Neveitaliaポッドキャスト「4回転ジャンプ大会~ジャパンオープン女子(その1)」

イタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんのNeveitaliaポッドキャスト第12回から(毎週月曜日21時15分放送)。

今回は4回転ジャンプ大会、ジャンパンオープン女子の話題から印象に残った部分をご紹介します(あまりにも長いのでJO男子とジュニアグランプリ大会は別に分けることにしました)。

マッシミリアーノさんの他に質問役の男性がいて、彼の提示する疑問に答えて、マッシミリアーノさんが独自の議論を展開するという構成になっています。

イタリアは言論が自由というか、これ、日本の解説者(例えば本田さんとか織田君とか)が発言したら大問題になるだろうな~ということを結構言っていますが、自由気質のイタリアならではの解説と聞き流して下さいね。

視聴こちらから>>

(翻訳は抜粋・要約です)

<4回転ジャンプ大会>

質問:4回転ジャンプ大会が開催されるとしたら、招待したい10人の選手は?

10人の選手ね(笑)
そうだね、この2人を招待しないと大会が始まらないという選手がいる。

日本の羽生、そして中国のジン・ボーヤン無しの4回転ジャンプ大会はあり得ない。彼らの存在は必須だ。
おそらく優勝争いはこの2人の一騎打ちになるだろう。何故ならこの二人は途方もない兵器庫を持っているからだ。

現在、この2人はエキシビションのジャンプ大会なら間違いなく3種類の4回転ジャンプを決めることが出来る。羽生はトゥループ、サルコウ、ループ、ボーヤンはルッツ、サルコウ、トゥループだ。ルッツの方が基礎点は高いけれど、試合で4ループを決めた選手は未だ存在しない。

3人目はロシアの若手でまだジュニアの選手(名前が聞き取れず)、トゥループとサルコウは試合で成功させていて、練習ではルッツとループもあと少しで完成しそうだ。だから4種類の4回転ジャンプ。

同じくジュニアのダニエル・サモーヒン、イスラエルの選手でトゥループとサルコウは安定しているし、この選手の跳躍力なら練習すればルッツも跳べるようになる可能性がある。これで4人。

それから、ハビエル・フェルナンデスも欠かせない。フェルナンデスは数年前から試合で4サルコウと4トゥループを成功させている。練習ではループもあと少しで成功出来そうだ。

だからスペイン人も招待しよう。
これで5人。

それから日本の宇野昌磨も4トゥループは問題なく着氷出来るし、ループとサルコウももう少しで完成しそうだと小耳に挟んだ。もしそうなら3種類のクワド。彼も参加出来るかもしれない。

その他にJPGポーランド大会で4ループ(回転不足判定)に挑戦したアメリカのカースノジョン、ロシアのメンショフとマキシム・コフトゥン、カナダのナム・ニューエン、全盛期のプルシェンコ、健康なケヴィン・レイノルズの名前が挙がっていました。
マッシミリアーノさんはフィギュアスケートファンの投資家が誰かスポンサーになってこういう大会を実現して欲しいと言っていました。

 

<ジャパンオープン>

質問:先日日本で行われたジャパンオープンの結果と得点にはどのぐらい信頼性がある?

難しい質問だね。ジャパンオープンは特殊な大会だからどう評価するかは微妙なところだ。

勿論、試合だけれどエキシビションの形式を取っているから、ジャパンオープンは試合ではなくエキシだという人もいる。でもコンセプトは試合と変わらない。

通常、ジャパンオープンは日本人選手の得点が非常に高い大会で、これまでもずっとそういう傾向だから、この点については疑う余地はない。

このことを考慮しても、今回の浅田真央、宮原知子、宇野昌磨への評価は妥当だと思う。
特に技術面に関して3人ともハイレベルで期待以上だった。
通常、技術点が上がると、比例して演技構成点も高くなる。

 

女子

宮原の演技構成点はUSクラシックに比べると大幅に上がったが、全てがクリーンな完璧な演技だったから当然だ。
ジャンプ構成を前半3ルッツ-3トゥループに変えていたけれど、これが彼女にとって最善の構成かは疑問だ。
現在のルールでは後半に2アクセル-3トゥループにした方が、基礎点が0.10点ほど高くなるからだ。

浅田は圧巻だった。筋肉的に何かが変わったんだと思う。
大腿筋が発達し、ジャンプの踏切りが改善された。浅田は過去にスランプに陥り、どのジャンプも完全に回り切ることが出来ない時期があった。
(今回の)3アクセルはクリーンだった。3-3のコンビネーションを回避したのは賢明な選択だった。本当は3フリップ-3ループを入れるつもりだったんだろうが、シニアでセカンドループが認定されることはほとんどない。

ジュニアの選手達は認定されているけれど、彼女達は体格が違う。
成長し、腰幅や肩幅が広くなるとコンビネーションのセカンドジャンプとして3ループを完全に回り切るのは困難になる。
シニアでコンボのセカンドジャンプの3ループが最後に認定されたのはソトニコワだが、それも数年前のことだ。

浅田は最後の3連続ジャンプでダブルジャンプが抜ける小さなミスがあっただけで、僕には非常に調子がいいように見えた。

ルッツが改善され、今大会初めて明らかなインサイドではないエッジで踏み切っていて、「e」(エッジエラー)が付かなかった。だから一つ一つのエレメントに取り組んでいることがよく分かる。

つまり、日本の選手達は良かった。

演技構成点が盛り過ぎの感はあったけれど、自国選手の得点が高めなのはジャパンオープンに限ったことではない。

例えば、イタリアで開催されるロンバルディア杯ではしばしばイタリア選手が高い得点を貰っている。僕はこういうことを嫌悪しているけれど、フィギュアスケートに限らず、どのスポーツでも多かれ少なかれ見られる傾向で、仕方のない事なのだ。

ロシアの選手達も良かったと思う。
二人共、それぞれ別の理由から万全なフィジカルコンディションではなかった。

トゥクタミシェワは最近重いインフルエンザにかかって、回復するのが大変だった。
でも彼女は戦士で、競技することが可能な限り、例え39度の熱があっても決して試合を放棄しない。
先シーズンも幾つかの試合は高熱の中で競技していた。彼女の才能が故に可能なことだ。

ソトニコワはまだ最良のコンディションを模索中で、とりあえず重量オーバーだ。
この夏、イタリアで行われた合宿中、アデリーナは1日2回体重を測定していた。
でも本来の爆発力が戻りつつある。まだ足の筋肉が戻っていないようだけれど。

いずれにしてもロシアの女子2人の選手はポジティブな状態と見た。

トゥクタミシェワは3アクセルで転倒したけれど心配することではない。先シーズン、完璧にマスターしていたから、色々な理由で単に調整が遅れているだけだろう。

だからロシア女子は合格。

アメリカの2人にポジティブな評価を下すのは正直難しい。
ワーグナーには慢性的な回転不足問題がある。
埼玉の女子の試合のジャッジは非常に寛大だった。
ほとんど人が、今回ジャッジが回転不足と判定したジャンプ以外の多くのジャンプが回転不足だったと言っている。
特にワーグナーのジャンプはほとんどが回転不足だった。
僕は彼女のピークはもう過ぎていると思う。実際、ここ数年、全く進化していない。
フリップ2本、ルッツ1本の構成に戻したのは良かったけれど。

彼女のルッツの質はおそらく現在の女子の中では最悪レベルだが、先シーズン、ルッツを2本跳ぶという僕からしたら狂気の沙汰としか思えない不可解な選択をした。
しかもグランプリシリーズのどの大会か忘れたけれど、このルッツにエラーが付かず認定されていたことがあって、全くスキャンダラスなジャッジだった。

ゴールドは・・・正直何と言ったら分からない。才能という点においては、間違いなく世界1~2に入る逸材だろうが・・・このまま大成出来ずに終わる予感がする。
コーチのフランク・キャロルは彼女には合ってないのではないだろうか。

実際、コーチを変更してからルッツの成功率が下がった。3ルッツは彼女の最も強力な武器だから、ルッツが決まらないと戦力の30%を失うことになる。

プログラムは美しいと思う。ローリー・二コル振付けで繋ぎも濃く、細部まで工夫が凝らされている。
ただ彼女もスタミナに問題があってプログラムの2分以降、息が上がって動きが鈍くなり、音に合わなくなってくる。

勿論、この時期の彼女はいつも本調子じゃないけれど、練習の状態から僕がかなり期待していて、日本の選手やトゥクタミシェワに追いつくと賭けていたぐらいだ。

浅田のコンディションには衝撃を受けた。今回、日本で見た浅田ならトゥクタミシェワと戦える。しかも現時点では、多くの理由によって演技構成点でトゥクタミシェワに対してアドバンテージがある。

演技構成点で浅田を脅かすことが出来るのは、もし復帰するならカロリーナ・コストナー、そして並外れたステーティングスキルを持ち、他に類のないほど繋ぎ満載のプログラムを滑るアデリーナ・ソトニコワだけだ。

ジャパンオープンのアデリーナはおそらく本来の60パーセントのコンディションだったんだろう。
いずれにしても今回ジャパンオープンに出場した女子選手はワーグナー以外全員が世界選手権のメダル候補だ。

ゴールドは今回低調だったけれど、ポテンシャルでは傑出している。

浅田は既に異常なほど絶好調。勿論、今後より大きな大会でこのコンディションを保てるか見なければならないけれど、ジャパンオープンの状態の浅田なら皆が後を追う選手になるだろう。

トゥクタミシェワのレベルについてはもはや言及するまでもない。

ソトニコワは・・・
ソトニコワについては未知数だ。
もしソチのコンディションのアデリーナなら、トゥクタミシェワと浅田には残念だけれど、3アクセルをもってしても彼女には勝つのは困難になるだろう。

もしソチ以前のシニア時代のレベルなら、彼女にとっては苦しい戦いになるだろう。

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☆ ジャパンオープンの真央ちゃんは凄かったですね!
ブランクが心配されていましたけれど、更に進化してパワーアップしたような。
先シーズンは休養ではなくて充電期間だったんですね。
ショートプログラムも楽しみです。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu