D(La Repubblica紙)より「沸騰する氷」

イタリアの二大新聞の一つ、La Repubblica紙に毎週土曜日に付録として付いてくる女性のためのファッション/ビューティ/ライフスタイル誌『D』(DはDonna=女性のDです)がミラノ世界選手権前にフィギュアスケートの特集記事を掲載していました。
平昌と過去のフィギュアスケート界における出来事を徒然語っている記事で羽生君の名前も登場します。女性のための雑誌ですので、女性スケーターが中心で、羽生君成分は少ないのですが、そもそもイタリアの普通の雑誌でフィギュアスケートが特集されること自体が非常に珍しいことなので訳すことにしました。

 

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湧き上がる情熱

沸騰する氷

セレーナ・ティバルディ
2018年3月17日

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平昌オリンピックが導火線に火を点けました。そして間もなくフィギュアスケート・ミラノ世界選手権が始まります。(古参ではない)ファンの言葉によれば、フィギュアスケートはウィンタースポーツで断トツの人気を誇っています。

もし「クワド」(素人のために説明すると、4回転ジャンプの略称です)について話せば、卒論を書き上げたようなものでしょう。「ルッツ」と「フリップ」を迷わずに見分けることが出来ますか?(前者は左足のアウトエッジ、後者は左足のインエッジで踏み切り、右足のトゥを突きます。フィギュアスケートには鋭い眼が必要です)。アメリカの長洲未来が最近のオリンピックで3「アクセル」を跳び、どのような快挙を成し遂げたか知っていますか?

もし3月22日に公開される映画「Tonya」(アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル)で、水陸両用飛行機やグレンジの再来にさえ掻き立てられなかった90年代への「アマルコルド」(懐古)現象が起こったなら、皆さんは幸せです。

今は皆さんにとって素晴らしい時期なのです。平昌オリンピックでの心臓発作モノの演技、得点や衣装に関する議論に対するメディアの興奮がまだ冷めぬというのに、今度はフィギュアスケート世界選手権(3月21日から25日までMediolanum Forumにて)がミラノで始まるのですから「聖アントニウス様、本当にありがとうございます」と言わなければなりません。

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はっきり言って文句はありません。

この競技はスペクタクルという点においても、技術的難度という点においても他の冬季競技の人気を抜いてしまうほど途方もないレベルに到達しました。

事実、韓国ではフィギュアスケートの話題でもちきりでした。

実際、様々な話題が注目され、予想外の展開、教訓を生む歴史、記憶される偉業、劇的な余波を生む衣装のスタイル(議論はまた蒸し返されるでしょう)は数百万人の人々をテレビに釘付けにしました。

真面目な話、あらゆる嗜好を満足させる大会で、この大会での出来事はミラノでの数日間にフィギュアスケートファン達の熱い心を取り戻す予兆のように思えます。

スポーツとも思っていない人を怒らせたいわけではありませんし、確かに試合後に行われるエキシビションについては弁解のしようがありませんが(トラ柄のレオタードをまとい、火の灯った蝋燭を持った新チャンピオン、アリーナ・ザギトワの演技をいいアイデアだと思った人は全員失格です)、試合については誰も何も言うことは出来ません。誰一人。

ここではセンスを疑うファッション(2010年欧州選手権におけるオクサナ・ドムニナ/マキシム・シャバリン組の先住民もどきの衣装は世界の半分を爆笑させ、残りの半分を激怒させました)や議論の余地のあるヘアスタイル(ニノ・ダンジェロの髪型を叙情的に再現したエフゲニー・プルシェンコの金髪の「おかっぱ」)や奇抜な演出は二次的なものにされてしまいます。というのは、これらの選手のようにユーモアを解する人がごく僅かしかいないからです。

フィギュアスケート世界選手権:ミラノのアイスリンクにスター集結

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事実を明らかにしましょう:数週間前(順不同)、私達はあのエイリアンの記録に立ち会いました。オリンピック二連覇を達成し、演技終了後にリンクにウィニー・ザ・プーの形をしたぬいぐるみの雨(彼がコレクションしているため、ファンが大量に投げ込むのです)を降らせた日本の羽生結弦のことです (最後にオリンピック二連覇が達成されたのは66年前です。怪我のために彼をミラノで見ることは出来ないでしょう)。

私達は6本もの4回転ジャンプを入れたフリーで17位から5位に浮上したアメリカのネイサン・チェンの純粋なプライドを見ました。

私達は年若いアリーナ・ザギトワがエフゲニア・メドヴェデワを追い詰めた女子シングルにおける壮絶な「ロシア女子の戦い」の証人です(今では3種類の得点:高得点、低得点、ロシア女子得点が存在すると言われています)。

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優勝候補で2位だったメドヴェデワは芸術的により成熟していましたが、アリーナは5本のトリプルジャンプを連続して跳ぶ能力があり、ボーナスを稼ぐために全てのジャンプをプログラム後半に実施して、最終的な得点で上回りました。

多くの人がこの戦法を皮肉っていますが、それにしてもエキサイティングな試合で、偉大なカロリーナ・コストナーは5位に入賞しました。

続けましょう。

アイスダンスの試合では、カナダのテッサ・バーチュ/スコット・モイア組(ミラノで不在の唯一のペア、残念)は、ガブリエラの衣装の欠陥ボタン(ショートプログラム開始後に外れ、このために彼らは勝敗を左右した小数点を失いました)のせいで高い代償を払ったフランスのガブリエラ・パパダキス/ギョーム・シゼロン組に勝ちました。

ペアではアリョーナ・サフチェンコ/ブルーノ・マッソ組が、過去にデュシュネー兄妹のプログラムを創作した伝説のスケーター、クリストファー・ディーンのおかげで記録的高得点で勝者になりました。

2つのコリアの歴史的解氷のきっかけとなった北朝鮮のペア、リョム・デオク/キム・ ジュシク組をどうして忘れることが出来るでしょう。

確かに、少しふざけてみると、彼らを見た人は皆、コメディ映画『俺たちフィギュアスケーター 』に登場する恐るべき技「アイアン・ロータス」を思い出すかもしれません(映画では北朝鮮でしか試されていない必殺技で、実施した女性は文字通り首を失うのです)。

冗談はともかく、ここでは歴史が作られました。この数日間でフィギュアスケートファンの数は急増しました(フィギュアスケートを見る人にそんな証拠は必要ありませんが)。

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私達は88年のカルガリー大会でカタリーナ・ヴィットとデビ・トーマスが同じビゼーの旋律で金メダルを争った白いカルメンと黒いカルメンの戦いを見ていました。

94年にトーニャ・ハーディングがナンシー・ケリガンを蹴落とすために暴行させた(あるいはしなかった)時も、そして最終的にリレハンメルではウクライナの小さなオクサナ・バイウルが金メダルを獲得するという皮肉な運命も目撃しました。

フランスのスルヤ・ボナリーがルールに違反してバックフリップを跳んだのも、98年に優秀だけれど表現力に乏しいアメリカのタラ・リピンスキーがよりエレガントな同胞、ミシェル・クワンを破ったのも私達は見ていました(まさに今大会で起こったことと同じです)。

そしてジョニー・ウィアーが当時、現役アスリートではまだ非常に珍しい行為であったカミングアウトを行った時も私達はいました。

そして私達が常にカロリーナ・コストナーをどれほど信じてきたか言わなくてはなりません。

新しいチャンピオン達は皆、口を揃えて従うべき見本として彼女の名を挙げました。元婚約者のアレックス・シュバーツァーのドーピング事件のせいで2015年に受けた16カ月間の出場資格停止処分さえも彼女を止めることは出来ませんでした。

でも彼女に最も素晴らしい賛辞を贈ったのはフィギュアスケートについて何の知識もないアメリカのコメディエンヌ、レスリー・ジョーンズです。彼女は多くのフォロワーを持つソーシャルメディアの中で、彼女を見ながら何人かの選手達からは目をそらすことが不可能だと言うことに気が付いたとコメントしています。お分かりになりましたか?

フィギュアスケートを理解するのにそれほど多くのことは必要ないのです。

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Dは新聞の付録雑誌とは思えないほど分厚く、特に写真のクオリティがとても高い雑誌です(そして羽生君の写真も美しい)。ミラノワールドに向けて特集記事を組んだのでしょう。

羽生君が真似をしていたプルシェンコのマッシュルームカット、何と元祖はイタリア人歌手のニノ・ダンジェロだったとは!(あくまでのこの記者さんの意見ですが)

興味をそそられたので「ニノ・ダンジェロ、おかっぱ」(Nino D‘Angelo, caschetto)のキーワードで画像を検索してみました。 ninodangelo

 

うーん・・・確かに似ていると言われれば似てなくはないけれど・・・プル様は本当にこれを真似したのかな・・・

因みに世界の半分を爆笑させ、半分を激怒させた先住民風衣装はこれみたいです↓ aborigen

これは確かに怒られるかも・・・

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