マッシミリアーノさんのライブ配信「羽生結弦の4回転アクセル」

今朝配信されたマッシさんのライブ配信。
様々なスポーツを取り上げていますが、最後に4アクセルとプレローテーションについて触れています。きっと黙っていられなかったのですね。
フィギュアスケートの良心、マッシさん、ありがとう!
Grazie Max, sei la Coscenza del Pattinaggio….

エレナさんが羽生君部分を切り取ってくれました。いつもありがとう!
Grazie Elena!❤

マッシミリアーノ・アンべージ(伊ユーロスポーツ解説者、冬季競技専門ジャーナリスト/アナリスト)

非常に技術的な時事的な話題で締めくくりたい。本来なら何かの次いでではなく、適切なトピックで議論されるべきことだ。
フィギュアスケートの4回転アクセル
ここ最近、この4回転アクセルが話題の的になっている。何故なら史上最高のスケーターの一人、あるいは史上最高のスケーター、羽生結弦が昨シーズンの全日本選手権とオリンピックでこのエレメントに挑戦したからだ。
そしてこのエレメントを成功させている少年の動画が出回っている。
しかし、注意して欲しい。物事を明確にするために、適切なコンテクストで取り上げるべきだ。

過去20年間でフィギュアスケートは大きく変化した。
ジャンプの技術は変化した。
何故変化したのか?
何故なら、ジャンプを判定するジャッジ達がある技術を通関させたからだ。
フィギュアスケート教本の技術ではない。
プレロテーションの概念(注意して欲しいのは、この跳び方はずっと前から存在していたということだ)は悪化した。
プレローテーション、時にはトゥジャンプと呼ばれるジャンプでフルーブレードでアシストする跳び方。ルッツとフリップはもはや以前とは全く異なるジャンプになってしまった。
一種のループもどきだ。

僕はアメリカの少年が成功させた4アクセルの映像を見た。オリンピックに出場したことのあるレベルのスケーターを両親に持つジュニア世界チャンピオンだ。
並外れていることは確かだ。プレロテで跳ぶ選手でさえ、これまで4回転出来た選手はいないからだ。
しかし、4回転アクセルは4回転半回るジャンプだ。唯一、前向きで踏切るエッジジャンプで、完璧に実施された1アクセルは1回転半、2アクセルは2回転半回る必要がある。
マリニンがやったことは未だかつて誰にも出来なかったことで、本当に凄いことだ。
しかし、あの4回転アクセルは(それに認定されるには公式大会で成功しなければならない)、4回転アクセルではない。ここ数年間で試合で多く見られるようになった、アメリカ、日本、イタリアの多くの選手による綺麗に成功した3回転アクセルが3回転アクセルではないように。
何故なら離氷前に信じられないほどプレローテーションしているからだ。
今現在、このような跳び方が許されるのか?
許されてしまっている。
ここ20年間、ISUがルールで介入することなく、これを放置してきたからだ。
選手達はルールに引っ掛からないところで、ズルが出来るならズルをするだろう。
フィギュアスケートは、より多く回転出来れば、より点数を稼げるスポーツだからだ。踏切の際、下で回ることでそれが可能になるなら、選手達はその手段を使うだろう。
女子シングルでは正しい技術でジャンプを跳べる選手はもはや片手で数えるほどしかいない。

羽生結弦は言う
「僕は自分が理想とする跳び方で4回転アクセルを成功させたい」と
すなわち、プレローテーションのない、本来そうあるべきアクセルだ。
アクセルだけでなく、他のジャンプについても同じことが言える。

教本通りの4回転アクセルを成功させることは、オリンピックで金メダルを獲るより難しいと僕は思う。現在、2022年の時点では。8年後の2030年にはもしかしたら変わっているかもしれない。
時代と共に材料は進化する。ブレードはより軽量に、より耐久性が高くなり、靴もより衝撃を吸収出来るようになる。しかしこれらは10年ぶりにスケート靴を履けば気付く変化であり、毎年履いていたら分からない。
だから、僕はひょっとしたら2030年にはスケート靴の進化によって、正しい技術で4回転アクセルを普通に跳べるようになっているかもしれないと思うのだ。現在は不可能だ。
マリニンはブラボーだ。彼は誰にも出来なかったことをやってのけた。
しかし、これは4回転アクセルだ、とは言わないで欲しい。
笑ってしまうのは、かつてエフゲニア・メドヴェデワのジャンプの跳び方を批判していた連中が、マリニンを絶賛していることだ。
メドヴェデワの技術がダメなら、マリニンの技術もダメだろう。このような状況は公正に判断しなければならない。
しかし、これは選手のせいではない。彼らは教えられた通りにやっているだけだ。

僕の意見を言うなら、4回転ループを初めて成功させたのは羽生だ。
4回転フリップを初めて成功させたのは、宇野昌磨ではなく、ネイサン・チェンだ。宇野はプレロテでブレードでアシストしながら実施した。一方、ネイサン・チェンが初めて跳んだ4回転フリップはクリーンだった。4回転ルッツを初めて成功させたのは、ブランドン・ムロズでもニースで降りたセフガノフとかいうロシア人でもない。今も昔もジン・ボーヤンだ。教本通りの4回転ルッツ。彼は初めてプレロテ無しの4回転ルッツを成功し、その後もその技術で跳び続けた。確かに、初成功者として記録に残ったのは、ルッツはムロズ、4フリップは宇野昌磨だが、教本通りのジャンプではなかった。僕の意見ではネイサン・チェンとジン・ボーヤンのジャンプが史上初として記録されるべきだった。
これは僕の見解だが、全てを一つのコンテクストにまとめておきたかった。

来シーズン、僕達はおそらく史上初の4回転アクセルを見ることになるだろうが、羽生が跳んだ4回転アクセルと、このイリヤ・マリニン(間違いなく尊敬に値する才能ある選手だが)が成功させるであろう4回転アクセルとでは、全く技術が異なっている。
羽生はISU公式大会以外のステージでこのジャンプに挑み続ける。
現在のツールでこのエレメントを(正しい技術で)成功させるのは困難だと僕は思う。何故なら、現在のスケート靴で跳び上がることが可能な高さは決まっているからだ。回転速度についても、マリニンは非常に優れているが、速められるにしても高が知れている。そして人間が空中に留まっている最大時間も決まっている。その中でもう1回転増やすのは至難の業だ。

しかし、羽生に不可能はない。彼のキャリアがそれを証明している。彼が全日本ノービスで優勝した頃から。あれから永遠に感じられるほどの時が流れた。
彼が成功出来ることを僕は願っている。
しかし、本当に勝つの難しい挑戦だ。重力との戦いだ。
もし成功したら拍手喝采だ。
そして回避しても誰にも文句を言われない、このような挑戦をこれからも続けていく気であるというだけでも、彼がどのようなアスリートで、どのような人間かを物語っている。
そして彼が背負っているスポーツの価値観を。

羽生も4回転半を回り切って降りるためにプレローテーションすればいいじゃないか、という者がいるかもしれない。
答えはノーだ。
選手は小さい頃に学んだ技術でずっと行く。
別の方法でアクセルを跳ぶのは困難だ。例えばランビエールはトリプルアクセルが苦手だったことで有名だが、彼はついにトリプルアクセルへのアプローチを矯正することが出来なかった。何故ならこれが彼が子供の頃に身に付けたアクセルの跳び方だったからだ。この跳び方で3回転アクセルを跳ぶのは困難だった。決まれば素晴らしいジャンプだったが、成功率は非常に低かった。僕の意見では15~16歳以降に技術を矯正するのは不可能だ。
だから僕は羽生が踏切り時にプレローテーションする4回転アクセルは跳ぶことは絶対にないと思うのだ。いずれにしても跳び方を変えることは不可能だし、羽生の場合、彼の気性、彼が理想とするフィギュアスケートに反している。

最後になるが、僕は客観的に見てフィギュアスケートが窮地に陥っている今現在、ISUがルールに対して何らかの対策を講じる決断をすることを切望している。新しい五輪周期が始まったばかりの今なら可能だ。
先だって行われたISU総会は迷走しており、幾つか行われたルール改正も意味がよく分からなかった。まだ時代の流れを変えられるチャンスはある。
プレローテーションやフルブレードでアシストするジャンプ、フリップ/ルッツのトゥジャンプのエッジを本気で取り締まる気があるなら、ただガイドラインに書いてお茶を濁すのではなく、より厳格に適用すべきだ。もっと具体的に言うと、テクノロジーを使って正しいルッツ、正しいフリップを判断すべきだ。
コンピューターとレーザーがあれば、踏切り時のエッジが垂直線に対してどちらに傾いているか識別出来るだろう。その傾きに応じて、ジャンプの名前を決める。
現在、ルッツと申告されているけれど、ルッツではないジャンプ、フリップと申告されているけれどフリップではないジャンプを僕達は試合でよく見かける。
これは良くない。
クリーンで正しい技術を持つ数少ない選手達を不利にするからだ。
前回の総会では幾つかの点に関して明確化された。しかし、更に一歩進む必要がある。
そして、その一歩にはテクノロジーが必要不可欠なのだ。
ジャンプの回転や踏切りのエッジを判定するテクノロジーだ。
テクノロジーはスピンにも使える。シットスピンで軸足の太腿が氷面と平行になっていない場合、シットポジションとは見なされないので、ジャッジから+5を貰うことは出来ない。それどころか基本ポジションがないスピンということになる。同じようにプレロテジャンプはジャッジから+4や+5を貰うべきではない。
このようなジャンプで高いGOEが貰えるなら、指導者達は例え間違った技術であっても、この跳び方を教えるようになるだろう。問題はそこなのだ。

僕は色々なアイデアを挙げてみた。
フィギュアスケートはもはや引き返せないところまで来てしまっている。誰かが介入しなければ、フィギュアスケート競技を見る観客や視聴者はどんどん減っていくだろう。
これは好ましいことではない。何故なら、フィギュアスケートは本来、素晴らしいことを提供出来るスポーツだからだ。
僕がずっと抱いているこのスポーツの概念は、技術と芸術の融合だ。しかし、現在のフィギュアスケートはそうではなくなってきている。
皆さんもよく考えてみて欲しい。

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☆プレロテジャンプについて一応、GOEマイナスになるとガイドラインに明記されました。
しかし、これまでも180度以上のバクセルはダウングレードになるとガイドラインに書いてあるにも拘わらず、実際に<<マークが付いたのを見たことがありませんから、プレロテも実際の試合でちゃんと適用されるかどうか。しかし、羽生君のプロ転向で、私自身、ISUの競技会に対する関心はダダ下がりで、正直もうどうでも良くなっています。

先日放送されたテレビ朝日の緊急特番「羽生結弦 感動をありがとう~終わりなき挑戦~」でファンからの質問を募集していたそうですね。

イタリアのファンからの質問はこちら

イタリアファンは羽生君とマッシさんを対談させられないものかと結構本気で画策しているようです😂
しかし、マッシさんはポッドキャストや解説を聞くと、ガンガン行くイメージですが、実はとてもシャイな方で、とりわけ羽生君に対してはリスペクトが大き過ぎて、トリノファイナルでは関係者特権でバックステージに入り込んで、サインを貰うぐらいのチャンスは幾らでもあったはずなのに、遠くからそっと見ていたほどですから(Rai Sportのマンマ達はちゃっかりツーショットを撮ってましたね)、盛り上がるイタリアファンに反して非常に消極的。

via GIPHY

でもフィギュアスケートを心から愛し、このスポーツの生き字引のようなマッシさんと羽生君の超マニアックトークは聞いてみたいですよね!(専門的過ぎて話の3分1も理解出来なさそうだけど)

誰か企画してくれないかなあ・・・

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち