イタリア解説EuroSport版「2016ボストン世界選手権~羽生結弦SP(再放送1)」


イタリア・ユロスポでは他の試合で製氷タイムになると、待ってましたとばかりに羽生君の神演技の映像を流してくれます(視聴者の気持ちをよく分かっている)

昨日の女子ショートの製氷中に再放送されたショートプログラム解説から印象的な部分を抜粋・一部要約しました

Elena Cさんが動画を上げて下さいました
いつもありがとう!Grazie mille!
動画>>

実況:マッシミリアーノ・アンベージ
解説:アンジェロ・ドルフィーニ

(演技前)

マ:これから製氷で最終グループの選手がリンクに降りるまで時間があるから、惑星ハニューと交信してみよう
住人は一人、彼だ!

ア:もう彼の恐るべきパフォーマンスには慣れてきた。

でもこの世界選手権では羽生はいつになくナーバスになっていたね。

マ:危なくデニス・テンをぶん殴るところだった(笑)

ア:(爆笑)

マ:もう少しでね(笑)
実際にはメディアが大げさに騒ぎ立てて現実より事を大きくしたわけだけれど。
でもランスルー中の優先権を巡る、小さな諍いがあったのは事実だ。

そして皆が羽生の言い分が正しいと判断した

(演技中)

ア:僕達はプログラム終了後の彼のガッツポーズについて何度も言及したけれど、もう一つあるんだ。見てみよう

完璧な3アクセル

マ:練習ではこの3アクセルでデニス・テンが原因で転倒した
彼はユヅルが着氷する場所でスピンをしていた。

ア:その通り、それで彼は軌道を変更しなければならなくなった。

でも注目して欲しい、ステップの前

もう彼は弾けている

聞こえた?

ステップシークエンスの前の解き放たれたユヅルの叫びだ
このことからも、公式練習中、彼がどれほど強いストレスを溜め込んでいたか、そしてそれを発散する必要があったかが分かる
おそらく今大会の大本命だというプレッシャーもあっただろう。

それにどの選手もこの世界選手権にピークを持ってこようとする。そういう大舞台だからこそプレッシャーは更に大きくなる

でもここではユヅルの半端のない根性、精神力を見ることが出来た。
そして国際的舞台で第5作目の芸術作品を描いた。

マ:驚異的なほど完璧な、クラクラするほど美しいプログラムを描いた。
唯一ステップシークエンスがレベル4に達さなかった(笑)
最初の判定はレベル4だったのにレベル3に下がった。

理由については詳細を分析しなければならない

試合の後、ユヅルは「とても満足している。すごくナーバスになっていた。4トゥループとステップを練習しないといけない」とコメントした

頑張ってね

ア:(爆笑)確かに4トゥループ/3トゥループのコンビネーションは決まったけれど、他の大会に比べると着氷が完璧ではなかった。

サルコウは奇跡的な素晴らしさだった。アクセルも同様だ
この2つのエレメントでは満点を獲得した

マ:結果として4サルコウで転倒したハビエル・フェルナンデスに12点もの大差をつけて首位に立った

ア:ショートプログラムで12点は膨大な点差だ
つまり、ライバル達を実質全滅させた

これが初めてじゃないけれど

フリープログラムでも(基礎点で)かなりのアドバンテージがある
現時点では・・・一人で競技しているとは言いたくないけれど、実際には、ほとんどそう言う状態だ

他の選手達に比べて頭一つ抜けている

圧倒的に強い選手が4~5人揃っている男子シングルにおいてだ

その中にはリンクメイトのハビエル・フェルナンデス、パトリック・チャン、今日は期待外れだったデニス・テン、クワドジャンパーのジン・ボーヤンがいる

このキュクプロプス(一つ目巨人)のような3アクセル
今やユヅルのトレードマークだ

マ:彼が質の高いジャンプを揃えられる秘訣となっている武器がこれだ。

オリンピックシーズン、彼は3アクセルを2本後半に持ってくることで、ライバル達に対して多大なアドバンテージを得ることが出来た

あれから技術レベルは更に向上し、今や時代はショートで2本、フリーで3本の時代になった

どこかのフォーラムで羽生がフリーをクワド3本にしたのはパトリック・チャンを恐れたからだという意見を読んだけれど、これは全く見当外れな見解だ。

4回転ジャンプの数にパトリックは全然関係ない。パトリックは4回転ジャンプの数で勝負するタイプの選手ではないし、彼に対抗する武器は4回転ジャンプではない。

ユヅルは先シーズンからクワド3本にするつもりだったけれど、体調の様々な問題で出来なかった

シーズン初めのポッドキャストでユヅルの波乱万丈な競技人生について説明したけれど、そこで彼が特定の決断に至るまでの経緯を説明した。

彼はもっと早くクワド3本の構成にしたくて、こっそり練習していた。ブライアン・オーサーは彼がやっていることを知らなかった。

ア:彼も特殊なキャラだよね。

さっき君はジジュン・リーを練習させることの難しさについて話していたけれど

(ジジュン・リー選手の演技の時、彼女は優雅で繊細で稀に見る才能と資質を持つ選手なのに、練習嫌いなのでコーチングするのは大変だ。せっかく才能があるのに勿体ないという話をしていました)

マ:ジジュン・リーは練習したがらないから大変だけれど、羽生結弦の場合は危険になり得ることに挑戦したがるから大変なんだ。でも僕の考えでは、成長に従ってこの点でも少し大人になったと思うよ。

もしかしたら、全日本の後、身体に何らかの黄色信号があったのかもしれない。だから緩めっぱなしだった手綱を少し引くことにした(全力疾走にちょっとブレーキをかけることにしたと言う意味)

この世界選手権ではおそらく4ループは見られないだろう
でも明日じゃないとしても、今日から次の世界選手権までの間に見られることを期待しよう

ア:間違いないね。今シーズン中も僕達はショーで何度もこの4ループを見た

マ:僕には結構簡単そうに跳んでいるように見えるけれど
勿論、プログラム開始から1分半後に跳ぶとなると別だけれど

でも彼はこれまでの期間、彼にとって不可能なことは何もないということを見せた

ア:身体能力において無双だ
強いライバル達が揃っているにも関わらずだよ

 

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羽生君、愛されていますね
温かい解説。そして完全にオトン目線
オトンとしてはヤンチャな所がまた可愛いんだろうな~

しかし、製氷タイムがほとんど羽生結弦ポッドキャストと化しているのが・・・
イタリアなんだから自国のイーヴァン・リギーニ選手の演技を紹介しようという発想にはならないのか
ちなみに今日行われたペアの試合の製氷中も再び羽生君のショートが流れて、アンジェロさんが冒頭のステップを一つずつ説明して、彼のスケーティングスキルが如何に素晴らしいかを力説していました(超マニアック)

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu