イタリア解説EuroSport版「2012NHK杯~羽生結弦FS」

過去の映像から

オフシーズンに入り、イタリア的には来シーズン開幕まで話題がないので、エレナさんが投稿してくれている過去の試合の実況動画をのんびり訳して行きたいと思います。

今回は2013年NHK杯で初優を飾ったフリープログラムの演技解説

Elena Cさんの動画です!
いつもありがとう!Grazie Elena!

実況:マッシミリアーノ・アンベージ(M)
解説:アンジェロ・ドルフィーニ(A)

 

M:それでは羽生結弦の演技を見よう。
まだグランプリシリーズで優勝したことがない
だから今回は故郷のリンクで初優勝を飾ることが出来るかもしれない。
彼は仙台の出身。今大会の開催地である利府がある宮城県の県庁所在地だ。

羽生の曲はノートルダム・ドゥ・パリ
今日、既に聴いた曲だ。

では、羽生を堪能しよう
スケートアメリカに比べて彼のフリーも並外れたショートと同じ価値があるか見てみよう。

A:点差に余裕があるけれど、スケートアメリカよりいい演技をしなければならない。

(演技中)

A:4トゥループ

A:4サルコウ
もっと綺麗に決められたはずだが少し高さが足りなかった

A:3フリップ

A:3アクセル/3トゥループ

A:3アクセル/シングルトゥループ

A:3ループ

A:3ルッツ/2トゥループ

A:もう1本の3ルッツ

ミスがあった、転倒だ

A:コンビネーションスピンでも転倒があった!
そんなに難しい要素ではないけれど

(演技終了)

M:アンジェロ、最後に2つミスがあったけれど、この少年はプログラム後半に3アクセルを2本跳んだ。僕はこんな代物は見たことがない

A:確かに後半に2本の3アクセルというのは極限の選択だけれど、彼にはそれが出来る資質がある(笑)
おそらくまだ完全に開花していないポテンシャルを持つ選手

ショートプログラムは傑作だ。

M:未だかつて見たことのなかった

A:確かに、未だかつて見たことがなかった

M:だって後半に2本の3アクセル。
冒頭に4トゥループ、それからリンクの反対側で4サルコウというのは前例のない構成だ

A:本当に驚異的だ

確かにビッグ達のプログラムでも多くのミスが見られるようになったけれど、彼らは大きなリスクの伴う非常に高難度のプログラムに挑戦している。

だから本当に100%の体調じゃないと・・・羽生のプログラムや4回転ジャンプを3本入れているフェルナンデスのプログラムは本当に多大なリスクが伴う。

同じことがレイノルズにも言える。前述の選手達に比べるとワンランク下の選手かもしれないけれど、彼も非常にリスクの高いプログラムを滑る

ここでは2本の驚異的な3アクセル。プログラム後半にもかかわらず高いクオリティだ

2本の4回転ジャンプ

4トゥループは最高の出来だった

いずれにしてもスローで見ると彼の膝の屈曲、4サルコウをどのようにして転倒せずに堪えたかに驚愕させられる。他のスケーターなら誰でも転倒しているようなジャンプで、彼は転倒を免れた。着氷の姿勢を見てほしい!でも転倒しなかった

M:織田モードでね。膝を深く屈曲させる

先ほどの発言を訂正する
羽生は昨年のグランプリシリーズのモスクワ大会で既に優勝している
この勝利で彼はグランプリファイナルの切符を手に入れた。
フリープログラムで挽回し、小数点の差で逆転した。彼がファイナルに行くには優勝しかなかったけれど、彼はそれをやってのけた

A:ソン・ナンを自宅待機にしてね(笑)

M:その通り

二勝目になるか見てみよう

A:僕は勝つと思う

得点は十分足りるだろう

ミスはあったし、スピンでも転倒した

でも3ルッツとスピンで転倒があっても、このようなプログラムを滑り切ることで彼が稼ぐことが出来る得点は膨大だ。特にプログラム後半の2本の3アクセルが大きな得点源になっている

M:羽生の強みは3アクセルの圧倒的な技術だ。通常、イーグルから跳ぶことが出来る。

A:その通り

それにバックカウンターのような難しいステップからでもね
彼にはほぼ何でも出来てしまう能力がある
実際、3アクセルは目を閉じていても決めることが出来る(笑)
それにこのジャンプの飛距離とクオリティも本当に規格外だ

問題なく首位に立てるだろう。156点あればいいんだから

M:2つのカテゴリーで同じフリーの曲の選手が優勝したことは、今まで1度もなかったよね
デイヴィス/ホワイト組も羽生もノートルダム・ドゥ・パリの曲で滑った。

A:(笑)面白い着眼点だね。調べてみないと分からないけど、確かにそうかもしれない

M:考えているけど、他に同じケースは思い浮かばない

A:僕も記憶する限りではないね

もしかしたら前例のないことかもしれない

 

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ニースのロミジュリで心を鷲掴みにされ、このシーズンからはB級試合から出場試合は全部見ていました。
スケートアメリカではショートで歴代最高得点更新→フリー大自爆で2位の衝撃的なジェットコースター展開だったので、このフリーもかなりドキドキしました。

この頃は後半、スタミナ不足で息も絶え絶えになって、課題はスタミナと言われていたのに、今ではクワド4本(内、後半2本+3Ax2)の構成で更にリカバリーで5本目のクワドコンボとか、最後の最後に3アクセルとかを余裕で跳んでしまうスーパーフィジカルを持つ選手に変貌するとは!
しかも震災とか手術とかリフスラン加療で滑れない時期が結構あったのに

100年に一人の天才、史上最高のスケーター、生きた伝説と呼ばれ、存在だけでも奇跡のような羽生結弦選手が、降りかかる様々な試練を乗り越えて進化し、成長していく姿をリアルタイムで追うことが出来るのはもの凄く幸運なことだと思います。

「この時代に生まれてくれてありがとう」と心から言いたい

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu