OA Sportより「M.アンベージ:演技構成点を見直す必要性に迫られている」

OA Sportに掲載されたマッシミリアーノさんのインタビューです。
非常に長いので男子シングルに関する部分だけ訳します。

原文>>

世界フィギュア2019
マッシミリアーノ・アンベージ:
演技構成点を見直す必要性に迫られている

ファブリツィオ・テスタ(2019年3月23日)

今週、埼玉スーパーアリーナで開催された世界選手権は男子シングルとアイスダンスのフリープログラムで幕を閉じ、ネイサン・チェンとガブリエラ・パパダキス/ギヨーム・シゼロンが優勝を飾った、我々はユーロスポーツの有名な解説者でウィンタースポーツ専門のジャーナリスト/アナリストであるマッシミリアーノ・アンベージに今日の試合と現行の採点システムに対する見解を求めた。

こんばんは、マッシミリアーノ
羽生結弦は魂を賭けてハンデを乗り越え、勝とうとした
ネイサン・チェンは完璧なプログラムを滑ってこれに応えた。
男子シングルに試合について、君の意見を聞かせて欲しい

最終的に2つのプログラムでミスをほとんど冒さなかった選手が勝利した。
だからチェンの優勝は妥当だ。

羽生結弦はショートプログラムで大きな得点源である4サルコウが抜けてしまった。フリーでも同じジャンプで苦戦した。このジャンプは練習では一番安定していたから驚いた。
この2つのミスによってユヅルはネイサン・チェンと互角に戦うことが出来なかった。
トップ2人の勝敗を分けたのは4サルコウだった。これは仕方のないことだ。

いずれにしても羽生の演技は傑出した内容だった。この選手は万全なコンディションではなく、4分間に耐えられる脚の状態ではなかったにも拘わらず、誇り高く闘い、障害を乗り超えて心を引き出し、フリープログラムをほぼ完璧に滑り切った。

実際、高さ60センチを超える4ループと、ボーナスが付く後半に世界選手権史上初のエレメント、4トゥループ/3アクセルのシークエンスジャンプを成功させた。

しかしながらネイサン・チェンのレベルを考慮すると、この大会ではミスは許されなかった。従ってトップ2人の順位は順当な結果だと思う。

ただし、私の見解では、羽生とチェンの演技構成点はこの2日間に彼らが獲得した点よりもっと点差が開くべきだった。羽生のプログラムはチェンのプログラムに比べて繋ぎが豊かで、スケーティングのレベルも羽生の方が優れている。
ネイサン・チェンも多くの細かい点において進歩しているが、2人の差は肉眼で見れば明らかで、フリープログラムの点差がたった1点というのはあり得ない。

 

ヴィンセント・ジョウが思いがけず銅メダルを獲得した・・・

ヴィンセント・ジョウにとってはフリープログラム冒頭の2本の4回転ジャンプ、ルッツとサルコウを決めたことが重要だった。どちらもショートでも実施したジャンプだった。

ただし、私は今日、彼が演技構成点で獲得した得点は、全く不釣り合いな評価だったと思う。
私の見解では、このような特徴を持つスケーターが平均8点をもらうことはあり得ない。
今日は87点に達した。

演技構成点は実施された4回転ジャンプの本数に比例して高くなっていくべきではない。
そうでないなら、演技構成点は無くして、技術点と出来点だけで判断しようじゃないか。
まずこの点から試合を見直すべきだと私は思う。

無論、ジョウは予定されていた要素を全てやり遂げたから、3位という順位は妥当だったと思う。
しかし、だからと言ってジョウが今大会で3番目にレベルの高いスケーターだったと勘違いしてもらったら困る。

今日の試合の後で、私は採点システムが実際に機能しているのか見直すべきだと思う。
ネイサン・チェンがフリープログラムで全てのエレメントを完璧に実施した場合、技術点130点に到達出来るなら、プログラムのもう一方の側面である「芸術性」を評価する得点も130点に到達出来るようにすべきである
この発想を念頭に置いて議論しない限り、状況は何も変わらない。
これら全ての状況は様々な選手を不利にしている。

 

演技構成点の評価と言えば、私が特に笑ってしまったのはジャッジの1人が羽生とジョウのスケーティングスキルに0.25点差しか付けなかったことだ。しかも、このジャッジはオリンピックチャンピオンの4ループに+1しか与えなかった。幸運なことに他のジャッジ達は+3から+5で+1は彼一人だったけれど・・

演技構成点でこのような評価をするジャッジは即クビにすべきだと私は思う。何故なら客観的に見て、この2人の間に0.25点の差しかないと言うのはあり得ないからだ。

それだけではない。
ヴィンセント・ジョウにマッテオ・リッツォやコリヤダや宇野昌磨といった選手達、及びその他の少なくとも15人の選手達より高い演技構成点が与えられることはあり得ない。
演技構成点が成功した4回転ジャンプの数と連動して上下することを受け入れることは出来ない。

それに私の見解では、羽生のこのような入りから、このように実施された、これほど高さのある4ループに+1はあり得ない。
このジャッジが他のジャッジ達とは異なる別の何かを見ていたのは明らかだ。

しかしながら、注意してもらいたい。
これはジャッジ一人の問題だけに留まらない。
問題は複雑で、今日の試合におけるジャッジの採点の問題ではなく、採点システムそのものの問題なのだ。

技術点と演技構成点の比重にこれほど偏りがあるのはおかしいし、解決策を見つけるべきである。
各エレメントの基礎点を下げるという提案は個人的に見当違いで間違っていると思う。演技構成点と技術点の比重を同じにするべきだ。
それで順位が変わらなかったとしても、それはそれで構わない。しかし、こうすれば、スケーター達は間違いなく今では二の次になって疎かにされている細かい部分を向上しようと努めるだろう。

今日の上位10人の選手達の中で、より印象的だったのはケヴィン・エイモズだった。彼は非常に個性的でトランジションの豊かなプログラムを考案し、よく演じていた。確かに他の多くの選手達同様、幾つかのミスはあった。
現行の採点システムが彼のような選手を不利にしているのは明らかだ。同じようにマッテオ・リッツォも不利になる。

私は進化は重要だと考えているし、プログラムにより多くの4回転ジャンプを組み込むことも正しいと思う。
しかし、ジャッジ諸君はこれらのジャンプがプログラムの中に巧く溶け込んでいるのか、あるいは長い長い助走から実施されているのか評価しなければならない。
トランジションのない空っぽのプログラムで、しかも表現もないのに、8点台や9点台に到達するはずはない。

 

先ほど、フランスのエイモズの名前が出たけれど、今シーズンは彼と韓国のチャ・ジュンファンがよく話題に上った。彼らは2022年北京オリンピックのメダル候補になれると思う?

北京オリンピックはまだずっと先だ。従って今日から2022年までの間に多くのこと変わっていく可能性がある。2人共間違いなく非常に興味深い選手だ。

埼玉で見たチャはシーズン序盤に見た選手とは別人のようだった。
トップコンディションではなく、小さな怪我もあったが、このような重要な大会を欠場する訳にはいかなかった。
このように不確かなコンディションでは、競争力のある得点を持ち帰るのは難しい。しかしながら、チャは次のオリンピックのメダリストになる上で足りないものは何もない。

ケヴィン・エイモズはマッテオ・リッツォと共に今シーズン急成長を遂げた選手の一人だ。
両選手とも技術的なクオリティ、それに表現力と質の良い滑りを兼ね備えたコンプリートパッケージだから将来有望な選手達だ。

この2人にとっての問題は先ほど力説した通りだ。
現時点では4トゥループを跳んでいて、フリーで2本入れようとするかもしれない。しかしアジアとアメリカの選手達と互角に戦うには更に別の何かが必要だ。何故なら現行の採点システムは4回転ジャンプを跳ぶ選手達に過剰な高得点が与えられる仕組みになっているからだ。

勿論、羽生のように4回転ジャンプを完全にプログラムの一部として見事に実施する選手もいる。でも他の選手達は全くそうではない。

私はこの採点システムは作られた当初、一元的な選手、すなわち4回転ジャンプを跳びまくるけれど、プログラムにそれ以外何もない選手達を褒賞するために考案されたのではないと思う。
早急な見直しが求められる。

☆続くアイスダンスの考察は省略

参考資料
男子FSプロトコル>>

全文英訳(ℝ 鋼の心さんの訳)>>

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☆マッシミリアーノさん激オコでかなり辛辣
筆者のファブリツィオ・テスタさんも相当怒っているような・・・

先シーズンからマッシミリアーノさん達が主張している到達可能なTES満点とバランスが取れるようPCSの係数を変更し、PCS満点を120~130に設定すべきという話ですが、仮にそうなったとしても、ジャッジ達がPCSの各項目の判定基準を無視して、自由裁量で採点していたら結局同じことだと思います。

プロトコルを細かく確認してみたら、ヴィンセントのSSに宇野君やコリヤダより高得点を出しているジャッジが数人いました・・・😨

スケーティングスキルとは・・・

トランジションでネイサンに羽生君より高得点を与えたジャッジには2人のトランジションの内訳を説明してもらいたい。

でもアイスダンスやペアのPCSを見るとそれなりに正しく機能していると思います。
パパシゼとスイハンは素人目に見ても2位以下の選手達と明らかに別格の滑りでしたが、PCSで相応しい差がついています。
何故男子だけ然るべき差がつかないのか・・・

GOEについても同じことが言えます。
今大会に限らず今シーズン、特に4ルッツがある程度綺麗に決まると、それがどんなに長い助走から跳んでいても、空中姿勢が少々斜めっていても、着氷にそれほど流れがなくも、惜しみなく+4や+5が与えられるという印象を受けました。
4ルッツを決めたことへのご褒美点みたいな

羽生君が4ルッツを戻したいと言ったのもそんな処にあるのかな~と
彼の+4+5に相応しい4Tや4Sに+3.5程度しか付かず、本来+3程度の4ルッツに+4~+5が気前よく与えられたら、4ルッツを入れないと勝てないという結論に達しますよね・・・

採点システムもそうですが、ジャッジの評価基準を統一してもらいたいです。

 

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