Corriere della Seraより「アメリカとロシアの争い:腐敗と新ルールがこのスポーツを台無しにしようとしている」

イタリアの主要全国紙コリエーレ・デッラ・セーラの昨日の新聞から
先日翻訳したコラムの筆者、作家でジャーナリストのコスタンツァ・リッツァカーザさんの記事です。現在のフィギュアスケート界を痛烈に批判しています。

コスタンツァ・リッツァカーザ
(2022年6月5日)

原文(デジタル版)>>

アメリカがロシアの不在を利用し、芸術的表現を排除するジャンプ優遇ルールを検討している

昨年のストックホルム世界選手権で当時の現世界チャンピオン、ネイサン・チェンのショートプログラムの残念な演技の後、リズムダンスで首位に立ったロシアのペア、ヴィクトリヤ・シニツィナ/ニキータ・カツァラポフのコーチであるアレクサンダー・ズーリンは、口を滑らして非常に重大な失言をしました。彼はこう言ったのです。「アメリカが男子シングルで金メダルを獲得すれば、アイスダンスでアメリカペアが優遇される心配をせずに済む
フィギュアスケート界へようこそ。ここではアメリカとロシアが、ISUと他の連盟の同意を得て、金メダルを分け合っています

腐敗がフィギュアスケート界における最も古い問題だとしたら、ソルトレイクシティー五輪において、ロシアの絶大な権力が史上最大のスキャンダルの一つ(自国連盟の会長に圧力を掛けられたフランスジャッジがペアの試合でロシアペアに有利、カナダペアに不利な採点を行い、見返りとしてアイスダンスで自国ペアを優遇してもらいました。FBIによって暴かれたように、ロシアマフィアが全ての工作に加担していました)に繋がった20年前から状況は大きく変化しています。

6月10日までプーケットで予定されているISU会議の劇的なエディションが本日幕を開けました。フィギュアスケート界における腐敗は常に深刻ですが、力関係は変化しています。ウクライナ侵攻の影響でロシアの選手達が公式大会への参加を禁止されるという地政学的状況を受けて、ドルと広報の力によって法を牛耳るのはアメリカです。

オリンピックの公式放送局であるNBCは、北京以降6回大会のオリンピックの放送権として77.5億ドルを支払いました。これは国際オリンピック委員会(IOC)の収益の40%に相当し、実質、IOCのパートナーとして振る舞っています。更にフィギュアスケート界を支配する巨大なスポーツ/PRエージェント、IMGが存在します。

そして今、初めてアメリカ人のISU会長が誕生する可能性があります。2019年にABCニュースの調査を行った元弁護士で元連盟会長のパトリシア・セント・ピーターがその候補ですが、彼女は元スケーターのクレイグ・マウリジに対するセクハラ事件の隠蔽に関与したと言われています(まさに昨年、マウリジが訴えたのと同じコーチ、リチャード・キャラハンによるティーンエイジャー時代の猥褻行為を巡る訴訟を終わらせるために、アメリカ連盟は145万ドルで元スケーター、アダム・シュミットと交渉しました)。

背景にはフィギュアスケートの異なる概念もあります。歴史的には氷上に描かれる図形に因んで「フィギュア」スケートと呼ばれていたこのスポーツが、現在ではどんどん「ジャンプ選手権」に近づいています。巷で皮肉を込めて「アイスジャンピングと呼ぼう」と言われているのは偶然ではありません。北京の金メダリスト、チェン自身も「芸術を求めるならバレエを見ればいい」と発言しています。

技術分析によって前回のオリンピックにおけるジャッジの採点が疑問視される一方で、アメリカ、ロシア、そしてISUは彼ら全員に都合のよいゴールデンボーイを見つけたようです。その選手、ロシア人の両親(元スケーターのタチアナ・マリニナとロマン・スコルニアコフ)とアメリカのパスポートを持つ17歳、イリア・マリニンはシニア大会で一度も優勝したことがないにも拘わらず、「QuadG0d」(4回転ジャンプの神)と自称しています。

マリニンは現在、2018年にISUによって基礎点が15点から12.5点に下げられた4回転アクセル(同時に各エレメントの出来栄えを評価するGOEは+3/-3から+5/-5に引き上げられ、ジャッジ達が主観と自由裁量で得点を操作出来る範囲が大幅に広がりました)に挑戦しており、アメリカ連盟のコーチであるトム・ザクラジセックは数日前にツイッターで次のように書いています:「ISUは4アクセルの基礎点を大幅に引き上げなければならない」

その時のお気に入りを優遇するために捻じ曲げられるルールによって、タイの会議(ISUに対する訴訟を回避するために、いずれにしてロシアの役職者も引き続き出席しています)で検討されている2つの提案は、このスポーツの美しさを完全に排除する危険性があります:ステップシークエンス、ジャンプの難しい入りと出、そして音楽の解釈までも・・・

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現在の、正確には数年前から続いているフィギュアスケート界における深刻な問題を提起する非常に強い記事です。
重要なのはこれがファンの個人ブログではなく、イタリアの二大全国紙の一つに掲載された記事だということです。

ISUが特定国の選手を勝たせるために、あるいは特定の選手を勝たせないためにルールを改変するのは何も今に始まったことではありません。
100年以上に及ぶフィギュアスケート競技の歴史において何度も起こってきたことです。
2018年の平昌オリンピックの後、長年ショートプログラムの必須要素であった「ステップからのソロジャンプ」が廃止されました。これにより、ジャンプ要素が3つしかないショートプログラムでさえ、選手は全てをジャンプを長い助走から跳んでも減点されなくなり(実際には長い助走はGOEマイナス事項ですが、実際に減点されているケースを見たことはほとんどありません)、長い助走から実施された、ジャンプの質自体もイマイチな4ルッツや4フリップの方が、難しい入りから美しく実施された4サルコウや4トゥループより高得点を稼げるようになりました。この改正が誰を有利にしたのかは、火を見るよりも明らかです。

ルールのガイドラインを読むと、3つの得点、ジャンプの難度を評価する基礎点(BV)、各エレメントのクオリティを評価するGOE、そしてスケーティングやプログラムを評価するPCSは、それぞれが互いに独立して評価されなければならないはずです。
おそらくソチの頃まではそうだったのでしょう。だからGOEとPCSで圧倒的に優れたパトリック・チャンが3年連続で世界王者になったのです。
しかし、4フリップや4ルッツを跳ぶ選手が出てくると、ジャンプの質に関係なく、これらの高難度ジャンプをただ着氷したと言うだけで+4や+5が気前良く並ぶようになりました。ルールではGOEのプラス要件はジャンプの幅や高さ、着氷の流れ、空中姿勢、入りの工夫、音ハメなど具体的に決められており、ジャンプの回転数や種類は考慮されるべきではありません。
更に悪いことに、プログラムを評価するべき演技構成点、すなわちPCSさえも4回転ジャンプが多く決まれば各項目が自動的に9点台に引き上がるという不可解な傾向がここ数年間ですっかり定着してしまいました。
4回転ジャンプが5本成功したからといって、何故トランジションや構成や音楽の解釈の評価まで上がるのでしょうか?
このような批判が殺到したせいなのか、新ルールではトランジションと音楽の解釈をPCSの項目から排除しようとしています。
ステップが全くないショートプログラムのソロジャンプに加点を与え続けて散々批判された結果、この要件自体を廃止してしまった4年前とISUの思考回路は全く変わっていません。

芸術的なスケートとして誕生したフィギュアスケートをISUは一体どこへ向かわせたいのでしょうか・・・

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち