Neveitaliaより「ハビエル・フェルナンデス、予想に反して羽生結弦を破り、再び世界王者に輝く」

ボストン世界選手権男子フリーの記事です。
記事を書いているのはイタリア・ユロスポ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんです。

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(2016年4月2日)

☆翻訳は7位の昌磨君まで

フィギュアスケート世界選手権が開催されたボストンのTDガーデンは、今シーズンのスポーツ界を代表するサプライズ劇の舞台となった。スペインのハビエル・フェルナンデスは試合前のあらゆる予想を覆し、議論の余地のない大本命であった羽生結弦を破って二年連続で世界王者に輝いた。

ショートプログラムで稼いだ12点もの大差からオリンピックチャンピオンの優勝はもはや確実と思われていたが、予測が不可能で、予想もしなかった快挙がしばしば起こるのがスポーツの面白さである。

フェルナンデスはリンクメイトを襲った説明し難いショートサーキットを目撃した後、タイトルを守るために八方手を尽くし、フィギュアスケート史に刻まれる演技を解き放った。

フランク・シナトラのヒット作、『野郎どもと女たち』のメロディーに乗せてリンクに降りたマドリッド出身のほぼ25歳は、3本の4回転ジャンプと2本のアクセルを含む7本の3回転ジャンプを見事に決め、技術点と演技構成点の各項目でライバル達に大差をつけて圧勝した。ジャッジのほぼ全員が10点満点をつけたChoreografyとInterpretationを含め55項目中、26個もの10点を獲得したことが、如何にジャッジ受けが良かったかを物語っている。

躍動感と個性に溢れ、常に音楽と同調していたブライアン・オーサーの弟子は、フリープログラムで羽生がグランプリファイナルで獲得した219.48点に次いで歴代第2位の高得点、216.41点を獲得した。

待ち望まれていた日本の羽生は、今日の演技では極度に緊張して固くなっており、すぐにプログラム全体ではなく、個々のエレメンツにのみ集中している印象を受けた。

特に練習では絶対的安定感を誇っていた4サルコウで苦戦し、1本目は氷に手を突き、2本目はフェンスに向かって酷く転倒した。

更に3連続のコンビネーションジャンプも予定通りに決まらず、最後のジャンプである3ルッツも着氷するのがやっとだった。

今大会で仙台出身の21歳は、彼もまたライバル同様、傷つきやすい人間であることを示したが、公式練習では特に問題なくフリーのランスルーを何度も滑り切っていたので、今回のミスの原因については依然として説明がつかないままである。
より冷静に考察すると、3か月以上競技から遠ざかっていたことで、試合勘が鈍ってしまったことが致命傷になったのかもしれない。
唯一のささやかな慰めはステップシークエンスで悲願のレベル4を獲得出来たことだろう。

ミスがあり、明らかに本調子でない演技にも関わらず、羽生はフリーで第2位の得点を獲得し、トータルスコアはこれまでの世界選手権ならどの大会でも余裕で優勝出来る高得点だった。

試合の見所の一つとなったのは、5人の選手が5点以内で競い合った熾烈な銅メダル争いだった。

シニア初参戦のボーヤン・ジンがジャンプ要素における明らかな優勢を生かして打ち勝ち、わずか18歳で世界選手権の表彰台に乗った史上初の中国人選手、世界選手権のフリープログラムで4本の4回転ジャンプを着氷した史上初の選手となった。

4位には2つのプログラムを僅かなミスなく滑り切ったロシアの新鋭、ミカル・コリヤダが入り、初出場の世界選手権で、エフゲニー・プルシェンコが2012年に獲得したロシア国内の歴代最高得点を更新した。ホールパッケージの選手であり、特に壮大な4トゥループが際立った。

 

ショートプログラムを3位で終えたパトリック・チャンは、予定されていた幾つかのジャンプの回転が抜けるミスが響き、5位に甘んじることになった。そのチャンに次いで6位に入ったのは、4ルッツ(コントローラーに回転不足と判定された)の成功まであと僅かだったアメリカのアダム・リッポンで、個性が光る演技と何より議論の余地のない技術によって、ジェーソン・ブラウンからアメリカ国内の歴代最高得点を奪った。

7位には2本目の4トゥループで激しく転倒し、表彰台のチャンスを失った日本の18歳、宇野昌磨が入った。

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男子フリーの後、ショックが大き過ぎて、そしてこの世界選手権のために全てを賭けて必死で頑張ってきた羽生君の口惜しさと失意を思うと、やりきれない気持ちで一杯になってしまって、さすがにしばらく何も翻訳する気になれませんでした。

男子フリーから数日たった今、私の脳裏に浮かんだのは、ソチシーズンの福岡グランプリファイナルでのマンマ解説、フランカ・ビアンコーニさんの言葉です。
このシーズン、羽生君はGPファイナルのスケートカナダ、エリック杯ではジャンプでミスを連発してパトリックに大差で敗れますが、このファイナルでは別人のような演技で圧勝しました。

フランカさんは解説で
「またこのレベルの結弦を見られて嬉しい。でもシーズン中にコンディションのアップダウンがあるのは当然のことだし、むしろそうあるべきだと思う。だって今の男子シングルはプログラムの難度が上がっていて、どの選手もショート、フリー合わせてクワドを2本または3本跳ぶ。この難度のプログラムをシーズン通してずっとクリーンに滑り続けるなんて無理」と言っていました。

今の男子シングルは当時より更にレベルアップしていて羽生君とハビエル選手はショートで2本、フリーで3本の4回転ジャンプ、ショート、フリー合わせて3本の3アクセルを非常に繋ぎの濃い体力を消耗するプログラムの中で跳びます。
当然、身体に掛かる負担は以前よりずっと大きいですし、実際に多くの選手が怪我や故障と戦っています。だから、フランカさんが言うように、ずっと絶好調をキープし続けるのは身体的にも精神的にも不可能なのではないかと今大会を見て感じました。
1シーズンだけではなく、1選手のキャリア全体を見ても、どんな選手でもアップダウンの波はありますし、羽生君より世界選手権出場回数がずっと多いパトリックやハビエルも表彰台どころか入賞出来なかった大会もあるわけで、そう考えると、シニアデビュー以来、2014年のロンドン大会以外、どんな悪コンディションでもずっと世界選手権で表彰台に乗り続けている羽生君は凄いと改めて思いました。

優勝以外は負けと思っている羽生君のことだから、もの凄く悔しがっているでしょうけれど、彼ならきっと全てを力に変えて、来シーズン、私達の前に帰ってきてくれると信じています(でもちゃんと休んで怪我を完全に治して下さいね!外野の雑音なんて気にしないで欲しい・・・)。

 

最後にテン選手との一件について

羽生君本人が大人の対応で和解を申し出て、終止符を打ったので(改めて人間的に素晴らしい選手だと思いました)、この件に関するイタリアのファンの反応は翻訳しませんが、これだけは書いておきたい。

イタリアのファン(ユヅリーテだけじゃなく、一般のフィギュアスケートファンも)も解説者も羽生君の味方です。
マッシミリアーノさんの意見はショートの解説でご紹介しましたが、Rai Sportのマンマ解説でも6分間練習中に事の経緯について詳しく説明し、ファブリツィオさんが

「公式練習中は曲かけ中の選手が優先される。だから結弦が正しい」

とはっきり断言していました。

世の中、理不尽なことが多いけれど、最後は正義が勝つと私は信じたい

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