今日放送された各カテゴリー上位選手の演技を解説するダイジェストから
羽生結弦選手の演技の解説です
☆Elena Cさんの動画です
いつもありがとう!Grazie Elena!
実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)
M:宇野昌磨の後にリンクに降りたのが羽生結弦
この四大陸選手権で彼のキャリア初となるこの大会のタイトルを狙っていた
同国の選手にショートで数点リードされていたけれど、彼も手持ちの兵器を全て出すつもりでリンクに降りた。
A:形容詞がもはや出尽くした選手
(演技中)
A:宇野と同じように彼も4ループでプログラムを開始する
ショートプログラム同様、今回もまさにお手本のような見事な出来栄えだった
着氷後の流れは宇野昌磨の方が少し良かったかもしれないが、より高さのあるジャンプだった
M:何よりもより難しい入り方から跳んでいて助走が少なかった
A:そう、助走がより短かった
4サルコウも良かった
重箱の隅をつつくとすれば、彼のいつものジャンプより着氷が少し堪え気味だったけれど(笑)
彼はただ高難度ジャンプを装備しているだけではなく、実施する全てのクオリティにおいて類稀な選手だ
いや、無比と言ってしまっていいだろう
結弦にとってもう一つのポジティブな点はステップシークエンスでようやくレベル4を獲得出来たことだ
そして振付けに完璧に組み込まれたこの3フリップを見て欲しい
難しいステップから実施された素晴らしいジャンプだった
羽生のプログラムで鍵となっていたのが次の場面だった
今シーズンまだ1度も決まっていないエレメントだ。
2本目の4サルコウ
ショートで彼を裏切ったこのサルコウ、1本目は綺麗に決まったけれど、2本目はまたダブルになってしまった
ループを付けてそのままにした
M:彼は練習でよく起こるようにループ/4サルコウを付けるつもりだったと言っていた
A:何かが彼を思い留まらせたんだろう
M:4サルコウを跳ぶだけのスピードが足りなかったんだ
A:それで彼はどんな風にリカバリーしたか
まず途方もない4トゥループを単独で跳ぶ
それからプログラム後半をかなり経過したところで3アクセル/3トゥループ
戦意を喪失させるほどナチュラルだった
ここは本来3アクセル/ループ/3サルコウの予定だったが、羽生は急きょ4トゥループを2トゥループとのコンビネーションにして跳んだ
驚異的だ
M:着氷後にイーグルを付けてね
A:より素敵なジャンプにするためにね(笑)
でもサプライズはまだ終わりではなかった
これはコレオシークエンス
この終わりにいつもは3ルッツを跳んでいた
M:特に助走無しにね
A:その通り(笑)
見て欲しい、リンクのほとんど端から端まで占めるイナバウアーの後、彼は何をしたか
イナバウアーの後、振り向いて
「僕が3アクセルが2本入っていないフリープログラムを滑る?いや、あり得ないだろう」ってハハハ
M:プログラム開始から正確に4分10秒を経過していた
A:しかもお手本のような素晴らしいクオリティだった
M:これにGOEゼロを付けたジャッジが一人いた
A:見たよ
M:説明して欲しいね
A:説明出来ないだろう
最低でも+2だ
多くのジャッジが+3を付けた
助走が全くなく、イナバウアーからすぐに跳んだこの3アクセルに0と1を付けたジャッジがいた
いずれにしても2サルコウがあってTES112点
でもプログラムの構成を変更してこのミスを大幅にリカバリーし、最終的に3種類4本のクワドを決めた
後半に2本の4トゥループと2本の3アクセル
M:つまりポジティブだった点は、選手のフィジカルコンディションだ
だってプログラム開始後から4分10秒後に3アクセルを決めるには体調がトップである必要がある。終盤の2本の4トゥループについても同じことだ
ネガティブだったことは4サルコウに苦戦していることだ
確かに彼は新しいクワド、4ルッツを練習していて、もはや成功率60%まで仕上がっている
ヘルシンキ選手権でサプライズがあるか見てみよう
何人かは「それはない」と言っているが
でもこの演技によって羽生とブライアン・オーサーは多くのことを考察出来るだろう
A:そうだね。僕もそう思う
プログラムの違う位置で別のジャンプを実施出来る能力があることを証明した
最後の3アクセルや後半の2本の4トゥループのように
でも、一概に判断するのは難しい
だって例えばシーズン序盤のように4サルコウのほうが4トゥループより安定している時も結構あるし
この大会では逆だったけれど、ジャンプの安定性は大概が練習での出来次第だから、これを見ていない僕達に判断するのは難しい
M:それに練習でより難しいことに挑戦していれば、試合で別のことをやるフィジカルとメンタルの準備が出来る
今や練習での彼のフリープログラムは4ルッツが1本増えて、後半はある種の実験室になっている
だから正直、ヘルシンキ世界選手権でのシナリオは予想が付かない
もし彼の頭にあるより極限のプログラムを滑って、全てのエレメンツが入ったら、まさに宇宙的な得点に達することが出来るだろう
勿論、体調と、彼が人間である可能性にもよるけれど
A:そうだね(笑)
これは2サルコウ、ループ
それから4サルコウを跳ぶスピードがないと判断してやめた
ここで座って言うのは簡単だけれど、3サルコウなら付けることは出来た
トリプルを跳べるスピードはあった
そうすれば更に数点上乗せすることが出来て、この数点で結果が変わっていたかもしれない
M:予定の構成を変更してリカバリーしたことを考慮しても、10点近く失っていた
3サルコウと3ルッツがなかったから、4トゥループや4サルコウ1本分くらいの得点を失った
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☆マッシミリアーノさんを捕まえてどういうことか問い詰めたいツッコミたいところが色々ある内容ではありますが、とりあえずあの2サルコウの後のループを見て、羽生君は4サルコウを跳ぶつもりだったと一瞬で見抜いたマッシミリアーノさんの慧眼には脱帽
今回、羽生君が失ったジャンプの基礎点を計算してみると
ショート
4S(10.30) と2S(1.43)の点差9.2
フリー
後半3S(4.84)と2S (1.43)の点差 3.05
後半4Tと4Sの点差0.22
後半3Lz 6.60
合計19.13
GOEとレベル3だったショートのスピンとステップシークエンスを考慮すると技術点だけで25点以上取りこぼしたことになります(フリーはエレメンツが全部完璧に入ったらTES125を超える計算)
トータルとか想像するだけで恐ろしい・・・
ネイサン選手はクワド5本ですが内4本とコンビネーション2本を前半に跳び、ジャンプの助走が長く、トランジションも少ないのでGOEとPCSで羽生君ほど得点を稼ぐことは出来ません。
これから繋ぎとジャンプの入りを強化してくる可能性もありますが、ボーヤン選手も繋ぎ強化を試みたもののスケアメSPでジャンプをことごとく失敗し、結局、繋ぎ強化はやめてFSクワド5本にする戦略に変更したので、ジャンプの前にステップを入れ、繋ぎを強化し、かつ高難度ジャンプを何本も跳ぶことはそう簡単に出来ることではないと思います。
そう考えるとネイサンもミスのリスクを冒して繋ぎを入れるよりも、このままジャンプ先行でとにかく基礎点で出来るだけ稼ぐ戦略で行くような気がします。
なので私は質の高いジャンプでGOEがてんこ盛りにつき、後半の3アクセルでクワド並みの得点が稼げる羽生君に5本目のクワドは全く必要ないと思うのですが、もし4ルッツがマッシミリアーノさんの言うように本当に成功率60%まで仕上がっているのなら、彼なら試合で入れてみたいと思うのでしょうね・・・