一方、羽生とコストルナヤは氷に吸い込まれていくイメージ。

結果的に圧倒的に優れたスケーティングが生まれている。
ただし、このような卓越したスケーティングを獲得する手段が異なっている。
だから僕はコストルナヤに近い女子選手として真っ先に荒川を思い浮かべた。

僕達は技術側面について話してきたけれど、この少女には、これほど若いにもかかわらず非常に優れた表現力が備わっていることも忘れてはならない。
これは非常に稀なことだ。
スケーティングの質については話したけれど、氷上における存在感、つまりPCSのPerformanceに該当する部分も優れているし、これほど若い選手では中々見られないクオリティだ。
彼女は既に個性を確立していて、頭や上半身の動き、見る者に伝達する能力もより成熟したスケーター達と比較することが出来る。

M:断っておくと、伝達する能力とは何人かのスケーターが得意としているいわゆる顔芸ではない

A:違うね。腕、上半身、顔の表情、全身を使った身体表現だ。
勿論、顔の表情も含まれるけれど、それだけではない。

君はきっとサモドゥロワのことを言っているのかもしれないけれど(笑)。
まあ、彼女の場合、顔芸によって欠点から目を逸らすことに成功しているから、その点においては優秀と言える。勿論、欠点はそのまま残るけれど、選手によって武器は異なるから。

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スケーティングの話は興味深かったです。
中国杯ではハンヤンの卓越したスケーティング、クリーンで質の高いジャンプに魅せられました。クワドはなかったけれど、これぞフィギュアスケートという演技でした。

マッシミリアーノさんは基本的にスケーティングとジャンプの質が高いコンプリートな選手が好きですので、例えばメドちゃんが無双だった2年間は、ポッドキャストではひたすら新葉ちゃんとポリーナ・ツルスカヤの話ばかりしていました。
そして昨シーズンかその前ぐらいから断然コストルナヤ推しです(男子は羽生君一筋ですが女子に関してはかなり移り気なマッシミリアーノさん)。
ポリーナは怪我などが原因で残念ながら引退し、新葉ちゃんもこの2年間、怪我で思うような結果を出せずにいます。

怪我と隣り合わせの競技で、特に女子は体型変化もあり、注目されるようになるとプレッシャーもかかりますので、どんなに傑出した才能とポテンシャルに恵まれていても、必ずしも周りの期待通り順調に行くとは限りません。
ジュンファンやボーヤンも逸材と期待されていましたが、身体の成長などで伸び悩んでいます。

そう考えると、マッシミリアーノさん達を驚愕させた2008年のメラーノ杯から震災、怪我、手術、怪我と数々の困難に遭遇しながら、期待通りどころか、右斜め上を行く進化を遂げ、いまだに進化し続けている羽生君はやはり数百年に一人の奇跡のような存在だと改めて思います。

コストルナヤはエテリ3強の中では一番、体型変化の影響を受けなさそうと私は思っているのですが、北京オリンピックのシーズンにはワリエワもシニアに上がってくるのでどうなるか。
マッシミリアーノさん達はワリエワもトータルパッケージと絶賛しています。
ちなみにアメリカのアリサ・リュウが出てくるとチャンネルを変えるとか(ひどい😅・・・)

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