Neveitaliaポッドキャスト「『羽生結弦』思考をフォーカスする(その5/最終回)」

イタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんのフィギュアスケート専門ポッドキャスト『Tutti con Ambesi』(みんなアンベージの味方)より

今回は第5回、最終回です

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プルチェンコが羽生結弦について言及し続けるのは、この青年に驚異的な何かを見出していて、もしかしたら彼がもう数年早く生まれてくれなかったことを嘆いているからかもしれない。だって全盛期のプルシェンコは羽生と勝負してみたかっただろう。

プルシェンコの全盛期とは、3アクセル/3トゥループ/3ループというSF世界のコンビネーションジャンプを跳んでいた2002年のオリンピックの頃のことだ。

そう言えば、羽生が3ループで締めくくるコンビネーションジャンプを跳ぶのは、まだ見たことがない。彼のスペックなら簡単に跳べるのではないだろうか?
彼のDNAでは3ループは最も初歩的なジャンプだから。

ここで質問だ。

セカンドジャンプが3ループのコンビネーションジャンプを彼のプログラムに組み込むことは果たして可能だろうか?

現時点でこの質問に答えるのは難しいけれど、もし彼が2018年に3種類4本の4回転ジャンプをプログラムに組み込む気なら、3ループを含むコンビネーションをどこかで入れる可能性がないとは言い切れない。

どこで?

おそらく3アクセルとのコンビネーション。
3アクセル-3ループのコンビネーションジャンプは別世界のジャンプだ。
このコンビネーションを入れることは、フリープログラムで4回転ジャンプ4本、3回転ジャンプ7本(うち2本がアクセル)を跳ぶことが出来る唯一のソリューションだ。

分かってもらえるかな?

僕達はもはやサイエンスフィクションのフィギュアスケートの話をしているんだ。
でも可能性はゼロではない。

彼は7本の3回転ジャンプをどのように実行するのか?

3A-3Lo

3A-lo-3S

4T-3T

そして単発で3Lzと3F

このことはこの選手のレベルがどれほど異次元かを示している。
これは単なる想像の世界だけれど、彼なら出来るかもしれないと思わせてしまうこと自体が驚異的なことなのだ。

でも僕は、これが2018年に向けて彼が思い描くプログラム構想だと本気で思っている。
勿論、彼の周りの人間が、試合で勝つことも大事だと彼を説得して断念させるだろうから、実際にはもう少し『Easy』な、彼にとってという意味だけれど(笑)、プログラムを披露するだろう。勿論、彼の定義でのEasyだ。
羽生はプログラムで4回転を跳ぶ前に必ずステップを入れないと気が済まない。ただ跳ぶだけでは平凡過ぎて他の人にも出来てしまうからだ。

でも、もし彼が独断で全てを決めることが出来るなら、2018年オリンピックの彼のフリープログラムは4回転ジャンプ4本、3回転ジャンプ7本の構成になっていただろう。
つまり超高得点の11本のジャンプエレメンツ。
計算してないけれど、基礎点は105点とか110点とかに達するかもしれない。

このテーマを締めくくるのに、僕が時々思い出す、ロレンツォ・マグリに言われた言葉を紹介したい。
イタリアを代表する専門家で、重要な経歴を持ち、イタリアフィギュアスケート界の有力クラブのチーフコーチでもある。

2012年12月のことだ
ミラノでイタリア選手権が行われていて、日本ではちょうど同時期に全日本が開催されていた。
僕はコンピューターで全日本を観戦しながら、もう片方の目でイタリア選手の公式練習を見ていた。
僕の目の前ではイタリアのペア選手がスロー3回転ループを練習していて、失敗と成功を繰り返していた。
ショートかフリーか忘れたけれど、男子シングルの試合の後、僕はロレンツォのところに行って羽生結弦がやり遂げたことを語った。

この時、ロレンツォ・マグリが僕に言った言葉を、あれから何年も経つ今でも時々思い出す。
「注意するんだ、マッシミリアーノ。見ていてご覧、羽生結弦はやがて国際スケート連盟に男子シングルのルール改正を余儀なくさせるだろう。何故ならこの少年には限界がない。一体どこまで到達出来るのか、僕には全く想像も出来ない」と

そして数年経った今、ロレンツォの言葉は現実になろうとしている。
もしも羽生結弦がさっき話したように技術レベルのハードルを引き上げることに成功したら、国際スケート連盟は介入せざるを得なくなる。

何故なら現在の採点システムは機能しなくなってしまうからだ。
つまり技術点が芸術面を評価する演技構成点に対して高くなり過ぎて、2つの得点のバランスが崩れてしまう。勿論、現在の演技構成点を芸術点と定義するのは語弊があるけれど。

今の段階で既にそのリスクはある。
羽生はジン・ボーヤンと共に、勿論ジン・ボーヤンは彼より遥かに劣る選手だけれど、全てを爆発させる可能性がある。

アメリカが4回転時代にブレーキをかけるために、男子シングルのルールを変更したがっていることを忘れてはならない。例えばジュニアやペアの試合のようにショートプログラムから4回転ジャンプを無くすとか。

何が起こるか見守りたいが、いずれにしても、ここまでに説明した全ての理由が示しているように、羽生結弦は地球に居合わせたエイリアンなのだ。

去年、僕がNEVEITALIAのウェブページで用いたフレーズ

『惑星ハニューにようこそ、住人は1人、彼だ』

彼と1週間一緒にいたら、どんどん現実から遠ざかる。

彼を見て最初に起こるリアクションは、即座にフィギュアスケートの虜になることだろうと僕は思う。
例え他の選手のファンであっても、彼のような選手の技術と芸術性の圧倒的パワーの前では、ひれ伏さずにはいられない。

実を言うと、少なくともここ、イタリアでは昨年初めて、たった1度だけ結弦に対する狭量な批判コメントを読んだことがあった。
この時、僕は日本には羽生ファンと高橋ファンの二大派閥があって、高橋ファンは羽生を憎んでいることを思い出して、なるほどと納得した。

はっきり言って笑ってしまうけれど、イタリアには高橋応援団長と自称している女がいて、中国杯の激しい衝突事故の後、僕達のフィギュアスケーティングFBグループの一つに、『甘ったれガキの羽生は観衆からの同情と拍手をただで得るために、負傷した振りをした』と言うようなことを書き込んだ。

こんな人間は語る価値もないと思うから、これ以上詳しくは話さないけれど。
僕が思うに、こんなのは例外で、物事をこんな風にしか捉えられない者は、1000人に1人の僕が『哀れ』と呼んでいる人間だ。

こういう例外は別として、僕はいつも視聴者からもファンからもこの競技を真の意味で進化させているこの選手に対する称賛の言葉ばかりを耳にしている。

だから羽生に多大な敬意を表し、彼が健康で、己の道を邁進出来ることを願っている。

何故なら彼のような人物は、次のオリンピックで勝つ、勝たないに関係なく、この先300年は記憶されるだろうと思うからだ。
五輪連覇は二次的なことに過ぎない。
羽生結弦はフィギュアスケートという競技の進化において、どれほど重要な存在であったかによって歴史に名を残すことになるだろう。

これほど全てを兼ね備えた選手は稀にしか現れない。
彼は演技構成点だけでも、技術点だけでも試合に勝てる。

そして、この2つが揃ってミックスサンドされた時、何か爆発的なものが生まれる。

そう、羽生結弦は爆薬なのだ。

 ~完~

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☆ この後、新葉ちゃんと真凛ちゃん、アデリーナ、スケアメ予想の話題が続きますので実際には『完』ではないのですが、羽生君部分のこの量とクオリティと密度の内容をヒヤリング&翻訳し切った達成感(と疲労)が大き過ぎて、私的に『完』です。これ以上は訳せない・・・

マッシミリアーノさんの言葉の一つ一つから、長所も欠点もひっくるめて羽生君が大好きなんだということが伝わってきます。

そして(所々暴走し過ぎでツッコミどころ満載のところはあったとしても)根本的なところで羽生結弦という人間の本質、その凄さを本当の意味で理解し、愛し、称賛し、リスペクトしている。

表面的なことだけを捉えて意味のないライバル煽りをする日本のマスコミとは考察力も知識レベルもこの競技と選手達に対する敬意と愛情も全く比べものにならない。

まさに永久保存版にしたい素晴らしい内容
ありがとう、マッシミリアーノさん!

Grazie Max!
SEI GRANDE!!

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