Neveitaliaより「羽生結弦、新たな壁を破る準備をする」

2015年国別対抗戦直後にNeveitaliaに掲載された男子シングル総括記事です。
記事を書いているのはイタリア・ユーロスポーツ実況のマッシミリアーノ・アンベージさんです。

数字に強いマッシミリアーノさんの記事だけあって数字の羅列でとにかくマニアック。
長~い記事ですが、要約すると「羽生結弦は異次元」ということです。

n_470338674 (2015年4月22日)

原文>>

僅かな点差で世界タイトルを逃した羽生結弦とデニス・テンであったが、今季最高のプログラムを披露し、過去にたった2人しか成し遂げていない300点に迫る得点を獲得したのは彼らだった。

いずれにしてもアジア出身のこの2人選手の結果は異なるシチュエーションから生まれたと言わねばならない。

カザフスタンの選手は、ソウルの四大陸でショート、フリー共に僅かなミスもない完璧な演技を揃え、この得点を叩き出した。

一方、日本の選手は本来予定していたプログラム構成に比べると大量の点を失ったにも関わらず、この得点を獲得した。

今季最高得点はテンが獲得した289.46点で、羽生はグランプリファイナルの288.16と東京国別対抗戦の 288.58に留まった。

いずれにしても10月から始まった様々な体調不良というハンデを負っていた現オリンピックチャンピョンは、ライバル達から頭一つ二つ抜きん出ており、健康なら無敵な存在であることを改めて証明した。

しかも、国別対抗戦では羽生がショートで3Lz-3Tのコンビネーションのミスで6点、フリーで4Tが3回転になるミスで10点以上失っていることを考えれば、彼にとって300点は余裕で手に届く得点のように思われる。

羽生結弦の次の目標は、フリーの後半に4Tを追加し、多くの怪我によって今季実現出来なかったクワド3本の構成に再挑戦することである。

国別対抗戦のエキシビジョンで彼が4ループ-3アクセルのジャンプシークエンスを決めたことも忘れてはならない。

ライバル達の逆襲を待ちたいが、現世界王者のハビエル・フェルナンデスはショートをクワド2本にし、フリーで2本目のトリプルアクセルを入れる構成を試みることが出来る。

トゥループ以外の4回転ジャンプを持たないデニス・テンは、パトリック・チャンについても同様だが、ライバル達に比べ状況はより困難である。

中国のジン・ボーヤンがシニアに参戦するかが興味深いところである。勿論、ハルビン出身の17歳が、すぐにシニアで脅威的な存在になるとは思われないが、彼はショートで2本、フリーで4本の4回転ジャンプを跳ぶ能力があり、特に練習では決めている4ルッツが試合でも安定すれば興味深い存在になるだろう。

従って、2018年の平昌オリンピックで表彰台に上るには、ショート、フリー合わせて3本のトリプルアクセル、3本のクワド(男子シングルの現在の傾向を見ると、2シーズン後にはこの構成でさえ、優勝するには不十分になるかもしれない)が必要になるという考えが日に日に確信に変わっている。

若手の宇野昌磨、ハンヤン、ナム・ニューエンを始め、着々と成長している選手達が他にも多くいることも付け加えたい。

<ショートプログラム>

ショートプログラムの今季最高得点は技術点でライバル達を上回ったデニス・テンが獲得した。TES52点を越えた彼の得点は羽生、チャン、町田に次ぐ歴代第4位の得点である。

一方、羽生は演技構成点の5項目の内、テンが上回ったperformance/execution 以外の4項目で最高得点を獲得した。performance/executionでテンが上回った理由として、テンが四大陸選手権で完璧な演技を披露したのに対し、羽生は3Lz-3Tのコンボ、または4Tなど常に何らかのミスがあったことが考えられる。

今シーズン、羽生が獲得した最高得点とライバル達の得点を比べると、日本の選手はあらゆる面でライバル達に勝っていることがはっきりと分かる。

(以下は羽生君の得点とその他の選手の最高得点の比較です)

TES – 51,11 (G.P.Final Barcellona) / その他の選手の最高得点52,86 (Ten D. F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 54,84 (Hanyu, O.W.G.2014, Sochi)

PCS – 46,29 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点44,75 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 47,18 (Chan, O.W.G.2014, Sochi)

SKATING SKILLS

9,25 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点8,82 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 9,43 (Chan, O.W.G.2014, Sochi)

TRANSITIONS/LINKING FOOTWORK and MOVEMENT

9,11 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点8,64 (Fernandez, W.Ch.Shanghai/Machida, S.A.,Chicago)

歴代最高得点 – 9,32 (Chan, O.W.G.2014, Sochi)

PERFORMANCE/EXECUTION

9,11 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点 9,14 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点– 9,50 (Hanyu, O.W.G.2014, Sochi)

CHOREOGRAFY/COMPOSITION

9,43 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点9,04 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 9,54 (Chan, O.W.G.2014, Sochi)

INTERPRETATION

9,39 (W.T.T.Tokyo) / それ以外の選手の最高得点9,21 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点– 9,57 (Chan, O.W.G.2014, Sochi)

<フリープログラム>

今季最高得点は羽生結弦がバルセロナGPFで獲得した194.08点で、パトリック・チャンが2013年エリック・ボンパール杯で獲得した196.75点に次ぐ歴代第2位の得点である。

デニス・テンは史上3人目の190点越えした選手になった。190点を越える得点はこれまで7回しか記録されていない(羽生4回、チャン2回、テン1回)

オリンピックチャンピョンは自身が保持していた歴代最高TESを塗り替え、何よりもTES110点越えの意図を明確にした。このTESが実現されれば自動的にフリーで200点越えを達成した史上初の男子になれる。

羽生とその他全てのライバルを比較すると、演技構成点の全ての項目において日本の天才が今季最高得点を獲得していることが分かる。

TES – 103,30 (G.P.Final Barcellona)/ その他の選手の最高得点100,45 (Ten, F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 103,30 (Hanyu, G.P.Final 2014, Barcellona)

PCS – 93,36 (W.T.T.Tokyo)/ その他の最高得点91,40 (Ten, F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 96,50 (Chan, T.E.B.2013, Parigi)

SKATING SKILLS

9,39 (W.T.T.Tokyo) / その他の最高得点9,21 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 9,57 (Chan, T.E.B.2013, Parigi)

TRANSITIONS/LINKING FOOTWORK and MOVEMENT

9,00 (W.T.T.Tokyo) / その他の最高得点8,89 (Brown, W.T.T.Tokyo)

歴代最高得点– 9,39 (Chan, T.E.B.2013, Parigi)

PERFORMANCE/EXECUTION

9,54 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点9,32 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 9,86 (Chan, T.E.B.2013, Parigi)

CHOREOGRAFY/COMPOSITION

9,36 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点9,21 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 9,75 (Chan, G.P.Final 2013, Fukuoka)

INTERPRETATION

9,39 (W.T.T.Tokyo) / その他の選手の最高得点9,21 (Ten D., F.C.Ch.Seoul)

歴代最高得点 – 9,79 (Chan, T.E.B.2013, Parigi)

 

<歴代最高得点>

1) CHAN Patrick (CAN)

295,27 (Trophèe Eric Bompard 2013, Parigi)

2) HANYU Yuzuru (JPN)

293,25 (GP.Final 2013, Fukuoka)

3) TEN Denis (KAZ)

289,46 (F.C.Ch.2015, Seoul)

4) MACHIDA Tatsuki (JPN)

282,26 (W.Ch.2014, Saitama)

5) TAKAHASHI Daisuke (JPN)

276,72 (W.T.T.2012, Tokyo)

6) FERNANDEZ Javier (SPA)

275,93 (W.Ch.2014, Saitama)

7) BROWN Jason (USA)

263,17 (W.T.T.2015, Tokyo)

8) ODA Nobunari (JPN)

962,98 (Q.O.W.G.2013, Oberstdorf)

9) PLUSHENKO Evgeni (RUS)

261,23 (E.Ch.2012, Sheffield)

10) FARRIS Joshua (USA)

260,01 (F.C.Ch.2015, Seoul)

11) YAN Han (CHN)

259,47 (F.C.Ch.2015, Seoul)

12) KOZUKA Takahiko (JPN)

258,41 (W.Ch.2011, Mosca)

13) LYSACEK Evan (USA)

257,67 (O.W.G.2010, Vancouver)

14) MURAKAMI Daisuke (JPN)

256,47 (F.C.Ch.2015, Seoul)

15) UNO Shoma (JPN)

256,45 (F.C.Ch.2015, Seoul)

16) MURA Takahito (JPN)

255,81 (Skate Canada 2014, Kelowna)

17) VORONOV Sergei (RUS)

252,55 (E.Ch.2014, Budapest)

18) REYNDOLS Kevin (CAN)

250,55 (F.C.Ch.2013, Osaka)

19) AMODIO Florent (FRA)

250,53 (E.Ch.2013, Zagabria)

20) KOVTUN Maxim (RUS)

247,37 (W.Ch.2014, Saitama)

21) LAMBIEL Stephane (SUI)

246,72 (O.W.G.2010, Vancouver)

22) ABBOTT Jeremy (USA)

246,35 (W.Ch.2014, Saitama)

23) GACHINSKI Artur (RUS)

246,27 (E.Ch.2012, Sheffield)

24) BUTTLE Jeffrey (CAN)

245,17 (W.Ch.2008, Goteborg)

25) JOUBERT Brian (FRA)

244,58 (W.Ch.2012, Nizza)

26) BREZINA Michal (CZE)

243,52 (E.Ch.2013, Zagabria)

27) NGUYEN Nam (CAN)

242,59 (W.Ch.2015, Shanghai)

28) RIPPON Adam (USA)

241,24 (Skate America 2013, Detroit)

29) AARON Max (USA)

240,22 (US Figure Skating Classic 2014, Salt Lake City)

(そして過去に240点、250点、260点、270点、280点、290点を越えた選手の一覧)

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  相変わらず「オレのユヅル・ハニュー」感が半端ないですね。

他のカテゴリー(女子シングル、ペア、アイスダンス)では新世界王者を取り上げた記事を書いているのに、男子ではひたすら羽生君について書くと言う・・・

写真も4Lo-3Aの衝撃的なコンボを決めて喜びを爆発させている羽生君が使われているし・・・(今季世界王者はハビ君なのに・・・)
というか、本来今シーズンの主役として扱われるべき世界王者のハビ君が『その他の選手』に一括りにされてしまっている・・・(パトリックとテン君、いやボーヤン選手より存在感が薄いような・・・)

羽生君ワールド銀メダルを一番悔しがっていたのはマッシミリアーノさんじゃないでしょうか?

ワールドのグランフィナーレでの羽生君リベンジの4Tで大喜びしていましたから、今回の4Lo-3Aの反応は如何ほどのものだったか・・・見てみたかったですね

 

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu