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ポッドキャストKiss&Cry II第7回「トリノGPF~女子シングル考察+」

前回ご紹介したポッドキャスト第7回から
女子シングルに関する話題で興味深かった部分の抜粋・要約+前回聞き逃していた羽生君の名前がチラッと出てきた部分

Listen to “Kiss&Cry Reloaded – Puntata 7” on Spreaker.

出演者
フランチェスコ・パオーネ(司会)(F)
マッシミリアーノ・アンベージ(ジャーナリスト、冬季競技アナリスト)(M)
アンジェロ・ドルフィーニ(元ナショナルチャンピオン、国際テクニカルスペシャリスト)(A)

M:ジュニア女子ではカミラ・ワリエワが調整が不十分だったにも拘わらず優勝した。
彼女は怪我から復帰したばかりで、足のトレーニングがあまり出来ておらず、ショートでは明らかに苦戦していた。
フリーでは4回転ジャンプを抜いて構成を下げたが、高いクオリティを披露した。

ワリエワの勝利はフィギュアスケートの勝利だと僕は思う。

なぜならリウとの差は歴然だからだ。
ショートプログラムで彼女達に与えられた演技構成点には茫然とさせられた。
如何なる方法においてもリウとワリエワを同列に並べることは出来ないからだ。

しかし、リウは高得点が稼げる高難度ジャンプでミスを連発し、ワリエワが優勝した。
しかし、もしリウがノーミスなら彼女が優勝していたから、ワリエワはリウのミス待ちという状況だった。
ジュニア女子における試合の展開と最終結果はポジティブな兆候だったが、採点システムが機能していることを示した訳ではなかった。

F:アリーナ・ザギトワの進退について様々な噂が飛び交っていることについて
彼女がフリーでミスをしたのは、身体の成長のせいか、それとも3強への脅威とプレッシャーが原因なのか?君達の意見は?

M:アリーナ・ザギトワはシニアとジュニアの獲得可能な全てのタイトルを獲得している。
彼女はここまで輝かしい3シーズンを送ってきた。

まずジュニア2年目のシーズンにジュニアの全てのタイトルを獲得、
オリンピックシーズンには世界選手権以外のシニアの全てのタイトルを獲得した。
ミラノでは世界タイトルを逃したが、そもそも五輪女王が五輪直後の世界選手権に出場すること自体、特別なことなのだ。

そして、その翌シーズン、アリーナは開催国の選手で優勝候補だった紀平梨花を破って世界タイトルを手に入れ、ジュニアとシニアにおける全冠達成を成し遂げた史上最年少の女子スケーターになった。
彼女以前にこの偉業を成し遂げたことがあるのはキム・ヨナだけだ。

アリーナ・ザギトワは美しい。
これは客観的に誰の目から見ても明らかだ。

アリーナ・ザギトワは裕福だ。
世界の半分と広告契約を結んでいて、数を制限しているほどだ。

アリーナ・ザギトワは有名である。
彼女はロシアだけでなく世界的に有名だ。

アリーナ・ザギトワは身体の成長などの問題にも拘わず、自分にはない高難度ジャンプを持つリンクメイト達と競うためにリンクの中と外で毎日8時間のトレーニングを積んでいる。

先シーズンまではミスなく滑れば勝てるチャンスがあった。
実際、世界選手権では、紀平が複数のミスを犯したため、大きなミスなくまとめたアリーナが大差で優勝した。

しかし、今シーズンから更に厳しくなった。
プレッシャーではないと思う。
問題はアリーナ・ザギトワの手持ちのジャンプが3年前から変わっていないことだ。

オリンピックシーズン、彼女の勝因となった武器は3ルッツ/3ループのコンビネーションジャンプで、彼女はショートでもフリーでもこのジャンプを後半に跳んでいた。
しかし五輪後にルールは改正され、後半にジャンプを固めることが出来なくなった。
このルール改正の影響は大きい。

そして身体の成長によって、彼女の最大の武器であるこのコンビネーションが入らなかったり回転不足を取られたりするようになった。

しかし、年齢と共に表現力が向上したのも事実だ。
スケーティングスキルに関しては、アリーナ・ザギトワは勿論、ナンバーワンではない。
メドヴェデワに比べればナンバーワンかもしれないが、スケーティングスキルにおいて彼女より優れた選手は何人もいる。例えば、それはテネルではない。

A:テネルのスケーティングスキルも今シーズン、飛躍的に向上したけどね

M:しかし、テネルにはアリーナのような優美さはない。
上半身の動きという点において
これも過小評価すべきではない要素だ。

ザギトワはスケートを楽しむためにここにいるのだと思う。
おそらく彼女は自分のシーズンがここで終わったことを知っているのだろう。

彼女を上回った3人のリンクメイトにはどうやっても勝つのは不可能だ。
彼女達は別のスポーツをやっている。
おそらく3人の中で一番手が届きそうだと思われていたのは今大会の優勝者だった。
しかし(クワド無しの)コストルナヤも250点だ。
250点前後の得点を叩き出す3人のモンスターを前にして何をすべきか?

楽しめばいい
怪我をしないよう注意しながらスケートを満喫し、晴れやかに生きればいい。
獲るべきものは全て獲ったのだから

そして、ロシアの選手は選手生命が短いだの、僅か17歳でキャリア終了はおかしいだの色々な批判を目にするが、それはロシアの勝手で、外野がとやかく言うことではない。
ロシアのシステムはこうなのだと心に留めて黙って家に持ち帰るべきだ。
外野が批判することではない。

むしろ、他の国がロシアのような選手を一人も育成出来ないのは何故なのかを考えてみるべきだろう。
例外は紀平梨花だけだ。
彼女はミス・フィギュアスケートでこのような選手には皆ひれ伏すべきだ。

アメリカがリウを育成しようと試みているけれど、もしルールブックの規定通りに正しく採点したら、リウをコストルナヤや紀平やワリエワ達と同列に並べることは絶対に出来ない。
彼女達がやっているのはリウとは別のスポーツで、実質この競技を別のフロンティアまで進化させた。
ロシアは自国の利益のためにこのような選手育成システムを開発した、
他の国はこれは批判するよりも対抗手段を見出すべきだ。
例えばロシアの「大人」の選手について考えるなら、トゥクタミシェワに勝てるのも紀平梨花だけだ。

A:そして選手生命の長さについては未知数だ
四回転ジャンパーの女子選手は選手生命が短いと言われているが、今後数年間を見なければ実際にそうなのか否かは分からない。
非常に興味のあることだ。

でも今はこの時代を楽しみたい。

キャリアの長さという点においては東洋の女子スケーターの方が選手生命が長いかもしれない。
例えば紀平は3アクセルを武器に長く戦えると僕は思う。
今大会では4サルコウにも挑戦し、もう少しで成功しそうだった。
今回のファイナルでは転倒したけれど、綺麗な4サルコウを回り切った。
彼女はより長くキャリアを続けられるのではないかと僕は思うけれど、実際にどうなるかは分からない。
日本は昔から3アクセルを長年跳び続けることが出来る選手を輩出してきた。
トゥクタミシェワは非常に特殊な例だ。
今後、どうなるか見ていこう。
いずれにしても女子の試合は技術的に驚異的だった。

M:でも事実を言えば、タラ・リピンスキー、オクサナ・バイウル、サラ・ヒューズ等
十代で金メダリストになり、その後キャリアを終えた女子スケーターがこれまでに何人いた?
今ではロシアが批判の的になっているけれど、女子スケーターのキャリアが短いのは今に始まったことではない。

A:日本は国内競争が激しいにも関わらず、長年活躍した女子選手が何人もいた。
カロリーナ・コストナーは例外的にキャリアの長い選手だが、国内競争がないに等しいイタリアの話だからロシアと比べることは出来ない。

M:ロシアの女子スケーターは短命で2年でキャリアが終わるという批判が絶えないが、例えばメドヴェデワは今でも220~225点を出すことが出来るし、彼女は称賛に値する戦士だ。
ただ問題なのは、現在のロシアのトップ選手達はミス有りで240点を出せるということだ。

しかし、北京オリンピックのシーズンにはワリエワがシニアに上がってくるから、現在無敵と思われているトゥルソワ、コストルナヤ、シェルバコワの3人も2年後にはどうなっているか分からない。

つまり、女子シングルではオリンピックの度に主役が変わる。
カタリナ・ヴィットのような選手は、別時代における、おそらく唯一の例で、ヴィット以前も女子シングルでの五輪連覇はごく僅かな例しかない。

ロシアはやりたいようにやればいい。
僕達は高難度プログラムを披露する選手達のスペクタクルを楽しもうじゃないか。
彼女達の演技にはパトスがない、芸術がない、何も伝わってこないと批判する人々が絶えないけれど

A:(このような批判の)一部は事実だ。
ただしコストルナヤのことではない。
彼女はこの年齢で芸術的にも成熟しているが、これは例外的なケースだ。

M:規格外の選手だ

A:規格外の選手という点ではトゥルソワもそうだが、芸術性という点においてはコスタルナヤに近づきもしないし、彼女がコストルナヤのようになることはおそらく永遠にないだろう。
シェルバコワはもしかしたら今後、この点においても向上していくかもしれない。

