過去の映像から
2013年ロンドンワールドの6分間練習とフリーの演技の実況解説です。
実況:マッシミリアーノ・アンベージ
解説:アンジェロ・ドルフィーニ
<6分間練習>
☆Elena Cさんの動画です
貴重な映像をありがとう!
Grazie sempre per video prezioso!
マ:では男子フリーの試合に再び注目しよう。
最後から2番目のこのグループは宇宙レベルだ。怒涛の4回転ジャンプ攻撃
どの選手もタイトルを狙って今大会に出場したが、ショートではそれぞれ痛恨のミスがあり出遅れた。
どの選手も110%で力を発揮しなければならない。というのも彼らの母国の五輪出場枠がかかっているからだ。
今現在9位の羽生はこれ以上順位を落とす訳にはいかない。
羽生の現順位9位と高橋の4位を足すと13。
この13が14になった場合、日本は次のオリンピックに2人の選手しか派遣出来なくなる。
そうなると国家の一大事だ。
ア:3枠でも日本には足りないぐらいだからね(笑)
驚異的な実力を持つ選手達が自宅待機になってしまう。
ちなみにこの世界選手権には小塚も織田も出られなかった。
2枠になってしまったら、もっとハイレベルな選手が、馬鹿げた仮説だけれど・・・羽生ですら(五輪に)出られなくなる可能性がある。
マ:世界選手権の最終グループに値する選手達が自宅でこの試合をテレビ観戦しているわけだ。時差的に可能なら
ア:いずれにしても長い間、トップに君臨し続けていた日本人選手達が、この世界選手権では苦戦している。
確かに羽生はベストな状態じゃないし、ここ数日の彼の状態を見ると、今テレビで試合を見ている選手の誰かと交代した方が良かったんじゃないかとさえ思えてくる。どの選手も最終グループに余裕で残れる実力の選手ばかりだからね。
マ:羽生はずっと怪我を隠していた。確かに先週の練習では4回転ジャンプは全く決まらなかったし、彼にとっては後半に2本跳ぶことが出来るほど初歩的なジャンプである3アクセルもいつもほど安定していないように見えた。
チャンピオンの気合いの一撃で彼の名声に相応しいフリーを滑れるか見てみよう。
でも彼が抱えている怪我を考慮すると簡単なことではない。
ア:そうだね。このようなプログラムを滑り切るには完璧なフィジカルコンディションが必要だ。高難度ジャンプをこなすことが出来るフィジカルコンディションだ。
これらのジャンプを簡単に跳べるほど習得していても、疲労した状態や酸血症、つまり筋肉に乳酸が溜まった状態では困難になる。
研ぎ澄まされたメンタルとフレッシュな運動能力を必要とする。
偶発的に起こった体調の問題で練習出来なかった場合、最後まで滑り切る体力が不足する。
マ:しかも羽生は喘息の問題があって彼がベストな演技をした時でも、終盤の30秒はいつも息を切らしている。
だから今日は彼にとって不利な条件が揃っているけれど、彼は規格外の選手だ。
おそらく今後数年間、頂点に君臨するために生まれてきた選手。
もし僕が国際スケート連盟なら彼を基準にルールを考案し直すよ。
彼が何をやってのけるか見てみよう。今日は彼にとって全てが逆境だ。
<フリー演技>
☆エレナさんの動画です。
マ:さあ始まる
世界選手権のここまではブライアン・オーサーの弟子達はあまり芳しくなかった。
先シーズンに比べて激ヤセしてほとんど骨と皮のようだったゲデヴァニシヴィリもフェルナンデスも、そして羽生も問題があった。
表示されている順位から羽生がベストな状態じゃないことは明らかだ。ショートプログラムを9位で終えた。
ア:9位は本当に残念な順位だけれど、何が起こるか分からない。
素晴しいパフォーマンスに立ち会えることを天に祈ろう。
彼は水晶のような才能を持つ特別な選手だ。
でもベストな状態じゃない。
マ:ノートルダム・ド・パリ、今シーズン、流行っている曲だ。
ア:コッチアンテ作曲
(演技中)
ア:4トゥループ
ア:4サルコウ!これは完璧じゃなかった。多分、回転も見直さなくちゃならない
ア:3フリップ
ア:3アクセル/3トゥループ
ア:3アクセル/2トゥループ
ア:3ループ
ア:3ルッツ/2トゥループ/2トゥループ
ア:3ルッツ
(演技終了)
マ:このような演技にどうして拍手せずにいられる?
昨シーズンのロミオとジュリエットは鳥肌もののプログラムだったけれど、今日、僕はこのプログラムを驚異的だった昨シーズンのプログラムと同じくらい評価した。
尋常じゃないパフォーマンスだ。だって彼の体調を考えたら
ア:全くその通りだ
マ:見てご覧、彼がどれほど具合が悪いか
ア:酷い体調だ。そこら中痛いんだろう・・・
それに付け加えると、君は気が付いたかどうか分からないけれど、ポジションを省略したスピンもあった。
最後から2番目のコンビネーションシットスピンではフライングを入れていたけれど、おそらく彼の足の状態では無理だと判断して省略したんだろう。だからワンレベル落とすことになるけれど、当然、賢明な選択だったと思う。幾つかのパッセージでは辛そうに見えたけれど、歯を食いしばって偉大なチャンピオンに相応しい演技を引き出した。
着氷が危ないジャンプも歯を食いしばってこらえた。
2本の4回転ジャンプを着氷した。サルコウは見直す必要があるけれど、トゥループは成功させた。
後半に3アクセル2本と3ルッツ2本
偉大なチャンピオンとして最後まで戦い抜いた。だから当然のことだけれど、感極まっているのが分かる。
今日の彼にはこれ以上求めることは出来ない。
マ:後半に3回転ジャンプ6本でうち2本が3アクセルであってる?
ア:ルッツも2本だ。それにトゥループ1本、ループ1本
これ以上難しいプログラムを滑るのは困難だ。
(4トゥループのスロー映像)
マ:これは全く問題ないね。4トゥループは完全に回り切っている。
ア:着氷を見てよ。膝を深く曲げて着氷している!(彼にとっては)新しいことではないけれど
マ:GOEはプラスの評価だ
(4サルコウの映像)
マ:これは1/4未満だろう。
ア:そうだね。4分の1未満の回転不足で認定されるかもしれない。
大切なことだけれど、それほど重要ではない。
正直、優勝は難しいだろう。チャンとの点差が大き過ぎるから。
でも間違いなく順位を上げるだろうし、いずれにしても重要なのは日本に3枠を持ち帰れることだ。
マ:(3枠は)もはや保証されたと言っていいだろう。
これは170点を超えるプログラムだ。
ア:驚異的だ
マ:4回転ジャンプ2本、3アクセル2本、3ルッツ2本でこの4本のジャンプは全て後半に跳んでいる。技術点では90点近い得点が出るだろう。
ア:そうだね。
マ:確かに今日はスピンのレベルは取りこぼしたかもしれないけれど
僕なら演技構成点は出血大サービスの高得点をプレゼントする。
ア:(笑)
マ:だって僕達はこのプログラムを彼と一緒に滑っていた。見る者全てを感情移入させた。
ア:それにまさに魂を込めて滑った。見ていてそれが伝わってきた。持てる力の全てを出し尽くした。
他の試合に比べるとややスピードがなく、後半は目に見えてスピードが落ちたけれど、何度も言うけれど今日の羽生は100%の体調じゃない、いや80%でもないだろう。
マ:グランプリファイナルでは演技構成点が85.16に達した。
ア:高得点だ
マ:技術点の最高得点は昨シーズンの世界選手権で獲得した92点だ。
(得点表示)
マ:もう少し高いと思った
僕は技術点は90点以上、演技構成点は82~83点ぐらいだと予想していた。
ア: 170点以上だとね
マ:それにしても169点という傑出した得点。
それにしても244点、この得点に達することが出来る選手が何人いるだろう
足を引きずっている・・・
ア:恐ろしいのはそこだよ・・・
病身と言ってもいいコンディションで傑出した高得点を持ち帰った。
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☆シーズンが終わってイタリア的には来シーズン開幕まで話題がないので、エレナさんが投稿してくれている過去の試合の実況動画をニコ動などで翻訳されていないものからのんびり訳して行きたいと思います。
エレナさんは2010-2011年シーズンから羽生君の演技実況を全て録画しているそうで、順々にUPしてくれています。
2013年のワールドFS、RAIのマンマ解説をライブで見ながらボロボロ泣いた記憶が
数年たった今見ても当時の感動が蘇ります。
演技前、アンジェロさんが Incrociamo le dita(英語で Cross our fingers )と言っていますが、これは「神頼みする」、「天に祈る」という意味です。
応援してくれていたんですね!