女子ショート&フリープログラムから
アリーナ・ザギトワ選手、本田真凛ちゃん、三原舞依ちゃんの演技実況から印象的な部分を抜粋します
実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)
<三原舞依ちゃん>
☆フリー演技後
M:僕達はどれほど長い間、こんな風に見事に演じられた「ミッション」を待っていたか!
この三原舞依の演技は素晴らしかった
技術点74.15点
今、彼女が獲得出来る最高に近い得点だ
A:これは145点を持ち帰れるプログラムだ
M:舞依は既に演技構成点で70点に達したことがある
A:僕の見方だと相応しいと思う
これはトランジションという点において、これまでに見た中で最も複雑に構築された、トップクラスのカテゴリーに入るプログラムの一つだ
これ以上難しくするのは困難だ
冒頭のコンビネーション3ルッツ-トゥループ以外のほとんどのジャンプがトランジションや難しい入り方、ステップ、振付要素から実施されている
ループもサルコウもステップから跳んでいるし、2アクセルは着氷こそ完璧じゃなかったけれど振付の一部になっていた
2A-3Tの前には何もなかったけれど、これは許容範囲だ
他の観点、例えば表現という点においては好き嫌いがあるかもしれないけれど、この点に関しても彼女が努力していることが見て取れるし、まだ卓越した表現者のレベルには達していないかもしれないけれど、いずれにしてもエレガントな選手だ
M:回転は全てクリーンだしスケーティングの質も高い
舞依は一皮むけたというべきだね
(得点表示)
A:僕は演技構成点は低すぎると思う
70点が出ても妥当だったと思う
☆舞依ちゃんの後に滑走したシァンニン・リーの得点を見て
M:演技構成点52.19
つまり今日のジャッジは、点の出し方は渋いけれど一貫性はあるということだね
三原舞依と12点差は相対的に見て適切な点差だと思う
もし全選手に対してこの基準が適用されるなら良しとしよう
<本田真凛ちゃん>
☆ショート演技後
A:色々やらかしたスケートカナダとは別の音楽
M:彼女はステップからルッツを跳ぶのが苦手だから、単独ジャンプをループにして、フリップのコンビネーションにするのが正しい戦略だ
スケートカナダの構成変更は自殺行為だった
例えばフリップのコンボの前にもステップを入れて加点を稼ぎ、後半にループを入れればいい
ジャッジが正しく採点すれば70点は持ち帰れる
こんな才能が手元にあれば、彼女のチームにとってプログラムを作ることはそう難しいことじゃないだろう
0.20点を稼ぐために構成を上げて、結果10点以上低い得点になってしまうリスクを冒すことはない
A:ミスのリスクが高くなるし、そこからミスの連鎖を招きかねない
M:スケートカナダに比べたら別の選手だ
スケートカナダはオズモンドは別として(表彰台に上がれる)スペースがたくさんあったのに
☆フリー演技後
A:最後の2アクセルを3フリップに急遽変更した
プログラム終盤に跳んで、回転は見直さなければならないけれど、勇敢だった
M:賢いね
A:最初のフリップがパンクしてしまったから後半に2本のフリップを跳んだ
後半の3ルッツをフリップに。2アクセルを2本目のフリップに変更した
M:だから二重に賢かったね
最終的に3回転じゃなくて2アクセルが1本足りないだけで、競争力のある技術点を持ち帰った
A:特に聡明さが光った
予定通りプログラムが進行すれば問題ないけれど、何かミスがあってリカバリーしなければならない時にこそ、その選手の頭脳が試される
これも一流選手の素質だ
☆キスクラにプー!
A:ぬいぐるみの山だね
ハハハ、羽生のリンクじゃないのにプーがいる!
<アリーナ・ザギトワ>
☆ショートの6分間練習
M:構成でアリーナ・ザギトワ以上の高難度のプログラムを滑る選手はシニアにはいない
特にフリーでは2本のルッツ、2本のフリップを含むジャンプ要素を全て後半に跳ぶ。それも高いクオリティで
A:彼女はその超絶技術によって現実的に五輪でメドヴェデワの最も強大なライバルになり得る選手だろう
彼女がどのぐらい演技構成点を獲得出来るかに注目だ
既に結構高い得点を獲得しているけれど、メドヴェデワに比べるとこの部分で大分弱い
M:ザギトワのショートの演技構成点はおそらく30点からスタートする
35点まで上がっていくと思う?
もしそうなれば脅威になる
☆フリー
A:今大会のように相対的に演技構成点が渋めの大会では彼女は更に有利になる
M:これは3アクセル無しで可能な最高難度のプログラム構成だ
女子でこれほど高難度なプログラムは未だかつて見たことがなかった
このグランプリ大会で彼女より若い選手はいない
数日の差で五輪出場可能な年齢に達した
A:幸運だったね。他の選手達にとっては不幸なことだけれど
彼女は技術点の高さでメダルの有力候補だから
もし演技構成点も上がってこれば、誰にとっても、メドヴェデワにとっても非常に危険な選手になる
(フリー得点表示)
M:皆さん、演技構成点68.36点だ
A:恐ろしい
M:メドヴェデワを怖がらせることが出来る
ザギトワは今日の技術点76点だけれど、余裕で80点に届く選手だ
現時点ではメドヴェデワが上回っているけれど、でも他の選手が迫ってくると、全てがより困難になる
<三原舞依ちゃんのショート解説でこの日のテクニカルパネルについて言及>
M:(今日の女子の試合で)レビュー(エッジ&回転の検証)を行っているテクニカルパネルは、平昌オリンピックで男子シングルの判定を担当する
ここまでの感じだと、どうやら判定基準は正しいようだね
つまり回り切っていないジャンプは一切認定されない
A:そうだね、ここまでで回転不足にされたジャンプについては、厳格だけれど、正しい判定だと思う
納得できるし、大きなサプライズもなかった
M:テクニカルパネルにはイタリア人の重要人物もいるね
A:ラファエラ・ロカテッリは熟練したジャッジでこの試合のテクニカルコントローラーだ
M:コントローラーは言ってみればテクニカルパネルの監督のような存在だ
回転不足判定については時々、議論が巻き起こることがあるけれど、僕達は今日のようなテクニカルパネルが好きだ。この際はっきり言おうじゃないか
A:ハハハ
M:だって男子の試合では彼らがやっていることをリアルに判定をすべきだ
3.5回転しか回っていない4回転ジャンプはDGだ
完全な4回転ジャンプじゃない、これがコンセプトだ
A:(爆笑)
当然だ
M:誰に対してもね
A:僕達が何度も議論していることだけれど、そうじゃないとクリーンじゃない4回転ジャンプでも大量の得点を持ち帰り、順位も左右されることになる
M:だって離氷で半回転、着氷で半回転稼ぐ選手は?
これでは、どんな3回転でも4回転ジャンプになってしまう
A:実質3回転ジャンプだよね
M:僕達はこうやって茶化しているけれど、これでキャリアを築いている選手達もいる訳で
これではクリーンなジャンプを跳ぶ選手が報われない
A:議論の余地はない
M:同じ得点を与えるべきではない
A:そしてクリーンなジャンプを跳ぶ選手は存在する
M:そう、存在する
問題は彼らのジャンプと、離氷と着氷で回転を稼ぐジャンプの得点が変わらないということだ
A:クリーンなジャンプを跳ぶ選手は公正に評価されるべきだ
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☆中国杯女子は凄い大会になりましたね!
女子の試合でこんな感動と興奮を味わったのは久しぶりです!
個人的にリーザとラジオに復活の兆しが見えたのも嬉しかったです。
それにしてもこの大会とロステレコム杯に比べるとスケカナは結果的に穴場大会だったわけで、ここで日本人の選手が誰も表彰台に乗れなかったのはもったいなかった
真凛ちゃんもショートをフリップにしていれば普通に表彰台だったのに・・・