イタリア解説EuroSport版「2017中国杯ダイジェスト~女子FS」

今日放送された上位選手の演技を詳しく解説するダイジェストから
女子フリーの上位3人、ザギトワ、新葉ちゃん、舞依ちゃんのプログラム分析と比較が非常に興味深かったので、印象的な部分を抜粋します

実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)

 

<三原舞依ちゃん>

M:彼女のフリーの要素の判定で議論された点があった
ジャッジの判定ミスではなく、コンピュータの判定だ

後半に予定されていた3フリップが前半のジャンプとしてカウントされた

ジャンプが実施されたのは1.58から2.00
1.58分なら前半、2.00なら後半のジャンプになる

A:後半に入るギリギリのところに配置されているから、0コンマの差で試合によって前半にカウントされてしまうことがあるかもしれない

綺麗に決まった3ルッツからの3連続ジャンプ
3ループもステップから跳んでいたし、3サルコウは難しい入り方から手を上げて跳んでいた
ジャンプの入り方の難しさという点で、これは最も豊かなプログラムの一つだ
どのジャンプもステップから実施されているか、巧みに振付に組み込まれている

明らかにステップから跳んでいるのはループとサルコウ、最初の2アクセルとルッツからの三連は振付に巧く組み込まれている。おそらく3フリップも
他の要素も安定していて、スピンとステップでは全てレベル4を獲得した
スピンも彼女は2本を足替えコンビネーションスピン(内1本はフライングシットスピン)にしていて、これ以上高得点を稼げるのはフライングキャメルスピンだけだから、ほとんど最高に近いスピン構成になっている

M:三原のプログラムは先シーズンに比べて断然豊かになった
おそらく、トランジションの豊かさという観点では中国杯では一番優れたプログラムだろう

でもジャッジからは相応の評価を受けられなかった
何故か?

僕達なりにその答えを見つけようとした

そしてこんな結論に達した。彼女のフィギュアスケートではなく、氷上における彼女の印象がジュニアっぽいではないだろうか?

だから何人かのジャッジはまだそれほどの高得点には値しないと判断した。

A:そうでなければこの過小評価の説明がつかない

でも仮にそうだとしても、演技構成点の少なくともトランジションはもっと高い得点に値したと思う
これはあくまでも僕個人の意見だけれど

<アリーナ・ザギトワ>

M:ザギトワはまだ15歳だが、最も高難度構成のプログラムを滑る選手として有名だ
つまり全てのジャンプ要素を後半に入れている

A:有名な音楽、ミンクスの「ドン・キホーテ」

彼女のプログラムもよく出来た振付で、全ての要素が振付の中に巧みに組み込まれているが、注意して見るとジャンプの入り方自体は三原に比べてそれほど難しくないことが分かる

特殊なプログラム構成でまずコレオシークエンス、それからフライングキャメルスピン
レベル4だった場合、三原舞依のフライングシットスピンより0.20点基礎点が高い

今大会ではザギトワは幾つかのジャンプに回転の問題があってルッツで回転不足を取られた

事実を言えば、僕達は最初の3ルッツ/3ループのセカンドジャンプも回転不足を疑ったし、実際ギリギリだったけれど、おそらく1/4未満と判断されたんだろう

最後のフリップも少し疑いが残ったけれど、後半に全部ジャンプを移すと、当然回転不足のリスクが伴う

ダブルカウンターからの2A

もう一つ言わせてもらうと、後半に跳ぶジャンプに与えられるボーナスは「Credit for Highlight distribution」と呼ばれている

つまり「ハイライトのジャンプをプログラム全体に配分すること」に対するボーナスだ(笑)

M:つまり、全部後半に固めたら本当はボーナスを与えるべきではないということになるね(笑)

A:掘り下げるべきテーマだよね

現行のルールはこうだけれど、本来このルールを作った目的はジャンプを(前半に固めずに)プログラム全体にバランスよく配分させることだったから(笑)

つまり、ジャンプを前半に固めても、後半に固めても、プログラムのコンポジションという点においてあまり変わらないと言える
そうすると、こんな疑問が湧いてくる
演技構成点のコンポジションの得点を低くすべきだと思う?

多分、僕はそうするべきだと思う

M:僕もそう思う

 

<樋口新葉ちゃん>

M:樋口は最近3大会連続で207点以上の高得点を獲得している
つまり1月に16歳になったばかりの少女にとっていい傾向だ

A:今シーズンは圧倒的な安定感を見せている

それにこのスカイフォールは見る者を虜にするプログラムだ

見て欲しい、プログラムが始まった瞬間から既に鮮烈な演技

勿論、彼女のような選手なら更に洗練出来る部分はまだ残っている

議論の余地があるのはジャンプ構成と幾つかの要素の実施について

例えばこの2アクセル
素晴らしいジャンプで、ほとんどのジャッジから+2を獲得したけれど、彼女にとって前にもう少し複雑なトランジションを入れることは何でもないことだ

M:2本目の2アクセルはそうしている

A:そして少し助走があるけれど、見事な3ルッツ/3トゥループを実現した

特筆に値することは、トランジションの豊かさという点においては、ザギトワと三原の方が少し上回っているかもしれないけれど、彼女の方が間違いなくより独創的で個性的で、そしてより難しいトランジションを実施している

この足を曲げたイーグルもその一つだけれど、見事な振付だ

それから樋口は三原に比べると表現力において成熟している

パフォーマンスという点においてよりクオリティが高い

M:先ほどの話題に戻るけれど、彼女は氷上の印象においてジュニアっぽさが微塵もない

A:彼女のジャンプはスペクタクルだ
驚異的な爆発力

それに、彼女のプログラムの方が振付により意味がある

この3ループの入り方は素晴らしい

上半身の動作においても三原より優れている

2アクセルからの三連も素晴らしい
バックカウンターから実施していた

そして、ここまで詳しく説明したディテールは別として、一番の違いは、これが最も僕の心に残るプログラムの一つだということだ。非常に鮮烈なインパクトを受ける。

見る者を引き込む、より説得力のある演技

三原のプログラムと比べて、おそらくザギトワのプログラムと比べても、彼女のプログラムにはより魂がある

ザギトワのプログラムはルールに則って完璧に構築されていて、いい演技だったし、いずれにしても動作も洗練されていてクオリティが高かったけど、樋口のプログラムにはそれ以上の何かがある

(プログラム終盤の)このトランジションは独創的だ。これ(最後のスピン前のスパイラル)を見て欲しい
これは究極難度の技だ。手で氷を撫でながら、本当に不安定な体勢
想像を絶するほど難しいことなんだ
樋口の演技は圧巻だった

僕が思うにこれは今シーズン女子のベストプログラムだ

(得点に)彼女は喜んでいるけれど、僕はもっと高い得点に相応しかったと思う
いずれにしても141.99は高得点だ

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アンジェロさんが私の言いたいことを全て代弁してくれました
全文同意
まさに魂のプログラム
最初の動作と表情からスカイフォールの世界に引き込まれ、一つのドラマを見ているようでした
五輪シーズンにこのプログラムに出会ったのはまさに運命ですね
そしてその才能を爆発的に覚醒させつつある新葉ちゃんの個性にピッタリ嵌っている
このプログラム、ファイナルとオリンピックで是非見たいです。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu