前記事の追記:ルッツとフリップの正しい跳び方

昨日、投稿したマルティーナさんの分析、Sportlandiaより「ミスを見逃すということ」に対してツイッター上で以下のような意見を見かけました。

記事内にWrong Edge判定に関する誤った認識を記しておきます。 文字数制限があるのでツリーにて…(続く)

『『2018年ヘルシンキ・グランプリの3フリップです。彼はアウトエッジで軌道に入り、徐々に傾斜を変化させ、踏み切る時はややインサイドエッジになっています。

彼は正しい技術で跳んでいます。』

と書かれていますが…(

フリップを試みてるケースで最初にアウトサイドエッジで軌道に入り踏み切り動作中にインサイドエッジに変化しながら跳ぶのはWrong Edge判定では ! 判定の可能性が高まる跳び方で、正しい技術とは言えません。

!判定はエッジが不明瞭若しくはフラットで踏み切ったケースに付けられるエラーです。

踏み切った瞬間にだけ正しいエッジで踏み切った。 となれば、テクニカルパネルは何を試みようとしているのか?
が特定できません。

踏み切りに至るプレパレーションや踏み切り動作の身体の使い方を総合的に見てフリップorルッツのどちらを試みたか? を判断します。

その視点が欠如してるんです。

 

言葉尻を捕らえて揚げ足を取っているだけの、取るに足らない意見ですので、無視しようかとかも思いましたが、マルティーナさんのエッジ判定に対する認識が間違っていて、グランプリGPフリーの羽生君の3フリップは実はWrong Edgeだった、と誤解されても困りますので、追記したいと思います。

 

こちらはフリップとルッツの正しい跳び方を解説する動画です

フリップ+ルッツ

 

フリップジャンプ

 

真っすぐ後方に滑って行って踏み切るルッツと違い、フリップはモホークやスリーターンと言ったターンから踏み切ります。

私はフリップの入りのモホークやスリーターンでもインサイドエッジをキープしなければならない、というルールは見たことも聞いたこともありませんが、皆さんはご存じですか?

 

こちらはプレロテ無し、エッジも完璧な、まさに教本通りの理想的なジャンプと言われているカロリーナ・コストナーの3フリップです。

彼女は逆回りのジャンパーなのでちょっと分かり難いですが、アウトサイドエッジから踏み切る直前にインにチェンジエッジして踏み切っているのが分かります。

ちなみにルッツも軌道に入ってからずっとアウトサイドエッジな訳ではなく、インサイドエッジから踏み切る前にアウトにチェンジエッジし、そのままアウトサイドエッジをキープして離氷するのが正しい跳び方です。

羽生君、ボーヤン、ネイサン、コリヤダといった正しい技術でルッツを跳ぶ選手達の踏切に注目すると、皆この跳び方で跳んでいます。

 

コリヤダ、ボーヤン、ネイサンの4Lz

羽生君の4Lz

 

ロシア女子はテクニカルにアピールするために早い段階からアウトサイドエッジで踏み切る直前にフラットまたはインサイドエッジになってしまっている選手が多いです。

ロシア女子のルッツ集

https://www.youtube.com/watch?v=vBgdPtsPTMc

昨日の記事でも書いたようにトゥルソワ、そしてワリエワはアウトサイドエッジで踏切っていますが、他の選手達のエッジはかなり微妙です。

 

こちらは、マルティーナさんがスクリーンショットしてくれたISUガイドラインのフリップとルッツの説明です。

フリップは後ろ向きでインサイドエッジで踏切る。ルッツは後ろ向きでアウトサイドエッジで踏切る。テクニカルパネルは踏切のエッジで判断し、「e」と「!」のマークでミスを指摘する。

つまりテクニカルが見るのは踏切(Take-off)のエッジであり、その前の軌道のエッジは関係ありません。

この方が主張しているように、軌道に入りながらエッジを変化させるのはWrong Edge判定では ! 判定の可能性がある、とは一言も書かれていませんが、一体どこで何を見て、何を根拠にしてそのような解釈に至ったのでしょうか?

 

マルティーナさんが記事の中で正しい3フリップの例として取り上げているヘルシンキGPフリーの動画はこちらです:

ダブルスリー→スリーターン→3フリップです。

スリーターンの技術的説明はこのようになっています。

スリーターン(3 turn)は フィギュアスケートおける片足ターンの一種である。進行方向のチェンジと同時にエッジのチェンジも行う。(ソース)

つまり、方向転換する際にエッジをチェンジするターンで、インサイドエッジで踏切るフリップの前に入れる場合には、アウトサイドエッジで開始し、インにチェンジします。

スリーターンはモホークと共に3フリップの主要な入りとして定着しています。

 

マルティーナさんの記事の中の羽生君の3フリップについて記述した原文はこのようになっています:

He is coming on a clear outside edge, gradually changes inclination and at the take off he in on a slight inside edge

直訳すると「彼は明確なアウトサイドエッジで接近し、段階的に傾斜をチェンジし、踏み切る時のエッジはややインサイドになっている」

確かに入りのスリーターンや、どの段階でアウトサイドエッジだったのか詳しく書かれていませんが、この3フリップが正しいジャンプかどうかは動画を見れば分かることです。

そして、そんなちょっとした言葉尻を捕らえて人の記事にケチをつけるでしょうか?

 

あまりにも的外れな意見ですので、本来なら無視するところですが、敢えて取り上げたのは、このアカウントは以前からマッシミリアーノさんとアンジェロさんを批判するツイートを度々発信しているそうで、一度などはマッシミリアーノさんが羽生を絶賛するのはお金を貰っているから、というような発言をしていたと記憶しているからです。

マッシミリアーノさんは正義感の非常に強い方で、確固たる信念と責任を持って自分の意見を発信しています。むしろ、どんなに大金を積んでも絶対に買収出来ない人がいるとすれば、それがマッシミリアーノさんです。
私は「お金を貰ってやっている」などと他人を誹謗中傷する人こそ、はした金で簡単に買収されるタイプの人間だと考えています。自分がそうだから「あいつもお金を貰ってやっているに違いない」という発想になるのでしょう。

演技や採点に対する考察は、人によって解釈や見解が異なり、反対意見があるのは分かります。むしろ、マッシミリアーノさんはそうした意見は大歓迎で、ツイッターなりフェイスブックなりでいつでも議論に応じると公言していますから、彼に同意出来ないことがあるのなら、根拠を示して自分の考えを述べ、正々堂々と議論すればいいのです。

しかし、何の根拠も証拠もなく「お金を貰ってやっている」などと吹聴するのは立派な名誉棄損です。

相手に法的に訴えられればツイッターでも掲示板の匿名投稿でもブログの読者コメントでも発信者の身元が特定されることを知らない人はいないと思いますが、問題のツイートを削除しても、スクリーンショットを保存されていれば、証拠は永久に残ります。そして、相手はイタリア人だから日本語で何を言っても大丈夫、というのも誤った過信です。

翻訳証明というシステムがありますから、外国語の証拠文書(メッセージ、メール、ネットに投稿されたあらゆる文章を含む)でも専門機関に翻訳証明を依頼すれば訴訟のための証拠として有効です。
私自身このような文書を翻訳する資格を持っており、裁判用の公正証書や証拠文書を翻訳したことがありますし、法学部出身のマッシミリアーノさんはその方面に精通していますから、当然ご存じでしょう。

Published by Nymphea(ニンフェア)

管理人/翻訳者(イタリア在住)。2011年四大陸チゴイネ落ち @pianetahanyu