OA Sportより「世界選手権2021:男子シングルは羽生-チェンの対決再び」

OA Sportに掲載されたストックホルム世界選手権男子シングルのプレビューです

記者のファブリツィオさん、かなり痛烈・・・😅

原文>>

写真は美しいSEIMEI様

 

ファブリツィオ・テスタ

2021年3月18日

 

最後の対戦から476日ぶりに頂上対決が再び繰り広げられる。

来週、3月22日から28日にかけてストックホルム(スウェーデン)のエリクソングローブアリーナを舞台に開催されるフィギュアスケート世界選手権2021のメインディッシュ、男子シングルの主役は、2度のオリンピックチャンピオン羽生結弦と世界タイトル保持者のネイサン・チェンだ。

 

5本の4回転ジャンプを含むフリープログラムでアメリカ選手が勝った2019年トリノのグランプリファイナル以来、僅かな試合しか出来ないまま2人はスウェーデンのリンクに登場する。

チェンは今シーズン、スケートアメリカと全米選手権の2大会に出場し、まずまずの調子と、もはや我々が良く知っているいつものアプローチを披露した。すなわち、特別な労力を使わずにより高得点のジャンプエレメントを実施出来るよう、2つの新しいプログラム(「Cancion de Mariachi」と「Selection」)に広い空白スペースを残しておく、というアプローチであり、今大会でも我々は間違いなくこの特徴を見ることになるだろう。

国内大会の開催地であるラスベガスで、ラファエル・アルトゥニアンの教え子はフリープログラムに再び5本の4回転ジャンプ、4ルッツ(着氷でミスした)、4サルコウ、2本の4トゥループ(1本は3トゥループ、もう1本はオイラー/3フリップとのコンビネーション)、4フリップ(3トゥループとのコンビネーション)を入れた。

 

対する仙台のエイリアンは、ライバルと違って本物の傑作の主役となった全日本選手権しか試合をする機会はなかったが、非常に複雑で、細部まで研究され尽くした振付で装飾された全く趣きの異なる2つのほぼ完璧なパフォーマンスを披露した。実際、ブライアン・オーサーに師事するフェノーメノ(超常現象)はショートではロビー・ウィリアムズの「Let Me Entertain You」のノリノリの曲調で滑り、フリーでは日出る国の伝統的な旋律、冨田勲の「天と地と」に乗せて視聴者を感動させるだろう。

史上最高のスケーターは長野で4本の4回転ジャンプ:ループ、サルコウ、そして2本の4トゥループ(1本目は3トゥループと、2本目はオイラー/3サルコウとのコンビネーション)を途方もないクオリティで成功させた

待ち望まれる主役達の中で宇野昌磨に触れない訳にはいかないだろう。ステファン・ランビエールの、言ってみれば「ケア」によって蘇り、自身3度目の表彰台を狙う気は十分のようだ。同じく、マエストロ・ミーシンの元に移籍した後、明らかに気力を取り戻したミハイル・コリヤダの目標も表彰台だ。しかし、この2人の選手は技術面において非常に危険なアメリカのヴィンセント・ジョウと、お日柄が良ければ大したことをやってのけられる中国のジン・ボーヤンを上回らなければならない。クオリティと高い演技構成点を頼りに上位に食い込める可能性のある非凡なスケーター、ジェイソン・ブラウンについても同じことが言える。

 

また、ダークホースの中には年若い日本人、鍵山優真とロシアのエフゲニー・セメネンコに加え、2人のイタリア男子マッテオ・リッツォダニエル・グラッスルがいる。我が国の苗床の厚さと強さを全世界に示すことが出来れば、堂々とトップ7入り出来る可能性は十分ある。

 

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☆今日の午後、羽生結弦様がストックホルムの地に無事、降り立たれました。
いつもなら記者とカメラマンの皆さんが空港に詰めかけ、現地入り速報として写真やら映像やら短いインタビューまで、空港に到着しただけで怒涛の情報が流れてくるところですが、さすがに日本のメディアの皆さんはホテルに篭ってちゃんと検疫されているようで、共同通信さんの控え目な報告ツイートがあっただけでした。

ロシアは相変わらずロシアのようで、バブルも一体どの程度徹底されているのか心配の種は尽きませんが、ロシアチームは到着後のPCR検査で全員陰性だったようですし、コリヤダとミーシン先生は感染済みで抗体があるから大丈夫、もう一人のセメネンコは羽生君と同じグループになる可能性はほとんどないから大丈夫、と信じたい・・・

あとは帯同されている日本スケ連の方が自国の選手達を大会中しっかりガードしてくれることを願うばかりです。

 

ここまでの国内大会における主だった選手達のフリーのジャンプ構成をまとめてみました:
(エイモズとボーヤンの演技は見れていないので不明)

 

日本

  • 羽生結弦 4クワド(4Lo, 4S,4Tx2)+3アクセル2本
  • 宇野昌磨 4クワド(4S, 4F, 4Tx2)+3アクセル2本
  • 鍵山優真 3クワド(4S, 4Tx2)+3アクセル2本

 

アメリカ

  • ネイサン・チェン 5クワド(4Lz, 4F,4S, 4Tx2)+3アクセル1本
  • ヴィンセント・ジョウ 4クワド(4Lz x 2, 4F, 4S)+3アクセル2本
  • ジェイソン・ブラウン 1クワド(4S)+3アクセル2本

 

ロシア

  • ミハイル・コリヤダ 3クワド(4S, 4Tx2)+3アクセル2本
  • エフゲニー・セメンネンコ 3クワド(4Tx2, 4S)+3アクセル2本

 

イタリア

  • マッテオ・リッツォ 3クワド(4Lo, 4Tx2)+3アクセル2本
  • ダニエル・グラッスル 3クワド(4Lz, 4F, 4Lo)+3アクセル1本

 

参考

  • アレクサンドラ・トゥルソワ 3クワド(4Lz x 2, 4T)
  • アンナ・シェルバコワ 2クワド(4Lz, 4F)
  • 紀平梨花 1クワド(4S)+3アクセル1本

 

昨シーズンのモントリオール世界選手権が中止されてから約1年。

今シーズンも異常な競技シーズンになりましたが、試合が軒並み中止になり、練習環境は制限され、様々な制約と不安の中で頑張って練習を続けてきた選手達のためにも、全員が健康で、笑顔で終われる大会になることを願っています。

 

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu