Sportlandiaより「卒業論文」

マルティーナさんも羽生君の卒論について記事を書いていました。

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著
(2021年4月29日)

羽生結弦の卒業論文の要約が彼の母校、早稲田大学のサイトで公開された。私が日本語が分からないことにもどかしさを覚えるのはこれで何度目だろうか。論文翻訳における日本の仕組みは分からないが、大学、または羽生自身が論文全文の英語版を公開してくれることを願っている(イタリア語版が出る希望はないが)。そうしている間にもツイッター上ではコメントが増え続けており、私はそれらを読んで言葉が出なくなった。

 

イントロダクションの翻訳は存在し、訳者によれば100%正確ではないということだが、絶対に読む価値がある。この最初の章ではカメラと身体の数か所に固定されたセンサーを使うことにより、人体の動きを記録するために使用されるモーションキャプチャについて書かれている。羽生は人間の目の限界を超えるという考えの下、2007年に実施されたこの種の分析を引用している。技術の飛躍的な進歩により、当時は不可能だったことが可能になり、アイスリンクのような場所で実施される迅速で複雑な動きさえ分析出来るようになった。当然のことだが、彼のような頭脳を持った人間にだけ可能なことだと私は思っているが、彼は自分のように競技の知識やスキルを持たないん人間でも彼の研究内容を理解し、応用出来る方法を見つけた。彼を指導した西村昭治教授が羽生の論文を絶賛し、大学が威信ある賞を彼に授与したという事実も重要である。

 

論文を読んだ人によれば、羽生はループ、フリップ、アクセルの1回転ジャンプと3回転ジャンプを分析し、プレローテーション、踏切のエッジ、ブレード全体で踏み切るトゥジャンプなどの細部に焦点を当てた、これらは全てスケーターの重心とエッジの傾斜を評価することによりAIで識別可能なことである。羽生はあらゆるタイトルを勝ち取っているが、この論文はおそらく彼がフィギュアスケートのために行った最も重要なことなのではないだろうか。間違いなく、すぐに何かが変わることはないし、この研究が羽生の競技活動に直接的な影響を与えることはないだろう。ただ、スケーター達が実施した内容と方法に完全に一致した得点を受け取れる公正な試合を行うために、誤審が避けられない人間の判定に頼る代わりに、多くの局面において客観的な技術を導入することが可能であることにISUが気付くことを期待するしかない。

数年前、シェイリーン・ボーンは自身が振り付けたプログラム、羽生がフリープログラムの歴史的世界最高得点を樹立した「ホープ&レガシー」についてこう語っている。

このプログラムは結弦そのものです。結弦がホープ、結弦がレガシーなのです。羽生結弦は常に前進し、決して諦めず、信念を持っているアスリート・・・彼は若いスケーター達に尊敬され、自らの遺産を次世代へ引き継ぐ人物なのです。彼の名前は歴史に刻まれ、伝説になると私は信じています。

結弦は何年も前から既にレジェンドであり、彼の遺産は日々増え続けてる。彼の物語と彼が他者に与えるものは余りにも膨大で、言葉で表現するには大き過ぎる。

ありがとうございました Arigatou gozaimashita

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☆論文の英訳版は既に海外ファンの間で非公開で共有されているようです。

ただ、どの言語でも複数の意味合いを持つ曖昧な言い回しや言葉は存在しますから、訳者の解釈によって意味の違う訳文になってしまうこともあり、特に原作者からフィードバックを受け取れない人が訳した場合、原文の微妙なニュアンスが正しく伝わらなかったり、作者の意図するところとは異なるニュアンスに訳されてしまうリスクは常に付きまといます。

五輪二連覇のGOATと呼ばれるスケーターが自ら実験台となって多くの可能性を示した貴重な研究。フィギュアスケート界に風穴を開けることが出来るかもしれない、ひいてはスポーツ界全体の未来に繋がる画期的な論文です。

ロシアメディアが部分的に切り取って「エテリ批判」と報じたようですが、全文を読めば、誰か、または何かを批判することを意図した論文でないことは明らかです。

妙な取り上げられ方をしない為にも、彼自身が確認し、許可を出したオフィシャル英語版が公開されるといいですね。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu