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Neveitaliaポッドキャスト「『羽生結弦』思考をフォーカスする(その4)」

イタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんのフィギュアスケート専門ポッドキャスト『Tutti con Ambesi』(みんなアンベージの味方)より

今回は第4回です

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羽生結弦がフリープログラムで技術点、演技構成点共に90点を超える得点を持ち帰った先日行われた大会を振り返ってみよう。

フリーでは転倒もあり、他にも問題があって簡単には行かなかった訳だが、ここでこの選手の即興能力、そしてコーチの言いつけを守らない一面を見ることが出来る。

羽生結弦のフリープログラム後半で起こったことを見てみよう。
先週、オンタリオ州バリーで開催された大会での出来事だ。

彼は2本目の4トゥループで転倒する。本当なら2トゥループをつけてコンビネーションにする予定だった。いつもより酷い転倒だったから、立ち上がるのに少し時間がかかったが、すぐに演技を続ける。

そして彼にとっては3ループの次に簡単なジャンプ、3アクセルを跳ぶが、着氷が完璧でなかったので予定していた3トゥループを付けられなかった。
ここで彼が3Tを付けなかったということは、不可能な状況だったということだ。
通常、羽生は軸が曲がろうと、どうなろうと強引に3Tを付ける。
でも、ここで2トゥループにしたということは、どうしても無理な状況だったんだろう。

それから次のコンビネーションジャンプ、3アクセル/1ループ/3サルコウに向かった。
ここでも何か問題があったんだろう。3アクセルの着氷が乱れ、単発になってしまった。

その時の場面を想像して欲しい。
このアクセルの後、一瞬の戸惑いがあって、その直後、突然閃いた。

天才の閃きだ。

振付けの本来のテンポには従わず(ここが注目すべき点だ)、猛スピードで突進して無の状態から3ループ/1ループ/3サルコウを発案した。試合では一度もお目にかかったことのない代物だ。

僕が思うにこのジャンプの難度係数は9.9、しかも彼は練習でも跳んだことがないと言っているから、ここでこのコンビネーションを跳んだことはまさに狂気の沙汰だった。

どうしてスピードを上げたのか?(笑)
ジャンプ後の振付けを音楽に合わせるためだ。
この時、僕は彼を見ながら「このクレージーボーイは最後のルッツに3トゥループを付けるだろう」と思った(笑)。

でも実際には彼はそうはしなかった。

なぜか?

おそらく1年前からルールが変更されたということが、念頭から抜けていたのだろう。
プログラムを滑りながら全てを把握するのは難しい。

昨シーズンからコンビネーションジャンプで転倒して、コンビネーションに出来なかった場合、このジャンプはREP扱いになり、コンビネーションジャンプとしてカウントされなくなった。
だから彼は最後に3ルッツ/3トゥループを問題なく跳ぶことが出来たんだ。
もしそうしていたら、予定していたジャンプを順番が変わっただけで全て跳んだことになっていた。
もし試合後に誰かが彼にこのことを指摘していたら、きっと悔しがっていたはずだ。
だって今の時点で、全てのジャンプを実行する力があることを見せつけることが出来たんだから。

でもブライアン・オーサーは気絶していただろう。
それどころか、ブライアン・オーサーは3ループ/1ループ/3サルコウについて今後、こんな無茶はするなと釘を刺したと思う。あの時、振付けをひっくり返すリスクを冒してまで、跳ぶ必要は全くなかったんだから。

でもこれが羽生結弦なんだ。

受け入れるには覚悟が必要だ。

もし彼が100%のコンディションで、彼が思い描くプログラムを滑り切ることが出来たら、見ているがいい、最終的な得点は自動的に305点とか310点とか、そんな得点に達するはずだ。

ショートは100点以上に値するし、今シーズンの彼のフリープログラムには並外れた、特別な何かがある。
このプログラムは、見ていた者にすぐ様これまでに感じたことのないような感情的衝撃を与えた。

羽生のプログラム、厳密にはフリープログラムに関して、これと同じ感覚を探すには、2011-2012シーズンの「ロミオ+ジュリエット」まで遡らなければならない。
ニース世界選手権で最高潮に達したあのプログラムだ。
クレイグ・アームストロング作曲の映画「ロミオ+ジュリエット」のサウンドトラックだから、言ってみれば現代風にアレンジされたシェークスピアの傑作だ。
デジレが歌うボーカル入りバージョンもあった。

全てのフィギュアスケートファンの心を鷲掴みにした渾身のプログラム。
まるでロミオが彼に憑依したように、最初から最後の1秒まで魂を揺さぶる何かがあった。

あれから4年も経つのに(笑)、皆あのプログラムのあらゆる瞬間、音楽のどのフレーズ、どのアクセントにどのエレメンツがあったかを正確に覚えている。
それほどこのプログラムはフィギュアスケートファンの脳裏に鮮烈に刻み込まれたのだ。

あえてこの音楽を使おうとする者は(笑)、ハンヤンとか今シーズンも何人かいるけれど、否応なく羽生と比べられる。
あんなプログラムと比べられたら・・・説得力を与えるのは難しい(笑)
ハンヤンのフリーは、ローリー・二コルが巧みに振付けた興味深いプログラムではあるけれど・・・

羽生の新しいプログラムは見る者にあの時と同じ感覚を起こさせる。
彼が希望し、彼が選曲したプログラム。日本映画の音楽。
彼がどれほどこの役にのめり込み、自分のプログラムだと感じているかが伝わってくる。
彼がこんな風に自分のプログラムだと感じた時、110パーセントの力を発揮出来る。

もしファイナルで、バリーでやったような遊びをしたら、つまり演技中に何も無い所から新しいコンビネーションジャンプを引き出すという離れ業をやってのけたら(10月中旬の時点のこのコンディションは驚異的だ)、間違いなく全ての選手を恐怖に陥れることになるだろう。

to be continued…

(その1) (その2) (その3) (その5)

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☆ これはもう『Tutti con Ambesi』(みんなアンベージの味方)ではなくて、『Tutti pazzi per Hanyu』(みんなハニューに首ったけ)に改名すべきでは・・・

今日、イタリアユロスポ・チャンネルでスケートアメリカを見ましたが、マッシミリアーノさん、このポッドキャストとは別人のように至って冷静でシニカルで・・・そうそう、マッシミリアーノさんって普段はこういう人だったよな~と
そもそもこのポッドキャストの趣旨は前週に行われた大会のハイライトを解説する、というもので、先週はニース杯やモルドヴィアン・オーナメントなどのISUチャレンジャーシリーズの試合もあり、確かイタリアのイヴァン・リギーニ選手も出場していたはずなのですが、名前すら登場せず・・・
解説者が自国の選手を放ったらかして他国の選手にここまで入れ込んで、しかも一応オフィシャルな電波で発信してしまってイタリア的には大丈夫なのか

 ニースのロミオ・・・
私も当時、あの演技に心を鷲掴みにされた一人でした。
マンマ解説版の動画は残っているのに、イタリア・ユロスポ版の映像はどこにもないんですよね・・・
当時の解説を聞いてみたかった

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち