OA Sportより「スケートアメリカ2021総括」

チェンは崩れ、トゥルソワは頭を使う。
グランプリ第一戦の印象

お馴染みイタリアのスポーツメディア、OA Sportのスケアメ総括記事です。
なかなか辛辣です😅

原文>>

ファブリツィオ・テスタ
(2021年10月25日)

ローカル大会となった(そして2度と繰り返されないことを願っている)昨シーズンの後、フィギュアスケート2021-2022グランプリが、ネバダ州ラスベガスのオーリンズアリーナで先週開催された第一戦、スケートアメリカと共にようやく戻ってきた。

開幕戦となった大会は、間違いなく3位に終わたネイサン・チェンの崩壊により、2018年の世界選手権以降続いていた驚異的な無敗記録が途切れた大会として記憶されるだろう。現世界チャンピオンはショートにおける4ルッツの転倒とコンボ抜けによって出遅れ、フリーでは予定されていた6本の4回転ジャンプ(成功していれば史上初だった)の内、2本のジャンプが入らず、とりわけプレゼンテーションにおいても、あまりパッとしないプログラムだった。

実際、振付という観点において非常に貧弱なパフォーマンスだが、強いインパクトを与える唯一の見せ場でアピールする(例えば、2019-2020年シーズンの『ロケットマン』のコレオシークエンスが思い浮かべて欲しい)という、ある意味狡猾なチェンの傾向を我々は常々強調してきた。オリンピックシーズン、ラファエル・アルトゥニアンの教え子は、モーツァルトの作品から抜粋した、彼のいつもの選曲とは大きく異なる音楽を選んだ(しかし、予想通り、最後はよりモダンな曲調でスイッチが入るが)。いささか困惑させられる選曲であり、というのも(少なくとも今大会では)流動的で柔らかであるべき動作が、逆にぎこちなく固まってしまう彼の最悪の特徴が強調され、彼の全ての限界を露呈してしまったからだ。時間の経過と共に変化が見られるだろうか?

他の大会に比べ、アメリカのリンクは4回転ジャンプ5本(4種類サルコウ、フリップ、ルッツ、トゥループ)と3アクセル2本を降りたヴィンセント・ジョウの勝利が象徴しているように、他の要素に比べてジャンプ要素の重要性が大きい現在の傾向を強調することになった。2位に入った宇野昌磨も全く同じ状況であり、幾つかのミスがあったものの5クワド+3アクセル2本の構成だった。ある意味で心配な状況だが、ずっと続いている技術的優位を褒賞し、一方で演技構成点の評価に大きな問題がある採点システムの運用を考慮すると、おそらく必然的な状況である、 この意味において、グランプリシリーズの残りの大会における他の有力ライバル達の動向が気になるところだ。

男子の試合は全体的にミスの祭典だったが、女子の試合はそうではなかった。大多数の選手が好印象で、クリーンで見ごたえのあるプログラムを披露した。上位7選手が200点を超えたのは偶然ではない。大会の規模を考慮すると非常に重要な数字であり、通常、世界選手権やグランプリファイナルのようなよりハイレベルな大会でしか見られない数である。優勝したのは予想通りアレクサンドラ・トゥルソワだった。足首の問題で万全ではなかったトゥルソワは、問題なく勝つために、4回転ジャンプを1本(ルッツ)だけ跳び、残りは『従来』の構成(7トリプル+2アクセル2本)をベースに、シニアデビューにして真のクオリティ・ディスペンサーであることを見せつけた素晴らしいダリア・ウサチョワと、低迷期の後、再びハイレベルなスケーターに再生したユ・ヨンを大差で引き離した。予想外の結果に終わったアジアンオープンの後、見事にリベンジした坂本花織も非常に良い演技で、3人目のロシア人、クセニア・シニツィナを上回った。

ペアではロシア同士の最初の対決で、エフゲニア・タラソワ/ウラディミール・モロゾフが勝利した。ショートは再び完璧だったが、フリーではオリンピック表彰台の中央に立つために必要不可欠な要素となるSBSジャンプがまたしても綺麗に決まらなかった。全体的に、コラボレーション開始からあまり時間が経っていないにも拘わらず、ジャンプ改善におけるエテリ・トゥトベリーゼの貢献は明白であり、おそらく、このことは彼らにとっての鍵になるだろう。一方、ボイコワ/コズロフスキーはなす術がなかった。フリープログラムの野心的なコンビネーション、3サルコウ/オイラー/3サルコウと3フリップのスロージャンプで転倒し、このミスにより3位に甘んじることになった。彼らを上回ったのは飛躍的な成長を遂げている日本の三浦璃来/木原龍一で、オータムクラシックインターナショナルに続いて200点の大台を超え、混沌とした世界トップ5からトップ10の勢力図を大きく揺るがす候補者として名乗りを上げた

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☆男子フリーは実質クワド大会で、プログラムの印象はほとんど残っていません。
ショートの得点に対するファブリツィオさんの反応はこちら

ジャッジングについては色々言いたいことがありますが、データ解析のプロフェッショナル、マルティーナさんが詳しく分析して下さいました。

すぐに訳したいところですが、どうやらマッシさんの愛と感動のナポリ講演動画がついに今晩届くらしいので、彼女の分析記事を翻訳出来るのはもう少し先になりそうです。

女子はトゥルソワ怪我でピンチ!と言われていましたが、蓋を開けてみれば、トゥルソワ強過ぎ、余裕過ぎで笑いましたw
彼女にとってアクセル以外のトリプルジャンプは他の選手にとってのダブルジャンプぐらい簡単なんでしょうね。クワドのないショートは繋ぎが詰め込めるだけ詰め込まれていましたし、特にジャンプの後、フリーレッグを置かずに片足のまま難しいトランジションに繋げているのは驚異的です。
彼女はスケーティングの質自体はそれほど傑出している訳ではありませんが、こういうところでPCSが上がるのだと思います。フリーは4Lz2本+4T1本の3クワドぐらいにして、繋ぎをもう少し増やしてプログラム全体のクオリティを上げた方がいいんじゃないかと私は思いますが、彼女が5本跳びたいんでしょうね。

しかし、パフォーマンスと言う点で、最も印象的だったのは、ショートはダリア・ウサチョワ、フリーはさっとんのトスカでした。
さっとんのフリーは確かにジャンプは回転不足のものが多かったですが、絶妙なエッジワークと指先まで神経の行き届いた全身の動きで、音楽を表現するという点において、他の選手とは別格でした。プログラムの流れを中断するミスが一つもなかったにも拘らず、彼女のPCSが全選手中5位というのは、採点システムの運用とPCSの評価基準に明らかに問題があることを示しています。

そして、個人的に大会を通して最も感動したのは「りくりゅう」こと三浦璃来/木原龍一ペアの演技でした。ペアの試合はイタリア時間の深夜3~4時だったので、さすがにライブでは見ませんでしたが、朝ニュースなどを一切見ず、事前に結果を確認せずにユロスポのオンデマンド動画を視聴しましたので、ライブのような臨場感を味わえました。

ショートもフリーも最初から最後までシームレスで流れるような美しい演技。何よりも演技する2人から滑る歓び、互いの強い信頼感が伝わってきて、見ていて鳥肌が立ちました。
細かい取りこぼしやミスがありながら、ロシアの牙城を崩して銀メダルです。このペアは滑る度に前大会の課題を修正し、驚異的なスピードで成長していますから、今シーズンどこまで進化していくのか楽しみです。

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち