ORIGINミクロ解析「羽生結弦:原点回帰(その1)」

ロシアのスケート専門家でブロガーのYulia Krivikhina(Yulena)さんによるORIGIN徹底解析です。
ORIGINを構成、音楽、振付、技術的要素といったあらゆる観点から解析し、各エレメンツ前後に散りばめられたステップ、ターン、振付要素に至るまで、プログラムのあらゆる細部をミクロ単位で詳述している驚異的な分析です。
非常に長く、難解なので何度かに分けて翻訳または抄訳していきます。

ロシア語原文(ユリアさんのブログ)>>

Fairuzaさんによる英訳(Planet Hanyu)>>

Heartfelt thanks to Yulia and Fay for Super-analysis and Super-translation!💛

 

羽生結弦: 原点回帰 (Yulia Krivikhinaの分析)

「この曲を選択することは自分自身に挑戦するだけでなく、プルシェンコさんにも挑戦することを意味しています。でも彼のイメージに呑まれ、ただの彼のイミテーションだと思われるようではいけません」
「彼を超えようとは全く思っていません。それどころかこのプログラムは僕の彼に対する尊敬を表現するものであり、彼に敬意を捧げながら、僕自身のORIGINを作り上げることが重要だと思っています」(羽生結弦)

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羽生結弦のオリンピック翌シーズンのフリープログラムは象徴的なタイトル「ORIGIN」と命名された。彼のスケートの原点に戻るという意味である。ユヅル曰く(Figure Skating Life第15号, 2018月10月10日発売)、プログラムには彼が愛するスポーツで彼が大切にしている全てが詰まっている。ORIGINは得点を稼ぐための技術要素だけでなく、幾つかの振付のニュアンスには2度のオリンピックチャンピオンの経験と、自身の競技に対する賛辞が反映されている。

ここで2018年8月30日トロントにおける公開練習後のインタビューの内容が引用されていますが、日本語→ロシア語訳→英訳されたものを再び日本語に訳すのはあまり意味がないように思いますので割愛します。

プログラムの振付はシェイリーン・ボーンが手掛けた。

シェイリーンのインタビューの内容が一部引用されています。
シェイリーン・ボーンのインタビューはシエナさんがご自身のブログで翻訳して下さっていますので、リンクを貼らせて頂きます。

シエナ様のブログより
Pjさんのシェイリーンインタ全訳:Originについて

モモ博士様による補足
シェイリーン・ボーンが語る「ORIGIN」と羽生結弦に対する想い

どちらの記事も当時、非常に興味深く、ありがたく読ませて頂きましたが、ACI、ヘルシンキ、ロステレ、ワールドとシーズンを通して4度ORIGINを見た後で再読し、再び動画を見直すと、シェイリーンと羽生君の曲に対する理解の深さ、2人の共鳴、振付のコンセプト、プログラムが到達した領域に圧倒され、改めて異次元のプログラムだったのだと驚嘆させられます。
シエナさん、モモ博士さん、いつも素晴らしい翻訳と記事をありがとうございます!

 

しかしながら日本の神話(古事記)はシェイリーンのビジョンであり、ユヅルにはユヅルのプログラムに対する解釈があるはずである。
彼はロシアで、おそらくプロシェンコの前のこのプログラムを滑る。だからそこでいい演技がしたいと言った。
彼のグランプリ初戦も彼にとって思い出の場所。彼の最初の海外試合の開催地、ヘルシンキだった。だから彼はここでも当時を思い出しながら滑りたかった。

スケーターと振付師のコラボレーションの結果、リズムが絶え間なく変化する音楽構造を強調する複雑な振付パターンを描く壮麗なプログラムが生まれた。

プログラム構成
最初のプログラムの技術構成には4回転ジャンプ4本(内2本が後半)、3アクセル2本が含まれていた:

4Lo, 4T, CCoSp, StSq, 3Lo, 4S3T, 4TEu3S, 3A2T, ChSq, 3A, FCSSp, FCCoSp

彼は構成を上げる予定で、最終的に4Loの代わりに非常に野心的な4Aを入れるつもりだった。
ユヅルは彼のグランプリ初戦ヘルシンキ大会で既に構成を上げてみせた:

4Lo, 4S, FCCoSp, StSq, 3Lo, 4T, 4T3A SEQ, 3F3T, 3AEu3S, ChSq, FCSSp, CCoSp

構成と振付パターンの変更は、ダブルジャンプを使わずに3アクセルのコンビネーションジャンプを後半に2本入れたいというユヅルの希望によるものだった。

  1. プログラムには後半に配置されたユニークなシークエンスジャンプ4T3A (5つ目のジャンプ要素)が含まれている – 男子シングルにおける革新的な高難度エレメントである。
  2. 3トゥループはプログラム後半に3F とのコンビネーションとして跳ぶ(6つ目のジャンプ要素で難しい入り)。ユヅルがこのコンビネーションを最後に実施したのはジュニア時代である。
  3. 3AEu3Sが最後のジャンプになり、難しい入りから実施された。
  4. 4Sは前半に移動し、単独4T と入れ替わった。
  5. 2本のコンビネーションスピンの配置、基本ポジションの幾つかの難度の高いバリエーションも変更された。フライング足替えコンビネーションスピンFCCoSpはステップシークエンスの前に実施され、足替えコンビネーションスピンCCoSpはプログラム最後の要素になった。

従って、ジャンプシークエンス(基礎点x0.8)における基礎点の損失は、2Tを3Fに置き換え、4T3A、3F3T、3AEu3Sをプログラム後半(ボーナス1.1倍)に実施することで最小限に抑えられている。

ジャンプ以外のエレメンツが全てレベル4と仮定した場合の最大基礎点は91.43点である。

これらの入れ替えによって、プログラムの振付パターンとトランジションが変わった。

コンビネーションジャンプ3本の配置が再編成されたことにより、コレオシークエンスは2本のコンビネーション(3F3Tと3AEu3S)を繋ぐトランジションの組み合わせに変わった。
華麗なイナバウアーは新しいコレオシークエンスの冒頭、3連続コンビネーションジャンプと最後の2本のスピンの間に配置された。
つまり4T3A SEQ で開始するプログラム後半は実質上、全体が一つの連続するコレオシークエンスになっている。音楽のテンポの変化がこのギッシリ詰め込まれたフットワークを一層難しくしている。

現在、羽生結弦はプログラムの中で高難度の技術構成と振付の複雑で豊かなフットワークを融合させている唯一のスケーターである。
各エレメンツは彼のプログラム構成に完璧に組み込まれており、その奥深い音楽表現は彼のスケートの見どころであり、彼の誇りである羽生結弦のプログラムを特別なものにしている。
スタンダードを下げず、己のスタイルを貫き続けている彼に心から感謝したい。

「彼のスケーティングを通して実際に彼のクオリティを見ることになるでしょう。より速いフットワーク、スピードなど色々なレベルにおいて。そして彼の成熟。多くの経験を積んだ今の彼には表現することが沢山ある。彼は2度のオリンピックチャンピオンなのだから!」 (シェイリーン・ボーン)

 

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☆ユリアさんはほとんど毎シーズン、羽生君のプログラムを詳細解析して下さっており、このブログでも何度か翻訳させて頂きました:

2014-2015シーズン

そして2017年にはユリアさんによるヘルシンキ世界選手権のホープ&レガシーの分析をベースに多国籍ファンチームが動画を制作してくれました。

いずれも素晴らしい内容で、その知識と努力と情熱にひれ伏すしかありません。
英訳して下さる方にも感謝です!

 

(その2)(その3)

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