ポッドキャストKiss&Cry II第4回「4Lzと4Lo、本当に難しいのはどっち?」

前回に引き続き先週水曜日放送の第4回から

議論されたテーマは以下の通り:

  1. アリョーナ・コストルナヤの物語
  2. 露スケート連盟が女子ショートプログラムでの4回転ジャンプ解禁を要求していることについて
  3. 4ルッツ、4フリップ、4ループの比較。本当にルッツが一番高い基礎点に値するのか?
  4. 中国杯総評とロステレコム杯展望

この中から4)のジャンプについての考察を抄訳します。

Listen to “Kiss&Cry Reloaded – Puntata 4” on Spreaker.

出演者
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

3)も面白かったので、要点をザックリ

M:女子ショートでのクワド解禁には賛成だ。
ただし、女子ショートでクワドを解禁するなら、これを機にPCSでも是正措置を講じるべきだ。
PCSの係数を変更してTESとPCSの比重の均衡を保証すべきである。

例えばショートのPCS係数を1.3、フリーの係数を2.6に設定すれば、ショートのPCS満点は65点、フリー満点は130点になる。
男子は4アクセルを跳ぶ選手がいるかもしれないから、係数をもっと引き上げるべきだと言うのならそれもいいだろう。実際、男子ショートではTES65を出せる「完璧」に到達した選手が存在する。

これは誰でも思いつく非常に初歩的なソリューションであり、僕の犬のブラックでも適切な指示を出せば分かると思う。ジャッキー1本+1本=2本だ。
こんな簡単なソリューションにISUの重鎮がなぜ気が付かないのか心配になるレベルだ。

勿論、演技構成点を適切な基準で正しく評価することが前提になるが、もしショートのPCSが65点満点、フリーのPCSが130点満点になれば、PCS各項目平均9点と平均8点の選手ではショートとフリーを合わせて演技構成点だけで20点の差が開くことになる。

いずれにしてもトゥルソワが優勝する可能性が高いけれど、最近疎かにされつつある、スケーティングの質やトランジションが重視されるようになるだろう。

男子はもし演技構成点の係数を引き上げたら羽生が勝つ。
他の誰でもなく彼が勝つべきだ。
パッケージの完成度を比較したら、羽生が圧倒的に優れていることは火を見るよりも明らかで、議論にすらならない。

もし羽生がリンクに降りて、僅かなミスもない完璧なフリープログラムを滑って、TES133点を持ち帰るなら、PCSでも130点が与えられるべきだ。議論の余地はない。

 

<4ルッツ、4フリップ、4ループの比較。本当にルッツが一番高い基礎点に値するのか?>

M:正しい技術で実施された4ルッツ、つまりプレローテーションやブレードによるアシストがなく、明確なアウトエッジで踏み切る4ルッツは4ループと同等の難度だと僕は思う。

でも現在、多くの選手が跳んでいる跳び方の4ルッツ、つまりプレローテーションによって半回転稼ぎ、フルブレードでアシストする4ルッツは4ループより簡単だと思うし、基礎点も4ループより低くするべきだと思う。

もうひとつ言わせてもらうと、ISUは一体何をしたいのか方針を明確にすべきだと思う。
過剰なプレローテーションで踏み切る3ルッツ、3フリップにジャッジが+4、+5を惜しみなく与えるということは、ISUにとってこれは正しいジャンプということだ。

それならそれでいいだろう。
ただし、基礎点を較正し直すべきだ。

このような方法で跳ぶ3ルッツ/3フリップは3ループより簡単になる。
2つのメリットがある。
トゥを突き、さらに氷上に寝かせたブレードでアシストすることによって、より簡単に回転速度を上げることができるというメリットだ。

A:教本通りの正しい技術で4ルッツを跳ぶ選手はごく僅かしか存在しない。
男子でもごく数名。女子では存在しないし、今後見ることもないだろう。

僕の意見ではクリーンな正しい技術でルッツを跳んでいるのはジン・ボーヤン、ネイサン・チェン、羽生、コリヤダ・・・以上だ
正直に言ってこれだけだと思う。

M:いや、僕は技術的に正しいクリーンな4ルッツを跳ぶ選手は5人だと思う。
跳んだ順にジン・ボーヤン、ネイサン・チェン、羽生結弦、コリヤダ
そしていつも忘れられる可哀そうなメッシングも加えなければならない。

A:でも僕はメッシングが試合で4ルッツを成功させたのを見たことがない。

M:確かに着氷したことはないけれど、正しい技術で踏み切っていた。

A:ここまでの話は事実だが、これとは別にもう一つ考慮しなければならないことがある。
ループとルッツの難度の差はダブルジャンプまでは明らかだ(ルッツの方が難しい)
トリプルでは議論の余地があるけれど、まだルッツの方が難しいかもしれない。

ところが4回転ジャンプになると、何かが変わる。
このことは、数字が物語っている。
ルッツを成功させた選手に比べて、ループ成功者は圧倒的に少ない。
つまり、この統計は4回転になるとループの方が難しくなることを証明していると僕は思う。

何故か?

僕の見方では、トゥジャンプ、特にルッツとフリップは通常、ハイスピードで入るジャンプだ。
トゥを突くことで生まれる復元力(restoring force)を利用してより高く跳び上がる。
これに、現在多くの選手がやっている回転を多めに稼ぐプレローテーションを組み合わせると、回転に弾みを与えるループのメリット(氷上に置かれている踏み切る方の足はループとルッツは似ている)と、ルッツの入りのスピードを両方利用することが出来る。

ダブルとトリプルのルッツが最も習得の難しいジャンプと見なされている理由は、軌道のカーブの内側で跳ぶ唯一のジャンプ、つまり踏切時のムーブメントの回転方向に対して逆方向に回転する、バックアウトの動作を伴うジャンプだからだ。
だからルッツは他のジャンプに比べて回転しにくい。

このような理由から最初、ルッツが最も理解(習得)するのが難しいジャンプと解釈されていた。
しかし、矛盾するようだが、回転数が増えると、例えば4回転になると、この特性がより強調される。だから、踏切前に多大なパワーを溜め、それから自分が回転する方向に向かって踏み切ることができる。
これは技術の一端だが、回転に弾みを与えやすくなる。

一方、ループでは、回転の弾みをコントロールするのが非常に難しい。
ループはルッツと違って踏切の際に軸がずれやすい。なぜなら、上半身と肩の勢いで回転に弾みを与えるからだ。しかも、回転軸は完璧に維持しなければならない。
これは非常に難しいことで、この動作の角度が少しでも間違っていたり、軌道のカーブの外に出てしまうと、軸がずれ、3回転でも激しく転倒する。
だからこのテクニカルコンポーネントには高い価値がある。

最後にもう一つ補足すると、ループは非常に強力なパワーを必要とするジャンプだ。
みんな (僕が最初の一人だけれど)、公式練習で羽生が膝を深く屈曲しながら実施した4ループに驚いたと思う。みんな見たよね?

非常に特殊な練習方法だが、彼のこのエクササイズから4ループの踏切には多大なパワーが必要で、同時にこのパワーは絶妙にコントロールされていなければならないことが伺える。
彼はこの足を「落ち着いた」状態にし、パワーを一旦溜めてから放出して踏み切る。
こうすることでパワーを段階的に表出する。
なぜなら、ループにはトゥジャンプの軽さはなく、フリーレッグを振り上げず、同時にトゥジャンプのような復元力(restoring force)も使わずに、氷に付いた足で踏み切らなければならないからだ。

アクセル、トゥループ、サルコウはフリーレッグを振り上げることによって高さと回転の弾みを助けることが出来る。
一方、ルッツ、フリップはトゥを突くことによって生まれる復元力と軽さを生かすことが出来る。簡単にいうと棒高跳びの原理だ。

しかしループにはこのどちらもない。
このことは、このジャンプの実施を非常に難しくしていて、より強力なパワー、ただしコントロールされたパワーが求められる。

4ループを跳ぶ女子選手がいないのは、こうした理由からだろう。
強靭な筋力を必要とする上、このパワーを高さと回転力に生かし、回転軸をコントロールして維持するのは、技術的に非常に難しい。

実際、数字が明確に物語っている。
4ループを跳べる選手はごく僅かだ。

難度のスケールが作られた時、4回転のルッツ、フリップ、ループを跳んでいる選手はまだ存在しなかったから、3回転ジャンプを目安に基礎点が設定されたのだろう。
おそらくダブルとトリプルではルッツの基礎点がループより高い設定は正しいと思う。
ただ4回転ジャンプに関しては基礎点を見直すべきだと思う。

そして、先ほど話したように羽生やコストルナヤのようにエッジの使い方が上手く、スケーティングの質が高い選手はクオリティの高いループ、アクセル、サルコウを跳ぶことが出来る。

M:もう興味深いことがもう一つある。
現行のジャンプ基礎点表によれば、4アクセルと4ルッツの点差は僅か1点だ。

A:全く辻褄が合っていないという印象を受ける(爆笑)

M:全く辻褄が合っていない。
3回転ジャンプではルッツとアクセルの点差は2.1点だ。
何かがおかしいのは明らかだろう
究極難度の4アクセルの基礎点が4ルッツと1点しか違わないなんて、どう考えてもあり得ない。

僕はより公正なルールを望んでいる。
ルールとジャッジが公正な方が、フィギュアスケートに親しみやすくなるし、視聴者も得点や結果を理解しやすくなる。
現在では試合の度に説明のつけようがない得点に対する批判が殺到している。

<視聴者からの質問>
羽生結弦の4ルッツについて
彼はこのジャンプに苦戦しているようだが、怪我の原因になったジャンプだから心理的な問題なのか?

M:彼の4ルッツはクリーン過ぎるのだと思う。
ネイサン・チェンは踏み切った瞬間から回転を始めるため、これによって羽生ほど高さを必要としていない。

A:ネイサン・チェンもプレロテのないクリーンな4ルッツを跳ぶことを強調しておかなければならない。

M:羽生の4ルッツはネイサン・チェンに比べると回転の開始が遅いので、空中で回転し切った後、着氷までのスペースがほとんどない。だから、膝を深く屈曲して着氷しなければならなくなる。

A:実際、羽生の4ルッツの滞空時間はシェルバコワのルッツより0.15秒も長く、飛行が永遠に続くようなインパクトを与える。

M:これは僕の個人的な意見だけれど、羽生は4ルッツを跳ぶ際、高く跳び上がり過ぎて回転の開始が遅れるのかもしれない。
ネイサン・チェンの4ルッツを見ると、羽生のルッツほど幅も高さもない。でもこのことがチェンにとってメリットになっているのかもしれない。

勿論、彼の膝と足首が健康で、100%のコンディションなら、彼はこのジャンプを跳べるだろう。
もし40メートルからの助走から跳べば簡単に跳べるのだろう。
でも彼は絶対にそんな跳び方はしないから・・・

A:彼はこのジャンプで大怪我をしているから、もしかしたら、心理的要素もあるのかもしれない。
4回転ジャンプの場合、高さが5~7cm足りないだけで、酷い転倒を招くことがある。

M:一理あるけれど、僕は別の観点から考察したい。
4ルッツと4ループが原因となった羽生の2度の大怪我は、どちらも時差ボケがまだ残っている移動から数日後の公式練習で起きた。
一度目は病み上がりの状況だった。
だからおそらく、精神的・体力的に万全ではない状態でこのような高難度ジャンプに挑戦したために起こった怪我だと僕は思う。
どちらのケースも全く同じ状況だった。

だってトロントで、彼はこれらのジャンプを毎日何本跳んでいる?
トロントで4ルッツや4ループが原因で大怪我をしたというニュースは、僕達が知る限り一度も聞いたことがない。

だから来週、日本の札幌で行われる大会に向けて、僕は結弦が時差ボケ対策で1週間早く帰国してくれることを願っている。
彼は聡明だから、ちゃんと考えていると思うし、2度同じことが起こったから、より慎重になっているとは思うけれど。

A:僕達全員の願いだ・・・

<中国杯のハンヤンの話から>

M:僕とアンジェロの昔話をしよう。
僕達は羽生を最も早く発見した一人だったと自負している。
彼を最初に見たのは2008年のメラーノ大会だったけれど、僕達にはすぐに彼が何者なのか分かった。
そして羽生の後で僕達に衝撃を与えた選手の一人がハンヤンだ。僕達は、彼は羽生のライバルになる選手だと思った。

A:実際には全くそうならなかったけれど(笑)・・・

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マッシミリアーノさんのあまりにも過激な発言はカットしましたが、犬のブラックの下りは面白かったのでつい訳しちゃいました。😂
羽生君が大好きというマッシミリアーノさんの愛犬ですね。
きっと毎日何時間も羽生君の動画を見せられているのでしょうw

私も4アクセルの基礎点は低過ぎると思います。
3アクセルはクワド寄りの基礎点設定なのに、なぜ前人未到の4アクセルが4ルッツと1点しか違わないのか
4回転ですよ???
最低でも4ルッツの1.5倍の基礎点に値すると思います。

試合の度に批判が殺到すると言っていますが、今回のロステレコム杯ではサマリンのPCSと4Lz-3TのGOEに非難が殺到しています。
そのせいなのかどうかは分かりませんが、OA Sportでは毎週、月曜日にファブリツィオ・テスタさんが週末のグランプリ大会の4カテゴリーそれぞれの試合(男女シングル、ペア、アイスダンス)について総評記事を書いているのに、ロステレコム杯だけ男子シングルの総評がありません・・・
意図的にスルーしたのか忘れたのか・・・なかったことになっているロシア大会男子シングル😅
(マッシミリアーノさんとアンジェロさんはサマリンに対してはとりあえずいつもボロクソw)

4ループと4ルッツのアンジェロさんの説明、
物理の授業みたいで難しかったけれど、とても分かりやすかったです。

私の中のベスト4ループは、ヘルシンキ世界選手権のLet’s Go Crazyのループです。
この時、現地でしたが4ループはまさに私の目の前でしたので、ド・迫力でした!

もうすぐNHK杯
怪我無く無事に競技できますように・・・
アンジェロさんも言っている通り、これが私達ファン全員の願いです・・・

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