Neveitaliaポッドキャスト「ジャパンオープン男子~JGPスペイン大会(その2)」

前回の続きです。
ジャパンオープン男子シングル、そしてジュニアGPログローニョ大会で優勝した白岩優奈ちゃんの話題です。

視聴こちらから>>

(翻訳は抜粋・要約です)

<ジャンパンオープン>

男子

質問:ジャパンオープンの男子シングルから。特に宇野昌磨はここ2年足らずでジャンプにおいて急激に進化した。これは身体の成長に伴うものだと思う?

宇野昌磨はここ1年半で1センチ半身長が伸び、筋肉が付いて別の選手になった。ピッコロ(小さな)ショーマ・ウノ 、僕はいつもこう呼んでいたんだけれど、何しろ僕が知っている宇野はフェンスに届かないほど小さかったからね(笑)―は身体も年齢も成長し、もはやピッコロではなくなった。

とはいってもマルクス・アントニウスになったわけではない。今の宇野昌磨もせいぜい160センチに少し足りないぐらいだろう。それでも、この身体の変化は彼に大きなアドバンテージを与えた。

昨年のジャパンオープンからの彼の進化に注目すると非常に興味深い。
当初から4トゥループはすぐに安定したが、3アクセルは全く決まらなかった。それに彼にはルッツのエッジにも問題があった。
彼に限らず、山田真知子門下出身の選手は皆ルッツが苦手だ。村上佳菜子しかり、浅田真央しかり。

だから彼は競争力のある選手になるためにこの3つのジャンプ要素(4T,3A,3Lz)を何とかしなければならなかった。

宇野は幼い頃からジャンプの問題が原因で田中刑事や日野龍樹といった彼のようなスケーティングスキルや音ハメして滑る能力を持ち合わせない選手達に負けていた。

宇野はルッツをゼロからやり直すという多大な努力をした。
つまり1回転ルッツから完全なアウトエッジで跳ぶ練習をした。そして2回転ルッツ、3回転ルッツと回転数を上げていき、何とかエッジを矯正することに成功した。
勿論、質のいいルッツではないけれど、減点されないルッツを跳べるようになった。

4トゥループの習得は比較的早かったけれど、3アクセルは長い間決められなかった。
ジュニアグランプリシリーズの最中に突如、跳べるようになり、本人も驚いたと発言している。
今ではイーグルから跳べるようになり、彼の得意技の一つになった。

つまり元々議論の余地のない表現力、スケーティングスキル、スピンを持つ宇野にジャンプ技術が加わった。

ジャパンオープンでは4トゥループ2本(その内の1本は後半)、3アクセル2本、フリップは問題無し、他の3回転ジャンプも全部成功させて、技術点でほぼ100点を獲得した。

TES100点を獲得したのは、フィギュアスケート史上3人だけだ。デニス・テン、パトリック・チャン、そして言うまでもなく羽生結弦。いずれジン・ボーヤンもここに加わるだろう。
つまりこのレベルなら今シーズンの主要大会で表彰台を狙うことが出来る。

早くも日本では羽生結弦とのライバル争いを煽る動きがある。
何故なら高橋ファンのより過激な原理主義者達が、羽生結弦の対抗馬にするために宇野をある意味で養子にしたからだ。
日本ではかつて羽生結弦と高橋のライバル時代があった。
だからこのライバル関係は日本のフィギュアスケート史を塗り替える一大事になるかもしれない。
勿論、羽生結弦は宇野にとってはまだ遥か遠い存在で、シニアでの業績もずっと豊かだし、既に経験し得るあらゆることを経験している。
それでも宇野昌磨のスタートラインは注目すべきものだ。

先シーズンの世界選手権の結果を受けて、今シーズンの日本選手の世界選手権出場枠は2枠だけれど、宇野なら(世界選手権で)ベスト5に入ることが出来るだろう。

驚くべきことに日本における男子のフィギュアスケート人口は決して多くない。勿論イタリアよりは多いけれど(笑)、カナダ、アメリカ、ロシア、中国に比べたら断然少なく、フィギュアスケートを習っている男子の数はおそらく韓国を僅かに上回るぐらいだろう。
それでもその少ないフィギュアスケート人口の中からこれほど傑出した才能を輩出していることは驚嘆すべきことだ。

それにナンバー3も育っている。
山本草太はいずれ3番手以上の戦力になるだろう。

 

質問:傑出した才能と言えばパトリック・チャンは今回のジャパンオープンでは苦戦していた。前回の大会では好成績だったけれど、今年は非常に困難なコンディションのように見える

パトリック・チャンは1年間丸々休養した。
先シーズンはジャパンオープンだけに出場したけれど、その時はいい演技をしていた。

今回、僕は試合へのアプローチ方法に苦しんでいるように見えた。
6分間練習ではジャンプ要素を難なく決めていたのに、試合では決まらなかった。10日前に行われた地元カナダの国内大会と全く同じ現象だ。
だから試合勘が錆びついているのではないかと僕は思う。

彼は今シーズン、前々から演じたいと熱望していたショパンをフリープログラムに選んだ。
傑出したプログラムだし、彼は氷上のダンサーで、スケーティングスキルの質においては無双だと思う。
多くの人がチャンは表現力が乏しいと批判するが、僕はこの意見には賛同出来ない。
それはライバル達も認めていることで、多くの選手がパトリック・チャンのスケーティングスキルを参考にしている。

でもジャパンオープンでは非常に興味深いことが起こった。フェルナンデスが演技構成点でパトリック・チャンを1点上回ったのだ。
これはカナダの選手にとっては緊急事態だろう。確かに高難度ジャンプの着氷でミスがあり、クリーンな演技ではなかったけれど、これまでパトリック・チャンは演技構成点でライバル達に差をつけていた。演技構成点はチャンにとって上位に居続けるための必要不可欠な条件だ。

技術面において、チャンは全てのライバル達に対して基礎点でハンデを負っている。
先ほど宇野昌磨について話したけれど、彼は4トゥループ2本、3アクセル2本の構成で、しかも4トゥループの1本を後半に移動した。
でもパトリック・チャンは4トゥループ2本、3アクセル1本の構成だ。

つまりこのことが何を意味しているかというと、パトリック・チャンにはプログラムの最初から最後まで僅かなミスも許されないということだ。

しかしながら、パトリック・チャンには、ノーミスの演技を続ける安定感はない。
ノーミスの演技をした数年前のエリック・ボンパール杯では歴代最高得点を叩き出し、氷上の完成品が生まれた。しかしながら、このようなクリーンな演技が出来たことはこれまでに数回しかない。

おそらく、彼は未だに過去の亡霊に囚われているのではないかと思う。
スケートカナダで羽生結弦と対戦して、そこからこの2人の一騎打ちが始まり、最終的にソチで彼に敗れた。鼻先に金メダルがぶら下がっていたのに、みすみすチャンスを棒に振ってしまった。最後のスマッシュを決めることが出来なかったのだ。
もしこの大会で金メダルを獲得していたなら、彼は引退していただろう。
チャンはオーサーに始まり、ブラウニング、ストイコ、少しランクは下がるけれどバトルと引き継がれてきたカナダの呪いを解くために2018年のオリンピックまで現役を続ける決心をした。

ただし、間違いなくプログラムの難度を上げる必要がある。
数年前、4サルコウを練習していたが、完成には程遠かった。
でもこのジャンプに再び挑戦する時期が来たのではないかと思う。

今のままでは4回転ジャンプ3本、3アクセル1本のフェルナンデス、4回転ジャンプ3本、3アクセル2本で、ほとんどの3回転ジャンプを後半に跳ぶ羽生には太刀打ち出来ない。
スタートラインの基礎点において、彼らとの差が大き過ぎるからだ。

テンも4トゥループ2本、3アクセル2本だから、基礎点でチャンを上回っている。

問題はパトリック・チャンに構成を上げるガソリンとモチベーションが残っているかどうかだが、グランプリシリーズで彼の答えを待ちたい。

いずれにしても、彼は他の選手に比べて失敗が許されないのは確かだし、多くの人が今シーズンのチャンは主要大会の優勝候補ではないと見ている。勿論、パトリック・チャンのような選手は奇跡も起こせるから、どうなるか見守りたい。

<ジュニアGPログローニョ大会>

質問:先週、スペインのログローニョで行われたジュニアグランプリで優勝した白岩優奈は衝撃的だった。まさにシンデレラストーリーを爆走中のこの選手について、君はポッドキャスト第1回でも注目していたけれど、これほど急激に覚醒すると想像していた?ジュニアで180点台の得点は驚異的だ。

この少女のストーリーは非常にドラマチックで興味深い。僕はポッドキャスト第1回でも彼女のことを褒めていたけれど、白岩優奈は日本選手の中では暴れ馬だと言った。

この正気の沙汰とは思えないジャンプ構成を果たしてこなすことが出来るのかと
日本では彼女と同い年の本田真凛や青木佑奈の方が騒がれていたけれど、僕は白岩優奈に注目していた。

1年前に遡ってみよう。
昨シーズンの彼女は全日本ジュニアでフリーに進むことが出来なかった。
このことは日本フィギュアスケートの水準が如何に高いかを物語っている。

昨シーズン、白岩優奈はフリープログラム開始から2分半後に2アクセル-3ループを跳ぶという、僕からしたら正気の沙汰とは思えないクレージーなジャンプ構成に挑戦していたから、当然失敗も多かった。それで昨シーズンは苦戦していたわけだけれど、今年の夏に突破口が開けた。
ジュニアグランプリの出場するためのテストに合格し、最後の1枠を手に入れたのだ。
そこから彼女の快進撃が始まった。

その時点で白岩がジュニアグランプリに派遣される保証はなかったし、多くのコーチが彼女のグランプリ出場を望んでいなかった。彼女を派遣することは、例えば松田悠良などの選手を外すことになるからだ。

しかし、日本スケート連盟は若手の可能性に賭ける選択をした。僕はこの決断を高く評価している。
イタリアスケート連盟はダニエル・クライズナーに対してはそうはしなかった。

ダニエルは、誰にも理解出来ない不可解な理由によって、彼ほどの将来性がない19歳の選手と交代され、ジュニアグランプリシリーズを傍観する羽目になってしまったのだ。
おそらく、こんなことが起こるのはイタリアだけだろう。
イタリアはオリンピック出場選手の選考も閉鎖的だ。選考基準に過去にオリンピック出場した経験を持つ選手が優先されるという、おそらく世界中の笑いものになるようなバカげた項目が設けられている。

まあこれはともかく、白岩優奈はJGPコロラドスプリングスに初出場し、日本では彼女よりずっと有名で注目されていた本田真凛を破って優勝し、JPS2戦目を手に入れた。

そして先週の試合で、その実力を改めて証明して見せた。
フリープログラムは圧巻だった。

この少女は質の良いスケーティングスキルを持ち、特に非常にスピードがあるが、何よりも織田を彷彿させる極めて質の高い膝のバネを自在に使いこなすことが出来る。

彼女はこの膝バネによって踏切がまずく、通常なら着氷困難なジャンプも救うことが出来る。
実際、織田と並べて見たら、その類似点がよく分かると思う。
織田は偉大なスケーターで、僕は彼のポテンシャルならもっと勝てるべきだったと思っている。実際、要素の計算を間違うという弱点がなければ、もっと勝てていただろう。
プログラム中に跳べるジャンプの回数や種類を間違える有名な『オダル』だ(笑)。

白岩優奈はよりオールラウンダーの選手で、最高レベルのスピンを持つ一人に間違いないし、ステップが少し弱いけれど、これから改善していけばいい。何といってもまだ僅か13歳なのだから。

何よりも彼女は『ルッツ』という名のルッツ、『フリップ』という名のフリップを跳ぶ。つまり正確なエッジで跳び分けることが出来る。これは大きなアドバンテージだ。

それに演技構成点も伸びてきている。
白岩優奈は日本ジュニア女子の歴代最高得点を塗り替えた。2か月前には誰も予想していなかったことだ。ツルスカヤに次いで今シーズン第2位の高得点だ。

グランプリシリーズ2戦2勝で特に2戦目では非常に競争力の高いプログラムを披露した。
先シーズンの低迷を考えると、まさにシンデレラストーリーだ。
ジュニアグランプリの日本人出場選手中、最後の7番手として派遣され、あっという間にナンバーワンに駆け上がった。

勿論、彼女が現在の日本女子ジュニアのナンバーワンかと言われれば、そうとは言えない。
樋口新葉が本来のコンディションなら、幾つかの点において彼女を上回っている。

いずれにしても、この少女が安定してこの演技を続けていければ、国内の選手は勿論、ロシアの選手にとっても大きな脅威になるだろう。

ツルスカヤと白岩の得点差は僅か3点だ。

 *************************************

☆ ロシアのジュニアもそうですけれど、日本の女子ジュニアの選手も層が厚すぎて把握しきれない。
この白岩優香ちゃん、全くノーマークでした、と思ったら今年ジュニアデビューなんですね。
セカンドが3トゥループと3ループの2種類の3-3コンボを跳べるのは凄いですね。
しかも3サルコウ-3ループはセカンドジャンプの方が高さがあって、回転も完璧でした。
ジュニアはシニアより要素が1つ少ないのにTES68点は驚異的です。
ここにコレオシークエンスが加わればTES70点を超える計算になります。

それにしても『オダル』って世界共通語になってるんですね・・・ある意味でビールマンとかサルコウとかイナバウアーとか技の名前になった選手達と同じ偉業

Previous Entries Neveitaliaポッドキャスト「4回転ジャンプ大会~ジャパンオープン女子(その1)」 Next Entries Neveitaliaより「羽生結弦のシーズンデビューの準備は全て整った」