OA Sportより「NHK杯2019:宇宙的なプログラム~GP最終戦の印象」

イタリアのスポーツメディアOA Sportの大会総評記事です。
記者はファブリツィオ・テスタさん

原文>

NHK杯2019:
宇宙的なプログラムから世界最高得点まで
グランプリ最終戦の印象

ファブリツィオ・テスタ(2019年11月25日)

我々はNHK杯という名の夢のようなメリーゴーランドから永遠に降りたくなかった・・・

ISUグランプリ2019-2020の最後の大会、第6の戦は札幌(日本)の真駒内セキスイハイムアリーナで開催された。

選手、コーチ陣、そして観客は歓喜の涙と世界記録と再勝利に彩られたまさにジェットコースターのような2日間を過ごした。

正真正銘の感動祭りはフリープログラム後半で羽生結弦が並外れた勝負師の能力を見せた時、頂点に達した。
オイラー/3フリップとの3連続を予定していた4トゥループがダブル位なった後、彼は予定されていた次のジャンプの難度を上る決意をした。
完全な即興で4トゥループ/3トゥループと3アクセル/オイラー/3サルコウを難しいトランジションのステップを前後に散りばめながらあっさりと成功させた。

そのまま行っても何の問題もなく優勝出来たにも拘わらず、日本の規格外の選手は非常に効果的な戦略で状況を補正し、自らのミスをリカバリーしようと試みた。

既に何度も強調していることだが、このような思考回路を持っているのはスポーツ選手としてのメンタルがその他大勢とは別次元の選手だけである。

このような理由から、このオリンピック金メダリストは、バスケットのマイケル・ジョーダン、テニスのロジャー・フェデラーなどと共に360度不滅のチャンピオンの一人として永遠に語り継がれるだろう。

男子シングルではフランスのケヴィン・エイモズの歓喜の涙にも言及しなければならない。
あまりクリーンな演技ではなかったものの、個性的なフィギュアスケートを披露し、初のファイナル出場を決めた。彼が今後、更にレベルアップしていくことを我々は確信している。
シルヴィア・フォンターナ率いるスタッフチームの優秀な仕事のおかげで彼はこの重要な目標を達成することが出来た。

しかしながら、この日本大会は、エテリ・トゥトベリーゼの使徒達による6戦全勝達成でも記憶に残る大会となった。
モスクワのサンボ70のロシア人コーチはグランプリシリーズ全大会の優勝を彼女の3人の選手達で飾るという目標を達成した。

圧倒的制覇に携わったのはアリョーナ・コストルナヤ、アレクサンドラ・トゥルソワ、アンナ・シェルバコワの3人で、いずれも客観的に見てライバル達から頭一つ抜けているにもかかわらず、全体的なレベルを上げ、重砲を解禁するために更なる装備を固めている。
このことから、日本の紀平梨花は高難度ジャンプの数と種類において自分より進んでいるロシア勢を脅かすために自身初の4回転ジャンプ、重要な意味を持つ4サルコウを今後の試合で挑戦することに意欲的である。

トゥトベリーゼ・グループのどの選手が今後リーダーになっていくか理解する上でファイナルの行方は非常に興味深い。
最もコンプリートな選手は、2つのプログラム(ショートプログラムは歴代最高得点)で成功させた眩暈がするほど美しい2本の3アクセルのおかげでトータル240点を叩き出したアリョーナ・コストルナヤだが、優勝候補は技術面において無敵のアレクサンドラ・トゥルソワである(4サルコウはまだ不安定でスケートカナダ、ロステレコム杯のどちらでも転倒した)。

一方、アンナ・シェルバコワは本物の浮遊機雷(ダークホース)である。多くの人から過小評価されているが、その並外れた安定感と得点力によってライバル達をいつでも葬り去る能力を持っている。

精彩を欠いたショートの後で見事なフリープログラムを披露したアリーナ・ザギトワも特筆に値する。
五輪女王は今大会、明らかに緊張していたにもかかわらず、プログラム冒頭で見事に実施された彼女にとって鍵となる高難度コンビネーション、3ルッツ/3ループを取り戻し、彼女を常に際立たせてきた実力を再び見せた。
リンクメイト達に加え、復活したエフゲニア・メドヴェデワ、より競争力のあるエリザヴェータ・トゥクタミシェワと対戦するロシア選手権に向け、トリノのファイナルはモスクワのスターにとって重要な試練になる。

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☆相変わらず揺ぎないOA Sport
清々しいほど大絶賛です!
OA Sportは大会の度に総評記事を書いていますが(ひと際テンションが低かったロステレ杯と中国杯以外は訳しました)、羽生君の出場した大会と他の大会のテンションの差が露骨過ぎ😅
夢のようなメリーゴーランドから永遠に降りたくなかったってw

しかし羽生君がネイサンを完全にロックオンしていて笑いました。
ここ数日の彼のインタビュー、どれも興味深かったけれど、一番笑ったのがこれ

「今季は点数は勝っていますけど、2戦とも。ただ、彼もこんなものではないということも分かっている。彼のベストと戦いたい」

羽生君の自分に対する期待値が途方もなく高いのは知っていますが、自分が認めたライバルに対する期待値も鬼😂(ネイサン大変・・・)
まさに熱血少年マンガの世界

羽生君にここまでロックオンされたのは、やはりパトリック以来ですね。
ネイサンってクールなイメージですが、少年ジャンプのノリで「よっしゃー!!」ってなるタイプなんでしょうか???
パトリックは後ろから猛スピードで追いかけてくる阿修羅のような羽生君に怖気づいてメンタルをやられてしまった記憶が・・・

いずれにしてもトリノは凄い神大会になりそうです。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu