ORIGINミクロ解析「羽生結弦:原点回帰(その2)」

前回に引き続きYulia Krivikhina(Yulena)さんによるORIGIN徹底解析です。
前回に訳した部分は言ってみれば本の前書き、お料理なら軽い前菜に過ぎず、本格的なミクロ解析はここから始まります。

ほとんど専門用語のトランジション詳細(ステップ、ターン、方向転換など)は英語表記のままにします(これまで訳していたら死んでしまいます😨)。

ロシア語原文(ユリアさんのブログ)

Fairuzaさんによる英訳(Planet Hanyu)>>

Heartfelt thanks to Yulia and Fay for Super-analysis and Super-translation!💛


プログラムの音楽構造はエドウィン・マートンの「Art on Ice」と「Magic Stradivarius」をベースとした3つのパートで構成されている。

プログラム構成
エレメントの繋ぎとエレメント間のトランジション、及びプログラムの各パートの音楽表現:

1. 冒頭部 (Art on Iceのテーマ)

Transitions – entry (7s) – 4Lo

Transitions – entry (9s) – 4S – FCCoSp

Art on Iceの冒頭部分は風のうなり、鋭いヒューヒューという音、打ち鳴らされるゴングといった多彩な効果音がムードと感動を作り出しており、最も催眠効果のあるパートとなっている。
4Loの直前に最初のゴングの耳をつんざくような音が鳴り響く。
この謎めいた神秘的な音楽は4Sの入りに向けて更に高まっていく。
曲調の緊張感はこのパートの最後で最高潮に達し、振付的にはこの部分はコンビネーションスピンの出とステップシークエンスへのトランジションになっている。

2. 展開部 (Magic Stradivarius、そしてArt on Iceに移行)

テンポの変化

StSq (42s)

テンポの変化

主題の変化

Entry (4s) – 3Lo – exit

Transitions – entry (7s) – 4T – exit

Transitions

Entry (7s) – 4T3A SEQ – exit

テンポの変化

Transitions – entry (4s) – 3F3T – exit – transitions

テンポの変化

Transitions – Entry (5s)

このパートでは曲がステップシークエンスのMagic Stradivariusからこのエレメントの後のArt on Iceへと移行している。
構成的にこのトランジションは静止と3ループに入る前の振付のポーズによって強調されている。

このパートではテンポが4回変わる: ステップシークエンス実施中のハイテンポの曲調は終盤に向けて徐々に穏やかになり、続くジャンプ要素、3Lo、4T 、4T3A SEQの実施中はスローテンポになる。3F3Tに向かうトランジションで再びハイテンポになり(3F3Tの出まで)、3AEu3Sへのトランジションではスローテンポになる。

3. クライマックス (Art on Ice )

Counter 3AEu3S – exit

ChSq (12s) – FCSSp

CCoSp

プログラムのクライマックスは3AEu3Sで開始し、ここからコレオシークエンスChSqの象徴的な要素であるイナバウアーと続いていく。
曲調のクレッシェンドは最後のコンビネーションスピンで最高潮に達する。クライマックスの旋律のピークは壮大な最後のポーズにおける際立った音楽的アクセントによって、完璧に強調されている。

従って、全てのパートが構成(音楽表現に合った動きとパート)とプログラムの解釈という点において完璧な一つの「全体」を形成している。

「私は彼の振付師として彼のクオリティ、彼のその能力を見せたかった。冒頭のポーズから、私はそれを特別で独創的でユニークなものにしたかったのです。彼がそうであるように。だから実際に私はエモーショナルという面だけでなく、スキル面においても彼のファンに彼の新しい何か、そして変化を見せるためにそれぞれのパートに時間を割きました。曲としても異なるバージョンのようにしたかったのです。人々に新しさを感じてもらえるように」 (シェイリーン・ボーン)

ORGIN演技動画(英ユロスポ版)

 

【冒頭部】

プログラム冒頭の振付は、一連のトランジションとプログラムのスタイルに合った上半身と腕の一連の正確な動きによって強調されている音の増幅をベースにしている。

冒頭の独特なポーズは彼の原点、2007-2018シーズンのプログラム「火の鳥」を参考にしたのかもしれない。

シェイリーンの構想では、まるで大地から成長する樹木のように、地上に出現する「眠れる神」をイメージしている。従って、最初、彼の視線は下を向けられている。2度の激しい心臓の鼓動に似た、頭を2度激しく振る動作は、完全な目覚めを表している。
それから神は「触れる」ことによって人間の世界を知り、体験し始める。
そして神はこの世界に留まる。
「触れる」ことによって世界を体験するというアイデアは、プログラム全体を通して見られる正確な腕の動きから読み取ることが出来る。


振付のポーズ、方向転換を伴う動き、上半身と頭のアクセントと付けた動き、
Change to moving forward, waltz three turn LFO, crossed step RBO/LBI, change to moving forward, two progressive runs

最初のジャンプへの入りは主要音である風のざわめきに加わる新しい効果音と共に開始される。
入りの最後の振付は強いゴングの強拍によって強調され、極めて高難度のジャンプ、4Loに向けて観者を身構えさせる。ユヅルは豹のように優雅な入りからこのジャンプに跳ぶ。

Chasse LFI/RFO – Mohawk RFI – chasse LBI/RBO – Mohawk RBO – crossed step LFO/RFI – Choctaw LFI – 4Lo

このようにジャンプは音楽フレーズの最後、ゴングの音が轟き渡っている間に実施され、音と動作を同調させる見事な能力を見せている。

新しい音楽フレーズ、
waltz three turn LFO, outside spread eagleから2度目のゴングに合わせてbesti spread eagle に移行。「トントン」という効果音と共にWaltz three turn RFO, waltz three turn LBO, rocker RFO, crossed step RBO/LBI, wide step LBI/RBI.


遠方から聞こえる雷鳴を彷彿させる新しい音が 2本目のジャンプの入りの開始を知らせている:
crossover – chasse – crossover – three turn RBI – crossed step RFO – wide step LFI – Mohawk RFI – chasse LBI/RBO – Mohawk RBO – Mohawk RFI – backward power three turn RBO – 4S


ジャンプの入りと音楽フレーズのピークで実施されるジャンプが、音調の高まりを振付においても見せている。

この動きと音の相互作用によって、エレメントはリズムパターンの中に絶妙に組み込まれ、一層パワフルに鮮やかに見える。

この後のコンビネーションスピンへの移行中、激しさ増していく音調は、轟き渡る雷鳴によって、再び強調される。

Change to moving forward, wide step LFI/RFI, three turn RFI, キャメルスピンへのジャンプ、 FCCoSp

スピン難度の特性:

  1. キャメルスピンの高難度バリエーション(upper body upward);
  2. キャメルスピンの高難度バリエーション(doughnut);
    右足から左足にチェンジ
  3. シットスピンの高難度バリエーション (Broken Leg sit spin)
  4. アップライトスピンの高難度バリエーション (A-spin) (ロステレコム杯ではユヅルはプロシェンコへのオマージュとしてより難度の高いアップライトスピン(ビールマンスピン)を予定していた)。

全ての要件を満たしているため、レベル4のスピンと判断された。

基本ポジションの高難度バリエーションは全て音楽の小節に合っており、バリエーションの変わり目はアクセントによって強調されている(キャメルスピンにおける「トントン」という効果音とシットスピンにおける雷鳴の音)。

キャメルスピンの最初の高難度バリエーションにおける特徴的な両腕の動き(緩やかに上向きに上げ、その後、緩やかに下向きに下げる)が音調の変化を強調している。

「このプログラムは僕にとても重要なものです。ある意味で振付は音楽に生命を与えます。プログラムを愛しているほど、プログラム自体が変わっていきます」(羽生結弦)

 

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まだ半分も訳していませんが、分析を読みながら、埼玉ワールドのORIGINの動画を数秒刻みで見て、一つ一つの動作を確認していると、このプログラムの難度が如何に異次元かが分かります。
こうして秒単位、ミクロ単位で精密に構築されているからこそ、プログラム全体が途切れることのない一つのうねりとなり、一瞬たりとも目を離せない、見る者をこれほど引き込むパフォーマンスになるのでしょう。

ノービス時代の「火の鳥」も久しぶりに見ました!
この動画を初めて見た時にも思いましたが、
この頃から音楽表現のセンス、音楽と同調する能力が傑出しています。

 

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