羽生結弦が繋ぐ「花は咲く」の輪~ペリカン小学校合唱団の歌声

ストックホルム世界選手権のエキシビションで羽生君が選んだプログラムは「花は咲く」でした。

このプログラムを最初に見たのはNHKで2014年6月に放送された「花は咲く~羽生結弦ver.~」ですが、私にとって最も印象的だったのは2014年NHK杯のエキシビションでの演技でした。

中国杯の衝突事故の後、傷が完治せず、ほとんど練習出来ていない状態で強行出場したNHK杯。

当然、演技は上手くいきませんでしたが、僅か0.15点差でジェレミー・アボット選手を上回って4位に入り、ファイナル行きの最後の切符を掴み取りました。

ショートもフリーも明らかに彼らしくない、万全な状態からは程遠いことが分かる演技で、涙ぐみながらリンクサイドから表彰台のメダリスト達に拍手を送る彼を見るのはとても辛かったけれど、翌日のエキシビションの「花は咲く」は、荒廃した大地から1輪、2輪と大輪のガーベラが花開き、リンクが花で埋め尽くされていく・・・そんなイメージが伝わってくる温かい、感動的な演技でした。

この時の3アクセルは本当に美しく、彼の復活を予兆しているようでした。

2014年NHK杯~羽生結弦の「花は咲く」

そして、そこから僅か2週間後のファイナル、羽生君はショートで首位に立ち、フリーでは他の選手達が次々に自爆しましたので、私などは「この際、4Tと後半のアクセル2本が決まれば勝てる」なんて志の低いことを考えていたら、いきなり目の醒めるような4S!音ハメ4T!驚異的な演技で圧勝でした(ごめんなさい羽生君、あなたをナメていました!!)。

なので私の中では「花を咲く」というと、被災地の復興、というイメージと共に、彼の中国杯の怪我からファイナルまでの劇的な復活を彷彿させる、まさに「再生」を象徴するプログラムです。

 

NHKでは2013年から2017年にかけてこの被災地復興支援ソングのミュージックビデオを募集する企画「100万人の花が咲く」が行われ、日本だけでなく世界中の多くの国からこのイニシアティブに共鳴した人達によって心を込めて制作された「花を咲く」の動画がNHKに届けられました。

 

世界中から届いた「花は咲く」ミュージックビデオ

https://www.nhk.or.jp/ashita/english/song/1million.html

 

その中の一つ、「Il Pelicano」(ペリカン)小学校合唱団の子供達のミュージックビデオは、羽生君の「花を咲く」の演技に深く感動した音楽の先生の、被災地を支援するこの美しい曲とその背景にある意味を子供達に知ってもらいたい、という気持ちから生まれました。羽生君の大ファンである先生(ソチ・パリ散落ち)は、2017年マルセイユGPFで彼の試合を初めて生観戦した後、東日本大震災で何が起こったかを子供達に語り、羽生結弦の「花は咲く」の演技を見せ、彼が被災したエピソードを話しました。子供達は震災の映像に衝撃を受け、彼女によって語られる羽生結弦の物語に魅了され、この世のものとは思われない彼の演技に夢中になり、この曲を歌いたいと強く願ったそうです。

日本語版と英語版の「花は咲く」を聴かせたところ、子供達は日本語版を選びました(彼らが日本語の歌に挑戦したのはこれが初めてだそうです)。

そして、日本人の友人に頼んで楽譜の歌詞にローマ字で読み方を入れてもらい、日本語版を何度も何度も聴き込んで、練習を積み、実現した演奏は小学生とは思えないクオリティの高さです!
歌唱力も素晴らしいですが、日本人ではない子供達が歌っているとは思えないほど見事な発音です。そして何と美しいハーモニー、何という美声でしょう!

イタリア語はドイツ語やフランス語と違って、母音が日本語同じア・イ・ウ・エ・オなので発音し易い、というのもありますが、目をつぶって聴くと日本の子供達が歌っているようです(私達日本人にとってイタリア語は発音し易く、文法を考えずに話すだけなら、最もマスターし易い言語の一つだと思います)。

以来、彼女の合唱団は1年に1曲、日本の歌を学習するようになり、毎年年末に行われる発表会では必ず日本の歌も1曲歌っているそうです。

動画には教室のスクリーンで上映される羽生君の「花は咲く」や「YUZU」と書かれたバナー(先生がマルセイユに持参した応援バナー)やプーを持つ子供達の映像も挿入されています。

 

以下のNHKのサイトから視聴することが出来ます↓

https://www.nhk.or.jp/ashita/english/song/254_10028.html

 

動画に添えられた説明文の翻訳はこちらです↓

100万人の花は咲く~One Million People’s FLOWERS WILL BLOOM
「Il Pelicano」小学校(イタリア-エミーリア・ロマーニャ州)

 2年前、私は羽生結弦がこの歌で滑るのを見て、初めてこの曲を知りました。
私が見て、聴いたものは素晴らしいものでした。
去年の1月、私は合唱団の子供達に3.11に何が起こったのかを話し、演技の動画を見せることにしました。
子供達は驚嘆し、すぐにこの曲を歌いたいと私に頼みました。

心を揺さぶる本物の「美」を見せてくれたことを作曲家と羽生さんに感謝し、亡くなった全ての方と日本でまだ苦しんでいる方々に私達の祈りを捧げます。

 

イタリアの小さなユヅリーテ達の「花は咲く」が羽生君に届きますように・・・

明日から世界国別対抗戦です
頑張ってチームジャパン💪
頑張って羽生君!💪💪💪

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu