Get a site

Sportlandiaより「基礎点」

マルティーナ・フランマルティーノさんの分析シリーズ第6弾

今回は基礎点に関する考察です。

 

原文>>

 

マルティーナ・フランマルティーノ著
2020年8月29日

 

私は複数のかなり長いファイルに取り組んでおり(何故なら1度に1ファイルでは私には不十分だからです)、いつ完成するかは不明です。

アイデアは沢山あります。例えば羽生の試合で採点したことのない何人かのジャッジのナショナルバイアスを調べるとか。

確かに私は彼に特別な注意を払っていますが、不正はどんなレベルの大会でも誰に対しても行われるべきではありません。

グランプリファイナルでもジュニアグランプリでもチェレンジャーシリーズでも、1位の選手でも5位、あるいはもっと下位の選手であっても。

膨大なデータ(既に収集済みでまだ解析していないものと、現在収集中のものがあります)の処理を開始する前に、私がまだ存在していることを思い出してもらうために、短い文章を投稿します。

「公開ボタン」を押す前に追加されたコメント:これが短い文章?

私は結局、昨シーズンの全ての試合のプロトコルを見る羽目になりました。

というのも、私は書き始めると、あれもこれも追加したくなり、止まらなくなってしまうのです。

私の辞書に「短い文章」という言葉は存在しません・・・

私がしばらく音信不通になったら・・・つまり、そういうことです。

2017-2018年シーズンから2018-2019年シーズンにかけて、ISUはエレメントの基礎点を変更しました。

得点のウエイトが技術点に偏り過ぎているので、エレメントの基礎点を下げ、プログラムの均衡を図るというのが名目上の理由でした。

私は演技構成点の係数を引き上げる方が簡単だと思いましたが、数学についてあまり知識のない一個人の意見に過ぎません。

そしてこの変更は機能したでしょうか?

現在、私が処理中の15万のデータの中には個々のプログラムのTESに関するデータも含まれています。

下の表にTESが達成可能なPCS最高点(満点)である100点を超えた全てのフリープログラムをリストアップしました。

実際の表はTES90点以上のプログラムまで含まれていますので、もっと長いですが、ここでは一部をお見せします(今回は表の残りの列については説明しません。私はこの表についてもっと熟考しなければなりません)。
2010-2011年シーズン以降のオリンピック、世界選手権(シニアとジュニア)、グランプリシリーズとファイナル(シニアとジュニア)、チェレンジャーシリーズ、国別対抗戦においてTES100点を超えた全てのフリープログラムです(2010年以前にTES100点を超えたことはなかったはずです)。

基礎点変更後の2シーズンのプログラムは黄色で強調されています。

確かに、白い行の方が多いですが、旧ルールの大会は2013-2014年シーズン以降5シーズンのプログラム、新ルールは2シーズンのみで、2020年世界選手権は開催されなかったことも考慮しなければなりません。

つまり、基礎点の変更はTESの低下に繋がらなかったと言えるでしょう。しかもTES最高得点は昨シーズンのプログラムの得点です。

私の意見では基礎点の低下より、男子フリープログラムのジャンプ要素が1つ減ったことの方が得点の合計に影響を与えたと思います。

それなのに何故得点が下がらないのか?

それは基礎点が下がったけれど、GOEが上がったからです。
これは何も新しい発見ではありません。

私はただ現在の状況を分析したに過ぎません。これ以上何か言う必要はないでしょう。

 

2アクセル以上のジャンプについて、基礎点変更前と変更後のGOE満点と想定した場合の得点の差を調べました。

例えば2アクセルは2018-2019年シーズン以降0.15点上昇しました。点が下がったのは3トゥループと3サルコウだけです。

3ループは0.15点、3フリップは0.55点上昇という具合に、上昇率は明らかに不規則です。

上昇率が最も高かったのは4フリップの+1.20です。数年前にブライアン・オーサーが羽生結弦が4フリップをやることはないだろうと発言したことがあるのは単なる偶然でしょうか?

実際、羽生は試合でも練習でも(少なくとも公の場では)4フリップに挑戦したことはありません。ファンタジーオンアイスで挑戦したというファンの証言はありますが、動画が出ない限り、ただの噂に過ぎません。

一方、彼が4アクセルに挑戦するのは皆が見ています。勿論、試合で実施されるまで公認はされませんが。

彼が試合で成功されたことのある4回転ジャンプの中で上昇率が最も低かったのは4ループで、+0.75でした。より多くの選手が跳んでいることから、明らかに4ループより簡単と思われる4トゥループ(4回転ジャンプに「簡単」という表現を使っていいのか分かりませんが)より低い上昇率でした。

これに関しても、羽生が4ループを頻繁に跳び、ネイサン・チェンは2017年USクラシックインターナショナルでの1度だけで、実施するのが怖いジャンプと言う理由で以降、プログラムに入れていないことは単なる偶然に過ぎないのでしょう。
彼らの出すスピードや転倒時の衝撃を考慮すると、特定のジャンプを躊躇する彼らの気持ちは理解出来ます。私の意見では彼らのやっていることは既に狂気の沙汰ですが、その彼らが跳ぶのが怖いと言うのですから、相当難しいジャンプなのでしょう。

いずれにしてもデータを見ると考えずにはいられません。
そして極めつけが4アクセルです。

上昇率を上の表で確認して下さい。これはもうジョークの域です。

未だかつて誰も成功させたことのないジャンプの上昇率がより低いなどと言うことがあり得ますか?

4アクセルの上昇率はたった+0.15、これは2アクセルの上昇率と同じです。

つまり2回転と4回転のアクセルの難度は同等だと推測しなければなりません。

数字遊びを始めると、私は時間を忘れて没頭します。

ジャンプの難易度はトゥループ、サルコウ、ループ、フリップ、ルッツ、アクセルの順になっています。ルッツが他のジャンプより難しいのは、入りのムーブメントと逆方向に回転しなければならないからです。

ルッツの難しさについては皆同意しています。エッジについても掘り下げたいと思っていますが、今の私にはそこまで研究するための十分な時間がないので別の機会に触れたいと思います。

ルッツより更に難しいのが半回転多いアクセルです。その特殊な踏切を含む一連の特徴によって、より実施が難しいジャンプとなっています。

それでは、これらの2種類のジャンプ、ルッツとアクセルの基礎点+GOEの点差を比較してみましょう。

3ルッツは2ルッツより難度が高く、その点差は1.80です。
3アクセルは3ルッツより断然難しく、2つのジャンプの間には3.15もの点差があります。

しかし4アクセルはそれほど難しくないのでしょうか?
4ルッツとの点差は僅か1.50点です。1.50点のためにリスクを冒す価値があるでしょうか?

未だ成功者がいないのは、単なる偶然でしょう。

各ジャンプの満点を確認しましたので、今度は基礎点に移ります。

回転数が上がるとジャンプの難度も上がる、そうですね?

2トゥループは1トゥループより難しく、3トゥループは2トゥループより難しい。

難度の上昇に伴って、基礎点も上昇しなければなりません。
実際はどうか見てみましょう・・・

小数点以下の桁数を含めるために数桁は概算しなければなりませんでした。

表を作成した人がこのような計算をしなかったことは明白ですが、これらの計算は事後的に、奇妙な傾向を示しました。

1回転ジャンプが2回転ジャンプになると、多少の差はあれど、どのジャンプも基礎点は3倍以上になっています。

2回転ジャンプから3回転ジャンプへの上昇率もかなり高いです。

ところがその後、この上昇率はどんどん下がり、最も高難度のジャンプである4アクセルの3アクセルと比較した上昇率は全ジャンプ中最低で、その点差はごく僅かです。

ドミトリー・アリエフのコーチ、エフゲニー・ルカヴィツィンが最近、4アクセルについて話しています:

 

しかし、例えば4アクセルがたった12.5点にしか値しない・・・これではどのような進化、このジャンプを学ぶためのどのようなモチベーションがあるというのか?

これは宇宙的な難度のエレメントで、挑戦できる選手はごく僅かだ。特に羽生結弦が挑戦しており、上手く行くことを願っているが、リスクを冒してこのエレメントに挑戦する見返りがたった12.5点だということは正当化されない。それでも結弦は己の道を邁進する。

彼は自分自身と闘っており、ルールがどうであれ、フィギュアスケートを進化させている。彼は自分自身に挑戦するために前進していくだろう。

インタビュー原文はこちら>>

 

ルカヴィツィンは「q」のルール(この件については私もいずれ取り上げたいと思っています)とルッツの難度についても言及しています(理論的に正しいことを言っていますが、プレローテーションとエッジの問題についてはさらっとスルーしています)。

アクセル以外でこのルール変更で蔑ろにされたのがループです。

ISUのフィギュアスケート技術委員長であるファビオ・ビアンケッティもこの点には同意しており、数か月前、確かに基礎点の変更が行われました。

ビアンケッティはこう言っています:

「シーズン中の調査で3回転のルッツとフリップは踏み切るまでの動きを含めた技術的な難度が同じだと分かった。(中略)統計的に見ると4回転ループがおそらく最も難しいと思われるが、選手の体による部分が大きいのでこれらを同じ基礎点にした」

 

赤線で囲った部分を見て下さい。3ルッツと3フリップの難度が同じ?

