イタリア解説EuroSport版「北京2022団体戦~樋口新葉SP」他

ついにオリンピックが開幕したした。
イタリアユロスポの実況解説はマッシミリアーノさん、アンジェロさん、マリカさんという最強トリオです。基本的にアンジェロさんがジャンプ、マリカさんがスピンとステップシークエンスを解説しています。

個人的に応援している樋口新葉ちゃんの実況解説から印象的な部分を抜粋します。

マッシミリアーノ・アンべージ(M)冬季競技アナリスト、ジャーナリスト
アンジェロ・ドルフィーニ(A)元男子シングル伊チャンピオン、コーチ、国際
マリカ・ポーリ(P)元スケーター、コーチ、衣装デザイナー

M:樋口新葉は西東京出身の選手だ。
彼女のコーチの岡島功治は多くの女子スケーター、最近は男子スケーターにも素晴らしい成果をもたらし、高い評価を得ている。

樋口は全てクリーンに決められれば80点を出せるための全てが揃っている選手だ。つい最近21歳になった

P:彼女は上半身の動作がとても上手いわ。

A:非常に明確でメリハリがある。

M:彼女は大きな強みがある選手だ。
彼女よりスピードのある選手が何人いる?

A:僅かだね。
彼女は非常にパワフルでダイナミック
マリカが言ったように上半身の使い方も上達した。
彼女は非常に爆発力があるから、ファーストジャンプが高過ぎて、そのためにセカンドジャンプに入るスピードが落ちて回転不足になってしまうことがよくある。

(コンビネーションジャンプのスロー)
M:ルッツはいい
トゥループもいいだろう
リアルタイムだと回転不足に見えたけれど、クリーンだ。問題ない。

P:フライングの後、すぐにインサイドエッジで回転し始める彼女のフライングキャメルスピンは素晴らしい。とても難しいフィーチャ(レベルを取るための特調)だわ。

M:ワカバがこれまでに獲得したPCSの最高点は34点だ。
つまり各項目8.50だ。
僕の意見では、幾つかの項目では彼女は余裕で9.00に値すると思う。
その他の項目は少し弱いけれど、僕は彼女は8.5より高い得点に値すると思う。

(得点表示)

M:34.19、つまり平均8.50だ(笑)
いずれにしても彼女のPCS自己ベストを0.06点上回った。
彼女はシーズン中80点近い得点を出したことがあるが、今日は入れなかった3アクセルを跳んでいた。


☆そして五輪という大舞台でも全く動じず、全てのエレメントを完璧に決め、圧巻の演技を見せつけたカミラ・ワリエワ
「彼女は別のスポーツをしている!史上最高の技術点、スピンは絶対的完璧」と絶賛モードのマッシさんに「ちょっと待ったああああ~!」と反論したのががアンジェロさんです。
彼女の3Fと3Lz-3Tについて
「僕の意見では氷上で見た内容に対して、尺度の狂った得点だと思う。このような3フリップや3ルッツは+1か+2までしか与えるべきではない。踏切りに重度の問題がある。
このようなジャンプに+4や+5を与えるのは(ルール上)間違っていると僕は思う。スロー映像を見て欲しい。3/4回転プレローテーションしている。衝撃的だ!とても受け入れられない」と酷評。
「でもルール上、qやeのような表記が設定されていないのに、テクニカルの君ならこのジャンプをどうコールするのか?」と問うマッシさんに対して
「僕なら2Lzとコールする。いや正しくは2Loだろう。だから3A、2Lo、2lo-3Tで一つ目の2loは得点から削除される。この演技が90点というのは馬鹿げている」とまで言っていました。

ちなみに昨日の団体戦男子ショートでもモリス・クヴィテラシヴィリの4Tについても「サルコウにしか見えない。しかも先ほどの4サルコウと踏切が全く同じ。僕がテクニカルなら両方4Sとコールして、1本はキックアウトされる」と言っていました。

今シーズン、どの大会でも6分間練習中などにマッシミリアーノさんとマリカさんはいつもプレロテ/フルブレードのトゥジャンプについて議論しています。
しかしマッシさんでさえ「ISUが早い段階で何らかの手を打つべきだったのに、野放しにしたものだから、ここ4~5年でこの跳び方の方が主流になり、もはや世界中のスケートスクールでこの技術を指導していて今更後戻りするのは無理。もはや手遅れ、受け入れるしかない」的な諦めモードなのですが、アンジェロさんは「僕は同意出来ない」とキッパリ。
興奮するアンジェロさんをワリエワ推しのマッシさんが「まあまあアンジェロ、ちょっと落ち着いて!」となだめる展開に・・・😅

私はワリエワの演技を好きですし、最もコンプリートなスケーターである彼女が金メダルに相応しいとは思いますが、あの3ルッツと3フリップに+4や+5が気前よく並ぶのはどうかと思います。
特に完璧にクリーンなトゥピックの新葉ちゃんの3ルッツの後で見ると全く別のジャンプ、トゥジャンプではなくエッジジャンプに見えます。
3/4回転ってq判定ジャンプの1回転分ですよ!
新葉ちゃんの3ルッツはワリエワに比べて空中でほぼ1回転多く回っていることになります。ちなみに新葉ちゃんの3Lz-3Tの加点は1.43、ワリエワは2.19でした。確かにワリエワの3ルッツはトランジションから実施され、プログラムの流れの中で跳んでいて、高さも幅も空中姿勢も音ハメも申し分ありませんが、ルールによればGood Take-Off(踏切りが良い)を満たしていないジャンプのGOE上限は+3、Poor Take-Off(稚拙な踏切)は-1~-3であることを考慮すると、例え他のプラス要件5項目を全て満たしていたとしても、アンジェロさんの言う通り最終的なGOEは+1か+2であるべきです。

アンジェロさんが言うように2ループと判定するのは極端ですが、せめてGOEで減点して欲しいです。でないとクリーンな技術で跳んでいる選手に対してあまりにも不公平です。
考えてもみて下さい!新葉ちゃんの3ルッツより1/3回転しか多く回っていない4ルッツに基礎点で+5.60(3ルッツのBV5.90、4ルッツのBV11.50でほぼ倍、それなのに3Aと4Aの差は何故たった4.5点なのか😡・・・)、更に基礎点11.50×10%の係数でGOEで+4、+5が与えられるのは、どう考えてもおかしいです。

アンジェロさんは今シーズンはシャンペリーでのコーチ業が忙しく、ここまで解説には参加していませんでしたが、その確固たる信念が全く揺らいでなくて嬉しかったです。ワリエワの今日のこの演技を批判した解説者は世界中でアンジェロさんだけじゃないでしょうか。
アンジェロさんのような人がISUの技術委員長になればいいのに・・・

それにしても新葉ちゃんの演技は素晴らしかったです。流れるようなスケーティング、表情豊かなステップシークエンスに引き込まれました。
五輪の雰囲気にのまれて練習は上手く行っていなかったようですが、本番で決めてくるところはさすがです。今日の演技がターニングポイントになって、個人戦では3アクセルが決まるといいですね!

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Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu