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Sportlandiaより「ナショナルバイアス:中国/1」

マルティーナ・フランマルティーノさんの「ナショナルバイアス」シリーズ第3弾です。
中国ジャッジについて検証しています。

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2020年11月8日)

前回は全般的な表をご紹介しました。今回から個々のケースについて検証していきます。勿論、全ての試合をチェック時間はありませんから、選択したケースだけを検証します。まずは中国ジャッジから始めましょう。アルファベット順で行きます。前の記事でも投稿した下の表は、数人の中国ジャッジが採点した試合の一覧です。

 

チェン・ウェイグアン(Weiguang Chen)

最初の名前はオリンピック後、ナショナルバイアスによって処罰された「あの」チェン・ウェイグアンです。

2年間の資格停止、そして北京オリンピックでジャッジ席に座ることは出来ません。たった2年?表を確認し、平昌前は資格停止に値しなかったのか調べてみましょう。私の意見では2017年世界選手権から既に贔屓ジャッジだと見なすことの出来る理由が揃っていました。更にその後、2017年フィンランディア杯(ペア)、2017年中国杯、2017年スケートアメリカ、2018年四大陸選手権がありました。ISUはジャッジの誰かが露骨な贔屓採点を行っていることに気付くまでに一体何試合必要なのでしょうか?それとも、おそらくISUはジャッジ達がスケーター達に与えた得点をチェックしないのでしょうか?そうでなければ気付かない訳がありません。

2020年世界ジュニア選手権、鍵山優真のフリープログラム。カナダ・ジャッジのジェローム・ポーリンはSkating skillsで平均よりやや低い得点を出していますが、僅かに低い程度ですから、敢えて取り上げることもないでしょう。しかしながら、事実を言えば、ポーリンはほとんどいつもナショナルバイアスの許容範囲ギリギリの採点をしています。例外はオータムクラシック・インターナショナル2大会における女子の試合だけでした。このケースではおそらく得点のボタンを押し間違えたのでしょう。人為的ミスは理解出来ますが、懸念を起こさせます。このケースでは得点の桁が違いますから、すぐにミスだと分かりますが、ジャッジ達がある得点を出すつもりでボタンを押し間違え、しかし小さなミスで誰も気が付かなかったケースが幾つあるでしょうか?しかし、僅かな点差も結果を変えることはあるのです。ミスがこれほど簡単に起こり得るという事実は、ミスを防ぎ、確認するシステムが必要なことを示しています。

この場合、私がポーリンに何か言うとすれば不注意に対する批判だけですが(私もよくタイプミスをします。間違って別のキーを押してしまうことはよくあるのです。でも自分の書いたものを読み直し、ミスに気が付いて訂正出来ますし、私は誰かの競技人生を左右する立場でもないのです)、ISUの行為は深刻です。何故深刻なのか?ISUはミスを訂正しませんでした。つまり、ISUにとってミスの訂正は重要でないか、あるいはミスに気付いてさえいないということです。この2つの仮説のどちらが正しいのかは分かりませんが、どちらにしても、このエピソードが、試合の杜撰さを浮かび上がらせたのは事実です。私達は正しく採点が行われているのか確信が持てないのですから。監督する立場の人が、その役目を果たさなければ、ジャッジはやりたい放題です。2017年世界選手権後に既に資格停止に値したチェン・ウェイグアンのようなジャッジ達が。

しかも、チェンはこの試合の前に2016年中国杯で男子の採点をしています。金メダルは279.72点(83.41+196.31)のパトリック・チャンで、銀メダルは 278.54点(96.17+182.37)のジン・ボーヤンでした。しかし、チェンの採点ではジン・ボーヤンが278.54点(96.17+182.37)で金メダル、パトリック・チャンは272.91点(81.65+191.26)で銀メダルでした。ジンの得点は平均+9.31、チェンの得点は平均-6.81ですから、二選手間のバイアスは2つのプログラムを合わせて16.12点でした。金メダル争いとは全く無縁だった他の8選手に対するバイアスはたった8.02です。

ヘルシンキの男子の試合で何が起こったか見てみましょう。

アンナ・カントールは・・・注目に値します。遅かれ早かれ彼女の採点を調べる時間を見つけなければならないことを私は知っています。ダニエル・デルファ、何とか9.00以内に収めましたが、バイアスは明らかです。彼のことは既に取り上げましたが、今後、再び見直すことがあるかもしれません。ジェフ・ルカシクはカナダ・ジャッジの回で詳しく取り上げるつもりです。そしてチェンです。Skating Scoresを運営している方には本当に心から感謝しています。様々なタイプの比較を掲載してくれているおかげで、私は計算にかかる膨大な時間を節約することが出来ます。

それでは、チェンの採点では試合の結果がどう変わったか見てみましょう。

ショートプログラムではチェンはどの選手に対してもかなり寛大で、平均値以下だったのは、ハビエル・フェルナンデス、アレクサンダー・マヨロフ、ヨリック・ヘンドリックス、田中刑事、ジュリアン・ジージエ・イーだけでした(フリーに進出出来なかった選手も含めれば平均以下の選手は他にもいましたが、スクリーンショットに入り切りませんでした)。当然、ジン・ボーヤンに対しては一際寛大で平均+7.15でした。彼に次いで高目の得点を与えられたのはデニス・ヴァシリエフス(+5.59)とケヴィン・レイノルズ(+5.14)でした。彼の採点ではジンはショート4位ではなく3位でした。ショートとフリーの合計は、3位ではなく2位でした。私は最終グループの選手だけに的を絞りました。選手が一人増えるごとに膨大な時間が余分にかかるからです。正直、この作業は多大な労力を要するのです。

左は試合の実際の結果です。右に2つの結果を仮定してみました。上の表はチェンがショートとフリーで選手達に与えた得点の合計です。いずれにしても羽生が優勝でした。彼はこの時、文字通り『完璧』なフリーを滑りました。ジャッジの中には気が付かなかった人もいたようですが。しかし、チェンの評価ではジンは銅メダルではなく、銀メダルでした。それ以外の違いはパトリック・チャンとネイサン・チェンの5位と6位の順位が逆だったぐらいです。下の表はショートの実際の得点(つまりフリー滑走時の選手達のスタート得点)とチェンがフリーで与えた得点の合計です。そして・・・この場合でもジンは銀メダルでした。

得点の内訳を詳しく見ていきましょう。

チェンはショートプログラムでジンの冒頭のコンビネーションに+3を与えた唯一のジャッジでした。その他のジャッジは最高でも+2です。ジンのプログラムを見るまでもなく、この誤差はジャッジの裁量の許容範囲です。しかし、他の全てのエレメントに+2を与えています。一方、他のジャッジ達がジンに与えた得点は+3が1個、+2が14個、+1が28個、0が5個でした。おそらく、少なくとも3本目のスピンと4トゥループの加点は少々高過ぎると思います。演技構成点に注目すると、オーストラリア・ジャッジは明らかジンのプログラムがとても気に入ったようですが、他のジャッジ達は全員ずっと低い得点を与えています。

フリーで宇野は3ルッツで転倒しましたから、ジャッジのほぼ全員が‐3を付けています。1本目の4トゥループも完璧ではありませんでした。しかし、その他のエレメントに対して、チェンはステップシークエンスと4トゥループのコンビネーションの+2以外全て+1を与えています。他のジャッジ達の評価が+3(26個)、+2(48個)、+1(22個)、0(3個)だったことを考慮するとかなり低い評価です。また、宇野に対して最も厳しかったジャッジの中にはチェン・ウェイグアンよりは高い得点だったスペイン・ジャッジとカナダ・ジャッジがいますから、比較はあまり参考になりません。0はデルファ(1個)とルカシク(2個)でした。演技構成点ではチェンが最も厳しく、彼女とデルファだけが宇野に5位のPCSを与えました。

ジンに対してチェンは冒頭のルッツは+2にしました。おそらく、ショートで甘かったことを念頭に置いたのかもしれません。しかし、それ以外のほぼ全てのエレメントにも+2を与えています。ウクライナと韓国のジャッジだけが彼女より高い得点を与えましたが、彼らはいずれにしても宇野にジンよりも高い得点を与えています。つまり、彼らは上位10選手全員に対して平均より高い得点を与えていただけです(ただしウクライナ・ジャッジは羽生にだけ平均より少し低めの得点を与えていました)。演技構成点でもチェンは寛大でした。彼女より評価が高かったのはチェン同様、ジンのプログラムを2位にしたイギリス・ジャッジだけです。

フィンランディア杯のペアの試合におけるチェンのバイアス値合計は12.56でした。結果(チェン・ペン/ヤン・ジンが二コラ・デッラ・モニカ/マッテオ・グアリーゼを上回って優勝)に影響を与えなかったとはいえ、警告に値する数値です。デッラ・モニカ/グアリーゼはフリーで1位だったことに満足していましたが、チェンはペン/ジンに7.97点も上乗せし、その喜びすら奪うところでした。

男子シングルにおけるバイアスはショートが1.03、フリーが3.39、合計2.36ですから一見問題はありません。私はそれでも詳しく見ることにしました。そして幾つかの魅力的な数字を見つけたのです。この表で目立たないようにするにはどうすればいいですか?

こうすればいいのです:

中国選手は2人でした。1人目、タンシュ・リーは重要ではありません。昨季の四大陸選手権で21位、その前の大会では25位で、中国の3番手です。従ってメダルの可能性はありませんから、彼は犠牲にしてもいいでしょう。彼の得点を下げ、バイアス値をマイナスにすることで、ジンに与えたプラスと合わせた平均バイアスは、いずれにしても高いですが、高過ぎない数値に収まりました。そして、メダル争いに関係ない選手の得点も上げました。ローマン・サドフスキー、ケヴィン・レイノルズ、ダニエル・アルベルト・ナウリツに非常に高い得点を与えることで、中国選手以外の平均も上がり、バイアスは目立たなくなります。こうして、最終的なバイアス値は3.39に収まったのです。本当の意味でバイアスを見抜くには、全てのスコアを確認し、各国がどの選手を推しているかを理解しなければなりません。大会優勝者はいずれにしてもジンでしたが、ヴィンセント・ジョウとの点差は1.59、アダム・リッポンとの点差は2.72でした。チェンの採点ではジョウとの点差10.49、リッポンとの点差は19.22でした。彼の演技がライバル達よりずっと優れていることを、時間内に明確に示す必要があったからです。

彼女が次にジャッジを務めたのは中国杯でした。この大会については全ての計算はせず、より重要な数字だけを計算するに留めました。トータルだけを記載します。

チェンの評価によれば、ボーヤン・ジンは順位1を1つ上げて優勝、ハン・ヤンは順位を2つ上げて銅メダルでした。私の質問は、何故このような採点に誰も気が付かなかったのか、ということです。15.83のバイアスさえバレずに切り抜けられたことで、チェン・ウェイグアンは次の大会、スケートアメリカではますます大胆になり、彼女のバイアスはこれまでで最高の17.90に達しました。そしてオリンピックでは彼女パーソナルベスト25.56に達するのです。この数値がワールドレコードかどうかは分かりませんし、それを調べるには本当に膨大な時間を必要とします(それでも、私はいずれ調べてみようか思案しているほどなのです)。いずれにしても急ぐことではありません。スケートアメリカ、同じく男子シングルです。

ハン・ヤンは5位のままですが、ボーヤン・ジンは4位ではなく何と銀メダルまで浮上するところでした。グランプリファイナルではチェンはシニアとジュニア両方の男女の試合を採点しました。しかし、ファイナル進出の最後の切符を掴んだジンは結局欠場し、彼の代わりにジェイソン・ブラウンが出場しましたので、この大会でナショナルバイアスの問題はありませんでした。そして四大陸選手権でもジャッジ席に座りました。中国選手は3人。ジンは3.01点差で宇野昌磨を上回って優勝しましたが、チェンはジンに+18.39を加え、一方の宇野からは16.15を引きました。彼女の評価によればハン・ヤンとフー・ジャンは実際の順位より1つずつ上でした。

最後がオリンピックです。ISUがチェンを資格停止処分にした文書はこの記事に投稿しました: https://sportlandiamartina.wordpress.com/2020/10/25/di-giudici-giurie-e-giudizi-equi-14/

チェンの事案は多くの疑問の余地を残しました。チェンは何故もっと前に資格停止にならなかったのか?資格停止期間が何故たった2年なのか?このような状況が二度と繰り返されないために何をすべきか?

最後の疑問については、不正を働いたジャッジに対する処罰をより厳格すれば効果はあるかもしれません。資格剥奪を恐れてより誠実に採点するようになるかもしれませんし、問題のあるジャッジが資格剥奪になれば、他のジャッジ達は学習しないにしても、少なくともそのジャッジが害を与えることは二度とありません。ISU側がより注意深く監視し、可能なところでは技術ツールを導入する、というのも改善の手助けになるでしょう。

ダン・ファン(Dang Fan)

次のジャッジ、ダン・ファンに移りましょう。彼(それとも彼女?中国の名前は性別を判断するのが困難です)は男子シングル5試合、女子シングル2試合、ペア2試合のジャッジを務めています。彼の平均バイアスは5.47ですから、ギリギリ許容範囲内ですが、4試合において強い愛国心を示しました。最初のケース、2018年ヘルシンキ・グランプリでは、バイアス値9.06を持ってしても、ジンを5位から動かすことは出来ませんでした。2019年世界選手権では男子フリーのみを採点しました。彼の評価ではジンは宇野昌磨を上回りフリー4位でした。フリープログラム全体のバイアス値は6.19ですが、直接のライバル選手、フリー4位だった宇野に対して10.96、ジンから0.24点差で7位に留まったミハイル・コリヤダに対して11.80でした。ジンが何の助けも借りずに余裕で優勝出来たロンバルディア杯におけるバイアスは20.05で、許容範囲の倍以上の数値でした。最終結果が正しいことは、ここではさほど重要ではありません。ファンが結果に議論の余地がないB級来会でもこのような採点を行うのなら、もっと重要な大会ではどんな採点をするでしょうか?何故の資格停止処分にならなかったのでしょうか?

彼が最後にジャッジを務めたのは2020年四大陸選手権のペアの試合でした。ここでも、ウェンジン・スイ/ツォン・ハンがチェン・ペン/ヤン・ジンを大差で上回って優勝した結果には議論の余地はありませんが、彼の評価では後者とカーステン・ムーア=タワーズ/マイケル・マリナロの点差は更に開き、バイアスは10.04でした。

ビン・ハ(Bing Han)

ビン・ハンは今のところ1試合しか採点していませんが、「良い始まりは良い前兆」と言うように、既に彼を監視し始めることが出来ます。事実を言えば、2018年フランス国際はナショナルバイアス祭りでしたが、ハンはその筆頭でした。彼はジン・ボーヤンに平均より13.33も高い得点も与え、この数値はアンナ・カントールがダニエル・サモーヒンに与えた+10.31、ケヴィン・ローゼンシュタインが彼の同国選手、ネイサン・チェンとジェーソン・ブラウンに与えた+10.31(詳細は彼の番が来た時に検証します)、フィリップ・メリゲがロマン・ポンサールに与えた+8.36、アギタ・、アべレがデニス・ヴァシリエフスに与えた8.18を上回っていました。これに比べるとマリア・アバソワがアレクサンドル・サマリンとドミトリー・アリエフに与えた+6.22は控え目に見えます(いずれにしても、彼女についてもいずれ調べるつもりです)。バイアスが最も低かったのはリーガン・ファーセット(1.85ですが二コラ・ナドーはフリーに進みませんでしたので1プログラムだけの値です)と、マイナスのバイアスだった東悦子です(平均-2.86という厳しい得点で田中刑事を打ちのめしました)。この大会、ジンは9位でした。一方、ハンは田中を上回わらせて8位にしました。

 

フアン・フェン(Feng Huang)

フアン・フェンは平昌後に資格停止になったもう一人のジャッジです。彼の得点は判断の基準になりますから、私は特に興味を持っています。

ジャッジが公表されるようにになってから彼が自国の選手を採点した最初の大会は、2017年世界選手権のペアでした。スイ/ハンが優勝しましたが、この大会に出場していた中国選手は彼らだけではありませんでした。

シャオユー・ユー/ジャン・ハオはショート、フリー共に2位、勿論総合でも2位の評価で、彼らを2位と見なしたジャッジは当然フェンだけでした。一方、アリオナ・サフチェンコ/ブルーノ・マッソーは気に入らなかったようです。より妙な得点はスイ/ハンではなく、サフチェンコ/マッソーとユー/ジャンの得点ですので、こちらだけを見ることにします。大会にはロシアの有力なペア、エフゲニア・タラソワ/ウラジミール・モロゾフ(銅メダルを獲得)とクセニヤ・ストルボワ/ヒョードル・クリモフ(ショートのミスが響き5位に甘んじる)が出場していましたから、ロシア・ジャッジ、エレナ・フォミナの得点はあまり参考になりません。フォミナのバイアスは9.19でフェンの13.17よりは低いですが、決して控え目な数値ではありません。ここでは露骨な得点だけをマークしました。

目を引かれるGOEが幾つかありますが、フェンが本領を発揮したのは演技構成点です。旧採点方式6.0システムにおける芸術点の自由裁量性が戻ってきました:このプログラムがより大きな感動を伝えたのは明らかです。客観的な採点基準も存在しますが(評価は簡単ではありませんが、少なくとも適用してみるべきです)、オプショナルのようです。

2017年NHK杯ペア

結果は正しいですが、中国ジャッジが低い得点を与えた唯一のペアがロシア選手なのは偶然でしょうか。他国選手への得点平均を少しでも上げるために、彼が中国ペア、スイ/ハンに次いで最もプッシュしたのは、メダル争いに全く関係のない日本のペア、須藤澄玲/フランシス・ブードロー=オデ(前世界選手権17位、四大陸選手権10位)でした

2017年ジュニアグランプリファイナルは状況が違いました。こうした若いスケーター達は将来、重要なメダルを争うことになりますから、すぐに目に留まるよう、今から注目を集めることが重要です。出場したのはオーストラリア・ペア1組(エカテリーナ・アレクサンドフスカヤが昨年、亡くなったことを覚えています。自殺でした。もしスケートが何らかの形で彼女の鬱病の原因になっていたのなら、彼女を救うことは出来なかったのかと問いかけずにはいられません)、ロシア・ペア4組、中国ペア1組でした。

6組の内、5組の相対的順位は変わらず、フェンがほとんどのケースで他のジャッジ達と同じ評価基準を用いていたことを示しています。順位が変わったペアは一組だけで、総合4位だった中国ペアはフェンの評価では1位でした。既に14.52のナショナルバイアスを贈られています。

名古屋のグランプリファイナルでは、フェンはシニアのジャッジも務めました。この時のナショナルバイアスは18.64です。

彼はサフチェンコ/マッソーがよほど気に入らないのでしょう。今回も彼の評価によれば金メダルではなく銀メダルでした。スイ/ハンが金メダル、ユー/ジャンは6位ではなく銅メダルでした。このような前科にも拘わらず、フェンはオリンピックでジャッジを務めることを許されました。不正なジャッジを見つけたら、被害が更に増える前に即刻資格停止にすべきだとISUは何時になったら気が付くのでしょうか?おそらく彼らは見つけていない、それどころか、おそらくチェックすらしていないのでしょう。

オリンピック団体戦でフェンはペアのユー/ジャンとハン・ヤンの順位を2つ上げましたが、結果は変わりませんでした。点差はあまりにも大きく、中国はいずれにしても6位でフリーに進むことが出来ませんでした。その後、彼を資格停止処分にしたペアの試合がありました。全体のバイアス値はたった8.83で他の大会に比べるとかなり控え目です。この数値はどのように配分されたのでしょうか?

スイ/ハンに+9.83、銀メダルではなく金メダルでした。デュハメル/ラドフォードは-3.07、マイナスのバイアスですが銅メダルではなく銀メダルでした。一方、サフチェンコ/マッソーは-9.09で金メダルから銅メダルに落ちるところでした。ごめんなさい、アリオナ、4年後にまたチェレンジしてね、というところでしょうか?私はアリオナが(ブルーノと共に)長い年月を経てようやく金メダルを掴んだ瞬間感動しましたが、私の感動は評価基準にはなりません。重要なのは選手達が氷上で実施した内容です。詳細を見る前に、2組のペア、サフチェンコ/マッソーとスイ/ハンだけに注目すると、フェンの中国選手に対するバイアスは何と18.92に達します。フェンは既にユー/ジャンを8位から7位にするために後押しし(彼らとザビアコ/エンベルトのバイアスは11.56)、現実ではショート17位で、ギリギリでフリーに進出出来なかったペン/ジンをフリーに進める15位の順位を与えていました。それでは、詳細を見ましょう(これを書いたのは私でなくISUです)。ISUがチェンの資格停止処分を伝える公式文書の一部です。

数字を明確にしましょう。これは試合のプロトコルです。フアン・フェンはジャッジ2です。

高い得点は出していません。そうですね?スイ/ハンは素晴らしいプログラムを演じました。これについては議論の余地はありません。しかしGOEは+3だけ、ほとんど10点満点の演技構成点?

タラソワ/モロゾフに対する+3は2個だけでした(他のジャッジは3個以上)。特に、特定のプログラムに夢中になると我を忘れて満点ボタンだけを推し続ける傾向のあるイタリア・ジャッジ、ヴァルター・トイゴの採点が際立ちます。演技構成点では9.00未満の項目が2つあります。彼以外ではドイツ・ジャッジ(偶然だと思いますか)のエルケ・トライツが1項目で9.00未満の得点を出しました。他のジャッジ達は全員9.00以上です。

デュハメル/ラドフォードに対しては+3はゼロ。確かにフランスとイスラエルのジャッジも+3はゼロでしたが、それでもフェンよりは高い得点でした。演技構成点でも最も厳しかったイスラエル・ジャッジに次いで厳格でした。

マッソーのサルコウはダブルになったため、このペアの順位は低くなりました。しかし、さすがのフェンも2つのエレメントに対しては+3を与えざるを得ませんでした(見事に実施されたサフチェンコのツイストリフトに+3を与えなかったら、即刻クビです)。しかし、フェンの評価は彼より僅かに低かったフランス・ジャッジに次いで厳しい評価でした。何故フランス・ジャッジなのか?私が疑り深いのかもしれませんが、完璧ではなかったサフチェンコ/マッソーは76.59点でショートは4位に留まりました。中国ジャッジの評価では73.20で7位、カナダ・ジャッジは75.80、ハンガリー・ジャッジは76.70でした。フランス・ジャッジは73.70で6位でした。選手達は金メダルだけでなく、他の色のメダルも争っていました。フランス・ジャッジはヴァネッサ・ジェームス/モルガン・シプレに76.60点を与えてショート3位にしました。実際の彼らの順位は6位です。

また、フェンはユー/ジャンに+3を4個も与えた唯一のジャッジでした。コンセプトを明確にするために補足すると、フェンはタラソワ/モロゾフが2個、デュハメル/ラドフォードがゼロ、サフチェンコ/マッソーが2個だった+3が、ユー/ジャンには4個値すると判断したのです。他のジャッジ達の+3を合計するとユー/ジャンは17個、タラソワ/モロゾフは36個、デュハメル/ラドフォードは14個、サフチェンコ/マッソーは17個、合計67個。同じ割合でした。

ジェームス/シプレに最も厳しかったジャッジはイタリアのトイゴでした。フランスのペアがマルケイ/ホタレック、デッラ・モニカ/グアリーゼと順位を争っていたことを留意しなければなりません。低めの得点ですが、露骨な下げ採点ではありません。中国ペアにとって危険なライバルではないからです。

ISUは考慮の対象にしませんでしたが、データを完全にするためペン/ジンも見ましょう。冒頭のトゥループが転倒しましたので自動的に-3です。その他は+3が1個(フィンランド・ジャッジだけが同じ評価でした)、そして大量の+2。これほど安定して高得点を与えたジャッジは誰もいませんでした(ただしオーストラリア・ジャッジが近い評価でしたが)。フリーを見ましょう。

フリーではより比較し易いSkating Scoresのプロトコルを使います。最初は全ての数字を見る忍耐が自分にあるか試すために公式プロトコルを使いましたが、さすがに疲れました。

サフチェンコ/マッソーをフリーで1位にしなかったジャッジは中国ジャッジだけでした。フェンの評価は+1が1個、+3は僅か3個(採点が辛かった他のジャッジは、驚くことではありませんがロシアが4個、アメリカは11個)で、プロトコルの大部分が+2でした。演技構成点も全ての項目について平均以下でした。デュハメル/ラドフォードに対してはサフチェンコ/マッソーほど厳しくはありませんでしたが、3位の評価でした。何故なら、2つのエレメントが完璧ではなかったにも拘らず、彼にとってはスイ/ハンがベストだったからです。

冒頭の3つ以外全てのエレメントに+3。どんなミスだったかよく覚えていませんし、動画を見つけられませんでしたが、最初のコンビネーションと3サルコウはGOEマイナスを与えざるを得ない出来栄えだったと記憶しています。演技構成点も見事です。Performanceで完璧な演技だったサフチェンコ/マッソー(9.50)より高い9.75を出しています。またタラソワ/モロゾフに最も低い得点を出したジャッジの一人でした。他の選手のプロトコルまで触れませんが、フェンがどのように採点したかは明らかでした。彼には2年間の資格停止処分が下されました。資格停止で資格剥奪ではありません。実際、彼は先シーズンから再びジャッジ席に座れるようになりました。3大会(ネーベルホルン杯2019、アジアフィギュア杯2019、四大陸選手権2020)で私の調査対象ではないアイスダンスの試合のジャッジを務めました。これらの大会では非常に低いナショナルバイアス値でしたが、中国には現在有力なアイスダンス選手がいないことの事実です。ネーベルホルン杯でのみペアのジャッジを務めました。この時のハイアスは合計6.74でした。

不利にされたのはリョム/キムで、フェンの評価では表彰台の3位のポストをタン/ヤンに譲り、幾つか順位を落とすところでした(事実を言えば他の選手達は全員、平均より高い得点を貰いましたが、特定の選手の得点を下げるのと、他の全員の選手の得点を上げるのでは、得られる結果は同じです)。(中国と韓国の)2組のペアの間のバイアスが13.26だったのは偶然でしょうか?彼の前科を考慮して私ならフェンを特に注意深く監視しますが、残念ながら私はISUの人間ではありません。

 

ヘイラン・ジャン(Hailan Jiang)

ヘイラン・ジャンは主に女子の試合でジャッジを務めました。近年、中国が重要なメダルを獲得していないカテゴリーです。中国杯は参考にはなりません。全員中国人ですから、当然中国の選手の一人が優勝しました。正確に言うとホンギ・チェンが優勝するのは当然でした。ある程度のレベルの国際大会に出場した経験のある唯一の選手だったからです。しかし、先シーズンの中国杯では9位、ロステレコム杯では8位、四大陸選手権では11位、2019年世界選手権では19位でした。つまりいいスケーターですが、グランプリ大会でメダル、ましてや金メダルを狙える選手ではありません。2017-2018年シーズンにおける中国のエースはシァンニン・リーでその前シーズンの世界選手権で14位でした。四大陸選手権はオリンピックの少し前に開催されました。全体の平均バイアスは7.32ですが、ハヌル・キムと比較すると21.59、アンジェラ・ワンと比較すると17.99のバイアスでした。

結果は?10位ではなく8位になるところでした。

オリンピック団体戦ではショートでのみジャッジを務め、3.82のナショナルバイアスでしたが、結果は変わりませんでした。女子の試合をみましょう。

ジャンの評価ではリーは3つ上の順位でした。

 

ホイ・リュウ(Hui Liu)

ホイ・リュウがジャッジを務めた試合はあまり多くはありませんが、その僅かな機会で彼は独自の採点スタイルをアピールしました。2017年のタリントロフィーにおけるバイアスはショートプログラムだけで4.89でした。詳しくは触れませんが、この大会に出場していたツーチュワン・チャオはジャッジパネル全体の評価であるショート16位ではなく10位の評価でした。ナショナルバイアスはショート3.67、フリー9.94で、合計13.61でした。この時の同国スケーターはユンダ・ルーで、彼の評価では両方19位ではなく、18位と15位でした。ここでは合計だけを見ます。全体の順位を計算するには複数のスケーターをチェックしなければなりませんので、時間がかかります。ルーのフリーのプロトコルだけを見ます。

マイナスのGOEは1つだけで、3つのエレメントがプラス評価です。他のジャッジ達はずっと厳格でした。演技構成点に関しては数字が全てを物語っていますので、何も説明する必要はありません。

2018年ジュニアグランプリ、カナダ大会のペアのショートプログラムにおけるタン/ヤン(+6.70)とワン/フェン(+9.29)に対する彼のバイアスは7.86でした。しかし、フリーにおけるバイアスは-2.04で、他のほぼ全選手に与えた非常に高い得点に比べてタン/ヤンに対しては平均よりやや低め、そしてワン/フェンへのバイアスも控え目でした。セーヤン・ジャンが出場した女子の試合におけるバイアスはショートプログラムでは僅か0.31ですから、無いも同然でした。しかし、フリーでは11.50という高い数値でした。先シーズンのグランプリ、ロシア大会におけるペアのリウ/ワンに対するバイアスはショート4.93、フリー9.68で合計14.61、9位ではなく8位でした。この場合、点差が大きかったため順位に及ぼした影響は僅かですが、選手達が僅差で並んでいる場合、このような採点が順位に与える効果は大きくなります。ジュニアグランプリ、バルティック杯も同じ状況でした、リウ/ワンに対するバイアスは11.72でしたが、12位が11位になっただけでした。

 

シーシャ・リウ(Xixia Liu)

シーシャ・リウで本記事を締めくくりたいと思います。本当はこんなに長々と書くつもりはなかったのですが、何人かのジャッジに執筆欲を掻き立てられたのです。リウは一試合、2017年中国杯の女子の試合だけでした(以前、書いたようにチェレンジャーシリーズより小規模な試合は考察対象にしていません)。出場した中国選手は2人、シァンニン・リーとツーチュワン・チャオでした。彼女達は8位と11位で試合を終えました。総合バイアスは10.63だったにも拘らず、リウは自国選手の順位を上げることが出来ませんでした。

以前、ジャッジ達のナショナルバイアス・ランキングを作成しましたので、今日ご紹介したジャッジがランキングのどの順位に位置しているのかを示した画像を再投稿します。唯一含まれていないジャッジは2枚目の画像の58行目に入っているダン・ファン(平均バイアス5.47)だけです。

☆筆者プロフィール☆
マルティーナ・フランマルティーノ
ミラノ出身。
書店経営者、雑誌記者/編集者、書評家、ノンフィクション作家
雑誌等で既に700本余りの記事を執筆

ブログ
書評:Librolandia
スポーツ評論:Sportlandia

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☆実はこの記事、大分前にほとんど翻訳し終わっていたのですが、マッシミリアーノさんの激熱ポッドキャストが配信され、羽生君の全日本出場が確定し、そして全日本が始まり、ずっと後回しになっていた。全日本関係の記事の翻訳が一段落し、ようやく最後の数行を訳して投稿することが出来ました。

このバイアスシリーズ、「ナショナルバイアス:中国/2」、「ロシア/1」「ロシア/2」・・・という具合に延々と続いていき、膨大な量のデータが収集・検証されていきます。
まだ最初の方しか読めていませんが、ロシアの検証を見ると、ロシアジャッジはロシア女子に非常に寛大な得点を与える一方で彼女達の直接のライバルである紀平梨花ちゃんの得点を下げているのが分かります。
中国ジャッジの自国の3番手は切り捨て、メダル争いに関係ない他国選手に無駄に高い得点を与えて、バイアスを目立たなくする、というのは意図的にやっているのだとしたら、かなり狡猾で悪質です。

マルティーナさんはこのシリーズの他にソニア・ビアンケッティの著書「氷の亀裂~フィギュアスケートの舞台裏」を始めとする過去の書籍や雑誌などの文献を元にフィギュアスケートにおける不正採点とスキャンダルの歴史を振り返る「ジャッジ、ジャッジ団、公正なジャッジング」(確か14回分あったはず)を書き終え、現在は2002年ソルトレークシティ五輪における不正ジャッジのカラクリを暴いたジャン・ジャクソンの2005年の著書「On Edge~On Edge. Backroom dealing, cocktail scheming, triple Axels, and how top skaters get screwed」を元に連載記事を書いています(既に第5回)。

どの記事でも個人的な意見や憶測は極力挟まず、出版物など信頼性のある文献を引用しつつ、競技プロトコルなどの公式データの客観的分析に徹底しており、正確で冷静な、非常に優れた資料になっています。ただ、あまりにも膨大な量で全部翻訳するのは無理なので、どの記事を訳そうか思い悩んでいるところです。

マルティーナさんの作業ペースはもはや超人レベルです。膨大な量のデータを集め、計算・検証し、グラフと表を作成し、そこから導き出された結果の考察記事を執筆するという作業を一人でこなしています。どういう時間配分で作業しているのか、そして一体いつ寝ているのか?

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち