ロシア人エキスパートによる男子上位選手のショートプログラム難度分析(その1)

以前ご紹介したロシアのファンが作成して下さった分析データ。
今回はショートプログラム版です
ショートは更に凄いことになっています
 非常に長いので2回に分けて翻訳します。

ロシア語原文>> 
ロシアのブロガー、Yulenaさんの分析です

 英訳版>>
(翻訳者はMarina Khevkhさんです)

2016年世界選手権上位7選手のショートプログラムの難度分析

『僕は見ている人が『ジャンプを跳ぼうとしている』とすぐに気づくようなジャンプの跳び方はしたくない』
―羽生結弦

『スケートから出て行って、4回転ジャンプをただ機械的に跳べば、ジャンプのインパクトは強いけれど、あなたの優位性を見せられる部分である振付けやその他の要素といったプログラムは大きく失われてしまう』
– ジェフリー・バトル

『ただ4回転ジャンプのあるプログラムとクワドが難しいトランジションと入りから実施されるプログラムとでは大きな違いがある。傍視しただけでは常にそれが分かるわけではない』
– ハビエル・フェルナンデス

「世界選手権は男子シングルの難度が4回転ジャンプの質だけで決まるわけではないことを示した。
男子のスケーティングには更なるトランジションが加えられ、これらはプログラムの単なる装飾ではない。
難しいトランジションとステップを伴う4回転ジャンプが数本あるプログラムを滑ることは非常に難しいことである。しかしながら、男子シングルスケーティングのこのようタイプのパフォーマンスは、あらゆる観点において最も難度と振付けのバランスがとれている。
何故か?
答えは簡単だ。ジャンプの入りの多様性(ジャンプによって入り方が異なり、ジャンプ要素をリンクの様々な位置で跳ぶようにプランされている)と難しいジャンプの出、要素へのトランジション、完璧に振付けに溶け込んだステップと難しい入りからのジャンプはプログラムをより複雑にする。この基準はGOEだけでなくPCS (SS(スケーティングスキル)、TR(トランジション)、CH(振付け))にも反映されるべきである。
ジャンプから難しいトランジションやステップを全て取り除くという選択肢も可能である。この場合、より高さのある、着氷後の流れがよりスピーディで滑らかなジャンプになるかもしれない。
しかしながら男子の上位選手達にはより高度な内容が求められ、スケーター達はジャンプをただ跳ぶのではなく、難しい入りやステップを伴う入りが実施される『高額なパッケージ』で包みながら様々な方法で実施しなければならなくなった。
これは本当に難しいことで、スケーター達はよりミスをしやすくなる。
しかし「リスクを冒し、失敗を恐れない」、これが真の男子シングルスケーティングなのだ。
この全ての『難度』はジャッジによって奨励され、TR (Transitions)やCH (Choreography)などのPCSの高得点に反映されるべきである。

上位7選手の競技プログラムは難度という点において別レベルである。
これこそが、我々がトランジション/繋ぎのフットワークを比較するための主要なPCS基準に加え、これらのプログラムにおける要素間のトランジションと要素前の入りの難度と多様性を分析しようと思い立った理由である。

それではスケーター達が難しい入りからのコンビネーションジャンプの実施や、要素間の難しいトランジションでスケーティングのあらゆる技をどのように駆使しているか比較してみよう。

トランジションの評価:以下の基準が含まれる

多様性(Variety
フットワークトランジション(ステップとターン)
ステップ(チェンジフットを伴う)、ベーシック、プログレッシブ、クロスオーバー、シャッセ、クロスロール、チェンジエッジを伴うステップ、モホーク、チョクトーハーフジャンプとそれ以外
ターン(チェンジフットを伴わない:スリーターン、ツイヅル、ループ、ブラケット、ロッカー、カウンター。
繋ぎ動作(skating movement transition)、スプレッドイーグル、バウアー、ピボット、ハイドロブレーディング、スパイラル、ランゲ、アラベスクスパイラル、ダックスパイラル、アラビアン
身体動作のトランジション(頭、手、胴)
その他の要素。禁止されている訳ではないが一覧にない要素のトランジション(スタッグジャンプ、マズルカ、インサイドアクセル、ループ、ウォーリー)

難度(Difficulty)-ステップに合わせて胴体、頭、手も動かし、方向転換を伴っている。
簡単なトランジションもあり、多彩である。例えばモホークは簡単なステップ。チョクトーは難しい。スリーターンが簡単なターン。カウンターとブラケットは難しい。両足ステップは片足ステップより簡単。バウアーはスパイラルより難しい。ウォーリーはループより難しい。動作の方向転換(右回り、または左回り)と胴体の動きを伴っていると、トランジションの難度は上がり、このPCSに反映されるべきである。

複雑さ(Intricacy)- 要素前後の動作のオリジナリティと難度
トランジションは正確にはプログラム中の要素の実施前、そして実施後に行われる。要素の入り/出が多彩で難しい場合にはGOE だけでなく、PCS のTRのCHも上がるべきである。要素前の準備時間が長い場合には、『複雑さ』とPCS のTRで全体的に レベルが低くなる。

クオリティ(Quality) – 繋ぎの正確さ

まずはトランジションの総数ではなく、クロスオーバーの数と片足トランジションの数、そして全体の多様性といったクオリティを評価して行こうと思う。
Footwork Transition – ランニングオーバー/クロスオーバー、スリーターン(片足の簡単なターン)、難しいターン(ロッカー、カウンター、ブラケット、ツイズル、ループ)
Skating movement transition(スケーティング動作のトランジション) – スケ―ティング要素(スプレッドイーグル、スパイラル、バウアー、ランゲ等)
Non listed element transition(一覧にない要素のトランジション) – 様々な種類のジャンプとスプリット等

トランジションの多様性と複雑性(ジャンプの入りと出)とこれらの実施のクオリティを評価して行きたい。
ステップシークエンスとコレオグラフィックシークエンスは独立したプログラム要素なのでここでは言及しない。

それでは羽生結弦、パトリック・チャン、ハビエル・フェルナンデス、ミカエル・コリヤダ、宇野昌磨、ボーヤン・ジン、アダム・リッポンのショートプログラムを分析して行こう。

ここでは各プログラムの全てのトランジションはリストアップしない。7つの各プログラムのジャンプ要素への入りと出を仔細に紹介し、その他については表とGif画像で見てもらう。

ショートプログラムにおけるトランジションの多様性を図表化してみた。

ショートプログラムにおける繋ぎの多様性
analisi_WC2016SP2
ショートプログラムにおける片足トランジション、クロスオーバー、その他の繋ぎの動作の比率
analisi_WC2016SP青がクロスオーバー/両足スケーティング、オレンジが片足スケーティング/難しい動き、
グレーが一覧にないその他の動き

羽生結弦は片足トランジションが最も多い(パトリック・チャンのほぼ2倍、ハビエルの3倍)。アダム、昌磨、ボーヤンはプログラムにおける片足トランジションの数が最も少なく、コリヤダは彼らの中間である。
クロスオーバーと簡単なランニングステップが最も多く含まれるのは宇野昌磨のプログラムで、最も少ないのが羽生のプログラムである。コリヤダ、リッポン、ジンのランニングステップとクロスオーバーの数は同じぐらいである。
ショートプログラムでは単独の3回転または4回転ジャンプはステップから実施することになっており、ジャンプの前にスプリット(ステップ中の休止)がある場合には、GOEで-1/-2、ジャンプの前にステップがない場合には-3減点されなければならない。
『難しい入り方』の基準とは?
私の意見では、スケーターの身体のバランスを崩し易くするステップと動作がジャンプを跳ぶ前に入っていると、実際に難度が上がると思う(例えば結弦とハビエルのSPの3Aはステップだけでなく、スケーティング動作も含まれている)。あるいはジャンプ直前の最後のステップを踏んだ同じ足でジャンプを踏み切る場合(結弦のSPの3A及びLPの3Alo3S)。

「ジャンプ直前の明確なステップ」の基準は、ジャンプが明確で正確なステップから実施され、ステップとステップの間に休止がなく、最後のステップ(ジャンプ直前のステップ)の後、直ちに踏み切られていることである。

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 ☆前半のトランジションの解説の下り、あまりにもマニアックで、はっきり言って需要ないよな~と思いつつ、ほとんど個人的な道楽で全部訳しました。
基本的に英訳版から訳していますが、英訳が原文のロシア語と微妙に違うところがあったので(例えば、英訳版では『難度』、『クオリティ』のタイトルが抜けている)、ロシア語の原文から訳したところも一部あります(勿論、ロシア語は分からないのでGoogle翻訳でロシア語からまず英語に訳し、和訳しました)。

しかし羽生君のトランジションの質と量は圧倒的ですね!

この素晴らしいデータを作成して下さったロシアの作者と英訳して下さった翻訳者に心から感謝します。
ありがとう!
Heartfelt thanks to Russian author and translator!:embrace:
сердечное спасибо!

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