私はテクニカルではありかせんが、無知なりに理解しようと努力しました。
疑問のある方はこの動画をご覧になることをお勧めします:

うーん・・・

それでは後半に移りましょう。統計によれば、ループが最も難しい4回転ジャンプのようです。

何故か?

それはエッジで踏み切るジャンプだからです。

ジャンプの回転数が増えれば増えるほど、スケーターはより高く、より長く空中に留まっていなければなりません。

コンマ秒レベルですが、確かに差はあります。

良しも悪しくも3回転までならより強力な選手達には問題ありませんが、4回転ジャンプは人体の可能性の限界に近いことです。

トゥジャンプの場合、トゥを突く足で氷を押すことにより、回転する力を得ますが、エッジで踏み切るジャンプではこの力を得ることは出来ません。

ジャンプは完璧なタイミングで実施されなければ成功せず、そうでないと空中で開いてしまうか、転倒してしまいます。

誰かさんは既に4ループを失敗して足首を負傷しています。

確かに、彼は前年に4ルッツでも足首を痛めましたが、この時は熱がありましたから、彼の身体がこのような負荷に耐えられる状態ではなかった可能性があります。

ループの時はこのジャンプを着氷するまで彼は健康でした。

このために、4ループに挑戦する選手がこれほど少ないのではないでしょうか?

何故ならリスクが高く、僅かなズレがミスに繋がるジャンプだからです。

ビアンケッティ氏がどの統計を見たのかは分かりませんが、良く出来た統計だったことは間違いありません。しかし、この基礎点変更は間もなく廃止されましたから、この統計は消失してしまったのでしょう。おそらくコロナウイルスによって破壊されたのかもしれません。ご周知のように、ことフィギュアスケートにおいては非常に偏向的で、特定のことは攻撃するのに他のことはスルーです。

従って、最も主観に左右される「q」に関する変更が残り、ジャンプの基礎点のバランスに関する変更が消滅したのは、ジャンプは選手の身体次第で、ループがルッツより流通していないのは単なる偶然に過ぎないのでしょう。

この記事の執筆に当初の予定よりずっと多くの時間を要したと書きましたが、それは途中で4回転ジャンプの統計を出すことにしたからです。

ジャンプのクオリティは考慮しませんでした。
GOE+/-、転倒、回転不足またはダウングレードまで見ていたら、キリがありません。

各種類の4回転ジャンプを何人の選手が何度挑戦したかを調べることにしました。

成功の可否に関係なく、彼らがどのジャンプを集中的に跳んでいるかを見ました。

調査の対象となった試合はチャレンジャーシリーズ、グランプリ(ジュニアとシニア)、欧州選手権、四大陸選手権、そして昨シーズンの世界ジュニア選手権です。

女子選手は赤色、3種類以上の4回転ジャンプを実施する多種クワドジャンパーは斜体で区別しました。表の最後に合計がまとめられています。

最も多く跳ばれてたジャンプがトゥループで、2番目のサルコウを大差で引き離していることは、驚くことではありません。

しかし、サルコウの後、他のジャンプを跳んでいるスケーターの数は俄然少なくなります(合計73人。562は先シーズンに実施された4回転ジャンプの数です)。

トゥループ、サルコウ以外で最も多く跳ばれているのがルッツ、そしてフリップ、ほとんど誰も跳んでいないループ(他のジャンプとの違いは女子で跳んでいる選手が誰もいないことです)と続きます。

私にはループが1番難しいジャンプに見えますし、難度に対して基礎点が低いように思えますが、私はテクニカルではありませんから、きっと何も分かっていないのでしょう。

従って、統計にも拘わらず、ループの基礎点を低いままにしておきましょう、ということなのでしょう。この理不尽の被害を受けるのはたった4人です。それどころか、試合で初めて4ループに挑戦したクラスノジョンはその後、フリップに変えましたから実質3人です。

いずれにしてもループが跳ばれた例はごく僅かです。

僅かな人間にしかダメージを与えない理不尽は、真の理不尽ではない、そうでしょう?

全てを完璧にするのは不可能です。

いずれにしても、もしビアンケッティ氏に統計を再検討する気があるなら、データはここにあります。もし必要なら、個々のジャンプをスケーターがどの試合で実施したかも示すことが出来ます。

ここではまとめを掲載しましたが、この表を作成するために集めた全てのデータは保存してあります。

一息つく前にもう一度GOEの話に戻りましょう。以前のルールではGOEの係数はグループ別に分かれていました。3アクセルとルッツまでの4回転ジャンプはGOE満点が3点、2アクセルとルッツまでの3回転ジャンプのGOE満点は2.1でした。このことは、アクセルだけは1回転上のカテゴリーに属していたことを証明しています。
現在のルールではGOEはそのジャンプの基礎点次第です。
基礎点の10%がそのジャンプの+1/-1になります。例えば、4トゥループは基礎点が9.95ですから、+1なら0.95、+2なら1.90が加算されます。

難度の高いジャンプになればなるほど、加算されるGOEも高くという理屈です。

試合で適用せず、この表だけを見ていると全てが完璧に見えました。

しかし得点表は試合で適用されなければなりません。

コンビネーションジャンプはどうなるのでしょうか?

コンビネーションの基礎点は単独ジャンプより高いですが、GOEはそうではありません。
もし、ジャンプをプログラム後半に跳んだら基礎点は10%高くなりますよね。
つまり、より実施が難しくなるからです。
ところが難度が上がってもGOEは上がりません。
NHK杯で羽生はフリープログラムの後半で3A+1Eu+3Sを実施しました。
つまり架空のコンビネーションではなく、試合で実際に見たジャンプ要素について話しています。

確かに基礎点は高いですが、GOEは・・・?
その理由はエレメント全体ではなく、ファーストジャンプの3アクセルだけをベースに計算されるからです。

プログラム冒頭に実施される4ルッツと比較してみました。

基礎点の差は2.58ですが、完璧に実施された3アクセルのコンビネーションから得られる最高点は、完璧だった4ルッツより僅か0.83点高いだけです。

このような効果は意図的なものなのか、取るに足らないことなのか(しかし、これらの数値はスケーターのキャリアを左右するのです)、あるいはISUが得点表を作成した際、何かを考慮し忘れたのか?

 

***************

☆平昌五輪シーズン後の基礎点変更が発表された時、私も4Fの扱いがでした。

他のジャンプは基礎点の高いジャンプほど下げ幅が大きくなっているのに、4Fだけは4Loより下げ幅が少なく、結果として4Loと4Fの点差が開きました。

しかも、当時からミーシン大先生など複数の専門家が「4回転ではおそらくループが最も難しい」という見解を示していたにも拘わらず、です。

そして、マルティーナさんのこの分析を読んで、得点設定の矛盾と謎が他にも色々あることがよく分かりました。

 

今春、ループの難しさが認められ、フリップ、ルッツと基礎点が同じになり、「ISUがやっと正しいことをした!」と思っていたら、1か月ほどであっさり却下されました・・・

しかし、一番納得が行かないのは、4アクセルの基礎点です。

3回転までのジャンプを見ると、アクセルだけは回転数が1つ上のカテゴリーに近い基礎点に設定されています。

サイエンスファンタジーのジャンプと言われている前人未到のジャンプ、4アクセルが何故これほど過小評価なのか?

アンジェロさんも4アクセルは5回転の仲間だと言っています。

ポッドキャストKiss&Cry II第1回(その1)「ネイサン・チェンと羽生結弦」

余りにもリスクが高い故、この危険なジャンプに挑戦する旨味を無くして、選手達の健康を守ろうというISUの親心でしょうか?

でも、それでも羽生君は跳ぶでしょう・・・

PCSやGOEをどんなに渋られても、トランジションやジャンプ前のステップを決して削らないように

彼は自分の信念と理想と、そして彼が愛するこのスポーツの進化のために、何度も大怪我を負いながら、今も現役を続け、滑り続けてくれているのです。

今は彼が健康で、無事に練習出来ていることを願いながら、再びリンクで元気な姿を見せてくれる日まで、静かに待ちたいです。

というのがファンの総意だと思いますが・・・

 

某女性週刊誌が練習のために深夜リンクに出入りする羽生君を盗撮して得意げに記事にしていたとか・・・

四六時中リンクの前で見張ったり、車を尾行したりするのはストーカー規制法に触れる立派な犯罪行為ではないですか?

警視庁HP「ストーカー規制法」

ストーカー行為等の規制等に関する法律
第二条:つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。

恋愛絡みでなければいいという訳がありません。
やっている行為も相手に与える精神的苦痛も同じです。

そして、そのような不法行為で得た写真や情報を雑誌に公開するのはプライバシーの侵害であり、悪質な練習妨害です。

プライバシー権は憲法上保障された基本的人権です日本国憲法第十三条

法治国家で先進国である日本で、国を代表するアスリートの基本的人権が尊重されないなどあり得ません。

日本スケート連盟とスポーツ庁は選手の人権と安全を守るために然るべき措置を講じるべきです。
これは羽生君とフィギュアスケートだけの問題ではありません!

Published by Nymphea

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち