前回の続きです
イタリア羽生結弦フォーラムより
「それにしてもジャッジがユヅやパトリックに比べて明らかに繋ぎの乏しいネイサンのプログラムにPCS88点を与え始めたら、より質の高いスケーティングスキルを持ち、プログラムを豊かな繋ぎで装飾することに尽力している彼らとのPCSの差がたった5-6点なのを見たら、多くの選手がコンポーネンツは捨ててクワドの数を増やすことだけに集中する傾向になってしまわないか心配だわ」
「何と言ったらいいのか・・・例えばローラースケートではジャンプ無しのパフォーマンスと、ジャンプとスピンだけのパフォーマンスとでカテゴリーが分かれているわね。でもそうすることで競技を殺してしまった。
助走とジャンプだけのプログラムなんて退屈で見るに堪えられないわ!
私がユヅをこれほど溺愛しているのは、芸術と技術の完璧な統合体だからよ。
彼がこのスタイルを決して放棄しないことを願っているわ!!!」
「ユヅは無比の品種だから、ルールの完全なる無知のせいで故に多かれ少なかれ過小評価されていると私は思っているわ。
どういうことかと言うと、彼ほど芸術面その他(てんこ盛りのトランジション等)のコンポーネンツを磨き上げながら、同時に技術的にこれほど高難度なことをやっている人はいない。
でもジャッジにはそれを正確に評価出来るツールがない。
だからジャンプの出来映えだけでプログラムを評価してしまうリスクがある。
前回のオリンピック前の4年間、ユヅがシニアに登場してから1年後ぐらいにも同じような傾向になって、私はこの新しい傾向が彼の芸術性を抑制してしまわないか危惧したけれど、幸運なことにそうはならなかった。
でもボーヤンのように、プログラムを豊かにしようと試みたけれど、相応しい評価を得られず、結局、ジャンプ先行の戦略に戻って芸術面において後退せざるを得なくなった選手がいることも事実よ」
「私はクワドのこの状況をそれほど悲観視していないわ。
ユヅが道を切り開いた(つまり前後にトランジションを挟んでクワドを跳ぶことが可能なことを示した)、そして今、多くの選手が彼の後を追っている。
確かにプログラムにおけるクワドの数は増えているけれど、みんなジャンプの前に多かれ少なかれステップを入れようと試みている。例えばネイサンはショートの3Aの前と、確かフリーの4Tの前にもイーグルを入れているし、ショーマも4Tと3Aはより難しい入りに挑戦している。ボーヤンだって強化中だわ。つまりユヅが彼らをインスパイアするモデルになっている。
問題はジャッジと、PCSには上限があるけれどTESにはないということよ。
私はGOE +5/-5が導入されることを願っているわ。
だってユヅのジャンプには+5が妥当だもの!」
「そうね、つまり『正しい』ジャッジが必要ね。
だってルールがあっても、ジャッジ達が独断と偏見で採点したら意味がないもの」
「その通りよ。
ジャッジの中には本当に無意味な点を付ける人がいるわ。
オータムクラシックではオーストラリアのジャッジがキーガン・メッシングとか何とかいう選手のSSとTRにユヅより高い点を付けていたのよ!あり得ないでしょう???」
「私はやっぱり納得がいかないわ。
確かにネイサンにとってユヅは大きな目標で偉大なインスピレーション源であることは間違いないわ。
でも私はこの採点方法には問題があると思う。
私は2つの得点、TESとPCSは互いの得点が影響し合わないように完全に切り離して採点すべきだと思うの。
例え全てのジャンプを転倒したとしても、ユヅやチャンのようなスケーティングスキルで滑ったら、いずれにしても高いコンポーネンツを出すべきだと思うし、その逆もしかり(勿論、転倒でプログラムの流れが損なわれるわけだから、ある程度のペナルティは仕方がないとして)。でもこの大会ではジャンプが全部決まったからコンポーネンツでも+5点加点とかそんな採点だったでしょう?これは正しくない。これでは6点満点の旧採点システムに逆戻りだわ・・・
いずれにしてもこの2人の選手の間のスポーツマンシップは素晴らしいわね!」
「転倒がPerformance /Execution ( PE)に影響するのは正しいと思うわ。でもtransition (転倒によってジャンプ後のトランジションが失われていない限り)は勿論、Composition / interpretationには影響を与えるべきではない。私の意見では・・・Skating skill にも
問題はジャッジ達がTESが高得点だとPCSでも高い点を与える傾向にあることよ。
PE は理解出来る。でもtransitionが少なく、SSの質もそれほど良くなくて、振付はまあまあ、Interpretationは学芸会レベルなのに、PCS全体が自動的に上がるというのはおかしいでしょう?
驚異的なスケーティングスキルを持ち、プログラムの至るところにトランジションを散りばめているユヅとパトリックは、リスクを冒してジャンプの前に難しい繋ぎを入れて(特にユヅ)わざわざ人生を困難にして頑張っているのに、大して得点に反映されていないと思わないかしら?
(実際に脱落者がいるわ。ボーヤンを見て!プログラムの繋ぎを豊かにしようと試みたけれど、得点が上がらないのを見て、またトランジションをシンプル化してしまった)
幸運なことにユヅとパトリックはどちらもこんなことでめげたりはしないけれど」
「私もPCSに関して全く同感よ。
ユヅとパトリックがトランジションをシンプル化しないことを願っているわ。
だってそれではこのスポーツの醍醐味である魔法が失われてしまうもの」
「私も演技構成点についてはみんなと同意見だけれど、心配はしていないわ。
ユヅが彼のフィギュアスケートをシンプル化することは絶対にない。
彼自身が言っているように得点は得点、パフォーマンスはパフォーマンス。
彼は決して後戻りはしない。
だって彼は、彼だけの特別なフィギュアスケートを生み出しているのだから
同じことがPチャンにも言える(今はあまり好調ではないけれど、私にとって偉大なスケーターであることに変わりはない)」
「チャオ、みんな
ようやく私もコメントに参加出来るわ!
何と言う日曜日!
今朝、私は6時頃起きたのに、ライストのページが開かなかったのよ・・・それで・・・最初の動画が投稿されるまで心臓が張り裂けそうな状態だった・・・
それでむさぼるように動画を見たのよ!!!
4T を見た時、私は叫んだわ「何てクレイジー!!!!」
それからニヤケが止まらなくなって・・・最後の3Aは心から堪能したわ!!!
9時から始まったユロスポの録画放送でチェンの演技を見て、手を噛んだわ。
だってユヅからは本当に何光年もかけ離れているんだもの・・・フィギュアスケートの数学的な得点システムが呪わしいわ!!!
でもこれで良かったのよ
ユヅは偉大だった!!
さて、これでリラックス出来るわ。でも明日から世界選手権前の緊張が始まる!!!
これから世界選手権までの間、ブライアンが毎晩うなされる悪夢は想像しないことにするわ」
「フィギュアスケートを見るようになってもう何年にもなるけれど、試合の動画を見るために私を3日間家に籠らせたり、電車や飛行機に乗り遅れさせたりすることが出来るスケーターはユヅだけよ。彼が現れる前、ランビエールと織田が好きだったけれど、これほどのめり込んではいなかった。彼らの試合を興味深く、楽しく見て、でもそれで終わりだった。
ユヅのようなスケーターはもう二度と現れないと思う」
「みんな・・・私はまだ錯乱しているわ。
私にとっては苦しい1週間だった。
特にショートプログラムの後、不安と緊張で胸が張り裂けそうだった!!!
未だに銀メダルを消化出来ていなくて、あの時ああすれば勝てていた、あのミスがなければ勝てていた、PCSがもっと出ていたら勝てていた、チェンがもうちょっとミスをしていれば勝てていたとウジウジ考え続けてしまうのよ・・・つまり「心の鎮静」が必要ね。
でも彼のインタビューの翻訳を読んでようやく息が出来るようになって、少し冷静に考えられるようになった。たくさんのマテリアルを投稿してくれてありがとう!
コンビネーションでミスがあったけれど、ショートプログラムは凄く好きだったし、フリーは神話だった。特に後半はほとんど即興だったことを考えると
本当にクレイジー、そして奇跡的なほど天才!
エキシのノッテ・ステッラータは鳥肌モノだった。
ジャンプのミスなんて関係ない。
例えジャンプがなくても見る者に魔法をかける素晴らしいプログラム。
他に何と言えばいいの?
私はこの男の子に前にも増して果てしない称賛の念を抱くようになったわ。
選手やスケーターとしてだけではなく人間として、そして彼の選手としての資質や技術的・芸術的能力に対してだけではなく、人生の如何なる局面においても、如何なる困難や障害や逆境にも立ち向かっていく彼の在り方に
ショートプログラムの後、練習で彼がジャンプで苦戦しているのを見て、慢性的なマイナス思考の私は絶望的な気持ちになったわ。
彼が緊張でミスを連発してボーヤンやパトリックにも抜かれたらどうしよう・・・と不安で仕方がなかった
でも彼はそんな私の不安を一笑するように驚異的なことをやってのけた。
確かに2つのプログラムのトータルでは1位ではなかったけれど、議論の余地なくナンバーワンであることを証明して見せた。
私は彼の言葉を、他の選手達、特に彼を脅かす選手達を応援し、称賛する姿勢を尊敬するわ。
そして彼のゲームに昂じる勇気と、例え勝利を逃すことになろうとも自らの限界を越えるために冒す必要のないリスクを敢えて冒す意志の強さに憧れている。
得点やルールやジャンプの入りの軌道や体力まで計算しながらリカバリーする能力・・・全てが秒刻みの出来事だった、しかも皆を演技で魅了しながら・・・
彼には描写不可能な超自然的な何かがある。これこそがこの大会中、最も印象深く、最も強く私の心に残ったことよ。
これからもまた困難な状況に直面ことはあるだろうし、それをいつも巧く切り抜けられるとは限らない。
だって彼だって人間なのだからミスをすることはあるし、私達も何度かそれを見てきた。
確かにエイリアンだけれど、時折地上に戻ってきて弱さを見せることだってある。
でも、だからこそ、私達はこれほど彼を愛し、評価しているのよ、そうでしょう?
今後、例え巧く行かない試合があったとしても、私にとっては何も変わらない。
彼はずっと私のインスピレーションでロールモデルなのよ。
今この瞬間、韓国に飛んで行って、彼を抱きしめてこの言葉を伝えたい」
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☆私は終わった試合のジャッジについて、いつまでもとやかく言うのはあまり好きではありませんが、イタリア解説も指摘しているように、PCSの在り方について色々考えさせられる大会でした。
クワドを5本決めたネイサン選手の演技は驚異的で素晴らしかったと思いましたし、今回の彼と羽生君のフリーの演技はフィギュアスケート史に残る名勝負の一つだと思います。
でもネイサン選手のTRとSSが、3アクセルの前以外のトランジションの密度において、唯一羽生君と張り合うことが出来ると言われているジェーソン・ブラウン選手(マッシミリアーノさん&アンジェロさん談)より高いというのはどう考えてもあり得ない。
アンジェロさんは今回のネイサン選手のPCSを「史上初フリーで5本クワドを決めた快挙に対するご褒美点としか説明がつかない」と言っていましたが、それでは演技構成点を5項目に細分化している意味がないですし、ジェーソン選手やミーシャ・ジー選手のように、クワドが苦手な分、TESをカバーするためにプログラムのディテールを磨いてコンポーネンツで勝負するタイプの選手の努力があまりにも報われなくなってしまうと私は思います。
マッシミリアーノさん曰く、女子の試合もPCSの基準がバラバラで理解不能だったそうなので、今大会は全体的にパラメータが徹底されていなかったのかもしれませんね