でも僕が強調したいのは、トゥルソワを表現面で成熟した選手達、テネルや紀平やザギトワと比較することは出来ないということだ。
今の状況は、子供(女性だがまだ子供体型)が女性スケーター達と競技しているようなもので、評価するのは難しい。
それなら大人の女性は彼女達同士で競技し、小さな少女達は別カテゴリーで競技させた方がよいという話になる。
でもそうなると、年齢制限に関するルールを大幅に改正しなければならなくなる。

M:実際に、タラ・リピンスキーの金メダルの後、このようなルール改正が行われた。
年齢制限が更に引き上げられるかもしれないけれど、いずれにしても次の五輪の後だ。

A:確かにそうだ。
しかし、僕が言いたいのはトゥルソワの演技構成点を他のより成熟した選手達の演技構成点と比較するのは困難だ。
トゥルソワを例に挙げたのは彼女がこの点において一番、未熟だからだ。
ワリエワも並外れたスケーターだが、「表現」という点についてはまだ子供だ。

スケーティングスキルではワリエワはミサイルのようにスピードがあり、素晴らしいクオリティだ。
しかしながら、子供が滑るプログラムと、大人の女性のプログラムは根本的に別物で、同じ土俵で評価することは不可能だ。

この問題は、トゥルソワ、シェルバコワ、コストルナヤのせいではないし、以前にユリア・リプニツカヤでも同じことが言われ、もっと過去に遡るならタラ・リピンスキーでも同じことが起こった。
つまり、少女体型が有利なこのような競技では、周期的に何度も浮上する問題なのだ。

<コストルナヤに4回転ジャンプは必要か?今回のファイナルの結果と今後の展望>

M:コストルナヤは2つのプログラムをクリーンに滑り、4回転ジャンプでミスのあったトゥルソワとシェルバコワを上回った。
コストルナヤは現在、4サルコウを練習しているが、彼女にクワドが必要かどうかは、その他の選手達の今後の動向次第だ。
しかし、僕が強調しておきたいのは、トゥルソワとシェルバコワはトリプルだけのプログラムでも表彰台だったということだ。
唯一フリーで彼女達を上回ることが出来たのは紀平だけだが、ショートでの出遅れが大き過ぎだ。

A:彼女達にとって脅威になるのは紀平だけで、他の選手達は敵ではない。

M:紀平はコストルナヤ、トゥルソワ、シェルバコワと同じカテゴリーに属する選手だ。
現在、4回転ジャンプを跳ぶ彼女達が無敵という状況に対して批判があるが、もしトゥルソワがトリプルジャンプだけのプログラムを作ったら、最初から最後までずっと片足で滑ることが出来るだろう。
勿論、彼女は表現力が豊かなタイプではないし、他の選手に比べてあまり伝わってこないのかもしれない。
しかし、この点に関しても、彼女の特長を生かした賢いプログラムを構築すれば、高得点を持ち帰れる。
ジャンプの高さに注目すると、トゥルソワほどジャンプの高い選手はごく僅かだ。
コストルナヤは男子も羨むほど高さのある素晴らしい3アクセルを持っている。
トゥルソワのジャンプの高さも男子並みだ。
ネイサン・チェンのジャンプの高さと比較してみて欲しい。

彼女達はコンプリートなスーパーアスリートだ。
トゥルソワは大会の後、4ループに挑戦したいと発言している。
既に四種類の4回転ジャンプを成功させ、残るのはループだけだ。

ただしトゥルソワは羽生やネイサン・チェンのように5本もクワドを必要しないと僕は思う。
彼女の目標はファイナルで250点近い得点を叩き出したコストルナヤに勝つことだが、クワドは3本ほどに絞って量より質を重視する選択をした方がいいのかもしれない。

いずれにしてもアクレサンドラ・トゥルソワは4種類の4回転ジャンプを試合で成功させた史上初の女子スケーターとして50年後も記憶されているだろう。
トゥループ、ルッツ、フリップは彼女が女子スケーターとして史上初めて成功させた4回転ジャンプだ。
彼女は既に歴史を作った。
ただし、シェルバコワに勝つのは簡単なことではない。

A:難しいね。
シェルバコワは練習では素晴らしい4フリップを成功させていた。
ルッツとフリップは彼女の得意なジャンプだ。
しかも、彼女はトゥルソワよりコンプリートな選手だ。
実際にこれまでに何度もトゥルソワを上回れることを見せてきた。

僕はコストルナヤには4サルコウが必要だと思う。
ずっと勝ち続けたいなら。

あるいは他の選手達がリスクを冒し、ミスを連発するのを待つか
それに注意して欲しいのは、遅かれ早かれ女子のショートでもクワドを解禁するルール改正が行われる可能性があることだ。

そうなると状況は一転し、コストルナヤはトゥルソワとシェルバコワに勝てなくなる。
もしショートでクワドが解禁されたら、トゥルソワはフリーの難度を少し下げ、ショートの難度を上げるだろう。そうなったら、実質、シェルバコワ以外に彼女に勝てなくなる。

M:もしそのようなルール改正が行われるとしても、次の五輪の後だろうけどね。

A:僕もそう思う。
しかし、既に何度も議論されていることだ

M:僕は紀平梨花についても話したい。
彼女は前述の3人の選手と同カテゴリー、あるいはそれ以上の選手だ。
もし、紀平梨花が今いるところではなく、彼女達と一緒にサンボ70で練習したら凄いことになるだろう。
ロシアの少女達のアドバンテージは梨花と比べると遥かに優秀なコーチ陣と練習していることだ。
日本は反論するかもしれないが、ここ10年間の結果が示している事実だ。
この差はプログラム構成にも表れている。

紀平梨花は無限のポテンシャルを持つ選手だ。
メンタル的にロシアの3人に比べて少し繊細かもしれないが

A:いずれにしてもフリーではメンタルの強さを引き出してみせた。

M:問題は練習環境という点においてロシアの選手達ほど恵まれていないことだ。
僕は彼女が4サルコウをプログラムに入れられることを願っている。

現在、怪我の問題で3ルッツを抜いていたことも大きなハンデになった。
しかし、このハンデが今後、強みに代わる可能性がある。

何故なら、フリーの難度を下げたことで、新しいコンビネーションに挑戦することが可能になった。そして、新たに習得したこのコンビネーションは今後、役立つかもしれない。

もしモントリオールに万全な状態でやってきたら、彼女はロシアの3選手と共に優勝候補の一人だ。
紀平梨花は彼女達より1歳上だが、彼女達と同じ言語を話す選手だ。
日本の女子選手は通常、選手生命の長い選手が多い、
いずれにしてもロシア3選手と対等に戦えるのは紀平梨花だけだ。

F:視聴者からの質問
現地で生で見ると、トゥルソワはジャンプの高さにおいてチェンを断然上回っているだけでなく、片足滑走の多さとリンクカバレッジでもチェンより優れていることが分かった。
これについてどう思うか?

M:僕達はいつも羽生のフィギュアスケートがより体力を消耗すると言っている理由は、彼のプログラムが片足滑走が多いのに加え、リンクカバレッジも傑出しているからだ。
これは演技構成点のCompositionで評価されるべきだ。
Skating Skillsで評価するジャッジも何人かいるし、それも正しいけれど、Compositionでも高い得点が与えられるべきだ。

チェンは以前よりこの点において向上したし、リンクカバレッジがあまり高くないのは何も彼だけではない。
例えば、メドヴェデワとザギトワのプログラムを注意深く観察すると、彼女達がリンクカバレッジにおいてそれほど傑出している訳ではないことが分かる。

リンクカバレッジが傑出しているのは宮原
紀平梨花もそうだろう
コストルナヤ、
当然、羽生
羽生は一人でこういったことまで意識してプログラムを構築する選手だから言うまでもない。
彼はあらゆることを自分で考案・計算している。

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☆女子シングルはジュニアもシニアもPCSとGOEが勝敗を分けた、クオリティが高難度ジャンプに勝った大会でした。

生で見て、女子の中で最も印象的だったのはワリエワのフリーでした。
例えが悪いですが、軟体動物のような長い手足の優美な使い方、ジャンプ前後のピンと張ったアラベスクのように美しいフリーレッグのインパクトが強烈でした。

アリーナのショートプログラムも素晴らしかったです、
私は平昌の時より、表現力が飛躍的に向上した今のアリーナの演技の方が好きです。
休養発表にはびっくりしましたが、引退ではないと本人がはっきり否定したので安堵しました。
これからも彼女にしか演じられないプログラムを見せて欲しいです。

梨花ちゃんは公式練習ではクリーンな4サルコウを何本も着氷していました。
世界選手権で成功するといいですね。

ショート/フリー合わせて3本の3アクセルに加えて、4サルコウが安定して決められるようになれば、エテリ3と十分戦えます。
世界選手権も引き続きエテリ3 vs 紀平梨花になりそうです。

個人的に全日本での樋口新葉ちゃん復活が嬉しかったです!
グランプリシーズンの頃に比べて見違えるほど身体が絞られていてびっくりしました。
新葉ちゃんは日本の選手の中でも練習環境という点において最もハンデがありますが、今や絶滅危惧種となったトーピック+完璧なアウトエッジのリアル3ルッツを跳んでいる数少ない選手の一人です。
それに彼女のスケーティングは・・・スピードと滑らかさにおいてコストルナヤを上回っていると私は思います。
試合で3アクセルが入れられるようになるといいですね。

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち