Sportlandiaより「J.ジャクソン著オン・エッジ5:ソルトレイクシティ」

元アメリカジャッジ、ジョン・ジャクソンの著書を考察するマルティーナさんの記事の続きです(亀のようにゆっくりなペースではありますが、このシリーズも最後まで訳すつもりです)

原文>>

マルティーナ・フランマルティーノ著 
(2021年1月8日)

ジョン・ジャクソン著「オン・エッジ」の考察を終えることも、終わりのない私の「やるべき事」リストにある一つです。他の本に比べて、ずっと時間がかかっているのはこれらのページに書かれている内容が注目に値するからです。ジャクソンは元ジャッジで、特定の行為を内部から見ていました。時々正確でない記述があり、彼の意見に常に同意する訳ではないにしても、彼が書いている内容は、ISU内部を大掃除すべきだと私達に言っています。

ソルトレイクシティのスキャンダルは有名ですが、ジャクソンが著書の第9章で同事件についてどのように語っているか見ていきましょう。

オリンピックはほとんどの競技にとって最も重要な大会であり、多くの国においてフィギュアスケートは冬季オリンピックで視聴者が最も注目する競技です。そしてリンクの内外で起こるあらゆる出来事は、オリンピック中に起こった、というだけの理由で大袈裟に取り上げられます。ジャクソンは当時のペアの世界チャンピオン、タイ・バビロニアが、パートナーのランディ・ガードナーの負傷で1980年オリンピックを棄権せざるを得なくなった際に流した涙について回想しています。

ジャクソンはこう述べています:

悲痛なイメージはアメリカ人の脳裏に永遠に刻み込まれた。

(192ページ)

2006年オリンピックのショートダンスの最後で転倒した時、バルバラ・フーザル・ポーリがマウリツィオ・マルガリオに投げかけた視線に言及する記述を私は幾つ見かけたか分かりません。オリンピックで起きたあらゆる出来事はより大きな反響を呼び、しばしばこの唯一の大会によって選手のキャリアが決定されてしまうのです。従って、全ての選手が平等に扱われるべきです。しかし残念なことに、そうではないことがよくあるのです。

ジャッジの審査はしばしば物議を醸しだします。例えば、ジャクソンは1994年のナンシー・ケリガンに勝ったオクサナ・バイウルの金メダルについて回想しています。当時、私は技術的なことについてほとんど理解しておらず、少なくとも今はプログラムを見返す時間がありません。ただ私がバイウルを応援していたこと、そしてケリガンが好きではなかったことは覚えています。アメリカのスケーターが嫌いだった訳ではありません、クリスティー・ヤマグチは今でも私のお気に入りのフィギュアスケート選手の1人であり、トーニャ・ハーディングも応援していました。バイウルは技術レベルでは少し劣るものの、感情的インパクトが非常に強いフリープログラムで、ケリガンの4人に対して5人のジャッジから1位の評価を与えられ、金メダルを獲得しました。

スケート界では、これらの事件は議論され、論争さえ起こったが、最終的には、腐敗ではなく、意見の違いとスタイルの違いに起因するものだった。

(193ページ)

審査における主観性は一定の範囲内であれば許容されます。ただし、2002年のスキャンダルの後に承認された採点システムは、主観の余地をより少なくする意図で考案されました。しかし、問題は使用される採点システムではなく、審査する人間の公正性です。

ソルトレイクシティの後、ロシアのエレナ・ベレズナヤ/アントン・シハルリゼとカナダのジェイミー・サレー/デビッド・ペルティエの2組のカップルの話で持ち切りでした。ジャクソンは銅メダルだった中国のシェン・シュエ/ツァオ・ホンボーと5位だったアメリカのペア、伊奈恭子/ジョン・ジマーマンまで視線を伸ばしました。3位から6位までのペアは全組ショートプログラムの順位を維持したことに目を引かれます(もしマリー=レーヌ・ル・グーニュが告白しなければ、上位6ペアは全組ショートプログラムと同じ順位のままだったことになります)。確率の法則に反する結果です。

私はインサイダーとして、中国ペアは、その技術的スキルとスタイルによって挑戦者になり得ても金メダル候補とは見なされていないことを知っていた。誰がどのメダルを取るのか、内密のやり取りがピークに達するカクテルパーティと密室交渉によって事前にプログラムされているジャッジ達の念頭には、そのような可能性は全く存在しなかった。中国ペアは銅メダルが取れれば幸運だった。

(194ページ)

確かに当時、中国ペアは表現面ではロシアとカナダのペアより劣っていたかもしれません。しかし技術的には全てが揃っており、ミスのリスクが非常に高い競技であることを考慮すると、大会前から金メダル争いから除外するのは、明らかに間違っています。ジャッジ達は先入観に左右されずに、選手達がその時実施した内容を審査しなければなりません。多くのペアが技術的にメダルの望みが無かったのは事実ですが、結果は確実ではないのですから、ジャッジ達はその特定の日に誰が一番優れていたのかを理解するために試合に臨まなければなりません。全てのペアがリンクで披露した内容から、中国ペアは金か銀には値しなかったとしても、ジャッジ達の振る舞いは正しいとは言えません。

ジャクソンは続けます:

愛らしい伊奈恭子とアラバマ州出身の逞しいジョン・ジマーマンのアメリカペアはとても上手く滑ったので、公正な世界では5位より高い順位にランクインされていただろう。何人かの人間は中国ジャッジがカナダペアではなくロシアペアを上位にするよう中国ペアに銅メダルが確約されていたと推測した。中国はペアで五輪メダルを獲得したことは一度もなかった。

確かにある種の約束が取り交わされ、守られたようだった。中国ペアの滑りはアメリカペアからほど遠かったにも拘わらず、銅メダルを獲得した。そして、ロシアにカナダを超えさせて金を与えたのと同じ5対4の割合で、二番手のロシアチームは理不尽な4位でフィニッシュし、アメリカペアを5位に追いやった。

ロシアを1位にする取引が行われていた場合、中国の票は銅メダルの確約によって保証されていた。このペアの滑りを考慮すると、この説明は辻褄が合う。

(195ページ)

当時のルールでは、もし伊奈/ジマーマンがフリーで中国ペアを上回って3位なら、銅メダルは彼らが獲得していました。私は各ジャッジが与えた順位をチェックするために得点を見直しています(プログラムではありません。全てのプログラムをチェックするには時間が掛かり過ぎます)。

アメリカペア、伊奈/ジマーマンの直後に滑ったタチアナ・トトミアニナ/マキシム・マリニンの技術点が表示された時、女性解説者は「かなり寛大な」得点と形容し、彼らの演技が練習の時のようなレベルではなかったと説明しました。女性解説者はロシアペアがアメリカペアを上回った暫定順位を「私は全く同意できない」と切り捨てました。練習ではなく、試合を審査するのは悪いことですか?

私は上位5ペアだけを滑走順にチェックし、各ジャッジが与えた順位と各ぺアの演技直後の暫定順位を表記しました。伊奈/ジマーマンは演技を終えた段階では首位で彼らの順位を示す1の文字が表示されますが、後から滑った4組のペアに追い抜かれました。下の表は、各ジャッジが与えた順位です。各ペアを分かりやすく色分けしました。技術点と芸術点の合計が同点の場合、ショートでは技術点が高い方、フリーでは芸術点の高い方のペアが上位になることを思い出してください。つまり、ロシアペアとカナダペアに同点を与えた中国ジャッジが、実はロシアをカナダより上位にしていたことを意味しています。

ジャッジ全員がシェン・シュエ/ツァオ・ホンボーを3位にしましたので、中国ペアが特定のジャッジから支援されていたのか証明するのは不可能です。しかし、中国ジャッジのヤン・ジアシェンが、ロシアのマリーナ・サナヤ、フランスのマリー=レーヌ・ル・グーニュ(少なくともこの2人に関しては、彼らの採点の動機が明らかになっています)、ポーランドのアンナ・シエロッカ、そしてウクライナのウラディスラフ・ペトゥコフ(この何年も後、2015年に資格停止処分を受けたあまり信用出来ないジャッジです)と共に、ベレズナヤ/シハルリゼを上位にする目論みに加担したことは疑いようのない事実です。カナダペアを上位にしたのはアメリカのルーシー・ブレナン、カナダのブノワ・ラヴォワ、ドイツのシシー・クリック、そして日本の杉田秀男でした。
その他のジャッジの名前を紹介すると、レフェリーはアメリカのロン・フェニング、彼のアシスタントはロシアのアレクサンドル・ラケルニクでした。そう、現在ISUのトップに君臨する「あの」ラケルニクです。あのスキャンダルの後、彼はどうやら出世したようです。

4位5位争いではベレズナヤ/シハルリゼを上位にした5人のジャッジの内、4人のジャッジ(ロシア、フランス、ポーランド、ウクライナ)がトトミアニナ/マリニンを伊奈/ジマーマンより上位にしました。唯一の違いは中国ジャッジはアメリカペアを上位にし、日本ジャッジはロシアを上位にしたことです。偶然かもしれませんが、順位が事前の談合で決められていたか明らかにするためにもう少し踏み込んで調査すべきでした。

ジョン・ジャクソンに戻りましょう。

全てが終わった。私は自分のスポーツに対して個人的にショックを受けている。ジャッジングは恐ろしいもので、世界はそれを知っている。私の心は沈んだ。私は何かをしなければならないことを知っていた。しかし何を?ジャッジ達が長年やっていることをどうすれば変えられるというのか?競技人生の中でこの場所に到達するためにハードな練習を積んでいる選手達から、狡猾なジャッジ達がそれら全てが奪うことは、全選手達に対して公正ではない。そして何故、この時点でこのことが私を驚かせたのか?何故、私は何人かのジャッジが主観性の危うい坂の端から滑り落ちたことに(一線を超えたことに)これほどショックを受けたのだろうか?

(195ページ)

ジャクソンは最初の内は希望を持っていたと語っています:

審査における誤りは、現金で曇らされたり、バルビツール酸塩で目がくらんだりしたのではなく、単なる意見の問題だった。

(196ページ)

「現金」という言葉を持ち出す人がいたことは興味深いことです。私達はスケーター達がリンクで行っていることを称賛し、応援し、感情移入します。スケーター達にとっては彼らの人生がかかっているのです。お金が全てという人間が多過ぎます。バルビツール酸塩と言えば、最近エストニアのジャッジ、ニコライ・サルニコフが酔っぱらっていたために資格処分になった事件を思い出します。ジャッジが与えた得点を盲目的に信用出来ない理由はたくさんあるのです。

ジャクソンは、取り乱したマリー=レーヌ・ル・グーニュがサリー・ステープルフォードに告白を始めたとき、ホテルのロビーにいたと語っています。

「ロシア人との取引だったのよ」彼女はそう叫んだ。私は仰天した。

「アイスダンスは私達のスポーツを台無しにしている!」 彼女はすすり泣いていた。
「あなたは何も分かっていない! 私は自分を守らなければならないわ!」
彼女は続けた。
「あなたは分かっていない!私はそれをやらなければならなかった!金メダルのための金メダル!これが私のアイスダンスチームだった!このプレッシャーはあなたには分かりません!」
彼女はわめき続けた。
サリーは、みっともない姿や行動に対するルールを考慮して、この光景を公共の廊下から移動させた方が良いと考えた。ブリッタ・リンドグレンが再び現れ、廊下の端でサリーとル・グーニュに加わった。
後にマリー=レーヌは告白は行われなかったと主張した。 それどころか、サリー・ステープルフォードが彼女を責め、ディディエ・ゲヤゲがロシア人を上位にするよう彼女に圧力をかけたことを認めるよう彼女に強要しようとしたと彼女は述べた。

(197ページ)

ジャクソンはル・グーニュは何度も同じことを繰り返したと言っていますが、正確な言葉は覚えていないかもしれません。しかし、この光景が起こったことは明らかであり、鮮明に記憶に刻まれたことは当然です。当然のことながら、ル・グーニュの告白はまず内部関係者グループに知られ、やがて全世界に知れ渡りました。どうすればよいのか?

私は、フィギュアスケート界に深く根付いた腐敗と共謀の文化を完全に過小評価していた。そして審査における不正全体を隠蔽するためのアクションが集団的に慌ただしく実行された。

(200ページ)

ISUは今後、このようなスキャンダルは二度と起こらないと保証し、その言葉を守りました。実際、告白を行うジャッジはいなくなりました。しかし、ISUは公正な審査が行われる試合については何も言いませんでした。当時のISU会長、オッタヴィオ・チンクアンタにとって、最も重要なことは常にスキャンダルを握りつぶすことでした。この点において、ソニア・ビアンケッティ・ガルバトが著書「氷の亀裂」で述べていることも興味深いです。彼女の発言の幾つかは以前、既に引用しましたが、彼女の著書で全文を読むことをお勧めします。

マリー=レーヌは、ジャッジミーティングで同様の告白を行い、ミーティングが終わった後、再び彼[ロン・フェニング ]に告白した。

我々の電話の中で私は「この件について、ISUはどうするつもりだと思う?」と彼に尋ねた。「分からないが、私はル・グーニュの得点を捨てて、代理ジャッジの得点を代わりに採用することを推奨する」と彼は答えた。「これが正しく公正なことだ」

(200-201ページ)

この本は私に今まで知らなかったルールの側面を教えてくれました。現在も可能かは分かりませんが、立証された深刻な理由がある場合のみ、試合の正規ジャッジの得点の代わりに代理ジャッジの得点を採用して順位の計算をすることが以前は可能だったと推測されます。この時の代理ジャッジはチェコのジャルミラ・ポルトヴァでした。メダルだけでなく、ジャッジの交代が行われた場合、結果にどのような違いがあったのかは誰にも分かりません。残念ながら永遠に謎のままです。

ルールは明確だった。レフェリーが大会に関する全ての紛争を解決することになっている。ISUは彼の決定を受け入れるしかないだろう。ロンはそれほど楽観的ではなかった。「君はISUを知らない」彼はそう警告した。

翌日、私は本当の意味でISUについて知る必要があることに気付いた。その朝の記者会見で、ISUのオッタヴィオ・チンクアンタ会長は前夜のペアの試合における審査を擁護し、スキャンダルはなく、ジャッジは何も悪いことをしておらず、ISUは決定を再検討しないと主張した。

(201ページ)

この時点で、ジャクソンは激怒して記者会見から立ち去り、当時ティモシー・ゲーベルのコーチでだったフランク・キャロルと会話したと語っています。

彼は続けて、1980年のオリンピックでリンダ・フラチアニに何が起こったのかを私に説明した。フランクの意見では彼女は明らかに、簡単に(メダルを)奪われた。彼は、世界中で尊敬されているコーチであるカルロ・ファッシが、男子の試合でロビン・カズンズに金メダルを保証するために一部のジャッジと取引し、リンダは捨て駒だったと信じていた。 フランクはしばらくの間、憤慨し、苦しんだが、その件を放っておかざるを得なくなった。

(201ページ)

このオリンピックの結果に対するキャロルの批判は以前に読んだことがあります。彼か正しいかどうか知るには(告白は有れば一番ですが)、私より有能な専門家が当時のルールを片手に、試合の全ての段階の映像を分析する必要があります。他の多くのケースと同様、もはや証明も反証も不可能な疑惑だけが残るのです。念のために1980年五輪の男子と女子の2カテゴリーの順位を掲載します。どちらの試合でも上位2選手が東ドイツのスケーターであることに目を引かれます。

ジャクソンは続けて、彼が数人と交わした会話と、彼を含む数人がISUとチンクアンタに行った報告について語っていますが、詳細はジャクソンの著書を読むことを勧めます。

私はフィリス・ハワードとジョン・ルフェーブルとの別のミーティングを手配した。私はISUルールブックを持って来て、得点を抑えられて5位に終わったアメリカペア、伊奈恭子とジョン・ジマーマンに代わって正式な抗議を提出するよう彼らを促した。私は彼らにルールを説明し、抗議の根拠を示した。 本質的に、アメリカ連盟は、ISUに彼ら(ISU)のルールに従うように強制し、マリー=レーヌの全ての得点を削除し、代理ジャッジの得点を採用するというレフェリーの決定を支持するための仲裁を申請するだろう。

(203ページ)

この言葉の重大さが分かりますか?
ISUがISUによって作成されたルールを遵守することを強制するために一国の連盟の正式な抗議が必要なのでしょうか?
このような国際連盟は内部改革を緊急に行う必要があります。残念なことに、アメリカ連盟はジャクソンが望んだような正式な抗議を行うことはありませんでした。何故なら

(フィリス・ハワードは)ジョンと恭子を助けるより「関心を向けるべき」より重要な問題があると言った。より重要な問題?アスリートのために公平を期すために戦わないなら、彼女は自分が何故そこにいると思うのか?彼女はジャッジも務めなかったし、リンクの掃除もしなかったし、パーティやセレモニーに行く以外何もしていなかった。彼女はアメリカ連盟の一員としてそこにいるだけで、自分の仕事をやっていなかった。

(204ページ)

ジャクソンは、ハワードがその後まもなく行われる次の選挙でISUの重要な役職に立候補するつもりであったことを説明しました。このため

彼女は選手達の利益よりも自身の政治的野心を優先した。

(205ページ)

私は政治が大嫌いで疫病にように避けています。そしてフィギュアスケートを見るのは大好きなのです。それがどうして政治について話す羽目になるのでしょう?ハワードの仕事は自国のスケーター達が不正に苦しむことがないようにすることでしたが、彼女にとって自分の政治的未来の方がスポーツの公平性より重要だったのです。

スキャンダルはエスカレートし、メディアは騒ぎ、カナダは申立てを行い、ISUはスポーツ仲裁裁判所で裁判に発展する危機に立たされました。状況は混乱し、ロシア人からメダルを奪うのは簡単ではありませんでした。ベレズナヤ/シカルリゼはスケートをしただけで、工作に加担した訳レはなかったからです。ただし、アントンはその後、全てがカナダ側の誇張であり、最終的にカナダペアにとっては棚から牡丹餅だったと憤慨しました。彼が実際に発した正確な言葉は少し違っていますが。両国のペアに金メダルを授与することを提案し、火中から栗を取り除いたのはカナダ連盟でした。そして、実際そのような措置が講じられたのです。ISUが2人の勝者を受け入れたのは、長いフィギュアスケート史の中で今回以外では1度だけでが(同じくペアの試合でしたが、この場合は銀メダルでした。1964年五輪でプロスケーターに関するルールのため、最初失格と判断され、後に撤回されました)、いずれの場合も全体の順位には影響を与えませんでした。

ロシアペアに対するル・グーニュの得点を除外した後、ISUは2つ目の金メダルを授与したが、それでも大会の他の選手達に与えられた彼女の得点はそのまま残すことを許可した。これでは全く意味がなく、レフェリーの提言を完全に無視していた。チンクアンタは発言の中でロシアが関与した「証拠はない」と強調した。

(206ページ)

チンクアンタは何を望んでいたのでしょう?ロシア人とフランス人が得点を操作するために合意する様子がテレビの生中継で放映されないければ証拠にならないと言うのでしょうか?いずれにしても、1人のジャッジが不正を働いたことは立証されたにも拘わらず、彼女の得点はゴミ箱に捨てられず、アメリカペアの5位を含む、残りの順位の形成に役立てられました。伊那とジマーマンはフィリス・ハワードに抗議しました。

フィリスはそれを行うのは、政治的に危険なことであると彼らに警告し、もし彼らがそれを推し進めた場合、ロシア人はスケートアメリカに来なくなり、大会にダメージを与える可能性があると言った。秋に行われるISUグランプリシリーズ5大会の一つであるスケートアメリカは、高い視聴率を獲得し、客席を埋めるために、国際的なトップスケーター達の出場にかなり依存していた。もしロシア人がスケートアメリカをボイコットした場合、米スケート連盟は多額の損失を被ることになる。

(207ページ)

再びお金にまつわる話が出てきました。この場合、お金は選手より重要なのです。アメリカ連盟にとって自国選手よりお金が大切なら、自国選手をあまり公正でない方法で支援すればお金が儲かる場合、それが例え他国選手にダメージを与えることであっても、彼らはどう振る舞うでしょうか?

平昌オリンピックのアメリカジャッジの一人だったローリー・パーカーは、バカげた採点をすることに加え、 他のジャッジを説得して彼女の思い通りに採点させることが非常に得意だったことを思い出して下さい。そして彼女はバイアスが最も露骨なアメリカジャッジではないのです。僅差ではありますが、この称号に輝いたのはシャロン・ロジャースでした

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☆ソルトレークシティのスキャンダルについての大まかな概要は知っていましたが、良心の呵責に耐えかねたジャッジ本人が公衆の面前で泣きながら告白したとは知りませんでした。
逆に言えば、一人のジャッジによる露骨なナショナルバイアスは平均点からの乖離である程度特定出来ますが、このケースのような複数ジャッジによる交換採点は当事者の告白が無ければ、立証するのほぼ不可能だということです。
ソチオリンピックではロシアに団体金メダル、アメリカにアイスダンス金メダルを与えるためにアメリカとロシアが取引したと仏紙が報じましたが、それ以上調査されることはなく、真偽のほどは結局解明されませんでした。

そして平昌オリンピックでは中国ジャッジ2人が露骨なナショナルバイアス(内1人のジャッジの平均からの逸脱点は8.83でした)で資格停止処分になりましたが、同じぐらい逸脱していたアメリカジャッジのローリー・パーカーはお咎め無しでした。

そう言えば、昨シーズンの全日本選手権では平均からの逸脱点がこの中国ジャッジとローリー・パーカーさえも上回るあり得ない採点を行っていたジャッジが一人いましたが、日本スケート連盟は彼女に対して少なくとも警告ぐらいはしたのでしょうか?

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu