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Neveitaliaポッドキャスト「第1回『羽生結弦』思考をフォーカスする(その3)」

イタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんのフィギュアスケート専門ポッドキャスト『Tutti con Ambesi』(みんなアンベージの味方)より

今回は第3回です

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結弦はフィギュアスケートが盛んな地域の出身ではない。彼の出身地である東北地方で唯一フィギュアスケートがある程度活発なのは今井遥(ただし東京出身)が練習拠点にしている新潟県ぐらいで、全体的にトップクラスの選手はあまり輩出していない。 つまり、羽生結弦はスケートの伝統があまりない地に突如出現した天才なのだ。

彼は1月中旬にはリンクに顔を出したが、問題は1月末までは絶対に練習してはいけない状態で、練習再開には医師の許可が必要だったことだ。

練習を再開した羽生は、3週間安静にしていた選手が通常行うようにスケーティングの練習を30分行うとか、初級者のようにスケーティングだけの練習から始める、ということはしなかった。
練習開始5分後には3アクセルや4トゥループをバンバン跳び始めた。
結果、右足首を負傷し、再び安静を余儀なくされるまでにそう時間はかからなかった。

そして3月末の世界選手権がやってきた。

日本スケート連盟は羽生の体調は万全ではないと発表するが、実際には、羽生は自身が当初プランしていた、より高難度なプログラムを滑りたかったのだろう。でもオーサーはショート冒頭に3A、フリーはクワド2本で行くことを既に決めていた。

様々な不利な状況が重なってこの世界選手権で優勝を逃し(実際にはあと少しで優勝出来ていた)、ハビエル・フェルナンデスが勝利を持ち帰った。

こうして羽生の競技シーズンは終わった。

実際にはこの後、国別対抗戦があり、それほどプレッシャーのかからない状態で滑ったこの大会では2位のジェーソン・ブラウンに10段階ほどの差があることを見せつけた。

2位というのは、選手によっては羽生のライバルという位置付けになるが、僕の意見ではブラウンはそうではない。

その後、エキシビションに登場し、おそらくシーズン当初から彼の頭にあったジャンプの数々を見せびらかした。つまり4ループを含むあらゆる4回転ジャンプだ。

しかも彼はこのループをステップから跳ぶことが出来るので、まさに想像を絶する代物だ。

皆が羽生の最も得意なジャンプは3アクセルだと思っているが、実は彼にとって1番簡単なジャンプは昔から3ループなのだ。

彼はエッジ系ジャンパーと定義出来るスケーターだ。
だからエッジで跳ぶジャンプ、すなわちループ、アクセル、サルコウの方が、フリップ、ルッツ、トゥループより得意なはずだ。こういうタイプのスケーターは大勢いる。

勿論、このことは彼がトゥー系のジャンプが苦手という意味ではないけれど、彼にとってはエッジで跳ぶジャンプの方が簡単なはずだ。

ショー期間中は、様々な種類の多くの4回転ジャンプを披露した。
これは羽生という人間のスケールを表している。怪我は別にしてこの選手は、試合である意味『制限』して競技しなければならなかった。

実際には、彼は手綱を緩めて(全速力)競技したかった。つまり自分が思い描くジャンプ構成を、出来ると信じて試したかった訳だが、それがかなわなかった。

でもこれで2018年のオリンピックに向けた彼のプロジェクトにおいて1年を失うことになった。

おそらく彼は、もうすぐ始まる今シーズンからショートは4回転2本にしたかったんだと思う。
4サルコウ、練習での成功率は約80%だ。試合では時々失敗することがあるけれど、練習ではトゥループより安定している。そして当然、4トゥループを3トゥループとのコンビネーションにしてプログラム後半に入れる(笑)。

これが羽生結弦が考えていた今シーズンのプログラムだった。
でも昨シーズンは構成を上げられなかったので、このプランは実現出来なかった。

羽生の歴史を振り返ってみると、2010年に世界選手権ジュニアで優勝してから(この時のフリーのジャンプ構成はダブルアクセル1本、アクセル2本+ルッツ2本を含む3回転ジャンプ8本だった)、毎シーズン必ず何かしら構成を上げている。段階的に。

昨シーズンは身体的問題によってこのプロセスが一時中断された。

ブライアン・オーサーは「ユヅルは『あの』プログラムを構成していた全てのエレメンツを『蓄積』することが出来なかった」と言ったが、実際には結弦は瀕死の状態になるまで『あの』プログラムも試していたと思う。

おそらくブライアン・オーサーは昨シーズン、あまりにも少ししか彼を見ることが出来なかったので知らないだけだろう。

もし、僕がブライアン・オーサーに話を聞きに行って、羽生について

「ブライアン、素直で従順な羽生は教えやすいだろう」

と訊いたら、彼はこう答えるに違いない。

「どの選手?ナム・ニューエンのこと?」

「違う違う、ユヅルだよ、彼のことだ」

「いやいやいや、素直で従順なのはニューエンだ」と(笑)

つまり何が言いたいかというと、羽生結弦を管理するのは容易ではないということだ。
何故なら常に新しいことに挑戦したいタイプだからだ。自分は出来ると信じて
だからとりわけ彼が自分の手元にいない時、ブライアン・オーサーの仕事はますます困難になる(笑)。

今シーズンは幸運にも羽生とオーサーはNHK杯の数日前まで一緒に練習に取り組むことが出来る。

僕は、この大会までに羽生は磨き上げられ、自国で開催されるこのグランプリ大会で途方もないことをやってくれる気がしている。

両プログラム合計で300点越えとか・・・もしかしたらその前のスケートカナダで達成してしまうかもしれないけれど(笑)

さっき彼が抱いているショートプログラムの構想について話したけれど、フリーの構想はどうなっているのか。

僕は、羽生は今シーズンから本当はクワド4本の構成に挑戦したかったのではないかと思っている。
つまり、サルコウ、トゥループ、ループ、そして後半に2本目のトゥループ。
少し前までは想像すら出来なかった銀河レベルだ。

玩具『ハニュー』はどうやったら壊れるのか?

2つの可能性がある。

1つは勿論、怪我。
彼はいつも怪我と隣り合わせの選手だ。
ただし、目の効く人は皆気が付いていることだけれど、彼は健康だと転倒もコントロール出来る。
つまり怪我をしないように転倒することが出来る。これは非常に素晴らしい資質で、皆に出来ることではない。

もう一つの可能性は、何らかの方法で彼の自信をかき乱し、彼を極限へと掻き立てる人物が現れることだ。
今のところ、そのような人物を見当たらない。

例えば、羽生結弦が毎日一緒に練習しているハビエル・フェルナンデスは、彼が勝てる選手だ。
彼も練習では4ループを着氷出来ているから、フェルナンデスも3種類のクワド持ちだけれど、3アクセルが羽生に比べて弱い。
結弦は、たまに負けることがあるとしても、自分の実力がフェルナンデスを上回っていることを知っている。

彼の信念を覆すことが出来る可能性があるのは、もしかしたら中国のジン・ボーヤンかもしれない。
ただし、羽生結弦とボーヤンでは演技構成点で20点は差があるから、ボーヤンが羽生に勝つのは困難だ。

でもジン・ボーヤンは彼の自尊心を刺激することが出来るかもしれない。
もしジン・ボーヤンが彼の目の前で、4本のクワド、しかも4トゥループ2本を後半に跳ぶフリープログラムを滑ったら、羽生のような気性の選手は衝撃を受けるだろうと僕は思う。
そして中国人選手と張り合うために猛練習し始めるだろう。

もう一度言うけれど、ジン・ボーヤンが羽生に勝つには、彼が無数のミスを連発するという奇跡を待たなければならない。

それ以前に、羽生とボーヤンの間には4回転ジャンプと3回転ジャンプの質において(ジン・ボーヤンの3アクセルも上達したが羽生のレベルではない)、そして『スケート』に関するその他のあらゆる点において越えがたい隔たりがある。

でも彼のようなスペックを持つ選手は、羽生を更なる超高難度へと掻き立てるかもしれない。
そしてこのような極限難度は危険を招く可能性がある。

これが羽生結弦の今後のシーズンを狂わせることが出来るかもしれない2つのシチュエーションだ。

ボーヤン・ジンは4ルッツを軽々と着氷し、セカンドジャンプに3トゥループを付けると言う、2~3年までは誰も想像し得なかったことをやってのけた。

To be continued…

(その1) (その2) (その4) (その5)

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☆ マッシミリアーノさん、愛と興奮のあまり少々暴走気味ですが、本質は捉えていると思います(きっと愛すべきやんちゃ坊主と思っているんだろうな~)。
私も昨シーズン、ショートで後半4Tにした時、最終的に4S / 4T-3T 3Aにするために下準備かなと思いました。
でもさすがにフリークワド4本はないでしょう・・・いや止めて欲しい・・・

ブライアンは・・・心配だっただろうな~
最近のインタビューで『今シーズンは教え子が目の届くところにいてホッとしている』と言っていたし・・・

次回はいよいよ『SEIMEI』の話題です。
ここから後半のクライマックスに向けて更に盛り上がっていきます!!お楽しみに~

 

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち