アンベージ・ウィンターコーナー「羽生結弦は四大陸選手権で答えと記録を出す」

いよいよ四大陸選手権が始まります。
数日前からツイッターとFBで精力的に活動を開始しているマッシミリアーノさんがOA Sportにも長文記事を掲載していましたので、ご紹介します。
筆者のフランチェスコ・パオーネの質問に答えるインタビュー形式です。

原文>>

☆羽生君部分を抜粋します。

フランチェスコ・パオーネ(2020年2月5日)

それでは氷上に話を戻してフィギュアスケートの話題に移ろう。
もうすぐ四大陸選手権が開幕するけれど、何を期待することが出来る?

様々な理由から非常に興味深い大会になるだろう。
まず、数週間前に開催された欧州選手権との比較が興味深い。

女子シングルで注目されるのは紀平梨花だ。
現実的に見てロシアの表彰台独占を阻止できる唯一の女子選手である。
シーズン序盤からずっと完治していなかった怪我のために封印していた3ルッツを再び見られるかどうか興味がある。

(ペアとアイスダンスは省略)

しかしながら、今大会の一番の見どころは羽生結弦の出場によって高潔な試合となる男子シングルだ。

規格外の日本人選手は彼の正統なタイトルコレクションに唯一欠けているタイトルを獲りに行く。
ソウルで優勝すれば、ジュニア/シニアの主要国際大会の全てのタイトルを獲得した史上初の男子スケーターになる。
これまでにこの偉業を達成したのはアイスダンスのヴァーチュ/モイア、女子シングルのキムヨナとアリーナ・ザギトワ、ペアのマキシム・トランコフとアリオナ・サフチェン͡コ(後者は3人の異なるパートナーと組んで達成)だけである。

羽生に関しては、プログラムを変更するという彼の決断が物議を巻き起こしている。
この決断の裏には何があると思う?

最初、誰もがこのニュースに驚愕させられた。
シーズン中盤にプログラムを両方変更するのは普通のことではないし、特に2度のオリンピックチャンピオンの普遍的な特徴である「完璧」へのこだわりを考慮すると、一層奇妙に思えた。

しかしながら、冷静に状況を判断すると、彼の選択には意味がある。
羽生はトリノGPFと2019年の一連の試合がひと段落した後で、過去のチャンピオンに捧げるという意図からだけ生まれた、彼らを象徴する曲を使用した2つのプログラムを放棄することを決めた。
この意味において、ウィアーとプルシェンコの名前がトリノのパラヴェーラと深い繋がりがあったことも二次的なことではなかった。

2020年の始まりは羽生にとってターニングポイントであり、彼の主要な目的は、彼のものではない役(例えそれが見事に演じられていたとしても)を演じるのではなく、彼自身のスケートを取り戻すことになった。

Otonalからバラード第1番への変更は技術的・論理的に問題はないが、SEIMEIは違う。
オリンピックまでの4年間に比べるとルールが変更され、フリープログラムの長さが以前の4分10秒以内から4分40秒以内に短縮されたからだ。

いずれにしてもプログラムを再構築するための「ブラッシュアップ」の長い作業は年が明けるとすぐに振付師シェイリーン・ボーンと共に開始され、このプログラムはあらゆる意味においてSEIMEI 3.0と見なすことが出来る。

事実を言えば、ショートプログラムもオリンピックバージョンに比べて様々な観点において見直されたが、主な変更点はエレメントの配置である。

プログラム変更の情報が途中で漏れなかったことが証明しているように、この変更は彼が一人で希望し、考えたことであり、極めて慎重に実行された。

おそらく羽生は再び「自分の衣服をまとう」あるいは「自分のティーカップで飲む」ことで、ジャッジ達からOtonalとOriginではしばしば届かなかった答えを得られることを期待しているのかもしれない。
実際、予定されているプログラム構成を分析すると、現時点では、クオリティを最大限まで向上し、出来栄え点を出来るだけ稼ぐことを目指しているのは明らかである。

また、まさにここ、韓国で五輪プログラムの進化を象徴する2つのプログラムを披露することは、当時の意義深い記憶と感動を蘇らせる。

実際、平昌で、羽生は11月に負った大怪我のためにシーズン序盤に予定していたジャンプ構成を披露出来なかったことを忘れてはならない。
このため、二大会連続のオリンピック金メダルを手に入れるに、プログラムの難度を下げざるを得なくなり、彼は自分の信念を曲げて4トゥループと4サルコウだけで勝負した。

今の彼にはもはや妥協する必要はない。
間近に迫った四大陸選手権は、再びバーを引き上げ、しかも彼に属するプログラムでこれを行う最適な機会である。

これまでに聞こえてきた情報によれば、少なくともソウルでは4ループを跳ばないようだ。
フリープログラムは、4ルッツ、4サルコウ、4トゥループ2本の構成になる。
この大会が世界選手権を見据えた通過地点であることは明白であり、世界選手権では4種クワドの構成に戻してくる可能性が高い。

今更強調するまでもなく、羽生結弦は自分自身のため、最上のフィギュアスケートのため、数百万人の彼のファンのため、そしてこのスポーツを技術と芸術の真の均衡を特徴とする競技に戻すためのあらゆる希望を彼に託している全てのフィギュアスケートファンのためにミッションを背負う男である。

そして、技術的万能と芸術的卓越を彼以上に見事に融合することが出来たスケーターは今も昔も存在しない。

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ここ数日間に公開された羽生君のインタビューで涙腺が緩くなっていたところにこの記事!
マッシミリアーノさんの熱い想い、羽生君に対する揺ぎ無い信頼と期待
フジインタビューの羽生君の言葉と重なって・・・
まだ大会も始まっていないのに涙が・・・😭😭😭

プログラム変更には正直びっくりしましたが、彼の「自分のスケートと貫きたい」という気持ちが1ミリも変わっていないことを改めて知り、まさにそのためのプログラム変更と知って感動・感激しています。
彼が自分の信念を曲げることは絶対にないと知っていましたが、最近の試合におけるジャッジングの傾向が彼の心理にどんな影響を与えたのか心配でした。

自分の一番滑りたいプログラムで、己の信じる道を邁進して欲しい。
マッシミリアーノさんの言う通り、彼のフィギュアスケートはこの競技を愛する人々の希望なのだから。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu