Neveitaliaより「羽生結弦、更なるレベルアップに挑戦」

惑星ハニューにようこそ!住人は一人、彼だ!

今やファンの間でお馴染みとなったこのフレーズをマッシミリアーノさんが公共の媒体で最初に発信したのは、2014年中国杯直前にNeveitaliaに掲載されたこの記事でした。

以前、既に訳した記事ですが、羽生君の歴代フリーのジャンプ構成を詳述した後半はあまりにも長かったので省略していました。
新シーズンがスタートしましたので、彼が思い描く来季の構成を戦々恐々と予想しながら改めて全文を訳したいと思います。

マッシミリアーノ・アンベージ(2014年11月6日)
原文>>

現オリンピックチャンピオンで世界チャンピオンの羽生結弦のシーズンデビューが刻一刻と近づいている。
昨シーズン、グランプリシリーズ以外全勝という成績に輝いた日本の19歳が、福岡グランプリファイナルから無敗の更なる野心に燃えるディフェンディングチャンピオンとして中国杯に登場する。
2014∸2015年シーズンは新しいことだらけである。

「パリの散歩道」の後、ショートプログラムの振り付けは再びジェフリー・バトルが担当するが、フリープログラムはデビッド・ウィルソンではない。羽生チームはシェイリーン・ボーンとタッグを組むことを決めた。
ショートプログラムはショパンのバラード1番、フリープログラムにはアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲「オペラ座の怪人」を選曲した。

現地によれば、フリープログラムのジャンプ構成が変更され、2本目の4トゥループが追加された。
2012年から日本の天才の技術指導を行っているカナダ人のブライアン・オーサーは10月初旬のフィンランド杯欠場の原因となった身体の問題は完全に解決しており、最近のトレーニングで「ポジティブ」以上の手応えを得ていることを強調している。

テクニカルコーチの発表を念頭に置きながら中国から届いた最初の映像を見てみると、2011年から今日までの間に羽生のフリープログラムの難度が徐々に上がっていることは明らかで、2011-2012年シーズンには80.85だったTES基礎点(レベル4のスピンとステップを含む)は、今シーズン95.35に達する可能性がある。
ただし、この構成だと今シーズンから導入されたエッジエラー厳格化のルールによってフリップの基礎点から1.6点減点される可能性もぬぐえない。

TES基礎点とは、出来栄え点(GOE)を含まずに各要素から獲得出来る最大値のことである。
数時間後に迫った第12回中国杯の前に、日本のオリンピックチャンピオンのここ数年におけるフリープログラムの進化の過程を振り返ってみよう。

2011/2012シーズン:クレイグ・アームストロング作曲「Kissing You」+「Escape」
(阿部奈々美 振付)
動画>>

基礎点: 80.85 (4T,2A, 3F, 3Lz/2T, 3A/3T*, 3Lo*, 3S*)
TES最高点:91.99 (ニーズ世界選手権)
PCS最高点: 83 (ニース世界選手権)
フリー最高点: 173.99(ニース世界選手権)

ステップ、スピンの基礎点合計15.90
*はプログラム後半

羽生はシニア1年目の2010/2011シーズンと同様、1クワド、8トリプル(アクセル2本、ルッツ2本でそれぞれ1本は後半に配置)の構成を披露した。

2012/2013:リッカルド・コチャンテ作曲「ノートルダム・ドゥ・パリ」
(デヴィッド・ウィルソン振付)
動画>>

基礎点:88.31 (4T, 4S, 3F, 3A/3T*, 3A/2T*. 3Lo*, 3Lz/2T/3T*, 3Lz*)
TES最高点:91.16(GPFソチ)
PCS最高点:85.16(GPFソチ)
フリー最高点:177.12(GPFソチ)

ステップ、スピンの基礎点合計15.90
*はプログラム後半

先シーズンに比べると劇的な変化があった。というのも羽生は4サルコウを導入し、5本のジャンプ要素をプログラム後半に配置したからだ。従って、2クワド、7トリプル(アクセル2本、ルッツ2本)の構成だった。

2013/2014シーズン:ニーノ・ロータ作曲「ロミオとジュリエット」
(デヴィッド・ウィルソン振付)
動画>>

基礎点:90.62 (4S, 4T, 3F, 3A/3T*, 3A/2T*, 3Lz/Lo/3S*, 3Lz*)
TES最高点:102.03(GPF福岡)
PCS最高点:92.33(GPF福岡)
フリー最高点:193.41(GPF福岡)

ステップ、スピンの基礎点合計15.90
*はプログラム後半

羽生は2種類のクワドを入れることでクワドが繰り返しにならないメリットを最大限に生かして基礎点を積み上げた。3サルコウを加えることで2T/2Tとのコンビメーションが消え、代わりに3Lz/Lo/3Sになった。
従って、2クワド、8トリプル(アクセル2本、ルッツ2本)の構成だった。

2014/2015シーズン:アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲「オペラ座の怪人)
(シェイリーン・ボーン振付)

基礎点:95.35 (4S, 4T, 3F, 4T/2T*, 3A/3T, 3A/Lo/3S*, 3Lo*, 3Lz*)

ステップ、スピンの基礎点合計15.90
*はプログラム後半

羽生は2014年3月まで披露していた2本の3ルッツの内の1本を抜き、フリーに2本目の4トゥループを加える。
今では3A/Lo/3Sとなった3連続ジャンプ、3ルッツ/ループ/3サルコウの最初の3ルッツが無くなった。
新しい構成では3クワド(トゥループ2本)、7トリプル(アクセル2本)が予定されている。

対抗するライバルは、今大会で構成を明らかにするロシアのマキシム・コフトゥンと既に戦略を明らかにしている中国のハン・ヤンである。
他のライバル達の中で最も基礎点が高いのは、全てのジャンプが入った場合、基礎点90点からスタートするスペインのハビエル・フェルナンデスのようだ。そしてカザフスタンのデニス・テン(BV84.70)、無良崇人(BV84.22)が続く。
近年のこの競技におけるスケールをより正確にイメージしてもらうために補足すると、アメリカのジェイソン・ブラウンのようにレベルはそこそこ高いもののクワドを持たない選手の基礎点は75.56点止まりである。

現在、基礎点という点において羽生を脅かそうと試みることが出来る者がいるとしたら、グランプリ大会で中国のジン・ボーヤンが猛威を振るったジュニアカテゴリーに目を向けなければばらない。
彼のプログラムはシニアの大会で全てのエレメントが入った場合、基礎点は91.69に達する。

事実を言えば、「高難度マニア」の一人としてカナダのケヴィン・レイノルズも挙げられるが、何年も前から身体的な問題に苦しんでおり、現時点では評価が難しい。

いずれにしても、惑星ハニューにようこそ!住人は一人、彼だ!

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2014-2015シーズンは衝突事故、手術、捻挫などのアクシデントが次々と降りかかり、結果的にクワド3本のフリーを完結させることは出来ませんでした。

「オペラ座の怪人」演技動画>>

基礎点:90.62 (4S, 4T, 3F, 3Lz/2T*, 3A/3T, 3A/Lo/3S*, 3Lo*, 3Lz*)
TES最高点:103.30(GPFバルセロナ)
PCS最高点:93.36(国別対抗戦)
フリー最高点:194.08(GPFバルセロナ)

この後の2015/2016年シーズンからの構成の変遷もまとめてみました。
*基礎点は予定構成でスピン/ステップが全てレベル4と仮定して算出しています。

2015/2016シーズン:梅林茂 作曲「SEIMEI」
(シェイリーン・ボーン振付)
動画>>

基礎点:95.59 (4S, 4T, 3F, 4T/3T*, 3A/2T*, 3A/Lo/3S*, 3Lo*, 3Lz*)
TES最高点:120.92(GPFバルセロナ)
PCS最高点:98.56(GPFバルセロナ)
フリー最高点:219.48(GPFバルセロナ)

3クワド(T2本)+7トリプル(A2本)
ちなみのこのシーズンからショートもクワド2本+3アクセルの構成になりました。

2016/2017シーズン:久石譲 作曲「Hope & Legacy」
(シェイリーン・ボーン振付)
動画>>

基礎点:103.43 (4Lo, 4S, 3F, 4S/3T*, 4T*, 3A/2T*, 3A/Lo/3S*, 3Lz*)
TES最高点:126.12 (ヘルシンキ世界選手権)
PCS最高点:97.98(ヘルシンキ世界選手権)
フリー最高点:223.20(ヘルシンキ世界選手権)

4クワド(T2本)+6トリプル(A2本)

2017/2018シーズン:梅林茂 作曲「SEIMEI」
(シェイリーン・ボーン振付)
動画>>

当初の予定は5クワド構成
基礎点:111.26(4Lz, 4Lo, 3F, 4S/3T*, 4T/Lo/3S*, 4T*, 3A-2T*, 3A)

しかしながら怪我のために平昌オリンピックでは4クワド(T2本/S2本)+6トリプル構成
基礎点: 97.57(4S, 4T, 3F, 4S/3T*, 4T/Lo/3S*, 3A/2T*, 3Lo*, 3Lz*)
TES最高点:109.55(平昌五輪)
PCS最高点:96.62(平昌五輪)
フリー最高点:206.17(平昌五輪)

2018/2019シーズン:エドウィン・マートン作曲「ORIGIN」
(シェイリーン・ボーン振付)
動画>>

☆このシーズンからジャンプ要素7本、後半ボーナスは最後の3要素だけにルール変更

基礎点:91.43(4Lo, 4S, 3Lo, 4T, 4T/3A*, 3F/3T*, 3A/eu/3S*)
TES最高点:110.26(埼玉世界選手権)
PCS最高点:95.84(埼玉世界選手権)
フリー最高点:206.10(埼玉世界選手権)

4クワド(T2本)+6トリプル(A2本)
☆このシーズンから羽生君のプログラムからダブルジャンプが消えました(もう二度と戻ってくることはないのでしょう・・・)

2019-2020年シーズン
基礎点:???(4A or/and 4Lz…???)😱
想像するのも恐ろしいです・・・・

ネイサン・チェンの平昌のプログラム構成はルッツ、フリップを含む6クワドだからより高難度と言う人がいるかもしれません。
確かに、ジャンプ構成だけならそうですが、羽生君の凄いところはジャンプだけでなく、トランジションや繋ぎの難度も年々進化しているところです。
よりクワドに集中できるようプログラムのそれ以外の部分を削ぎ落して簡略化するなんてことはしていません。

マッシミリアーノさんとアンジェロさんはジャンプ、スピン、ステップ、繋ぎを全てひっくるめた総合的なプログラム難度において、羽生君より難しいプログラムを滑る選手は存在しないし、誰も近づきもしないと何年も前から力説しています。

あまりにも難しいプログラムなのでシーズン序盤は苦戦することが多いですが、シーズンが進み、滑り込まれていくにつれて、細部まで磨き上げられ、隙間なく詰め込まれたトランジションの合間に実施される要素が全て完璧にハマった時、彼だけの、彼にしか出来ない異次元の作品が生まれるのです。
この辺りのことはこのポッドキャストで詳しく解説してくれています。

羽生結弦とパトリック・チャンの対決をX線分析する

またロシアのブロガー、ユリアさんのこの分析では非常に分かりやすく数値化されています(この分析を見るとよく分かりますが当時、トランジションにおいて羽生君の次に難しいプログラムを滑っていたのはパトリックでした)。

◆ロシア人エキスパートによる男子上位選手のフリープログラム難度分析(その1)

◆ロシア人エキスパートによる男子上位選手のフリープログラム難度分析(その2)

でも、羽生君は「超」がつく負けず嫌いだから、来シーズンはきっと基礎点でもネイサンを上回るプログラムを用意してくるんだろうなあ・・・

【参考文献】
▶2014年バルセロナGPF男子FSプロトコル
▶2015年国別対抗戦男子FSプロトコル
2017年ヘルシンキ世界選手権男子FSプロトコル
2018年平昌五輪男子FSプロトコル
2019年埼玉世界選手選手権男子FSプロトコル

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