一般的にはスケアメは自爆、中国杯はジャンプが全部入って圧巻の演技という印象ですが、イタリア解説のお二人の意見は少し違うようです。当然、羽生君の名前が何度も登場します
実況:マッシミリアーノ・アンベージ
解説:アンジェロ・ドルフィーニ
☆解説は抜粋・一部要約です
<ジン・ボーヤン選手のショート演技解説>
スケートアメリカ
マ:彼がシニアに上がってから、ジャンプでこれほどミスするのは初めて見た。
でも強調しなければならないことがある。
助走の長いジャンプで構成されたプログラムでは、ジャンプ要素はより簡単をこなせる。
でもプログラムをトランジションで豊かにすると、消耗するエネルギーはより多くなり、ミスをする。
冒頭のルッツは例外だけれど、プログラムの残りの部分のトランジションに注目したい。
ア:とても興味深いプログラム。トランジションが豊富だし、僕は振付のコンセプトがとても気に入った。
まだ幾つかの部分であか抜けない部分が残っているけれど、でもそれはおそらく彼がまだあか抜けないんだろう(笑)
でもこういうタイプの振付を実現しようというアイデアは面白いし、スパイダーマンはある意味まだ少年のプログラムだけれど、マイケル・ブーブレの曲だし、面白い選曲だと思う。
でも腕や上半身の動きをふんだんに取り入れるようになった。
3アクセルの前にも多くのトランジションを入れている。
4トゥループの前には本物のステップを入れている。結果的に2度の転倒と1度のステップアウトを招いた。
マ:おそらく転倒に影響されるであろう今日の採点はともかく、このプログラムはクリーンに滑ればPCSで40点を越える内容だ。
ア:何故僕らが羽生とフェルナンデスの演技に対する賛美の念をたびたび伝えているのか
なぜなら彼らは技術的に傑出しているだけでなく、非常に豊かなプログラム、究極に難しいプログラムを披露するからだ。羽生が高難度のプログラムで質の高いジャンプを決めて滑り切った時・・・羽生のトランジション要素には全く開いた口が塞がらなくなる。
見て分かるように、ジン・ボーヤンはそのことに気が付いた。そして彼もトランジションに取り組んでいる。でも全てを混ぜ合わせてより難しくなったプログラムでは3つのジャンプ要素でミスをした。
マ:羽生結弦はジン・ボーヤンの4ルッツに注目していることを隠さない。
でもジン・ボーヤンの多くのトランジションから彼も羽生結弦を見ていることが伺える(笑)
ア:疑う余地はない。僕たちは羽生が高難度ジャンプの前後に散りばめられた驚異的に豊かなトランジションによって特にショートでライバル達を圧倒していると何度も説明してきた
フリーでは分かりにくいけれど
マ:それは疑問だね。トランジションを評価する者にとって、トランジションを感知して理解するのは決して簡単なことではない。
これは何を意味しているのか
ノーミスだと銀河点が出るけれど、ミスを連発すると大幅に得点が下がるという採点のされ方をする。特に羽生がそうだ
ジン・ボーヤンは2度の転倒とアクセルのミスがあって72.93点
彼のポテンシャルは誰の目にも明らかだ。
中国杯
(演技前)
マ:ジン・ボーヤン、センセーショナルな選手
何故なら昨シーズンはある意味で羽生結弦の闘志に火をつけてフィギュアスケート界に起こった技術的革命の一端を担ったからだ。
(演技後)
ア:スケートアメリカとは全然違うプログラム
今回は確かにジャンプ要素は全部入ったけれど、僕はプログラムがトランジションにおいて断然貧相になったことに気が付いたよ!!!(爆笑)
マ:明らかだね
ア:3アクセルの前のトランジションは削除されたし、4トゥループの前のステップはかなり簡略化された上にジャンプからも遠くなった・・・
マ:何て言ったらいいのか・・・・
こう言う風に言ってみよう
フットワークは少ないけれど、身体の特に上半身の使い方が彼より優れていて、彼より高いPCSをもらっている選手がいる。一見、こういう選手の方が表現において断然優れているように見えるけれど、足元に注目すれば幾つかの評価について考えが変わると思う。
ア:いずれにしてもスケートアメリカのショートで僕達が見た彼の進化は見直されて、少なくともジャンプの入りはかなりシンプルになった。ルッツの前は変わらないけれど、でもまあ非常に難しいジャンプだから理解出来る。
だけど3アクセルの前に入れていたトランジションは削除された。
4トゥループの前のステップも簡単になった。
幾つかの変更が加えられ、プログラムの構成という点で後退する戦略を取った。
マ:シーズンのこの時期だから意味のある選択肢かもしれない。
先シーズンのように徐々に変更していくつもりかもしれない。
TESカウンターは56点だったよね。もしこの得点が確定されれば今シーズン最高の技術点だ。
演技構成点はどれぐらい出るだろうか。
いずれにしても上半身と腕の使い方において向上の余地がかなりある。
ア:この点についても現在、強化中で、良くなってきているけれど、まだ学芸会のようなところがある。子供っぽいというか
マ:ジュニアっぽいね
ア:そう、ジュニアっぽいというのが適切な表現だね
マ:でもスケーティングの質については過小評価すべきではない選手だ
非常にスピードがある
(得点表示)
ア:演技構成点が上がったね・・・これには僕は同意出来なあ(笑)
☆今回はファイナル進出を最優先してジャンプでミスしないようトランジションを簡略化したんでしょうね。
トランジションが豊かでジャンプの入りの難しいプログラムと、高難度ジャンプを両立させることがいかに難しいかということですね。でも結果的にPCSの差でパトリックに負けることになってしまった・・・
中国杯でのその他の印象的なコメント
<マックス・アーロン選手SPのキス&クライ>
マ:マックスは4アクセルを練習している選手の一人だ
15点の価値があるエレメンツだ。
次のフロンティアはこのジャンプだ。いつ実現出来る者が出てくるかは分からないけれど
ア:今のルールではショートには入れることが出来ない。
マ:そうだね、だからフリーでのみ・・・いや、ショートでも入れることが出来るよ
ステップからのソロジャンプとしてね
ア:頑張ってね(笑)
マ:ハニューレベルの代物だね(笑)
ア:(爆笑)
マ:でもあんまり言いふらさないでね。
彼が妙な気を起こすといけないから!(笑)
<ハン・ヤン選手のフリー>
(演技中)
ア:男子シングルで・・・
このロミオとジュリエットのサウンドトラックは鮮烈な記憶を蘇らせる・・・
最初は3アクセル
マ:2012年ニース世界選手権の最も美しい思い出だ
ア:羽生の演技
まだ少年だった頃の羽生・・・
☆ハン・ヤン選手の演技中にニースロミジュリの思い出に浸るイタリア実況解説
(キス&クライ)
マ:これから調子を上げてきたら4トゥループが安定して(ミスが続いている)3アクセルを取り戻せるか見ていこう
3アクセル+2は実質2点の加点が付く。
ア:つまりもう1本4回転ジャンプを跳ぶのと同じぐらいの得点を稼げる
マ:加点2が付いた3アクセルは10.5点だ。後半に跳べば更に1点追加出来る。
ア:つまり4回転ジャンプを回転不足や着氷の乱れ無く普通に決めた時の得点と同じだ。
マ:羽生がいつも言っていることだ
遥か遠い2011-2012シーズンにこの曲で滑って僕達に魔法をかけた彼が
羽生は何と言っているのか
「僕は後半に跳ぶ3アクセルによってクワドが2本余分にあるのも同然だ」
ア:彼のアクセルは+2/3点だからね
彼は正しい(笑)
マ:でも最近、このジャンプの評価で矛盾することが起こっている。
つまりイーグルから跳ぶと自動的に+3が付く、でもバックカウンターからだと+1になる。
この二つの跳び方でどっちが難しい?君が説明してよ
ア:議論の余地なくバックカウンターから跳ぶ方が難しい
マ:じゃあどうしてジャッジはそれに気が付かないの?
ア:難度が分かりにくいんだろう・・・
マ:でもジャッジならこういうことも勉強して知っておくべきだろう
ア:確かにそうだ。同感だよ
☆ハン・ヤン選手の解説なのに・・・キスクラでも途中から羽生君の話になっている・・・
<サムエル・サモーヒン選手の演技のスロー映像中>
☆ボーヤン選手の演技の後、お二人はボーヤンGPF進出をほぼ確信していたのですが、パトリックが圧巻の演技でまさかの逆転優勝
ボーヤン選手のファイナル進出の望みは断たれることに・・・
がっかりしたお二人の嘆きのコメントです
マ:ボーヤンは実質、ファイナル争いからはじき出されてしまった
彼にとって致命的になったのはスケートアメリカでわずか0.20点差でヴォロノフに敗れ、4位に食い込むことが出来なかったことだ。
ア:残念だ・・・
間違いなく主役の一人になっていただろうに
今日は技術的にハイレベルな演技を披露した
非情な悪戯だ
パトリック・チャンの驚異的な演技を見られたのは嬉しかったけれど、その一方でジン・ボーヤンをマルセイユで見られないことはとても残念だ。彼が出場すれば間違いなく試合の価値は更に高くなっていた
マ:彼の不在は重い・・・非常に重い・・・
ア:全くだ
マ:でもネイサン・チェンにはまだチャンスがある
日本大会で1位か2位に入る必要がある
ア:彼はジン・ボーヤンの代役に相応しいね(笑)
☆サモーヒン選手の演技映像が流れているのに、彼のことは一切解説せず、ひたすらボーヤン選手のことを残念がる解説陣
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☆パトリックの演技には感動したし、ジャンプオンリーじゃなくてスケーティングもトランジションも表現力も全てが揃ったオールラウンダーの選手に勝って欲しいと思うけれど、ボーヤン選手にはファイナルに来て欲しかった・・・残念・・・
で、この際、ネイサン選手に代わりに来て欲しいという気持ちは凄くよく分かります。
(イタリアのユヅリーテ達もユヅの起爆剤になるとボーヤンを応援していて、ボーヤンがダメなら、じゃあネイサンでという流れになっています!)
ネイサンがファイナル進出するにはNHK杯2位以上で(でも1位は羽生君です!)アダム・リッポンの得点を上回るのが条件ですね。
ポイントで言えば、3位以上でファイナル進出が決まるジェーソン・ブラウン選手は勿論、ビシェンコ選手も前大会3位で11ポイントを獲得していますのでネイサン選手(9ポイント)よりファイナルに近い位置にいるのですが、マッシミリアーノさん達にとってはいないも同然の扱いなのが・・・