才能ある者は天才を即座に認める~一流は一流を知る

大分時間が経過してしまいましたが、体操界のキング、内村航平君が引退を発表しました。
イタリアのメディアでも大きく取り上げられていました。

内村航平が引退を発表。
歴史を築いた体操界の皇帝が33歳で別れを告げる

内村君と言えば「美しい体操」。高難度の技を組み込みながらも、そこだけに特化するのではなく、各技のクオリティ、精度、全体のバランスといった総合力において卓越した選手である、という点においても羽生君と共通しています。

実はイタリアのガゼッタ・デッロ・スポルトも内村航平君の記事の中で、何度か羽生結弦の名前を引用しているのです!

こちらは2016年リオデジャネイロ五輪の体操団体の記事です。

伝説の内村とバイルズ
日本とアメリカが金メダル

ロシアと僅差で迎えた最終ラウンドで、白井健三、加藤凌平の見事な演技、そして最後は内村航平が圧巻の演技で見事に金メダルに輝き、内村選手にとっては、1972年の加藤澤男以来の二連覇であり、世界選手権6連覇中であることも強調しています。そしてポケモンGOの通信費が50万円(約4300ユーロ)もかかってしまったエピソードに触れた後で、以下の文章で記事を締めくくっています。

日本はまさに内村時代の幕開けとなった2004年アテネ大会以降、団体金メダルを獲得していなかった。
1960年ローマ五輪から1976年モントリオール五輪までの5大会連続金メダルも加えると、今大会で7個目の金メダルである。
小柄に見える身体(160センチ、55キロ)を持ち、いつもより前髪が少し短めの航平をテレビカメラの群れが追いかける(日本ではフィギュアスケーターの羽生結弦に並ぶアイドルである)。彼はロンドンの涙をリオの笑顔に変えた。リベンジするために彼は4年待ったのだ。今でも彼が史上最高(GOAT)か?という議題を(再)討論するのか?


そして、こちらは東京オリンピックの種目別鉄棒のガゼッタの記事ですが、ここでもYuzuru Hanyuの名前が登場します:

内村の神話が崩壊:鉄棒で落下。日本はお通夜

水曜日の練習でも起きたように、演技の途中で鉄棒をつかみ損ね、落下した。
アスリートとしての彼の悲劇は日本全体の悲劇になった。
2012年ロンドン大会と2016年リオ大会で男子では44年ぶりの個人総合二連覇を成し遂げ、その他にも5個のオリンピックメダルを獲得してるオリンピックチャンピオン、内村航平は、多くの人から史上最高(GOAT)の体操選手であると見なされている。
日本で彼ほど称賛されているのはフィギュアスケーターの羽生結弦だけである。


体操界のGOATと見なされているという点でも羽生君と重なります。
2人共「世界最高」ではなく「史上最高」と称される選手なのです。

内村君は平昌前も怪我をしている羽生君に温かいエールを送ってくれていましたね。
2016年の「テレビ朝日ビッグスポーツ賞」の表彰式では技や技術について羽生君から質問責めにされたとか😂

内村航平、羽生結弦から“質問攻め”に
「研究熱心。僕もいつも刺激をもらっている」

羽生君は白井健三君やスノーボードの平野歩夢君にも回転について訊きまくっていましたね!😂
他競技の選手にとっての「空中で多回転」するコツや感覚について興味津々で、競技の垣根を超えて何でも参考にして研究し、自分の知識と栄養にしてしまう羽生君らしいです。

内村君との関係性を見ていると、イタリアのファンがプルシェンコと羽生君の関係性を形容するのによく引用している以下の格言を思い出します:

凡人は自分より優れた者を認めないが、才能ある者は天才を即座に認める

日本語では「一流は一流を知る」と言う言葉がありますね。
前人未到の境地に達し、己との孤高の戦いがどんなに過酷か知っている天才同士故の共感と理解です。そこには嫉妬や羨望などの凡人のくだらない感情は存在しません。

最近では、公共の電波を介した公開文通が続いていますw
S-PARK の内村君のアドバイスとそれに対する羽生君の見解も非常に興味深いものでした。天才同士にしか理解出来ない異次元の会話。一応、日本語ですが、パスワードがなければ読み解けない一種の暗号、宇宙言語のようだと思いました。
だから仮に内村君の言葉が英訳され、例えばアメリカにいるドミトリエフ選手のテクニカルチームの手元に渡ったとしても、彼らには解読も実践も出来ないと思います。

そして、何と白井健三君も援護射撃!


体操界からこのような具体的なアドバイスやエールが次々に届くのは嬉しいですね。
競技は違えど、「空中で4回転半回って着地する」という人類初の難業への挑戦を固唾を飲んで見守り、心からエールを送ってくれているのが伝わってきて胸が熱くなります。😭

全日本では、本当にもう少しのことまで来ているという印象でした。成功のための最後のピースを探している羽生君にとっては、他の回転競技の選手の視点や見解は貴重なヒントになるでしょう。何しろ誰も成功したことのない、教科書も参考書も存在しない未知の技なのです。参考に出来るものは何でも参考にしているでしょう。別の競技の技術を参考にすると言えば、例えば中国のジン・ボーヤン選手の4ルッツの空中姿勢はおそらく同国の飛び込み選手のフォームを参考にしているのではないか、と以前アンジェロさんが指摘していました。

そして羽生結弦がこの4回転アクセルをオーバーターンもステップアウトもなく、片足で着氷出来たなら、自動的にGOE+5だと思います。

ジャンプのプラス要件は以下の通り:

1)高さおよび距離が非常に良い(ジャンプ・コンボおよびシークェンスでは全ジャンプ)
2)踏切および着氷が良い
3)開始から終了まで無駄な力が全く無い(ジャンプ・コンボではリズムを含む)
4)ジャンプの前にステップ,予想外または創造的な入り方
5)踏切から着氷までの身体の姿勢が非常に良い
6)要素が音楽に合っている

4回転半回って着氷するには途方もない幅と高さが必要なので当然、1)は余裕でクリア。
羽生君はどのジャンプでも踏切りはこれ以上ないほどクリーンなので綺麗に着氷出来たら2)もクリア。
無駄な力が入っていたり、軸が少しでもずれたら着氷出来ないジャンプだと思うので、着氷出来た時点で3)と5)もクリア
恐るべきことに羽生君はこのジャンプの前にターンをチェンジエッジを入れていますから4)もクリア。
そして言うまでもなく、羽生結弦の辞書に「音楽に合っていない要素」は存在しませんから6)もクリア。

基礎点12.5の4アクセルに+5が付くと+6.25で18.75になります。
これもまだまだ低い得点で、技の難度を考えたら基礎点とGOE合わせてMax 25点は欲しいところですが、基礎点変更前の最大値(BV15+3=18)より少し高いんですよね。

フィギュアスケート界だけでなく、多分野の超一流も注目し、期待するジャンプ。
私達は羽生結弦が「これは重過ぎるのではないか?」というほどの期待とプレッシャーをパワーに変え、奇跡のようなことをやってのけるのをこれまでに何度も見てきました。

彼ならきっと出来るはず、そう信じて再び氷上で羽生君を見られるその日を待ちたいと思います。

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち